その橋の欄干に、15枚のプレートを使って、あまのじゃく(天邪鬼)と神様のお話が語られています。
神様は、近くにある大川上美良布神社の神々です。
この神社へ行って見ましたが、あまのじゃくが倉を持ち上げている姿は、見つかりませんでした。
韮生の集落には、もう千五百年ばあ前から大川上美良布神社というて、
地元のもんは川上様、川上様、いうて親しんでおった。
川上様には、たくさんの神様がまつられていて、人助けはもちろん、韮生の集落も守ってくれよったけんど、ちくといたずらもしたことがあるにかわらん。
今日は、その話を聞いてねぇ。
「こりゃあー!! あまのじゃく まちやぁ」
「へっへっへー、ここまでおいで」
さあて、こっちは、川上様とはだいぶ違う韮生一番のあばれ者、あまのじゃく。
人がああ言えばこういう、こう言えばああいう。
とにかく人とは反対のことばっかり言うてみたり、してみたり。
これには、みんなぁ手をやいちょった。
ある日のこと、川上様がそろうて用事にいちょった帰り道、物部川にさしかかった。
「今日はちょっとひまがいったのう」
「おお、願いことをきくのもなかなか大変よのう」
「ありゃ、ありゃ、だれじゃろう」
「うん? ありゃ、あまのじゃくよ」
「おーい、あまのじゃく、そこで何しゆうぜよ」
「あ、ああ、川上様か。おらあ、川がここでぐっと曲がちゅうき、じゃまな石やら岩をのけて、まっすぐに直しゆうがよ」言われてみたら、そのとおり、まあまあ岩もほれちょって、水の流れもようなっちょった。
「そうかよ。けんど、いつまでかかるやらのう。
ほんとに ほりきれるろうかのう」
あまのじゃくは、むっとして「あたりまえよ」
そう自信たっぷりに答えた。
そう言われたら、ちょっといじわるを言うてみとうなるもよ。
「ほいたら、朝までにほってみい。ほれんかったら、わしの言うことを何でも聞いてもらうぞ」
若い神様が言うた。
「うん、わかった」
「よし、約束ぞ」
こう言うて、川上様らあは帰って行った。
夕ぐれどき、畑仕事の終わった若者が、神社の前を帰りよった。そこへ年のいった川上様がちょう通りかかって、聞くともなし話を聞いてしもうた。
「しょう、あまのじゃくはがんばりゆうのう。」
「たまにゃあ、人の役に立つことをするもんよ」
「そうじゃのう」
そんなことを言いよった。川上様は
「そうか、けんどまあ、あわてることもないろう、
晩になったら、みなに言うてみろうか」
そう思いもって、自分の仕事におわれよったら、なんと、夜中がきてしもうた。
「これがたまるか!! 忘れちょった。へんしも言わにゃあ」
みんな他の川上様はぐっすり眠っているので、あの言いだしっぺの若い川上様のところへ行って、こっそり耳うちした。
「コケコッコー」
あっというまに一番どりに変身した。
それから、ざんじあまのじゃくの所へ行って
「はっはっは、見てみい、できざったろうが。
一番どりが鳴いたき、もう朝じゃ。約束どおり、何でも言うことをきいてもらうぞ」
川上様は上きげん。あまのじゃくはしょんぼり。
「そうじゃ、わしの倉をもちあげちょれ」
約束は約束。
「なんか、むごいようなねぇ」
「まあ、あまのじゃくは悪いことはしてないきねぇ」
「こっちがだましたようなもんよのう」
「そのとおりよ」
「わしゃあ、きがひける・・・」
「もうかんかまんって言うちゃろか?」
「よし、言いだしっぺのわしが言う」
とうとう全員、腰をあげて倉の前へ行った。
あまのじゃくは苦しそうじゃった。
けんど、そこはあまのじゃく、弱音ははかん。川上様は「のう、あまのじゃくよ、こんどだけはおまけしちゃろうか?」
「・・・」
「うん、それがましよ。おろしてもかまわんぞ」
「・・・」
「そうと思いろう?」
「えぃ、かまわん!! まけてもらうにゃよばん」
あまのじゃくは何べん「まけちゃろ」いうても聞かざったと。
そこで今でも倉をもちあげたままやと。
川上様も罪なことをしたもんよ。
けんど、まっこと、あまのじゃくもいじっぱりなもんよねぇ。
みんなあも、いっぺん、会いに行ってやってねぇ。
むかしまっこうさるまっこう
さるのつべはぎんがりこ
おしまい