2018年07月

 
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 *2013年8月のトックン

トックンとお別れして3か月、トックンからメールが届かなくなってから、
4か月以上になります。最後のメールは、

「おはようございます、トックンです。3月の絵ができました。
作品名は『ひなまつり2018』です。」(2018.3.3)でした。

トックンは、1か月に1作品、季節の行事にちなんだ作品を
描くことを自分に課していたようです。
でも、トックンも恋に悩むときもあり、支援者の言葉に傷つくこ
ともあり、

「やる気がでません。今月の絵はなしです。許してちょんまげ」

というようなメールを送ってきたときもあります。

私は、ずっと続いていた習慣で、今でも、メールボックスの中に
トックンのメールが何かの間違いで混じっていないか探して
しまうときがあります。それほど、私にとってトックンの天国への
旅立ちは突然で信じられないことでした。
「いつか」を予期していなかったわけではないのですが、進歩し
た人工呼吸器の威力で、トックンはまだまだ長生きできるのでは
ないかと信じて疑わなかったからです。
お母さんからの話では、心臓にかなり負担が来ていたようです。
 
トックンが絵を描けるようになったのは、病院のOT(作業
療法士)さんのおかげです。
OTさんが考えて、トックンに合う最適な道具を作ってくれた
のです。改造したトラックボールマウスは最後まで使い、
2連のピルケースの左右にマイクロスイッチを入れた
スイッチでマウスの左クリック、右クリックをしていましたが、
このスイッチは、途中で合わなくなり、作り替えてもらって
います。
この細やかな心遣いが、トックンの作品作りに
大きく影響していたはずです。このスイッチはトックンの
身体の一部になっていたのです。この2つのスイッチと、
Windowsのアクセサリーのペイントというソフトを使い、
すべての絵を描きました。

ただ、昨年、訪問したときに、トックンの左手の納得いく位置に
トラックボールマウスを合わせようとしたのですが、トックンが
なかなかしっくりいかないことがありました。
その時、もしかしたら障がいの進行により、複雑な絵を描くのは難しく
なったのではないかと想像しました。

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<改造したトラックボールマウス>
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<OTさん自作のスイッチ>

また、最初は、パソコンはテレビと一体型のデスクトップを
使っていたので、ベッドの横のサイドボードにずっと開いた状態で
操作ができていました。テレビを見たいときには、スイッチを
テレビのリモコンにつないでもらい、絵を描きたいときにはトラック
ボールマウスにスイッチをつなぐだけで、テレビとパソコンの使い
分けができていたのです。

しかし、ある時に、テレビ一体型パソコンが壊れてしまい、
何らかの事情があり、テレビとパソコンが別の物になってしまう
事態になっていたそうです。
後で分かったのですが、テレビは新しい物に替えることができた
のですが、パソコンの買い替えはくなり、しばらく絵を描けなか
ったのです。
そして、メールのやりとりもできなくなっていました。こちらからの
メールも読めているのかどうかわからず、最も心配した時期です。
事情が分からなかったので、体調が悪いのではないかと、
考えてしまっていました。

訪問して、やっと私たちは事態を飲み込むことができました。
パソコンがなかったのです。
その後、ノートパソコンが届き、メール設定をして、ベッドから
小さい字も大きくして読めるようにアクセサリーの拡大鏡を
常時使えるようにして、再びトックンは絵を送ってくれるように
なりました。
(テレビとノートパソコンの入れ替えをその都度頼むのは
大変だったと思います。)

長いトンネルを抜け出て、トックンから絵が届き始めたとき
の喜びはひとしおでした。

さて、夏真っ盛りです。毎年送られてきていた「七夕」の絵から1枚。
そして、夏の訪れを知らせる花「朝顔」、代表作の「砂浜」をお送り
します。
天国のトックンに話しかけていただければ幸いです。

                               (8月13日につづく)

