雅也さんが毎回やっているキャリブレーションの意味

<キャリブレーションとは?>
スクリーンショット (188)
 
 視線入力の取り組みを2016年3月から積み重ねてきた雅也さんですが、お母さんが毎回事前準備として丁寧に取り組んできたことに「キャリブレーション」があります。

 部屋の照明を落とし、画面の背景も黒にし、見る目標である刺激(ターゲット)も立体的な動画を自作されています。真剣勝負の環境調整をして本腰を入れて取り組まれています。

 「キャリブレーション」は、私も訪問した時に導入として1回は行っていますし、お母さんから、ご家庭でのデータを拝見するときに「何回目に成功しましたか?」と伺うことがあります。そうすると「今日は5回目です」「なかなか同じ刺激だと見なくなってしまうので、刺激を替えるようにしています」という話を伺います。

 基本に立ち戻ることになりますが、あらためてキャリブレーションについて考えてみたいと思います。

 キャリブレーションは、自分に合ったメガネを作るのと同じで、視線入力をするときに、パソコン(ディスプレイ)のその人が見たところがきちんと反応するように調整していく作業です。

<キャリブレーションは必須ではないがやってみる価値はある>
 でも、キャリブレーションは必須ではありません。
    障がいが重い方の場合は、キャリブレーションが取れなくても、支援者がキャリブレーションを行い、そのデータでやりたい活動は、文字入力等を除いてほぼできると思って差し支えありません。

 ただ、キャリブレーションをすることで、視線入力に取り組んでいる方の眼球運動の様子について見えてくることがあるだけでなく、繰り返し行っていくことでいいこともあるようです。

<視線入力に取り組んでいる方の眼球運動の様子が分かる>
 見ているところが分かるGazeTraceを表示することで、キャリブレーション時に画面に出てくるターゲット(刺激)に対して、どのような眼球運動をしているかを知ることができます。(Gaze Traceは、キャリブレーション時だけでなく、メインの活動の中でも邪魔にならなければ出しておくといいです。)

スクリーンショット (62)_LI

Tobii(PCEyeえくすぷろあや4Cの場合)のドライバーソフトのGaze Traceをクリックすると色が青く変わります。この時に画面の見ているところに動く円(写真の右側の赤い矢印のところ)が立ち現れます。バブルと呼ぶこともあります。

 繰り返し行っていくことでいいことは、キャリブレーション自体が眼球運動の練習になります。また、最近のテレビ番組で、次のようなことが紹介されていました。

 9月3日のNHKのまちかど情報室で脳科学者が紹介した「朝めし前の脳トレ」の1つが眼球運動でした。四角いものの真ん中を見て、それから眼球だけ4隅に動かすというまるでキャリブレーションのような動きが紹介されたそうです。集中力を高める効果があるそうです。(この情報は、ビジョン ジョイさんのFBで知ることができました。)
IMG_4636_2020090306063138b


<キャリブレーションもEyeMoTのように成功体験が大事>
 雅也さんが制度を使って購入した視線入力装置は、重度障害児者向けのTobii PCEyeえくすぷろあ(現在販売中止)です。


 えくすぷろあを使うための視線マウスアプリは、Gaze Pointでした。
 Gaze Point自体は、単体でインターネットから無料でダウンロードすることが可能で、Tobii Eye Tracker 4Cでも活用することが可能でした。

 Gaze Pointは、伊藤史人さん(島根大学)もYouTubeで紹介されていましたが、視線入力に取り組まれる方のキャリブレーションについて、最大限のカスタマイズができるように工夫されています。
  キャリブレーションタイプで、<正確>モードの3つの小さな青いドットがつぶれるまで注視するのが難しい方は、<簡単>モードを選びます。
スクリーンショット (59)

・背景色→15種類から選択可能
スクリーンショット (56)

・刺激→13種類から選択可能、さらに写真や動画等、自作の物を使うこともできます。
 スクリーンショット (55)

・キャリブレーションのポイント数は4種類から選択可能
・キャリブレーション範囲→自由に設定可能
・刺激は自動で動かすか手動で動かす(ステップスルー)かが選択可能。
 本人が刺激を見るのを確認して刺激を動かすことでキャリブレーションの成功率は上がります。
・刺激の大きさ、刺激のスピードは、3種類から選択可能です。
スクリーンショット (54)
 
 私は、刺激の動かし方については、ほとんどの場合、ステップスルーをONにして、こちらから視線入力に取り組まれる方の眼球運動に合わせて刺激を動かし(具体的には、各ポイントを見てくれるか近づくまでGaze Traceを見ながら辛抱強く待ちます)、キャリブレーションの成功を狙っています。

 一方、雅也さんのお母さんは、ずっと「自動」で取り組まれてきていました。お母さんはなかなか雅也さんが刺激に注目してくれない、その結果キャリブレーションが成功しないので、刺激をより注意をひきやすいものにする、それを自力で作ることをずっと考えられていました。その答えが、静止画像よりも立体画像、立体画像の中でも動く立体画像でした。
 以下がお母さんが作られた動画の例です。
キャリブレーション用動画

<大事なことはキャリブレーション自体ではなく…>
  さて、雅也さんですが、この前、私が「キャリブレーションはあまり面白くないから見ないんだよねー」とつぶやいたタイミングで吹きだして笑っていました。こちらの意図はお見通しで「もうこれはやりたくない」という意思表示をしっかりしているようです。そういう意志疎通が一番大事なことかと思います。
 雅也さんのキャリブレーションの実際の様子は、YouTubeでご覧ください。




<補足>
 最後に補足です。
(1)キャリブレーションの結果の活用ですが、特にステップスルーで本人に合わせて成功させたキャリブレーションのデータを次の活動に使うかどうかは、とても微妙な判断になります。支援者の高品質のキャリブレーション結果を使ったほうが正確に見ているところが反応しやすいことも十分にありえますので、視線入力に取り組まれる方の様子をよく見て、どのキャリブレーションのデータを使うかを慎重に判断してください。

(2)キャリブレーションの様子を見る時に、視線入力に取り組まれる方が見ているところを知らせてくれるGazeTraceがあるかないかで大違いです。Gaze Traceは、本人にもフィードバックしてより分かりやすくなっていますが、支援者にとっての意味のほうが大きく、刺激の動きと本人の視線の動きの相対的な関係で眼球運動を把握することができます。

(3)  注意点になりますが、<正確>モードでは、GazeTraceは出ません。また、新しいプロファイルを作成するときには、Gaze Traceは消えてしまいます。必ず支援者がプロファイルを先に作り、仮のキャリブレーションをしておいて、その上書きで、本人のキャリブレーションを行うようにしてください。

 
(相澤純一)