2015年08月

視線でアート3のんちゃん編~
 (視線でアート1の続編です)

『 わが道を行く 』

のんちゃんの訪問大学の授業の中の一コマである。
前回の授業で「いろいろいろの絵本」(エルベ・テュレ)を読んだ。
サポートに入っているHさんがのんちゃんの手を介助し、
本に書かれている通りに手指を動かし、本の上での色の変化を
確認しながら、読み進めていった。

「時間があったら、実際に色を重ね合う実験をしてみてね」
と、夏休みの宿題のようなつもりで本を置いていった。
 
のんちゃんはページをめくるたびに真剣にそのページを
見つめていたので、宿題にした時点で、もしかしたら
何かが起きるかもしれない、そんな予感が少ししていた。

この宿題は、サポートグループのHさんやTさんが、
時間をかけて丁寧に、のんちゃんと取り組んでくれたそうだ。

イメージ 1
白い画用紙で、本と同じように黄色と青色を混ぜる体験。サインもしている。

イメージ 2
これが、実際の本のページである。「うひょー!」と右下に書かれている。

イメージ 3
宿題で、上の本のページと同じように実験をしてみた。


それから約1か月後の訪問大学の授業で、マイトビーを使って
センサリーアイFXの「色を塗る」というコンテンツに取り組む。
このコンテンツの画面になると、のんちゃんの目が
「待ってました!」と言わんばかりに輝いていた。

始めは、パレットから色を選択する気は全くなさそうだった。
その時、それがなぜだか、私にはわからず、
「パレットから色を選んだらどう?」
とアドバイスしたものの、のんちゃんは、わが道を行く、
という感じで、パレットの方は見向きもしなかった。

塗られる色がコントラストで見えやすくなるように
キャンパスを黒くし、パレットから白い色は外しているが、
色を選ばずに視線を動かすと、黒いキャンパスは白くなっていく。
視線の届かないところもあったが、黒い画面がどんどん白く
なっていった。


                                                                               執筆者:事務局A


視線でアート2もぜひご覧ください。

報告1~5はこちらをご覧ください



マジカルトイボックス第40回イベント参加報告6~最終回
「タッチスイッチ
-人とのつながりの中で知恵と技術を集結させる支援を考えるー
 
今回のマジカルトイボックスでは、「接触型スイッチ」だけれども、
力のいらない「触れる」だけでON・OFFできるスイッチも
気になっていた。
 
国分寺おもちゃ病院の角文喜院長は、キッズフェスタでの出会いを
きっかけに「貼る タッチスイッチ・丸」*を活用したスイッチを
試作して、STのブースで出展されていた。このスイッチは、
センサーを使うので電気仕掛けになるが、感度はとてもよい。

イメージ 1
*現在は改良版を4000円で提供しています(送料込み4500円になります)。
2016年3月18日追記
 
パナソニックのレッツ・チャットのデモで使われているのも
タッチスイッチである。ただ少し(2mm位)だけ「動かす」必要は
ある。商品名は「ホッペタッチスイッチ」(特器技研)である。
http://homepage3.nifty.com/tokuso/kobetu_katarogu/00141A00_hoppetouch_switchT.pdf
 
アームに使われている、「どっちもクリップ」(Yazawa)は
いろいろなところで大活躍している。

イメージ 2

イベントとは離れるが、島根大学の伊藤先生の「ポランの広場」
でも紹介されていた早川さんの動画は、生活の中にPCがなくては
ならないものとしてあり、タッチスイッチをはじめとして、
たくさんの手作りの支援機器が組み合わされて生かされているので
刺激を受けた。マジカルトイボックスの製作講座でも改造して
利用しているBluetooth接続のリモコンも活用されている。
 
早川さんの動画を見ながら、おおきなきの原点と言える
阿部恭嗣さんが、仙台の仲間たちのつながりの中で、
ベッドの上でクチマウス*を使いこなし自由に発信できるように
なったことを思い出していた。
ただ、そこに至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。
 
目の前の障がいのある方に合った支援機器を見つけるまでの過程と、
支援機器が見つかり、それを使いこなせるような環境を整備する
過程には、何人かの知恵と技術を集結させる必要があり、
人のつながりが大きな威力を発揮する。

イメージ 3

阿部恭嗣さんの遺稿集「七転び八起き寝たきりいのちの証し
―クチマウスで綴る筋ジス・自立生活20年」(新教出版社)を
中心になり編集した竹之内裕文さんは、
編集委員のメールのやり取りの中で、こう述べていた。
 
