自分の力でできるよろこび、
自分の力で表現するよろこび
  <その2>

  ―倫治さんの視線入力への挑戦ー

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、いろいろな面で万が一の場合も想定しての対応が求められています。

 訪問大学の授業についても同様で、ご家庭との確認を丁寧に取りながら、お互いに安心できる状況の中で、行うようにしています。
 年度末の最後の授業では、修了式を行いました。

<倫治さん、訪問大学1年生修了!>
 倫治さんの場合、授業は月1回のみです。
 長期入院が2回あり、1回欠席がありましたが、5月に入学し9回の授業を行うことができました。
 1年生最後の授業では、総まとめとして、今までやってきたことにすべて挑戦し、その後の修了式では、心地よい疲れが出たようです。

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*活動で力を使い果たし、最後の修了式では、目はあまり開いていません。


 

<視線入力は撤退も覚悟して取り組み始めた>

 倫治さんは、生まれて間もない時期に水晶体を摘出しているため、視線入力には大きなハンディがありました。私にとっても、水晶体のない状態の方の視線入力が可能なのかどうか確証はなく、ストレスをかけるようだったら早期に撤退することも考えてのトライになりました。

 明暗は区別できているのではないかとのことでしたが、水晶体のない状態では、形は捉えにくく、赤色等はっきりした色のほうが見やすいのではないかというお母さんの話をもとに取り組み始めました。
 それで、3つの感覚入力(視覚・聴覚・触覚)について、できる配慮をしました。

 視覚的には、画像のコントラストの工夫でできるだけ見やすい状態を作ることです。
 毎回、目の開き具合にもよりますが、トラックステータス(瞳孔をセンサーでとらえ、画面に映し出す)で瞳孔がなかなか映らずに苦労することがありました。
 そのため、目を開けて見ることで好きな事が起きることに気付き、自らの意志で目を大きく開けて画面を見たくなる動機を作ることが必要でした。

 画面全体が黒一色で、見たところに変化が起きるソフトから取り組み始めています。
 センサリーアイFXの5段階の構成では、第1段階の「見ることで変化が起きることに気が付く―因果関係理解を獲得するー>ソフトになります。

<手がかりはトーンチャイムの音や女性の高い声が好きだったこと
 特別支援学校時代にトーンチャイムの音や女性の高い声が好きだったことを伺い、それを手掛かりにして、センサリ―アイFXのSensory Circles「感覚的な円」をいつも授業の始めに取り組むようにしました。他のソフト(変化や音)では、眼がなかなか開かないのに、このソフトでは、眼を開けてくれることが確かに多かったのです。
 そして、時々、笑顔も見られたので、間違いなく好きな音であり、それを自分の力(視線の動き)で生み出していることに気付いているから笑顔になるのだと判断しました。

 以前のブログ記事「新しい仲間が入学しました!」とYouTubeにアップした動画です。

*視線入力で好きな音が見つかった-センサリーアイFXを使って-

 毎回の授業では、覚醒状態があまりよくならないこともありますし、頻繁に緊張が強くなり、それに伴い姿勢や頭の位置が変わり、視線入力装置のディスプレイの位置を何度も調整し直すのに時間がかかっています。
 それでも、倫治さんの「やってみたい」という意志があれば、画面に変化を起こせます。

<倫治さんの目の使い方が分かってきた>
 特別支援学校時代には、聴覚に頼って学校生活を送ってきたと推測できたのですが、好きな音を自分の目で出せることに気が付いた倫治さんは、積極的に視線入力にも取り組めるようになりました。
 目の使い方には特徴があり、お母さんと観察していると、左目が斜視になり、右目で見るのが難しく単眼視になりますが、左目で斜めに画面を見る状態が一番見やすいようだということが分かってきました。ディスプレイも左目に合わせて位置を決めます。


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  *視線入力に取り組む絶好調の倫治さん(2019年12月)


<初めて自分の力で絵を描く>
 2019年9月、目の開きも安定していて視線もしっかりセンサーが捉えているので、思い切って、初めての描画に取り組んでもらうことにしました。
 途中緊張が入り、視線が画面から外れてしまい、入力できなくなった時間もありますが、じっくり本人のペースで描いてもらっています。9色すべての色を使えていて、画面全体を見ることができました。

 初めて自分の力だけで描いた絵ということで、本人も満足そうな表情でしたし、お母さんも喜ばれていました。その後も描き続けています。


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 *視線入力で初めて描いた絵

(センサリーアイFXの「色を塗る」使用、2019年9月、4回目の授業で)


⋆次回は、抱っこスピーカーとピエゾスイッチが倫治さんの活動を豊かにしていった
ことについて書きたいと思います。       
                    (相澤純一)