<お知らせ>
・しばらくの間、トックンを偲ぶ記事を月命日の13日に掲載します。
・なお、絵はがきは、値段を80円から50円に変更して、今後も販売を
続けていきます。
お母様からもご承諾いただき、引き続き、トックンのアート館に掲載
しているイラストを絵はがきにして販売いたします。
今まではトックンに売上の一部を渡せるように80円に設定して
おりましたが、今後は、材料・印刷代のみにして一枚50円でお分け
いたします。
詳細につきましては、下記をクリックしてください。


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『七夕祭り』 Tokkun's Art Museum<94>


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『朝顔』 Tokkun's Art Museum<2>


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『砂浜』 Tokkun's Art Museum<1>





俳句作りに挑戦し始めた秀実さん
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 今年度の入学生の秀実さんは、夏井いつきさんの俳句の本を
テキストにして、基礎を学びながら、実際に、俳句を作ってみて
います。といっても、思いついたものをメモするのは頭の中な
ので、記憶力と道具を使わない思考力がカギになっています。

 家では、ほとんどの時間をベッドの上で過ごしていますが、
様々な思いが頭の中をかけめぐっています。

 ショートステイ中に作った絵葉書には、自分の気持ちを
  「今の気持ちは栗のとげ(イガ)」
と表現していました。
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 川柳集を自主出版されたので、創作には慣れているのですが、
俳句にはルールがあるので、「生みの苦しみ」を味わっています。
頭の中で練られた五七五は、月2回、講師が来た時に文字盤
で聞き取っています。

 少し季節的に遅くなってしまいましたが、6月に作った作品です。
 <第1作>です。

更衣(ころもがえ)若づくりやめありのまま
               *自分のことを詠んだそうです。

 <第2作>は難産でした。
 「友の死に苦しみも噛め涙雨」
と作られたのですが、涙雨が季語でないのと、「苦しみも噛め」という
オリジナル表現が読む人に分かりにくいかもしれないということで、
 秀実さん、授業2回に渡って考えに考えました。

*同じ学校の卒業生で、同じ施設に通った友人が、この春、天国に
旅立ちました。
 その時の気持ちを詠みました。以下が、完成した作品です。

散る桜唇を噛み友想う

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https://floweryseason.com/sakura/
(「季語とこよみ」より転載)


りょうくんの思いが右手の親指の小さな動きから伝わってくる
        -アーム付きタッチブルスイッチとiPadで遊ぶー

りょうくんは、アーム付きのタッチブルスイッチを利用しています。
りょうくんは寝た状態でスイッチを操作します。視覚障害もあり
発声はなく、りょうくんの意思は主に右手の親指の動きで読み
取っています。

始めは、振動のフィードバックを入れていましたが、振動は
あまり好きではないとお母さんが判断し、今は振動フィード
バックは切ったまま使っています。
このスイッチは、はじめ親指のてのひら側に設置していました。
りょうくんの親指は手の甲側に動くのですが、爪の側だとタッチ
センサーも働かないことから、手のひら側に設置しました。
センサー部を少しでも親指から離してしまうと、親指を動かした
ときにセンサー部に届かないので、ニュートラルの状態がセン
サー部に触れた状態になっていました。

改造したオタマトーンメロディ
を演奏する場合、スイッチの電源
を入れると同時にONになり、親指を動かすとOFFになっていた
わけです。続けて親指を動かしているときは演奏になっている
ので深く考えませんでした。

はじめ大きく動いていたりょうくんの親指は、徐々に小さい動き
でもONになることがわかったのか、徐々に小さな動きに変わって
いきました。これは、労力を減らし楽にスイッチ操作できることで
いいことと考えました。

でも、本人の意思で親指を動かしたときがOFFになるという反対の
動きをしていて、ニュートラルの状態が9~10秒ONになりっぱなしに
なり、意思に関係なく切れるという動きをしていたわけです。
「これだとスイッチを使う意欲がなくなってしまうのでは?」
と、お母さんから相談がありました。
 
<Before>

とにかくスイッチが使えたことで喜んでしまっていましたが、
お母さんからの問い合わせで、私はやっと気づくのです。
親指の甲側、爪側でスイッチを操作する方法について相談
しました。スマホ用手袋を切って使う、iPadタッチャーのジェルの
部分を爪につけて使う…お母さんがいろいろ購入して試されま
した。本人が指に何かがつくと異物感があり、抵抗を感じてしま
い、指を動かさなくなるという心配がありました。

