近年、多くの企業でパートタイマーが増加しているが、今回はそうした短時間労働者の社会保険の適用について取り上げることとする。


大熊社労士:
 こんにちは、いつもお世話になっております。
宮田部長宮田部長:
 あ、大熊先生、いつもお世話になっております。気付いたら、もうまもなく9月。確か、9月からはまた社会保険料がまた値上げになるんですよね。保険料の負担は個人にとっても会社にとっても本当に重いですね。
大熊社労士:
 そうですね、9月からは厚生年金保険料の保険料率が引上げになります。0.354%の引上げですが、この引き上げは平成29年まで毎年続くため、会社にとっても個人にとってもじわじわと負担がのしかかってきますね。
宮田部長:
 確かに、僅かづつではあるものの、まだ6年もあるのですね、長いなぁ。
福島さん:
 ところで大熊先生、少し気になったことがあるので教えていただいてもいいですか?
大熊社労士:
 はい、なんでしょう?
福島照美福島さん:
 いま話題に出ていた社会保険のことなのですが、以前、パートさんを採用したときには、その方の働く日数と働く時間が正社員の4分の3以上であれば、パートさんでも社会保険に加入すると教えていただいたかと思います。
大熊社労士:
 そうですね、以前、そんな話をしような覚えがありますね。何か判断に迷うようなことがありましたか?
福島さん:
 いえ、特に具体的な問題があるわけではないのですが。実は先日、その根拠を探して健康保険法と厚生年金保険法を見ていたのですが、どこにも書いてないような気がして...。
大熊社労士:
 根拠に当たるのはとてもよい行動ですよね。福島さんのおっしゃるとおり、法律の条文には「4分の3」と書いてありません。
宮田部長:
 法律ではないのですか?
大熊社労士:
 はい、この基準は昭和55年6月6日付けの内かんと呼ばれるものに書いてあります。この内かんは、都道府県民生主管部(局)保険課(部)長宛に厚生省保険局保険課長・社会保険庁医保険部健康保険課長・社会保険庁年金保険部厚生年金保険課長が出したものです。
宮田部長:
 かなり前のものだし、なにか難しいもののようですね。
大熊社労士大熊社労士:
 確かに漢字ばかりですね(笑)。それではこの内かんの内容を、抜粋しながら少し解説しておきましょうか。まず健康保険と厚生年金保険が適用されるかどうかは、健康保険法および厚生年金保険法の趣旨から就労者が事業所と常用的使用関係にあるかどうかにより判断すべきものとしています。そして、短時間就労者(パートタイマー)が事業所と常用的使用関係にあるかどうかについては、以下の3点に留意する必要があるとしています。
常用的使用関係にあるか否かは、当該就労者の労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して認定すべきものであること。
その場合、1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱うべきものであること。
 に該当する者以外の者であってもの趣旨に従い、被保険者として取り扱うことが適当な場合があると考えられるので、その認定に当たっては、当該就労者の就労の形態等個々具体的事例に即して判断すべきものであること。
福島さん:
 この2.の中に「おおむね4分の3以上」と出てくるのですね。
大熊社労士:
 そうですね。これが4分の3の根拠になります。ただ、3.にもあるように単純に所定労働時間や所定労働日数が4分の3に満たないから対象にならないと判断するのは少し問題がありますね。実はこの内かんについては、平成22年12月10日に「短時間就労者に係る全国健康保険協会管掌健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格の取扱いについて」という事務連絡が改めて発出されています。
宮田部長:
 つまり、重要だから再度、徹底しなさいというわけですね。
大熊社労士:
 そうですね。最近は定年後の再雇用において、社会保険に加入しない程度の労働日数・労働時間数で働く人も増えているので、改めて事務連絡が発出されたのかも知れませんね。
福島さん:
 これまで4分の3ということしか頭になかったのですが、先生の説明でよくわかりました。ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。話題に出てきた質問主意書には、「常勤労働者の週所定労働時間を29.5時間として契約を行い、これを「4分の3に満たない」として健康保険及び厚生年金保険への加入義務を果たさない事例が後を絶たないという指摘も多く聞かれるところである」という記載があります。そして、答弁書には「仮に、そのような事実が確認された場合には、被保険者の資格の取得の届出や、被保険者の資格の有無の判断が適切に行われるよう、日本年金機構に対して指導してまいりたい」とあります。あくまでも内かんは、適用事業所と常用使用関係の有無を判断する目安が示されているものと再認識する必要があるのでしょう。なお、一方で、9月1日には厚生労働省の社会保障審議会で「短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」が開催されます。この4分の3という要件がどうなるかも含め、今後の動向に注視していく必要があるでしょう。


関連blog記事
2007年6月4日「パートタイマーが扶養家族にこだわる理由」
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/54401877.html

参考リンク
法令等データベース「短時間就労者に係る全国健康保険協会管掌健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格の取扱いについて」
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110224T0010.pdf

(宮武貴美)

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