今回のコロナウイルス感染によって、消費者は行動・価値観などライフスタイルを大きく変えざるを得ない状況になりました。直接的なスーパー銭湯の商環境の変化だけではなく、今後、経済活動や雇用など多岐にわたって変化を強いられることになります。

 過去にも、スーパー銭湯の利用を阻害するような事例はありましたが、これほど大きな影響を長期にわたって受けたケースはなかったように思います。

 そして、仮にコロナウイルスが収束に向かったとしても過去のような賑わいは戻らないのではないかという危惧や、あと何か月体力が持つのだろうかという不安も起き始めているようです。

 温浴振興協会では、全国のスーパー銭湯の皆さんから今回の実態をヒヤリングし、スーパー銭湯に係る様々な企業に今後の業界の展望についてお話を伺ってみました。

 さらに、協会が過去にお手伝いした店舗の事例も踏まえ、次項以降にコロナ禍における着目点を挙げましたので参考にしてみてください。

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※温泉情報誌「ゆ~ゆ」読者アンケートの結果です

従来のような入場者数を目標値として掲げていませんか?

 今後、店舗の運営目標数値を利用客数や売上規模に置くのは好ましいといえません。

 従来型のスーパー銭湯では店舗規模・提供サービス・立地環境にもよりますが、年間30万人程度の利用者を集めていて利益を出せない場合は事業計画自体に問題があると言えるでしょう。

 これからは数を追いかける規模拡大ではなく、収益に重点を置いた運営手法が必要です。店舗運営責任者はどうしても入場者数や売上規模を追いかけがちですが、マネージメント側はその事業が収益を生み出すかどうかで判断しなくてはいけません。

収益構造を抜本的に見直す必要がありませんか?

 公衆浴場とスーパー銭湯の収益構造の違いはお風呂を提供することで収益を生んでいるかというところにあります。すなわち入浴料収入は提供するサービスの基本的なコストをカバーできているかということです。都市部の公衆浴場の利用料は450円~490円。サウナ利用料は別途120円~300円。1日あたりの利用者が150人を下回ると経営が厳しくなると言われています。この公衆浴場の利用料金とスーパー銭湯の利用料は拮抗しており、風呂屋の妥当な利用価格についても一考が必要かもしれません。

 公衆浴場はほぼ利用料金だけの収入で施設を維持しています。もちろん公衆浴場は行政から上下水道の利用料などを助成されておりますが、基本的には毎日換水が指導されています。さて、スーパー銭湯は今回のように利用者数は2割減までこぎつけたものの、リラクゼーションや飲食の売上の激減で赤字経営に陥っていないでしょうか?

高額なテナント賃料はサービスの低下を招いていませんか?

 リラクゼーションテナントの賃料は売上の30%前後、セルフサービスの飲食提供テナントの賃料は売上の25〜28%前後。これらはコストの負担がないスーパー銭湯にとっては利益の源泉であります。一般的な商業施設の売上歩合賃料を見てもこれほど高率なケースは類を見ません。例えば路面展開している安売りリラクゼーションの店舗賃料はせいぜい売上の12〜15%です。営業時間が限定される居酒屋も同様に売上の10%というところです。

 ノンリスク・ハイリターンの構造も限界にきているようです。オーナー側は往々にしてテナントに対して売上の確保を厳しく追及しますが、その道のプロの知恵はテナント側にあります。従来のような一方的な命令関係では好転は難しいのではありませんか?

 ましてや、自社運営の飲食はよほどの経験値がない限り好転を望むのは難しいと悟るべきでしょう。

提供するサービスや設備が利用料と見合っていますか?

 1990年代のコンパクトなスーパー銭湯は2000年代に入りどんどん大型化しました。その上、都市部の滞在型温浴施設に遜色ない設備を付帯しましたが、利用料金はほぼ据え置かれました。その代表ともいえる岩盤浴は施設を拡充し今日に至っていますが、運営コストをまかなえる様な利用料を徴収できない状態が続いています。

 確かに在館時間が長くなりますので、館内消費を促すことにはなりますが、それを意識した施策を実施していますか?

 他にも、マイクロバスによる送迎や還元率の高いポイントサービスなども一考の余地があります。

様々な情報を収集・分析して自店に取り入れていますか?

 スーパー銭湯の運営は異業種からの参入が多く、風呂屋を生業にしている企業が少ないのが特徴です。施設・装置さえ用意すれば素人でも運営でき、さらに設計会社が用意した事業計画をバイブルにしているケースが多いのが実態です。多店舗を展開し試行錯誤を繰り返して今日に至っている事業者と違い、多くの店舗が情報不足です。その上、同業者の情報や意見交換する場面が少ないのも事実です。

 風呂屋は装置産業ではありません。むしろ究極のサービス業です。自宅に風呂の無い世帯が皆無であるのに、風呂に来る利用者の価値観を想像してみてください。

徹底したコスト管理をしていますか?

 経費の見えるかをどの程度推進していますか?・水道光熱費・換水頻度と浴室清掃費・設備管理費・フロント人件費・サウナマットの材質・レストランの提供方法など売上と費用の関係を徹底して調べてみてください。

効果測定できない集客手法を見直してみませんか?

 回数券の安売りやシニアデーをイベントと考えていませんか? 毎月のイベントカレンダーを埋めているこれらのサービスはむしろ利益獲得機会を損失しています。他に行くべきところのない常連客に対する過剰なサービスになってはいませんか? 同様に朝風呂も、通常営業以外の運営による売上増と運営コスト増は見合っていますか? 良く考えてみるべきでしょう。

協会では会員間での有効な情報提供ならびに助言を行っています

 ご興味のある方は下記サイトのお問い合わせフォームからご連絡ください。

▶︎ 温浴振興協会オフィシャルホームページ
https://www.onyoku-net.org/



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