「阿部さんがクチマウスを使うようになったのは、田代くんと私が
一緒に仕事をしている在宅緩和ケアスタッフの助言によります。
 
西多賀病院に入院したばかりの阿部さんを訪ねたとき、
暗然たる思いに襲われました。
あれだけ主体的に自立生活を送ってきた阿部さんが、
なにもできずベッドの上に横たわっているのです。
堪えられず涙ぐむ僕に対して、
『竹之内くん、僕はこれからだと思っているんだよ』
と諭される始末でした。
 
自分の限られた知・技では、現状を打開する方途がつかめず、
仕事仲間の二人に来院してもらいました。
ソーシャルワーカーのNさんがクチマウスを発案し、
岡部医師が背中を押しました。
『どんな状況になっても、コンピュータを通して世界とつながっていられる』と。
今でも二人を尊敬している所以です。
 
相澤さんも指摘される通り、クチマウスとともに送った最後の病院生活は、
阿部さんの生涯の中でも凝縮されたひと時、強い輝きを放った時
だったと思います。」

クチマウスは阿部恭嗣さんの体の一部となり、彼は亡くなる1日前まで
「私は書かずにはいられない」という思いで、ベッドの上から毎日、

イメージ 4

執筆者:事務局A
 

報告1~4はこちらをご覧ください



マジカルトイボックス第40回イベント参加報告5
「マイトビー(視線入力型意思伝達装置)

山ねこ工作室のブログでも、先日、イベント報告がありました。
その中で、「おおきなき交流広場」のことも紹介してくださり、
うれしかったたですし、山ねこさんとマジカルトイボックスで
出会えたことに感謝しました。



おおきなきでは、OAK(オーク)というキネクト(センサー)
使った入力方法や、マイトビーという視線入力型意思伝達装置を
使って、お子さんの世界を広げていけないかという試みをしている。


このような体に触れる必要がなく、一切の力を必要としない
スイッチを、「非接触型スイッチ」というくくりで、
私は捉えている。もちろん、視線もそうだが、身体の一部が
かすかでもいいので「動く」ことは必要である。


お子さんに出会い「非接触型スイッチ」を使うに至るまでには、
いくつかの「接触型スイッチ」の使用を検討してみている。
身体のどこの部位でもいいから意識的に動かせる場所を探し、
わずかの力でもいいからON・OFFできるお子さんに合う
スイッチを試した上で、「非接触型スイッチ」のほうがいい
という判断をしている。


入力方法の選択の過程では、障がいの重いお子さんの場合、
お子さんがやってみたいことを「より楽に」体に負担が
かからないでできるということは、とても重要なことだと
思っている。好きなことをやるにしても、時間がかかり
疲れがたまっていく方法だと、健康状態に影響が出たり
意欲を低下させたりすることにつながってしまうからである。


「接触型スイッチ」でも、少しの時間なら大丈夫とか、
待つことでスイッチを押せる場合もあるということを生かす
ということもあるが、「生活を豊かにする」ためには
「より自由に使える」ことが大事になってくる。


マジカルトイボックスのイベントでは、毎年、マイトビーが
展示されていたけれども、高価なため現実的には使えないという
判断をし、私は、遠くから眺めるだけだった。数年前までの私は
そうだった。
そのマイトビーを使えるようになったことは、夢の中のできごと
のような気がする。
でも、これを使って一人でも二人でもお子さんが目を輝かせ
自分の世界を広げることができたとしたら、そして、
特に障がいが進行していくようなことがあるならば、
できるだけ早く、選択肢のひとつとして考えられる環境を
整えたいと思うようになっていった。


イメージ 1
マイトビーC15Eye (株)クレアクトのHPより



参加報告6へつづく

執筆者:事務局A



マイトビーの実践報告はこちらをご覧ください



☆ 訪問大学『おおきなき』のひととき ☆
Wさんの前回の授業はこちらです。
    
Wさん
症例数の少ない難病性疾患で、
24時間人工呼吸器を使用しています。
表情が豊かで笑顔ときりっとした顔つきが素敵なWさんです。



~講師のある日の記録より~

『盆踊り2』 担当講師:S

昨日は1日寝ていることが多く、今日も午前中は寝ていた
そうだが、授業の前になるとパチっと目覚めたとのこと。
「よくわかってるんだなー、と思いました!」
と母が言っていた。
 
部屋に入って挨拶をすると、ニコニコ笑って出迎えてくれ、
うれしくなってしまった。
「今日もよろしく」と挨拶して授業スタート。
今日も校歌を聴いてニヤッと笑う。
校歌の2番の歌詞のワードを一緒に相談すると、母が
「Wくんが笑うとみんなが喜んでくれるから、“わらおう”
がいいんじゃない!?」と提案。
サビの「うたおう かたろう♪」のところにもはまるよね!」
ということになり、Wさんの提案する歌詞は
『わらおう』に決定!
 
