前回の『ポリフォニーを見る』の最後に取り上げたトマス・タリス(Thomas Tallis, 1505年頃 - 1585年11月23日)の『Spem in Alium
イングランドルネサンス(まだ連合王国が成立する前の1570年の作曲)の傑作ですが、なんと40声部の大規模な声楽作品。これを聴くだけでも覚醒するんじゃないかな。

Tallis, Spem in alium (Voronoi+40 lines) (c)



それでは反対に和声を構成する最小限の3声の名作を。
タリスの弟子にあたるイギリスの作曲家、ウィリアム・バードの『3声のミサ曲』
Byrd, Misa a 3 voces. The Tallis Scholars


3声のもうひとつの傑作はモーツァルトの『3声のディヴェルティメントK563
モーツァルトは生前にこの曲を2回演奏していますが、いつもヴィオラを受け持ったそうです。
白眉は第4楽章の変奏曲。間の抜けた眠たげな主題はウィーンの流行り歌だそうですが、第4変奏Maggiore(37:00)はまさに神の声。
藤原真理先生に敬意を表して、91年のライヴを選びましょう。
3声のディヴェルティメントは10:58から。
Mozart: Divertimento K.563 + 1 / Kantorow V.Mendelssohn Fujiwara (1991 Movie Live)

1. Mozart(J.S.Bach): K.404a-1 Prelude - [0:40] Fugue - [5:09]
2.Mozart: Divertimento K.563 - 1st [10:53] 2nd [17:23] 3rd [25:50] 4th [31:18] 5th [38:24] 6th [43:42]
Jean-Jacques Kantorow [vn]
Vladimir Mendelssohn [va]
Mari Fujiwara [vc]
1991.10.24 Tokyo. Japan Live

そういえば、学生時代に根津美術館のサロンコンサートで藤原真理のバッハの無伴奏チェロ組曲を聴いた記憶があります。そのときは会場設営に駆り出されて展示ケースの移動をやりましたが、中に入っているのが国宝の天目茶碗で、これを割ったらどうなるのだろうかと冷や汗をかきました。
芸術とは恐怖の体験なのでしょうか。