私が訪問させていただいた時に一緒にいろいろ試してみましたが、
この商品なら大丈夫そうだというものがありました。お母さんが見つ
けられたYUBISAKI指タッチペンです。
りょうくんの細い指にぴったりはまり、異物感もなくなったようです。

以前はいくつかの玩具で遊んでいましたが、今はiPadのアプリが
いい玩具になっています。聴覚で楽しめるアプリをいろいろ試して
います。

<After>

iPad+タッチャーをスイッチにつなぎ、設定の一般を開き、アクセシビリティ
のAssistiveTouchで工夫することをお母さんも覚えられて、りょうくんの
親指の反応を見ながら試しているので、主体的な遊びになってきてい
ます。
今、使用しているアプリは、「Magic Zither」や「Cause and Effect」、「Pocket 
Ponds」、タッチ!あそべビー」等です。

6歳になったばかりのりょうくん。そろそろコミュニケーションアプリで心の
中の言葉を紡ぎ出してみたらどうかとお母さんと相談しています。
りょうくんがたくさんのことを教えてくれました。今後のりょうくんの成長を
祈りつつ、他のお子さんのケースで、スイッチの使い方について、何か
参考になればと思い、まとめてみました。    

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                                                                              (相澤純一)



おおきなきで製作したタッチブルスイッチについて
  ―2点お知らせしておきたいことがありますー

2015年春、私が所属しているSTのグループが、毎年、東京都
大田区で開かれているこどものための福祉用具展キッズフェ
スタで、初めてブースを出しました。
この時にたくさんの出会いがありましたが、この時、ブースに
来られたお母さんがお子さん用にビット・トレード・ワンの
「貼るタッチスイッチ・丸」を使って自作されたスイッチを紹介
してくださいました。

そのスイッチが、力の弱いお子さんの可能性を引き出せそう
だということで、早速、国分寺おもちゃ病院の角院長が、
タッチスイッチ「丸」として入手できるようにしてくださいました。

私は、スイッチに慣れていなくてまだ因果関係を完全に理解
できていないお子さんの場合、スイッチに触れたときにフィード
バックがあるといいと考え、振動モーターをつけ、さらにアーム
をつけたものを試作してみました。

この年の冬、マジカルトイボックスでも、スタッフの熊谷さん
(訪問大学「おおきなき」講師)が、試作を重ねて、アームなしで
クリームケースに「貼るタッチスイッチ・丸」を埋め込んだもので
回路もシンプルなものを考案し、参加者にお分けしました。この
時のタッチスイッチにもON/OFFできる形で振動フィードバックを
つけ、タッチセンサー部に同梱されている両面テープで透明シー
トを貼っています。

おおきなきでは、このスイッチをタッチブルスイッチと名付け、
アーム付き、アームなしの2種類の製作についてお手伝いし
てきました。ケースは、100均のタッパーウエアを使っています。

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<タッチブルスイッチ>

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<アーム付き タッチブルスイッチ>

*振動フィードバックについては、必要な段階と必要なくなる段階を
想定してスイッチでON/OFFできるようにしています。タッチセンサー
部は、感度を最優先し、触れたか触れないかくらいの距離でも反応
するようにしていました。

利用されている方からの声があり、2点、注意点や改善してきたことが
ありますので、お知らせします。

1. スイッチが入りっぱなしになる現象について

特に冬場にスイッチが入りっぱなしになるという報告がありました。
おおきなきを訪ねているお子さんがタッチスイッチを使った時にも、
指を遠く離してもスイッチが切れない現象を目の当たりにしました。
感度を優先し、タッチセンサー部には何も貼らない状態でお分けし
てきました。
しかし、特に冬場は静電気がたくさん発生し、その影響を受けてし
まうようでした。

この対策として、100均でも入手できる、スマホの保護シートを
切ってタッチセンサー部に貼って感度を落とす方法を利用して
いただいている中島さんに教えてもらいました。
また「貼るタッチスイッチ・丸」に付属している両面テープを丸く
切って透明のシートやプラスチックを貼って感度を落とすことも
できると思います。詳しくはメールなどでご相談ください。

