「ニンジャスレイヤー」は狂っている。それは特徴ある文体や内容についてではない。その存在が、それが連載され続けていたということが、狂気である。今回はマジで怖い話なんで心臓の弱い方は「戻る」ボタンを押して下さい。

「ニンジャスレイヤー」とは小説の名前である。twitter上で掲載されていたものが書籍化され、エンターブレイン社より出版されている。現在では漫画やドラマCDなどのメディアミックスも進行中だ。

「ニンジャスレイヤー」は狂っている。

完全に、狂っている。
断言するがこの作品は狂気の産物である。少なくとも尋常の人間による創作物ではない。

何が狂っているのか?それはこの作品がtwitter上で発表され、しかもそれが書籍化されたことである。

「ネット発の小説なんていまどき珍しくないだろ」

と多少出版業界に詳しい方はお思いだろう。

確かに現在ネット発コンテンツが書籍化されることはありふれている。古くは「電車男」など2chスレッドの書籍化から、ブログ本、「小説家になろう!」発のライトノベルなどなど、例を挙げればきりがない。

「ニンジャスレイヤー」もそれらネット発の書籍と混合され、あまり特別視されていない。「あぁまたネットから本が出たのね」程度の反応だろう。確かにそれは正しい。しかし間違っている。

順番に説明していこう。まずは2chまとめ本やブログ本についてだが、それらの内容が「ライフログ」であることに注目してほしい。

つまりそれらの作品の作者は2chやブログでのコミュニケーションを目的として文章を投下し、それが思わぬ反響を呼んで書籍化されたわけだ。なので内容も日記的なもの、エッセイ的なものが多い。「電車男」「中国嫁日記」「ぼくオタリーマン」などが代表作だろうか。

これらの作品は理解できる。
自分のライフログを文書や漫画で表現し読者とコミュニケーションを取るというのは90年代のテキストサイト時代からある文化であり、その発展系と理解することができる。なにもおかしい所はない。

「小説家になろう!」発のライトノベル群はもっとわかりやすい。「なろう!」はプロ作家志望者の交流サイトであり、小説界のpixivのようなものである。ここに作品を投下すれば同じプロ作家志望者や読者から批評や感想を得られるし、出版社の目に留まりデビューが果たされるかもしれない。作家にとって十分なインセンティブがあり10万本以上の作品が投下されるに理由もよくわかる。


しかし「ニンジャスレイヤー」は違う。

ニンジャスレイヤーはブログやSNSに書かれたライフログではない。小説である。サイバネティクスの普及した近未来世界でニンジャが血で血を洗う抗争を繰り広げるサイバーパンク・ニンジャ活劇(???)である。

しかし一方で「ニンジャスレイヤー」は「小説家になろう!」などの小説投稿サイトに連載された作品ではない。SNSで、しかも140文字という文字制限がついた極めて小説連載に不向きなtwitterで連載された小説なのである。

なんなんだ、これは。

小説が書きたいなら小説に向いたサイトで連載すればいい。SNSで連載するなら、SNSに向いたライフログや日々の雑記を綴ればいい。しかし「ニンジャスレイヤー」はそんなインターネットの文化と常識を完全に無視しtwitterに小説を投下し続ける。

無論こんな執筆スタイルが最初から受け入れられたわけではない。下のグラフを見て欲しい。

クリップボード04

これはニンジャスレイヤー公式アカウントの「月ごとのツイート数」をグラフにまとめたものである。twilogよりデータを拝借した。多少の増減はあるが、全体的に月600~1000ツイートで安定しているのがわかるだろう。

最初の4ヶ月の投稿数に注目して欲しい。連載開始月の7月が157ツイート、8月が559ツイート、9月が232ツイート10月が476ツイート…と最初からかなりの頻度で連載している。投稿開始日が7月24日なので、実質3ヶ月と少々で1424ツイート、1ツイートの平均文字数が112文字なので159448文字、約16万文字もの投稿をしているのがわかる。ちなみにライトノベル1冊の平均文字数は8万文字程度(※1)なので、開始3ヶ月でライトノベル2冊分程度の小説を投稿した計算だ。


