2015年11月

☆ 訪問大学『おおきなき』のひととき ☆
    ありささんの前回の授業はこちらす。

ありささん
脳性まひで、ベッド上で生活しています。
比較的、意識的に動かせる右肘より先を使って
授業に励んでいるジャニーズ大好きなありささんです。

~講師のある日の記録より~ 10月の授業にて

久しぶりの訪問大学。
家族でディズニーランドに行った話などをしながら、準備体操。


「もうすぐハロウィンだね」と本物のかぼちゃをありささんに見せる。
「今日は、かぼちゃをつくろうと思います。
でもね、使うのは平面の紙の太いリボンだけ。
さて、どうやったら平らな紙がこのかぼちゃみたいに
丸くなるかな?」


幅10センチくらいのオレンジ色の画用紙をぺらぺらと見せながら、
今日の内容を説明。ありささんは口をとがらせて聞いている。
「わかるかな?」の質問には、明確に「いいえ!」
なんて素直な学生なんだ!と、大笑い。


「では、大きさを決めましょう。大きなかぼちゃにする?
小さなかぼちゃにする?」


ありささんはいたずらそうな表情になり、設問方法を変えても、
「大・小どちらも作りたい!」
と主張する。
「えー、どちらかひとつにしてくださいよ。お願いしますよ」
の私のリアクションを楽しんでいる。


交渉の末、大きなかぼちゃに決定。
そこで、オレンジ色の画用紙リボンの端をつなぎ合わせ、
さらに長いリボンにする。
両面テープをはり、剥離紙をはがすのを勧めると、
親指と人差し指でぎゅっとつまんで上手に
はがしてくれる。


長さ60センチくらいになった画用紙のリボンを、
目の目でゆらゆらと動かすと大きな口をあけて笑う。
「さて、ここからが勉強ですよ」


見本のかぼちゃとオレンジの画用紙を何度か交互に見せて、
画用紙の先端と先端を合わせるように動かしながら
直線の画用紙が弧を描くことを意識させる。
「ここをくっつけてみようか」
先端同士をホッチキスでとめると、大きな輪になる。
その輪をつまんで上下に揺らしたりして遊んでから、
「もう1枚つけてみようか」
と、その輪と垂直の位置にもう1枚を張り付け立体にしていく。
両面テープを張り、剥離紙をはがし、位置を決めたらぎゅっと
押さえてくっつける…の工程を踏まえて、何度か繰り返し、
大きなかぼちゃを作成。
手のひらに載せると、ふわふわとした弾力。
それに黒いシールを貼って、顔にする。
ありささんの作ったかぼちゃの顔、ちょっと怖い。

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かぼちゃを紐でつるし、左手で紐のもう片方のはじを持つと、
力を加減してかぼちゃを上下に動かしている。


「かぼちゃの中に光るものをいれて、誰かを驚かそうよ。
部屋を真っ暗にしておいて、玄関から入ってくる人を驚かそうよ」
と、話が盛り上がる。
その話の中でも、急にかぼちゃを落として私を驚かしては、
いたずらそうに笑うありささん。


「そうだ。今度S先生が来るでしょ。S先生を驚かそうよ」
の私の提案には「いいえ!」と拒否をするありささん。
「えー、やろうよ。S先生、キャーっていうかな。
私、S先生に黙っているよ。やろうよ」
でも、ありささんは 「いいえ!」。
お母さんが 「S先生は先生だから?」 に、 「はい!」


そう言いながら私の頭にかぼちゃを落とすありささんは、
どうも私を先生と思っていないのかな?
笑いすぎて、笑いすぎて。


次回は、A先生と日程を合わせて訪問し、パソコン操作の学習へ。


☆☆☆    ☆☆☆    ☆☆☆
 
訪問大学『おおきなき』とは・・・
 
障がいや病気のために、通所施設などに毎日通うのが難しい方のご自宅を
講師が訪問して、生涯学習を支援します。
自分の思いが伝わる喜びを感じながら、
自分に合った方法で学ぶ機会を持ち続けてほしいと思っています。そして、
自己実現に向かって進みながら、社会とのつながりを深めていってほしいと
願っています。 詳しくはおおきなきHPの訪問大学のページをご覧ください。

118日(日)訪問カレッジ@希林館文化フェスタ参加報告


(その2)
<本の製作や作曲まで、いろいろな可能性を垣間見る>
 
<学習支援員さんの実践報告>
 卒業後も学ぶ意欲にあふれる方の様子が具体的な教材や映像を
通して語られ、私たちのおおきなきの学生さんの姿も重なって、
学ぶ機会の提供の重要性を再認識しました。
 
<学生さん自らの発表>
 私が15年ほど前都立村山特別支援学校に勤務していた時、
一つ上の学年にいたお子さんが登場し、当時の担任の先生と
マイクを手に歌う姿はまぶしかったです。
 
