年始。。。

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1月24日。水曜日。
午後2時。

浅草寺にお参り。

もくもくと盛大に煙を上げる常香炉のありがたみを毛穴からたらふく吸い込みながら、資力に物を言わせて右手いっぱいに握りしめた牛丼何杯か分の小銭を賽銭箱に放り込む。

幸せになってしまうかもしれないと思う。


インバウンド需要の隙間を縫うように大袈裟な音を立ててひいたおみくじは、その甲斐もなく只の「吉」だったけれど、それでも紙切れの隅っこに遠慮がちに書き込まれた「病気 遅れて治るでしょう」の一文に随分と勇気づけられた。


仲見世通りをすこし歩く。

きつねのお面が欲しいのです。と試しに細谷くんに打診してみるけれど、まるで赤子の手をひねるかのように捩じ伏せられてしまう。

他人のお金で生きてくっていうのはほんとうに難しい。


午後3時。

花やしきの入り口で大人千円の入園料を潔く払う。

それから入ってすぐの券売機で、資力に物を言わせて「のりもの券」を11枚綴りで購入する。

いっそフリーパスを購入してみてはどうかとさもしいことを言い出した細谷くんを、それは愚か者のすることだと諭す。

考えてもみてほしい。

閉園時間も差し迫ったこのタイミングで、お世辞にも決して多いとは言えないアトラクションの為に「お得」だとかなんだとか今シーズン最も欺瞞に満ちた謳い文句にいいようにのせられて、必要以上に高いお金を払うのはまったくもって馬鹿のすることである。

思わず声を荒げてしまったけれど、聡明な細谷くんのことだからすぐにわかってくれたみたいでほんとうによかった。

わかってくれればよいのである。


人もまばらな園内を散策しつつ、まずは花やしきの名物でもあるローラーコースターへ。

入口のあたりで「のりもの券」を5枚ほどこちらによこせと言われ、2人で10枚もの「のりもの券」を毟り取られる。

さながらベトナム帰りのシルベスター・スタローンがしきりに身体に巻きたがるアレを彷彿とさせるほど長く連なっていた「のりもの券」があっという間に手のひらサイズになって、もうこれっぽっちでは思い出のひとつも作れないのだと思い知らされて悲しくなる。

何も言わずに券売機で新たに「のりもの券」を買い足そうとする細谷くんを、だからあれほどフリーパスを購入したほうがいいと言ったではないかと叱責する。

考えてもみてほしい。

目先の千円、二千円を惜しむばかりに将来的にそれ以上の不要な支出を招いてしまうのはまったくもって馬鹿のすることである。

思わず声を荒げてしまったけれど、聡明な細谷くんのことだからすぐにわかってくれたみたいでほんとうによかった。

わかってくれればよいのである。


その後は細谷くんの金で買った「のりもの券」を使って、とにかく高いところでひたすら遠心力を楽しむマシーンに乗ったりもした。

乗客は僕らの他には大学生と思しきカップル一組だけだったのだけれど、あの阿呆のカップルが比較的僕らの傍の座席に腰を掛けたものだから僕はたまったものではなかった。

僕のあの流れるような体重移動がなければマシーンの回転軸がずれて大変なことになっていたに違いない。

みんなの笑顔を護れてよかったと思う。


ちなみに僕はこの手のマシーンが大の苦手で、ほんとうは嫌で嫌で仕方がなかったのだけれど、細谷くんが乗りたいと言ったので乗ったのだ。

健気である。


2時間弱ほど花やしきを満喫してからそそくさと帰る 。

あのお馴染みのbeeタワーが老朽化でなくなってしまったのは寂しかったけれど、とりたててなんの思い出もない僕がこんなことを言うのはおこがましいと思う。



それからはすっかり日の落ちた浅草をとにかく歩いた。

途中おしゃれな喫茶店にも立ち寄ったし、ミスターチルドレンのどうでもいい歌に感動したりもした。

浅草の空気をたらふく吸い込んで、それでも僕らはお腹が空いて、お寿司でも食べたいねぇ。なんて言い出した頃にはもう何処のお店も閉まってしまっていたものだから、なんだか勿体ないような気もしたけれど三軒茶屋に戻ってからご飯を食べることにする。