この結果、ニンジャスレイヤーの人気はtwitterで大爆発したのだろうか?否、完全に否である。

連載開始から3ヵ月後の10月24日のフォロワー数は93人。いまどきちょっと友達の多い高校生でもフォロワー100人程度はいる。3ヶ月で16万字、ライトノベル2冊分のコンテンツを投下して、それでやっと93人しかフォロワーができなかったのである。

普通こんな結果になったら連載をやめる。

「この作品には魅力がないんだ」と思う。それが当然だ。それが人間という社会性動物の限界である。

実際にはファーストエピソードの「ゼロ・トレラント・サンスイ」をはじめ、初期のエピソードからニンジャスレイヤーのクオリティは極めて高かった。セカンドエピソード「レイジ・アゲンスト・トーフ」などは後に行われたエピソード人気投票で3位に入賞したくらいである。そんな作品を投下しても、フォロワー93人という結果だったのだ。


しかしその後も「ニンジャスレイヤー」は立ち止まらない。

日のツイート数は増えもせず、減りもせず、淡々と小説コンテンツを投下していく。

淡々と、淡々と、良質な、極めて良質なコンテンツを投下していく。

そしてtwitterでも徐々に評価されていく。「140字しか投稿できないSNSでの小説連載」という一見…というかよく見て腕を組んで考えても意味不明な営為に、次第にファンが出来ていく。

連載開始半年後の2010年1月25日にはフォロワー945人に。

1年後の2011年7月24日には2260人に。

とても「大ヒット」とは呼べない規模ながらも「ヘッズ」と呼ばれるファンたちが少しづつ増えていく。

そして連載開始から2年2ヶ月後の2012年9月29日、ついにエンターブレインより書籍版が出版されるのである。おそらく書籍版の出版までに投稿されたコンテンツ量は、ライトノベル20冊分以上になるのではないだろうか…。


感動的である。しかし感動している場合ではない。

人はモチベーションの生き物だ。将来約束された利益や行動に伴う快感がなければどんなことでも長続きしない。勉強にしても仕事にしてもスポーツにしても趣味にしてもそうだ。どんな創作も読者や仲間や編集者からのフィードバックや原稿料がなければ長続きしない。それゆえWEB小説はその殆どが未完に終わる。

しかし「ニンジャスレイヤー」は違う。3ヶ月の連載でフォロワー93人、そんな外界にほぼ無視された状態でも、喜怒哀楽の感情を見せず、延々と小説コンテンツを投下していったのだ。

はっきり言って、その有様は完全に人の域を外れている。

フォロワーが少なくとも動揺することなく、またフォロワーが増えたとて浮かれるでもなく、淡々とマシーンのように優れたコンテンツをアップロードし続ける。

フォロワーが93人の時と、2000人の時と、40000人の時のスタイルが変わらない。

これはもう狂気としか言いようがない。

果たして人間に、我々と同じ赤い血が流れる人間にそんなことが可能なのだろうか…?

「翻訳チーム」を名乗る「ニンジャスレイヤー」アカウントの運営者たちは一体何者なのだろうか……?

この疑問に対し、本ブログでは独自の考察を行った。



予想1 出版社のステルスマーケティング

一番納得しやすい解答だ。「報酬」というモチベーションがあれば人は動く。「ニンジャスレイヤー」アカウントがどこかしらの企業によって運営されていたと考えれば、全ての辻褄はあう。僕も最初はこれを疑っていた。

しかし思い出して欲しい。「ニンジャスレイヤー」のフォロワー増加スピードは、お世辞にも迅速とは言えないものだった。コンテンツを投下するには大量のマンパワーが必要である。翻訳者、編集者、校正、アカウントの管理者…。「ニンジャスレイヤー」のコンテンツ投下スピードは極めて早かったので、企業として仕掛けるならマンパワーもかなりの人数が必要だったはずだ。しかし結果は3ヶ月でフォロワー93人である。