 この日に合わせて本を発表され、身体は不自由でも、
スイッチ一つで表現することを「生きる喜び」にまで昇華させている
山本さんの姿は、とても輝いていました。
ぴったり合うスイッチがつかるまで10か月近くかかった
という話もありましたが、よりよい手段・方法を見つけるために
労を惜しまないことの大切さを、私は感じていました。

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 気管切開により声を失った時は「死にたい」とも、もらしていた
山本さんを再び生きようと決心させたのは、「レッツチャット」や
「伝の心」等の支援機器で自分の想いを表現することが
できるようになったからだそうです。
 
 おでこに貼ったピエゾスイッチとPCでオペレートナビを使って
作曲する学生さんが作った曲の発表もありました。
その様子の報告は下川先生のFBでも見ることができます。
文章を綴ることだけでなく、支援機器の組み合わせによって、
額の微細な動きだけでも作曲も可能だということです。
*オペレートナビについては
*ピエゾニューマティックセンサスイッチ
 
 
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 学生さんの生き生きとした活躍を目の当たりにして、私たちは
元気をもらいました。
そして、訪問大学「おおきなき」の学生さんとこれからも
共に歩んでいくことがますます楽しみになって、帰ってきました。  
                (相澤)        

                 

118日(日)訪問カレッジ@希林館文化フェスタ参加報告

(その1)「めざすは多様な人間を包み込む社会づくり」

  障がいの重い方の学校卒業後の生涯学習の支援の先駆けは、
東京都多摩地区を中心に活動する特定非営利活動法人 
地域ケアさぽーと研究所(飯野順子理事長)*1 2012年に
開始した訪問カレッジ@希林館です。
 
  118日に東京都東久留米市の成美教育文化会館で、この
訪問カレッジで学ぶ学生さんを中心とした文化的な発表の
イベントが行われました。おおきなきからはアドバイザーの
石川先生、事務局3名、訪問大学講師1名が参加してきました。
 
 地域ケアさぽーと研究所は、おおきなきが看板を掲げる前にも、
アドバイスを頂くために訪問させて頂いています。理事長の飯野
先生にはいつも励ましていただき、理事の下川先生には、小さな
体であるおおきなきでも力を発揮できる場や、似たような想い
動している人とつながる機会を提供していただいています。

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 おおきなきでも、今の訪問大学の学生が卒業を迎える前に、
的なイベントを行いたいという思いがあり、参考にさせて頂き
かったことも大きな参加理由ですが、記念講演や学生さんの研
究発表と訪問カレッジの学生さんも実際に来られて発表されると
いうことで、盛りだくさんの内容を楽しみにしていました。
 

<学芸大学 加瀬進先生の記念講演、大学院生 杉原さんの研究発表>

 初めて加瀬先生の話をお聞きしましたが、多くの示唆に富んだ
講演で、語りに引きこまれていき、あっというまの45分間でした。
横浜市の「訪問の家 朋」の日浦美智江先生の「朋はみんなの
春ステージ-重症心身障害の人たちの地域生活を創る-」
(ぶどう社)を手に登壇され、日浦美智江先生から贈られた「同じ道を
共に歩きたい」というメッセージを大事にされている先生が
「共に生きる」「共に学ぶ」ことを語られた言葉には含蓄があり、
私の心に沁み込んできました。まだ読んだことのなかった
日浦先生の著書を購入し、その次の日から読み始めました。
 
 「むそうの笑顔」の話が最も印象に残りました。「社会福祉法人
むそう」が目指しているのは、障がいのある本人が「自分らしい
暮らしを、暮らしたい地域で継続できること」です。*2
「Aさんは毎日、うちの事業所に通ってきてくれて、笑顔と元気を
配ってくれる。僕はAさんから元気をもらい、若手に元気を配り直し、
事業所が増えていっている」という話から、今まで私自身が、多くの
障がいの重いお子さんから元気をもらってきたことを思い出して
いました。 
 
 私は、発達心理学者の浜田寿美男先生の話も同時に思い出して
いました。*3 大阪で重度の障がいのある方を高校の講師として
迎えた話でしたが、にっこり笑うだけで、かかわりあう学生が喜んで
いるという関係で、そのことに意味を見出しているという話でした。
 
 加瀬先生は、「目指すところは多様な人間を包み込む社会づくりです!
と締めくくられましたが、おおきなきも微力ながら同じ使命を意識して
いきたいと再確認できました。

*2 http://musou.or.jp/参照
*3 第39回淑徳大学発達理臨床研修セミナー(2014年)

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右が加瀬先生、左が杉原さん

 続いて、大学院生の杉原彩乃さんの「日中活動支援ニーズに
関する調査研究報告」の発表がありましたが、障がいの重い方が
身近にいらして、学校卒業後、豊かな時間に触れることが少ない
という問題意識から出発した研究は、当事者の声をしっかり拾い、
丁寧に分析されていました。当事者の声に着目した研究がきわめて
乏しい中で、訪問カレッジの学生さんをはじめとした聞き取り調査
や観察を丁寧に行い、説得力のある内容になっています。そして、
全国療養介護事業所の調査と対比することで課題を浮き彫りにして
います。
 