2. スイッチに触れ続けた場合のこと

スイッチに触れ続けた場合のことですが、9~10秒位で
スイッチが切れるという報告があり、故障を疑うことがありました。
この件については、ビット・トレード・ワンに問い合わせ、製品仕様
上、そういう設計になっていることが分かりました。


目で描く喜び、目で奏でる喜び
    ー視線入力を始めて4年目ののぞみさんー(その2)
 
*以下の授業では、ノートPCTobii Eye Tracker Cを装着し、GazePointまたはmiyasuku EyeCon LT
使用している。Tobii Eye Trackerのドライバーで常時バブルが出るが出るように設定している。このバブ
ルがあることで、支援者ばかりでなく本人が自分の視線の動きをフィードバックできて、とてもいい効果が
出ている。
 
絵を描いた後は、ドロップトークで作成した自分の名前のひらがなの教材を
視線入力でやってみている。
ここで、がくっと意欲が落ちる。創造的な活動でないと楽しくないのだ。答えが
決まっていて正解してもあまりうれしくない。時間を短くして見通しが持てると、
さらっとできて次の課題に移れる。 

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 最近ののぞみさんの授業のメインイベントはSOUNOS VALKA(サウノスヴァ
ルカ)の視線入力での演奏だ。これほど熱中してくれるならと道具立ても徐々
にバージョンアップしてきた。
ここで、長い間引き出しで眠っていたPPSスイッチも登場。他のヘルパーさん
とはiPadの「太鼓の達人」等を空気圧スイッチで楽しむようになっていて、これを
使わない手はない。ピエゾでなく空気圧のほうならいける。首を左右に小さく
振れるので頭の後ろにエアバッグセンサーを枕のように入れることで、「太鼓の
達人」は連打ができる。

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訪問大学「おおきなき」は、文化祭は4年に1 だけの開催を予定 している。
昨年の文化祭 は体調を崩し参加できなかったのぞみさんは、サウノスヴァル
カの演奏でYouTube発表をめざしてみた。
このソフトは、私にとって、特別支援学校の教員時代に授業中の覚醒が難し
かったお子さんが、目をパッチリ開けて取り組んだ思い出深いソフトだ。
のぞみさんの手(目)によって再びこの教材を生かすことができるかもしれ
ないと、試してみるときはわくわくした。
 
そして、今、この教材によってのぞみさんが見違えるほどいきいきし、のぞみ
さんが奏でる音楽で、私もヘルパーさんやお母さんもいつのまにか癒されて
いる。心に音楽が響き、沁みてくる。
 
毎回の演奏は1回きりで多分同じ演奏にはならないので録画(録音)する。
おおきなきの4年に一度の文化祭の発表まで待っていられない。
スピーカーもハンファの振動スピーカーを1つつなげるようにした。
ステレオにした方がいいだろうか。
楽器音は、ピアノでなくセレスタがいいだろうか。いろいろ試している。

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はじめは、注視でクリックして1音ずつ演奏し、私がマウスを押して
アルペジオにしていたが、今はPPSスイッチとラッチ&タイマーを併用
し(ラッチに設定)、一人でアルペジオ演奏ができるようになった。
きれいなアルペジオ演奏をしたくて、何回も視線を大きく動かし挑戦し
ている。

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頭を正中位に持ってきてしまうと、視線を動かしにくい。低音部を弾き
たいときは左側に、高音部を弾きたいときは、頭をやや右側に落とす。

 
のぞみさんを、いきいきさせてくれる教材に感謝しつつ、障がいが重く
ても自分の力でいろいろなことに挑戦できる視線入力について導いて
くださる伊藤史人さん福島勇さんを始めとする多くの方々にも
この場を借りて感謝したい。
 
そして、より多くの障がいの重い方々が生きる喜び、表現する喜びを
感じられるようになることを願う。


  *目で描く喜び、目で奏でる喜び(その1)はこちらです。

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