閉店間近の回転寿司はもうほとんど撤退戦の様相で、席について最初に流れてきた「つぶ貝」を優しい眼差しで見送ってからは、もう何ひとつ流れてこなくて悔しい思いをした。

それでもいい日だった。






年始。。


1月23日。火曜日。

朝から仕事。

朝まで仕事。



1月24日。水曜日。

昼頃に帰宅。

僕が額に汗しながら黙々と働いている間、僕の代わりに一生懸命睡眠をとってくれていた親切な細谷くんと三軒茶屋駅前のてんやで食事。

いつ食べても美味しいっていうのはすごい。


年末に果たせなかったファンシーな約束を果たす為、午後からは東京は多摩市にあるなんとかピューロランドとかいうファンシーなスポットにふたりで出掛けることを画策するけれど、残念ながらこの日は休館日。

僕らのファンシーさがピューロランドのそれを追い越してしまったのだ。
恐ろしいことだ。

それで仕方がないのでピューロランドの次にファンシーな浅草花やしきに行くことに。


三軒茶屋のいつものホームから吐息混じりの各駅停車に乗り、青山一丁目あたりで銀座線に乗り換えて浅草まで。

平日の昼下がりという比較的穏やかな時間帯のわりには車内はかなりの混雑で、遠慮がちに腰かけた銀座線浅草行きの車両の片隅ですら全方位から押し寄せてくる陰鬱な面持ちのプレッシャーはそれなりのものがあった。

ホームに降りたら降りたで、もはや尋常ではないテンションの外国人女性が僕らに向かってごきげんなフロウをぶちかましてきたものだから思わずたじろいでしまったけれど、あれが今流行りのフリースタイルバトルっていうやつだったんだろうか。

だとしたら僕のライムで黙らせてやればよかったと思う。


まるで時代に置いてきぼりにされたみたいなくすんだ色の地下街を抜けて、うらぶれたビデオ屋の店先のクラシック映画のコーナーに遠慮がちに並べられた見慣れないタイトルが、果たして「クラシック」なのか「着エロ」なのかの論争に花を咲かせながら、僕らは浅草寺にお参りに行くわけである。



年始。


1月21日。日曜日。

京都からはるばるやってきた細谷くんと三軒茶屋で待ち合わせて新宿三丁目へ。

都内某所からしぶしぶ自転車でやってきた五月リョウタ氏ともそこで落ち合って、もう1月も終盤に差し掛かったこの絶妙なタイミングで新年会を執り行う。

朝からなにも食べていないのだと、この会への期待を強く滲ませていた細谷くんの思惑を無視して、なぜか唐突に場を仕切りはじめた五月くんの独断で五月くん行きつけのみすぼらしくてせせこましいくそみたいな居酒屋に行く。

「この店、良いんだよ。豆腐が安くてさ」と、くたくたの煙草を燻らせながら得意げに語る五月氏の本日のおすすめが、カワセミの雛くらいお腹を空かせていた細谷くんの表情をみるみる曇らせる。

くわえて、ろくに賑わってもいない人もまばらな店内であるにもかかわらず、一等粗末な席に通されたことが細谷くんの表情をみるみる曇らせる。

なぜか細谷くんにだけ当たりのきつい店のばばあのスタンスが、やっぱり細谷くんの表情をみるみる曇らせる。


前衛的なアートか、そうでなければどこかの山林から伐採してきたのかと見紛うほど、ひときわ歪で不安定な木製のテーブルにひと通り料理が並んだ頃になって、五月くんがこの店の常連だというそもそもの大前提が彼の壮大なプロパガンダであったことが発覚する。

テーブルの隅っこに追いやられたふわふわ食感のニラ玉がやけに絶品で、なんだかそれが無性に憎らしかった。



1月22日。月曜日。

雪。

朝から仕事。

昼には三軒茶屋の栄通り商店街にある定食屋さんで細谷くんと食事。

券売機のタッチパネルを努めてリズミカルに連打する、そういう類の極めてディスコミュニケーションな行為にいたく興奮する。


昼過ぎに降りはじめた記録的な大雪で東京の交通網はすっかり麻痺してしまって、細谷くんはこの日の予定をすっかり駄目にしてしまったし、僕は僕であのひりついた駅構内の空気がほんとうに嫌で、あの雪の中を歩いて仕事に行くはめになったわけだけれども、なんだか悪いことばかりでもなかったような気がする。

昼に食べた鯖の塩焼き定食はほんとうに美味しかったし、どうでもいいおしゃべりはほんとうに楽しかった。

いい日だった。
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