奈良の若草山が真正面に見える場所に、ある有名会社の創業者が造営した邸宅があり、今はその会社の厚生寮として使われている。
そこに在る枝垂桜の大木が、「元気がないように思うので、一度見てほしい」との依頼があった。
僕は「樹木医」ではないが、樹木を扱う仕事を始めて50年以上にも成り、自分の感性で樹木に相対して来たので、ある程度の対処は出来ると自負している。
落葉期に一度現地に行って、枝垂桜の状況を見に行っている。
管理人の方の話によると、この場所に植えられて80年ぐらいになると聞いている、とのことだった。
したがって樹令は100年以上と思われる。
それだけの風格を持った大木であリ、この場のシンボルとなっていた。
そのすぐ東北側に、大島桜が植わっていて、枝垂桜同等の大木であった。
この大島桜の枝が、枝垂桜に被さるように伸びていて、枝垂桜はその枝に押されて、東北側に伸びれない状況になっていた。
また、台風で枝が折れたのか、幹に大きな傷があった。
樹勢は、さほど悪いとは思えなかったが、樹勢回復の方法はいくつか閃いたので、樹勢回復作業を引き受けた。
作業は落葉期に行っておくのがベストだと判断したが、その時期は仕事が忙しく、花後にと考えていたが、今年は何かと忙しく、時間が取れなくて、樹勢回復作業は7月1日に行うことに成った。
右側が枝垂桜で、左が大島桜。(作業当日の7月1日に撮影)
大島桜の根元から延びている枝や、右側に曲がり伸びている枝が、枝垂桜に被さっている。
大島桜が枝垂桜の北東側に生えているので、この状態では、朝日が枝垂桜に当たらない。
大島桜が覆いかぶさっているので、枝垂桜はこの方向には伸びられずにいる。
それで、大島桜の覆いかぶさっている枝の撤去をすることにした。
枝と言ってもかなりい大きいので、切除には細心の注意を払わないと危険でもある。
枝をロープで吊り、細かく切り落としていった。(切っている時の写真は、撮り忘れてしまった)
根元から延びている枝は、幹元から切ったので、
大きな傷が出来る。
このような大きな傷をそのまま放置すると、この部分から水分が蒸散して、樹勢に影響するし、この部分に腐朽菌が付いて、幹を腐らせる原因にもなる。
切った部分を、チェーンソーでえぐって凹ませ、
その切口にたっぷりと「カルスメイト」を塗布。
凹ませると、カルスの形成がスムーズになると考えている。
「カルスメイト」はかなり長く使っていて、その効能は立証済み。
傷口に膜面を造り、水分の蒸散を防ぐとともに、腐朽菌などの侵入を防ぐ。
殺菌剤は含まれていないようだが、菌の侵入を防ぐ強固な膜面が出来る。
「カルス」形成を促進するホルモン剤のようなものが入っているようで、比較的「カルス」の形成が遅いとされるサクラ類でも、しっかりと「カルス」が出来てくる。
これだけ傷口が大きいと、「カルス」の形成にかなりの時間を要するが、「カルスメイト」を塗布することによって、樹木に与えるダメージをかなり軽減できる。
勿論、他の小さな傷口にも「カルスメイト」を塗布。
大島桜の枝を切除することによって、
枝垂桜と大島桜の間に空間が出来、枝垂桜に朝日がよく当たる状態になった。
勿論、大島桜も新たな枝を出してくる可能性が大なので、今後も制御して行かねばならない。
一方、枝垂桜の幹に、
このような大きな傷がある。
台風などの強風で、かなり大きな枝が折れたものと思われる。
折れてからかなりの年月が経っているのか、かなり腐朽も進んでいる。
その腐朽部分の一部を撤去すると、
細かな発根が多数見られる。
これは予想通りで、多くの樹木は腐朽部分に水分があると発根して、自ら再生する。
それほど、樹木の生命力は強い。
これに人の手で工夫を加えると、その発根は加速される。
先ず、腐朽が進まず木部が硬い所を、
チェーンソーを使って切除。
幹にビスを打って、杉バークを詰め込み、棕櫚縄で括りつける。
大きな傷跡全面に杉バークを詰め込み、水をかける。
管理人の方にも、今後時々水をかけて乾燥させないように頼んでおく。
かつてこの方法で、ソメイヨシノの幹に発根させたことがある。
同様の処理をして、4~5年後に杉バークを外して見ると、腕ほどに育った根が幹となり、幹の洞を突き抜けて地中まで達しているようだった。
幹が補強されると共に、根の発達に伴って樹勢も強くなる。
枝葉が茂りすぎるという難点はあるものの、それは剪定によって制御できる。
