服部印刷に定期訪問をしたところ、久々に福島さんが大熊を待ち構えていた。労働保険の年度更新も社会保険の算定基礎もすでに終了しているはずだが...。


福島さん:
 大熊先生、こんにちは。今日は私からお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?
大熊社労士:
 こんにちは、福島さん。どうぞどうぞ、お話ください。
福島さん:
 ありがとうございます。実は昨日、雇用保険の手続きで迷うことがありまして処理が滞っているのですが...。
大熊社労士:
 雇用保険の手続きで福島さんが迷うとは珍しいですね。どのようなことですか?
福島さん:
 はい、入社したばかりのパートさんの雇用保険の取得手続きについてなのですが、入社時のオリエンテーションをしているときに、他社で既に雇用保険に加入していることが分かったのです。
大熊社労士:
 ということは、他の会社で1週間に20時間以上働いているということですね。
福島さん:
 ご本人に尋ねたところ、他社では週に24時間の契約だそうです。宮田部長、あの製造で採用したパートさんですよ。
宮田部長宮田部長:
 あぁ、彼女のことか。確かに履歴書でも他社で就業中と書いてあったね。ただ、少し人員不足感があるので、毎日4時間程度来てもらおうということになったんだったっけ?
福島さん:
 そうです。話を聞いていると飲食店で勤務をしているようで、平日の夜と土曜日を中心にそちらで就業しているとのことでした。
大熊社労士:
 そうでしたか。それで福島さんの相談というのは、御社でも雇用保険の被保険者となる労働時間があるけれどもどうしたらいいか?ということですね。
福島さん:
 そうなんです!まずは3ヶ月間の雇用契約ですが、週の労働時間はぎりぎり20時間ありますし、雇用保険の加入要件を満たしますよね。
大熊社労士:
 そうですね。おっしゃるとおりですね。ただ、雇用保険は一つの事業所でしか加入できないのですよ。
宮田部長:
 ほぉ、そうなんですか。それであれば、週の労働時間の長いほうで入るとかのルールですか?
大熊社労士:
 それが労働時間で判断するのではなく、給料の額で決定するのですよ。
福島さん:
 そうなんですか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、加入要件が労働時間で判断しますので、その基準と誤りやすいですよね。また、両方の事業所で加入するという勘違いも多く見られますよ。労働局の説明資料などには「複数の事業主から同時に賃金を受けている場合は、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一つの事業主のもとでのみ被保険者となります」と書かれています。
福島さん:
 そうなんですね。それでは彼女の場合は弊社では加入しなくてもよさそうです。
宮田部長:
 そうなの?あっちの方がたくさん給料をもらうことになるのかな?
福島さん:
 実は、この前のオリエンテーションのときに彼女に時給を説明するときに、こんな話をしていたんです。「飲食店の方は、夜や土曜の忙しくなる時間帯に入っているんです。接客という業務でたいへんなのですが、その分、時給もいいですからね」って。
宮田部長:
 なるほど。オリエンテーションでそこまで話してくれるとは、福島さんのやわらかい雰囲気がそうさせるのだろうね。
福島照美福島さん:
 だといいんですけどね(笑)。今回は残業なしということで募集をしていましたので、夜も働いている彼女にとってはきちんと終わる当社の業務はよかったようですよ。
大熊社労士:
 そうでしたか。まぁ、再確認だけはきちんと取っておいてくださいね。
福島さん:
 はい、もちろんです。今日も出勤されていると思うので、再確認してみますね。
大熊社労士:
 よろしくお願いしますね。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。近年、複数の事業所で勤務する労働者が増加傾向にあるといわれています。そこには様々な問題があるともいわれていますが、今回は社会保険(雇用保険)の取扱について取り上げてみました。雇用保険は主たる賃金を受ける一つの事業所のみで加入することとなります。労働時間の長さや所得税の「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」の提出有無ではないことに注意しなければなりません。


参考リンク
東京労働局「雇用保険被保険者の範囲」
http://www.roudoukyoku.go.jp/til20th/hoken/08.html

(宮武貴美)

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