綾
あれ!
あれ見て!!あれ!
あれってあなたと同じ妖精さんじゃない?
妖精さん
え?
ああ、そうやな。
あれはバンダナの妖精やな。
綾
バンダナの妖精さん?
妖精さん
ああ、そうや。
普通な、そこらの街にバンダナなんかつけてる奴おらんやろ?
せやけどアキバにはおるやん?
あれはな、バンダナの妖精が導いてバンダナを買わせてるんや。
綾
えええ?!
バンダナをつけてるのは本人の意思じゃないんだ。
妖精さん
うん。
綾
へえーそうなんだー。
じゃあ、ほかの種類の妖精さんってどんなのがいるの?
妖精さん
そらあ、いっぱいおるで。
数え切れんほどに。
ゲームの妖精がついたらゲームを買うように導くし、
本の妖精がついたら本を買うように導く。
フィギュアの妖精、カメラの妖精、コスプレ衣装の妖精、ポスターの妖精、
アキバにはたくさんの種類の妖精がおるんや。
綾
じゃあ、私をゲームに導いてくれているあなたはゲームの妖精さんなのね?
妖精さん
いやあ・・、それがな。
ちゃうねん。
と言うかな。
わからへんねん。
綾
え?どういうこと?
妖精さん
実はな、俺、ちょっと記憶喪失やねん。
さっきゆうてた天空の城が落ちたときにな、頭ぶつけてしもてちょっと記憶喪失になっとんねん。
綾
ええーーー!
大丈夫なの?
妖精さん
いやいや、それは大丈夫。
大丈夫。
何も心配あらへん。
ただちょっと自分のこと忘れてしもてるだけやから。
それ以外のことは何もかも大丈夫。
綾
ホントに?
病院で検査受けたほうがいいんじゃないの?
って、妖精さんの病院なんてあるのかしら。
妖精さん
あるよ。妖精病院。
もう行ってきて精密検査も受けた。
至って健康。
どっこも異常なしって言われたよ。
綾
そうなんだ。
へえー。
妖精さん
せやけど記憶喪失は妖精病院じゃどうしようもないから、とりあえずアキバで人を導く仕事でもしとけばそのうち治るんちゃう?って言われてな。
そんでまあ、アキバの街をブラブラとしとったら綾に出会うたんや。
綾
へえー。
じゃあ、ほかの妖精さんに、自分が何者だったか聞いてみた?
妖精さん
いや、それがなあ、俺は関西からこっちに単身赴任で来たばっかりでな、こっちに知り合いとかおらへんのよ。
綾
ふーん・・。
妖精さんの世界もタンシンフニンとか色々あるのね。
あ!
もしかしてさ、妖精さん、自分の名前も記憶喪失なの?
自分の名前言ってなかったもんね?
妖精さん
うん、まあそういうことやな。
名前もわからへんねん。
せやけど俺の呼び方は「妖精さん」でエエんちゃう?
綾
ダメだよ!
やっぱり名前があったほうがいいよ。絶対!
それに、私だけ「綾」って呼ばれてるの何か嫌だし。
妖精さん
そうかなあ。
ほな、なんて名前にしよかなあ。
綾
私がつけてあげる!
いいでしょ?
妖精さん
え?
ま、まあエエけど・・・。
あんまカッコ悪いのんとか卑猥なんはやめてや。
綾
へっへー。
じゃあ・・・「エスピン」でどう?
妖精さん
「エスピン」?
なんやそれ?
綾
食パンみたいだから、食パンの食の頭文字の「S」とパンの頭文字の「P」
「エス」と「ピー」
それと「ン」を最後につけて、エスピン!
妖精さん
エスピン・・・
エスピンか・・・。
うーん・・なんか・・、
カッコええやん!それ!!
うん、それでええわ。
うん、それにしよう、それにしよう。
うん。
綾
そう?気にいってくれてよかった!
じゃあ、これからもよろしくね。
エスピン!
妖精さん改め、エスピン
おう、よろしくな!綾!
喋りながら歩いとったけど、ほら、ゲーム屋さんが見えてきたで。
綾
おー!