 障がいの重い方にも多様な選択肢が用意できるように環境を整え
ていくことの重要性が課題として提起されました。障がいの重い方
に寄り添っていこうとする優しい気持ちがにじみ出ている素晴らし
発表でした。

                        執筆者:事務局A

 トックンのアート館67 

『  のれん  

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                                                                                              絵:トックン

トックンのイラストが絵はがきになりました
ご注文方法はこちらになります

♪ トックン ♪
べッドの上で、左手でトラックボール(☆)
右手でスイッチを使い、描いています。
Windowsのアクセサリの中の「ペイント」
というソフトを使っています。
インターネットで見つけた素材を参考にしたり、
オリジナルキャラクターを考え出したりしながら、
時間をかけて一つの作品を仕上げていきます。

パソコンのマウスの役割のものが土台に乗った球状になっており、
その土台の上で球を転がすと、その方向にカーソルが
動くようになっています。

こどものための福祉機器展(11月14日)in立川、参加報告
(主催:車椅子シーティング介護研究会、事務局:でく工房) <その3>

                 <その1> <その2> はこちらをご覧ください

<はじめてのスイッチ体験>
立川の福祉機器展では、キーボードを演奏してみたいと
3歳のお子さんも目の前にやってきていた。
3歳なら童謡が入っている玩具の光ナビゲ―ションキーボードでも
十分なのではないか、という考えが頭をかすめていた。
 
でも、本格的な光ナビゲーションキーボードには、子どもも
楽しめる童謡も入っている。つまり、大は小を兼ねている
音楽を楽しむという点では自動伴奏も付けられるし、音質もよく
音量があり、たとえ1スイッチでも最高レベルの演奏も
可能になる機械なのである。
それに、障がいのない幼児でも習い事で3,4歳からピアノ
教室に通い始めているお子さんが多数いる。
障がいのある3歳のお子さんが、キーボードの演奏を
練習しても全然おかしくない。
 
そう考えていくと、この3歳のお子さんが、生活の中で
このキーボードを使って遊べる環境を整えてあげることは
間違ってはいないと確信を持てた。
 
スイッチ経験も、障がいのないお子さんがいろいろな玩具を
自分の手に持って遊び始め、因果関係を理解し始める9ヶ月
ごろには、たくさんできるような環境を作ってあげたい。
肢体不自由の場合だと、どうしても身体の取り組みが中心で、
しかも医療的ケアのあるお子さんだと必要なケアに追われ、
生活することだけで精一杯の状況になってしまっているかもしれない。
でも、スイッチについても早すぎるということはない。
今回の機器展では1歳半のお子さんもスイッチに挑戦してみている。
 
歳のお子さんは、手はギュッと握りこんでいたので、そこに
私の指を入れてみた。「力入れてみて」と伝えると、時々、かすかに
力が入るのを感じることができた。
初めに印鑑ケースイッチ(マジカルトイボックス考案)を握って
みたが、すぐ離してしまう。お母さんから過敏があると教えて
もらったので、スイッチの材質を変えてみる。握るところが
スポンジのスイッチ(工房たーちゃんのおうちのスイッチ)を
握ってみる。
初めは握れなかったが徐々に馴染んできたようで、手を
開かなくなってくる。かなり作動圧の小さいスイッチを使っているので
偶然ONになってしまうこともあるが、かすかな動きでONになる
こともあった。
(*逆に、はじめにスポンジ製の握るスイッチを使っていて、結局、
印鑑ケーススイッチのほうが使い勝手がよく、そちらに落ち着いた
お子さんも知っています。)
 
徐々に力の入る回数が増えてきて、少しだけだけれど音が
つながるようになってきた。
ひとつながりの演奏にしていくには、これからが大変かも
しれない。でも、ONになりさえすれば、電子キーボードは
きれいな音を出してくれる。
 
一番大事なのはスイッチを使えたことではない。
スイッチは道具に過ぎないから…スイッチを使って、お子さんは
音を出すのを楽しめたかどうか。
マスクをしていたので表情はわからなかったが、しばらくして
マスクを取った顔を見ることができた。
満面の笑顔だった…
私は、ジーンと胸を熱くした。
 


参考 ― にぎるスイッチ ―

<パシフィックサプライ(株)のグラスプスイッチ>
イメージ 1

 
<マジカルトイボックス考案の「握り(印鑑ケース)スイッチ>
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金森克浩編著
「改訂版 障がいのある子の力を生かすスイッチ製作とおもちゃの入門」
明治図書 参照
 
<工房たーちゃんのおうちの「にぎるスイッチ」>
イメージ 3


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