ユニット活動は、前回の約束通り、今回もドンパン節の盆踊りを。
「ドンパン節だよー」というだけでニヤニヤと笑うWさん、
覚えていて、楽しみにしていてくれたのかな?と思った。
前回同様、豆絞りのはちまきをすると必死に上を見よう
とするので、写真にとって自分のはちまき姿を見せてあげると
「おお!」という感じでよく見ていた。

イメージ 1
必死にはちまきを見ようとしているところ

イメージ 2
ドンパン節を踊って笑っているWさん

前回は手を動かされることにとまどっていたようだったので、
今回は、これは盆踊りであってリハビリではないことを
丁寧に説明し、まずはゆっくり振り付けを確認しながら
一緒にうちわを持って手を動かした。
話を本当によく聞いていて、理解しようとしている様子が
表情から感じられた。
練習の後に音楽に合わせて一緒に踊ると、前回のような
不安そうな表情ではなく得意げな表情のWさんだった。
最後に母と私でノリノリで踊ると、
“もう、なにやってんの…”
という感じで口角を上げて苦笑いしていて、年頃の男の子、
という感じだった。
(お祭りがあるので、最近甚兵衛を買ったそうです。
今日着ればよかったー、とお母さんが言っていました。)
 
夏、ということで、以前一度読んだおばけの絵本
「とうふこぞう」を一緒に読んだ。
ドキドキするような怖い場面では目をキョロキョロ
させて不安そうな表情をし、とうふこぞうの顔が
ヘンテコになる場面ではおかしそうに笑うなど、
ちゃんと絵本の内容に合わせて表情が変わっていく
Wさんの様子にびっくりした。
こんなにも絵本が楽しめるのだと改めて感じた。
 
前回に引き続き野菜をテーマにした学習。
どこまで理解できるかどうかはわからないが、大学生として
いろんな知識も伝えたい、学習を通していろんな働きかけを
したいと思い、この学習を取り入れた。
 
「ベジタブルワールド」のパネルシアターで、ひとつずつ野菜の
名前を説明していくと、絵を見ながらよく聞いている。
それぞれの野菜について、母がその野菜とWさんのエピソードを
話してくれる。Wさんはそれをじっと聞いていた。
(昔ほうれんそうのおひたしを食べさせていたら、
「食べてるんじゃなくてこれは飲んでるんだ」とおこられたこと、
大根やニンジンはピーラーでスライスして鍋にしていること、
ポテトが好きだったことなど…)

次に本物の野菜を触って野菜を知る学習。
今回はナスとブロッコリーを持っていった。
ナスをキュッと握って感触を確かめたり、ブロッコリーの
ゴツゴツを触りながら話をすると、とても真剣に聞いていた。

野菜の断面図がきれいに描かれた絵本。これもまた、真剣な顔で
よく見ていた。話も本当によく聞いている。
ナスの断面を実際に見てみよう、ということで、ナイフで一緒に
ナスを切ってみる。Wさんも自分で指先を少し動かしてやる気。
切ったナスを見て
「外側は紫だけど中は白いね。少し模様があるね。」
などと話をすると“ほんとだ”というような表情でナスを見ていた。

手を使う活動を今後も取り入れていきたいと思い、絵本の次は
野菜の絵にちぎった折り紙を貼っていくちぎり絵にチャレンジ。
両手を使って一緒に折り紙をちぎっていったが、単純作業の
ためか、一瞬眠りそうに…。
励まされて、なんとか折り紙1枚をちぎったところで今日は終了。
 
講師メモ:
体調はよく、吸引もほとんどなし。最初から最後までしっかり
起きていた。笑顔が多い。
野菜の学習が始まると急に口をもぐもぐし始め、ずーっと
もぐもぐしていたり、唾をごっくんと飲んだりしていた。
それが野菜の学習の間だけだったので、母と
「野菜をイメージしたので、口がもぐもぐ動いていたのかな?」
と話した。
普段もぐもぐするのは吸引の後ぐらいなので、もしかしたら
そうかも、という話になった。
ちゃんと学習内容を受け止めてくれていて、それが表現として
表れているのだとしたらすごいね、と母と感激し、
Wさんの理解力の高さや可能性を感じた今日の授業だった。
また、Wさんの「いろんなことを知りたい、やってみたい」
という学習意欲をとても感じた。回を重ねるごとに表情や
反応が良くなってきているので、これからがとても楽しみである。
 


☆☆☆    ☆☆☆    ☆☆☆
 
訪問大学『おおきなき』とは・・・
障がいや病気のために、通所施設などに毎日通うのが
難しい方のご自宅を講師が訪問して、生涯学習を支援します。
自分の思いが伝わる喜びを感じながら、
自分に合った方法で学ぶ機会を持ち続けてほしいと
思っています。
そして、
自己実現に向かって進みながら、社会とのつながりを
深めていってほしいと願っています。
詳しくはおおきなきHPの訪問大学のページをご覧ください。