樹木が元気になれば、その場の氣も向上する。
この枝垂桜も、その例のようになることを期待している。
この方法は、独自の閃きで行っているが、NPO法人「藪会」が「藪会方式樹勢回復」として行っているのと、原理的には同じ。
枝垂桜には、
浮き根が見られるが、このような例は多い。
ただ、植えられて80年以上経っているということなので、幹近くの根詰まりや、水・空気の浸透がスムーズでないことも考えられる。
苔が生い茂っているのも気に成るところ。
それで、枝葉の茂っている下部に、多数の穴をあけることにした。
両スコでの作業は、大変な手間が伴うので、「アースオーガー」をを購入した。
エンジン式のアースオーガーは危険を伴うので、充電式の電池で駆動するアースオーガーを購入。
一定以上のトルクが架かると止まるので、危険は少ないし、逆転できるので、抜くのも楽。
石や根に引っ掛かると掘り進められないが、スムーズに穴があけられるので、難なく多数の穴をあけることが出来た。(またまた穴掘り作業中の写真を撮り忘れてしまった)
あけた穴に、
剪定した枝葉と炭を詰め込んだ。
こうすることによって、水の地下への浸透が促進され、水の浸透と共に新鮮な空気も浸透する。
樹木の根が最も要求するのは、空気・つまり酸素のようだ。
植物は炭酸ガスを吸収し、炭酸同化作用を行て、酸素を放出すると、教科書的に習ってきたが、植物も生命体なので、生きてゆくためには酸素も必要なようだ。
酸素を放出するぐらいだから、その前に取り込めばいいとも思うが、その酸素を取り入れるのはどうも根のようだ。
水が浸透し、新鮮な空気・酸素が地下に浸透するためには、地中の隙間が極めて重要なようだ。
に図が浸透に伴って、古い空気は押し出され、さらに水が深く浸透して行くと吸引がかかり新鮮な空気・酸素が地中に取り込まれることに成る。
樹木を掘る時に、年御状態を観察すれば、この原理が理解できる。
関西の土壌は、真砂土や粘土質が多いので、目詰まりが起こり易い。
したがって、空気・酸素が地中深く浸透しにくいので、根の浅いものが多い。
浮き根に沿って、
浅い溝を掘り、ピートモスと炭を埋めてみた。
この単純な方法の原理は、千葉の造園家「高田宏臣」さんに教わった。
僕は、臨機応変にいろんな方法を取り入れて、環境改善に努めている。
作業終了後、根元全面に「メネデール」20L散布する。
「メネデール」はどうも「鉄イオン剤」のようで、「生命素」でもあるようだ。(「鉄と生命---鉄はなぜ生命に選ばれたか」参照)
「メネデール」の効能も立証済みで、よく使う。
枯れかかった樹木を、何度も生き返らせている。
以下は、作業終了時の写真。
大島桜の枝を大々的に切除することによって、枝垂桜の側にスペースが出来た。
この枝垂桜の枝の伸び方を見れば、大島桜の影響の大きさが分かる。
スペースを造ったことによって、枝垂桜がどのように伸びてくるのか?その結果が楽しみ。
西側に大きく広がった枝垂桜。
今回、枝垂桜の剪定は全く行わなかった。
枝垂桜の枝葉が被さってしまって、かわいそうな状態になっている松。
枝垂桜の樹勢が回復して、より茂ってくれば、松は完全に枝葉の下になってしまい、陽が射さないことになってしまう。
このような状態では、枯れるのを待つだけ。
むしろ伐採撤去する方が、松にもこの場の環境にも良いように思うのだが。
僕は学校に行くこともなく、親方に師事するすることもなく、我流で庭を造り始めてすでに50年以上になる。
したがって伝統に接することもなかった。
しかし、「人はなぜ庭を造るのか?」との問いを発しつつ、いろんな情報に接し、応用できるものは何でも使い、創造性と好奇心の赴くままに仕事をやって来た。
それ故に自信の持てない時期もあったけれど、根本を追及して行くと、伝統のその先までに至ることに気付き始めている。
自分のやり方についても、常に再検討を続けてきた、今はある種の自信にも繋がりつつある。
自分のやっている方法が絶対とも思わないが、大きくは間違っていなかったと思っている。
そして今や、「庭を造る事は天職だ!!」と思えるに至っている。
今回の作業もそんな一環だった。
7月1日の奈良は猛烈な暑さで38℃ぐらいまで上がったらしい。
かつて「熱中症」になったことのある僕は、日向に出ると「やばい!!」と感じるほどだったが、幸い作業の殆どが木陰。