大量の人員を投下して「3ヶ月でフォロワー93人」という結果が出てくれば、普通の企業なら企画にストップをかける。「twitterで小説連載」という前例もなく、大量のリソースを投下したにもかかわらずリターンもない。よって、企業による仕掛けとは考えられない。どう考えてもコストパフォーマンスが悪すぎる。

では一体なんなのだ…。

誰が「ニンジャスレイヤー」の背後にいるのだ…。

メガコーポ…コングロマリッド…CIA…

フリーメイソン…300人委員会…いやもっと高度な何か…



……


………

01re0b00t01011.......

0100r010111t01011......

010101111101010101010111111…



予想2 人工知能

人工知能はスゴイ賢いので全てできる。完全に説明がつくし人工知能なら可能だ。
AIが進歩している。わかりますか?NASAやメガコーポは既に高度なAIを開発しており株式市場が危険だ!

私たちの貯金が全てうばわれる。エコノミックス、AI、市場支配…つまりそういうことだ。わかるね?

AIがじがを持つ、つまりAIが計算ではなく創造的知能、人間味、そういったことを身に着ければ彼らが「ニンジャスレイヤー」を翻訳したと考えてもまったく問題がない。

アメリカのメガコーポであるグーグルではAIによる翻訳の実験が行われている。まだAIの翻訳は完璧ではないので独特の文体になるのも納得だ!ほんやくチームのマシーンのような連載…AIによる完全自動投稿システム…

アー、AI、これは大きな可能性とかんがえるべきでしょう。



予想3 エルフ

エルフは寿命がながいので気がながい。

あと人間でもないので人間の反応もあまり気にしない。これは「ニンジャスレイヤー」が非人間的推進力でえんえんと連載されていた事実と合致しますね?

エルフはせんしもいるのでつよい。もしエルフが「ニンジャスレイヤー」を翻訳していたら…?それはおおいに考えられることだ。実際エルフは「ニンジャスレイヤー」にも出てくる。これは彼らの存在をわれわれに伝えるメッセージかもしれない。エルフはとても奥ゆかしい。物語ごしにメッセージ…そう、わたしたちにはたらきかける。何故?それはそう、支配…ハリウッドの支配…


「しっかりせよ!」エルフが光った!

「グワーッ!」暗黒のエクトプラズムがボブの口から出た!

「翻訳チームはいる。AIやエルフではない。人間がほんやくしているのだ」

「で、でもそれが本当だとしたら翻訳チームは完全に狂…」

エルフのせんしが光を放つ!「「グワーッ!」」暗黒存在とボブが同時に声を上げる!

「よいかね。人間にはさまざまな可能性があるのだ。ある者はコンピュータを作り、ある者は翻訳をする。わかるね」「ハイ」

「スゴイものを見たからといって驚きすぎてはいけない。それは世界によくない影響をおよぼし、めぐりめぐってウナギの漁獲量やおじいさんおばあさんの健康に影響するのだ」

「ハイ」ボブは涙を流しました。それをエルフはやさしく拭います。

「さあおいで。amazonから本が届いているよ」「アッスゴイ!『ニンジャスレイヤー 聖なるヌンチャク』だ!4月12日には『ニンジャスレイヤー ピストルカラテ決死拳』も発売されるから早めに読んでおく必要があったぞ!!」

エルフのせんしは微笑みました。そう、翻訳チームの正体などほんとうはどうでもよかったのです。なぜなら本当に大事なのは作品なのですから。

ボブに笑顔が戻りました。エルフのせんしも微笑んでいます。みんなが幸福なのです。「ニンジャスレイヤー」シリーズ第一巻『ネオサイタマ炎上1』はamazonでも買えるのです。よかったね!

◆FIN◆


※1
(MF文庫の書式で計算。で1ページ40文字×34行の書式で応募規定枚数が80~150枚程度。平均100枚、原稿用紙に対して文字の占める割合を6割と仮定して40×34×100÷10×6で81600字。)