☆ 訪問大学『おおきなき』のひととき ☆
Wさんの前回の授業はこちらです。
    
Wさん
症例数の少ない難病性疾患で、
24時間人工呼吸器を使用しています。
表情が豊かで笑顔ときりっとした顔つきが素敵なWさんです。



~講師のある日の記録より~

『盆踊り1』 担当講師:S

キーボードの伴奏で、校歌を一緒に歌う。
この校歌を聴くと訪問大学のこの授業だ、というのが
わかってきてくれたのか、校歌を聴くとニヤッと笑っていた。
「校歌の歌詞をそろそろ一緒に考えようね」と話をした。
 
今回のユニット活動は
“夏”ということで、一緒にドンパン節を踊ることに。
「お祭りには行ったことがない」ということだったので、
Wさんにお祭りの話をして、頭に豆絞りのはちまきを
結んであげた。Wさんはすごく興味津々で、
“頭に何か巻かれた!”
という感じで必死に目を上にあげて、はちまきを見ようと
していた。
その姿があまりにもかわいらしくて母とも盛り上がり、
ウキウキした気分での盆踊りへの導入となった。
 
「ドンパン節」を最初に私が小さなうちわを持って
踊って見せると、気に入ったようで何度も笑いながら
よく見ていた。
次にWさんと私が一緒にうちわを持って、
手を動かしながら踊るとさっきの笑顔が消え急に真顔に…。
その後も、こちらが踊っているのを見ている時は
ニコニコだが、手をとって一緒に踊ると表情が固く
なってしまう。
母は、
「昨日もリハビリがあったから、もしかしたら
腕を持って動かされるとリハビリが始まるのかと思って
しまうのかもしれない」
と言っていた。
なるほど、と思い、Wさんなりにその時その時で状況を
把握しながら活動に取り組んでいるのだな、
と改めて感じたひとコマだった。
曲自体はとても気に入っていたので、「8月もやろうね」と
言ってはちまきを取り終了。
 
読み聞かせは、今回も、Wさんの隣に座ってWさんと
手をつなぎながら、「まるまるまるのほん」の絵本の
内容に合わせてまるをクリックしたりなでたりしながら
読んでいった。
4回目なので話の流れを覚えてきたのか、いつも笑顔に
なる場面(お互いの手を合わせ、一緒に手をパチパチ
叩いてまるを大きくする場面)の前になると、
すでに期待してニヤニヤと笑っていた。
 
絵本作りは3回目。
「今日で完成させようね」と話をして活動に取り組む。
今回も、色によって指を変えながら、指先に水をつけたり
固形絵の具の感触を味わいながらくるくると指の腹を
回したりしながらまるを描いていった。
表情に大きな変化はなかったが、指を使って描いているうちに、
こわばって固まっていた指がどんどんまっすぐ伸びてきた。
母が「使っているとちゃんと指が伸びてくるんです。だから
使った方がいいんですよね。」と言っていた。
リハビリでは最近は無理をしないということで、
あまりそういう活動がないんです、とも言っていた。
ベッドで寝ている時に左手が手前にあるので、
左手に働きかけることが多いため、右手の方が固まりやすい
とのこと。内容に応じて右手を使う活動を取り入れていくのも
いいかもしれないと思った。
 
Wさんは毎日ペースト食を注入しており、たくさんの
野菜を食べているということだったので、自分の食べて
いる野菜について学習することに。
最初にたくさんの野菜が出てくる「ベジタブルワールド」
というパネルシアターを見る。
「さやえんどう以外は、全部食べてる野菜だよねー♪」
と母からのコメント。(さやえんどうは筋があるから…。)
次に、夏の野菜ということで、トマトときゅうりの実物を、
見たり触ったりにおいをかいだりした。
「トマト」「きゅうり」という2つの名前を伝え、
「どちらがトマトでしょう?」のクイズをすると、
目をつぶって拒否。
ずっと答えずにいるのでこちらが正解を言うと
目を開ける(意図的!?)。
2~3回質問したが、答えようという気持ちはなかった。
 
講師メモ:
今回は、笑顔も多く見られ、他にもいろいろな表情で
Wさんの意思を読み取ることができた。



☆☆☆    ☆☆☆    ☆☆☆
 
訪問大学『おおきなき』とは・・・
障がいや病気のために、通所施設などに毎日通うのが
難しい方のご自宅を講師が訪問して、生涯学習を支援します。
自分の思いが伝わる喜びを感じながら、
自分に合った方法で学ぶ機会を持ち続けてほしいと
思っています。
そして、
自己実現に向かって進みながら、社会とのつながりを
深めていってほしいと願っています。
詳しくはおおきなきHPの訪問大学のページをご覧ください。

↑このページのトップヘ