樹木のもたらす「おかげ」を十分感じての作業でもあった。
そこに在る枝垂桜の大木が、「元気がないように思うので、一度見てほしい」との依頼があった。
僕は「樹木医」ではないが、樹木を扱う仕事を始めて50年以上にも成り、自分の感性で樹木に相対して来たので、ある程度の対処は出来ると自負している。
落葉期に一度現地に行って、枝垂桜の状況を見に行っている。
管理人の方の話によると、この場所に植えられて80年ぐらいになると聞いている、とのことだった。
したがって樹令は100年以上と思われる。
それだけの風格を持った大木であリ、この場のシンボルとなっていた。
そのすぐ東北側に、大島桜が植わっていて、枝垂桜同等の大木であった。
この大島桜の枝が、枝垂桜に被さるように伸びていて、枝垂桜はその枝に押されて、東北側に伸びれない状況になっていた。
また、台風で枝が折れたのか、幹に大きな傷があった。
樹勢は、さほど悪いとは思えなかったが、樹勢回復の方法はいくつか閃いたので、樹勢回復作業を引き受けた。
作業は落葉期に行っておくのがベストだと判断したが、その時期は仕事が忙しく、花後にと考えていたが、今年は何かと忙しく、時間が取れなくて、樹勢回復作業は7月1日に行うことに成った。
右側が枝垂桜で、左が大島桜。(作業当日の7月1日に撮影)
大島桜の根元から延びている枝や、右側に曲がり伸びている枝が、枝垂桜に被さっている。
大島桜が枝垂桜の北東側に生えているので、この状態では、朝日が枝垂桜に当たらない。
大島桜が覆いかぶさっているので、枝垂桜はこの方向には伸びられずにいる。
それで、大島桜の覆いかぶさっている枝の撤去をすることにした。
枝と言ってもかなりい大きいので、切除には細心の注意を払わないと危険でもある。
枝をロープで吊り、細かく切り落としていった。(切っている時の写真は、撮り忘れてしまった)
根元から延びている枝は、幹元から切ったので、
大きな傷が出来る。
このような大きな傷をそのまま放置すると、この部分から水分が蒸散して、樹勢に影響するし、この部分に腐朽菌が付いて、幹を腐らせる原因にもなる。
切った部分を、チェーンソーでえぐって凹ませ、
その切口にたっぷりと「カルスメイト」を塗布。
凹ませると、カルスの形成がスムーズになると考えている。
「カルスメイト」はかなり長く使っていて、その効能は立証済み。
傷口に膜面を造り、水分の蒸散を防ぐとともに、腐朽菌などの侵入を防ぐ。
殺菌剤は含まれていないようだが、菌の侵入を防ぐ強固な膜面が出来る。
「カルス」形成を促進するホルモン剤のようなものが入っているようで、比較的「カルス」の形成が遅いとされるサクラ類でも、しっかりと「カルス」が出来てくる。
これだけ傷口が大きいと、「カルス」の形成にかなりの時間を要するが、「カルスメイト」を塗布することによって、樹木に与えるダメージをかなり軽減できる。
勿論、他の小さな傷口にも「カルスメイト」を塗布。
大島桜の枝を切除することによって、
枝垂桜と大島桜の間に空間が出来、枝垂桜に朝日がよく当たる状態になった。
勿論、大島桜も新たな枝を出してくる可能性が大なので、今後も制御して行かねばならない。
一方、枝垂桜の幹に、
このような大きな傷がある。
台風などの強風で、かなり大きな枝が折れたものと思われる。
折れてからかなりの年月が経っているのか、かなり腐朽も進んでいる。
その腐朽部分の一部を撤去すると、
細かな発根が多数見られる。
これは予想通りで、多くの樹木は腐朽部分に水分があると発根して、自ら再生する。
それほど、樹木の生命力は強い。
これに人の手で工夫を加えると、その発根は加速される。
先ず、腐朽が進まず木部が硬い所を、
チェーンソーを使って切除。
幹にビスを打って、杉バークを詰め込み、棕櫚縄で括りつける。
大きな傷跡全面に杉バークを詰め込み、水をかける。
管理人の方にも、今後時々水をかけて乾燥させないように頼んでおく。
かつてこの方法で、ソメイヨシノの幹に発根させたことがある。
同様の処理をして、4~5年後に杉バークを外して見ると、腕ほどに育った根が幹となり、幹の洞を突き抜けて地中まで達しているようだった。
幹が補強されると共に、根の発達に伴って樹勢も強くなる。
枝葉が茂りすぎるという難点はあるものの、それは剪定によって制御できる。
樹木が元気になれば、その場の氣も向上する。
この枝垂桜も、その例のようになることを期待している。
この方法は、独自の閃きで行っているが、NPO法人「藪会」が「藪会方式樹勢回復」として行っているのと、原理的には同じ。
枝垂桜には、
浮き根が見られるが、このような例は多い。
ただ、植えられて80年以上経っているということなので、幹近くの根詰まりや、水・空気の浸透がスムーズでないことも考えられる。
苔が生い茂っているのも気に成るところ。
それで、枝葉の茂っている下部に、多数の穴をあけることにした。
両スコでの作業は、大変な手間が伴うので、「アースオーガー」をを購入した。
エンジン式のアースオーガーは危険を伴うので、充電式の電池で駆動するアースオーガーを購入。
一定以上のトルクが架かると止まるので、危険は少ないし、逆転できるので、抜くのも楽。
石や根に引っ掛かると掘り進められないが、スムーズに穴があけられるので、難なく多数の穴をあけることが出来た。(またまた穴掘り作業中の写真を撮り忘れてしまった)
あけた穴に、
剪定した枝葉と炭を詰め込んだ。
こうすることによって、水の地下への浸透が促進され、水の浸透と共に新鮮な空気も浸透する。
樹木の根が最も要求するのは、空気・つまり酸素のようだ。
植物は炭酸ガスを吸収し、炭酸同化作用を行て、酸素を放出すると、教科書的に習ってきたが、植物も生命体なので、生きてゆくためには酸素も必要なようだ。
酸素を放出するぐらいだから、その前に取り込めばいいとも思うが、その酸素を取り入れるのはどうも根のようだ。
水が浸透し、新鮮な空気・酸素が地下に浸透するためには、地中の隙間が極めて重要なようだ。
に図が浸透に伴って、古い空気は押し出され、さらに水が深く浸透して行くと吸引がかかり新鮮な空気・酸素が地中に取り込まれることに成る。
樹木を掘る時に、年御状態を観察すれば、この原理が理解できる。
関西の土壌は、真砂土や粘土質が多いので、目詰まりが起こり易い。
したがって、空気・酸素が地中深く浸透しにくいので、根の浅いものが多い。
浮き根に沿って、
浅い溝を掘り、ピートモスと炭を埋めてみた。
この単純な方法の原理は、千葉の造園家「高田宏臣」さんに教わった。
僕は、臨機応変にいろんな方法を取り入れて、環境改善に努めている。
作業終了後、根元全面に「メネデール」20L散布する。
「メネデール」はどうも「鉄イオン剤」のようで、「生命素」でもあるようだ。(「鉄と生命---鉄はなぜ生命に選ばれたか」参照)
「メネデール」の効能も立証済みで、よく使う。
枯れかかった樹木を、何度も生き返らせている。
以下は、作業終了時の写真。
大島桜の枝を大々的に切除することによって、枝垂桜の側にスペースが出来た。
この枝垂桜の枝の伸び方を見れば、大島桜の影響の大きさが分かる。
スペースを造ったことによって、枝垂桜がどのように伸びてくるのか?その結果が楽しみ。
西側に大きく広がった枝垂桜。
今回、枝垂桜の剪定は全く行わなかった。
枝垂桜の枝葉が被さってしまって、かわいそうな状態になっている松。
枝垂桜の樹勢が回復して、より茂ってくれば、松は完全に枝葉の下になってしまい、陽が射さないことになってしまう。
このような状態では、枯れるのを待つだけ。
むしろ伐採撤去する方が、松にもこの場の環境にも良いように思うのだが。
僕は学校に行くこともなく、親方に師事するすることもなく、我流で庭を造り始めてすでに50年以上になる。
したがって伝統に接することもなかった。
しかし、「人はなぜ庭を造るのか?」との問いを発しつつ、いろんな情報に接し、応用できるものは何でも使い、創造性と好奇心の赴くままに仕事をやって来た。
それ故に自信の持てない時期もあったけれど、根本を追及して行くと、伝統のその先までに至ることに気付き始めている。
自分のやり方についても、常に再検討を続けてきた、今はある種の自信にも繋がりつつある。
自分のやっている方法が絶対とも思わないが、大きくは間違っていなかったと思っている。
そして今や、「庭を造る事は天職だ!!」と思えるに至っている。
今回の作業もそんな一環だった。
7月1日の奈良は猛烈な暑さで38℃ぐらいまで上がったらしい。
かつて「熱中症」になったことのある僕は、日向に出ると「やばい!!」と感じるほどだったが、幸い作業の殆どが木陰。
樹木のもたらす「おかげ」を十分感じての作業でもあった。