本日は2012年最初の服部印刷への訪問となる大熊。さすがにまだ相談もないだろうと思っていたが、早速相談が待ち構えていた。


服部社長:
 大熊さん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
大熊社労士:
 あけましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします。それにしても年初から円高が止まりませんね。業績への影響は出てきそうですか?
服部社長服部社長:
 そうですね。当社の場合は直接的な影響は少ないと思うのですが、お客様の業績が低迷すれば結果的に影響を受けますからね。当面は様子見といったところかなと思っています。さて、新年早々で申し訳ないのですが、今日は一つ相談がありまして。
大熊社労士:
 そうですか、どのような内容でしょうか?
服部社長:
 はい、実はこの連休中に高校の同窓会がありまして、昔の仲間と酒を酌み交わしたのですが、そんな中で同じ部活だった悪友から労務に関する相談を受けたのですよ。彼の会社は全国に数か所に営業所を出しているのですが、営業強化のために名古屋の本社社員を東京営業所に異動させようとしているらしいのです。
大熊社労士:
 なるほど。
服部社長:
 総合職の社員についてはそもそも転勤ありという条件で採用しているので問題ないと思うのですが、今回は技術面のサポートを強化するために専門職の社員を異動させたいそうなのですが、専門職についてはこれまで愛知県内でしか異動させないということで契約しているようなのです。
大熊社労士:
 いわゆる勤務地限定採用というものですね。
服部社長:
 その通りです。それで質問というのはこの地域限定採用である専門職の社員を東京に異動させることができるかということなのです。
大熊社労士大熊社労士:
 よく分かりました。結論とすれば本人の同意を得るしかありませんね。採用の時点で愛知県外には異動させないという契約をしている訳ですから、会社の都合で一方的に東京への異動を命じることはできません。しかし、本人が同意しているのであれば、特に問題はない訳です。
服部社長:
 なるほど、当たり前といえば、当たり前の結論ですね。となれば、会社としてなぜそのような配置を行おうと考えているのかということをしっかり説明し、同意を得る方向で動くことになりますね。
大熊社労士:
 そのとおりです。その他、住宅の手配や帰省旅費の設定などの問題は他の総合職社員と同様に扱えば問題ないと思います。
服部社長:
 分かりました。友人にはそのように話をしておきます。ありがとうございます。
大熊社労士:
 ちなみに最近はこうした転勤や配置転換に関するトラブルが増加しています。具体的には就業規則に「転居を伴う配置転換を命じることがある」とありながらも、転勤を命じようとすると「労働契約書に勤務地は○○と書いてあるので、転勤したくない」といったことを抵抗されたというような話をよく耳にします。
服部社長:
 労働契約書の勤務地や職種というのは基本的に採用時のものであって、それをずっと保証するという性格のものではありませんよね?
大熊社労士:
 はい、通常はそのとおりです。よって労働契約を締結する際には就業規則、そして労働契約の内容をしっかり説明しておくことが重要ですね。単なる誤解であっても、労使ともに嫌な思いをすることは避けたいですからね。
服部社長:
 承知しました。当社の場合は転勤はありませんが、職種の変更はあり得ますからね。注意するように指示しておきます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は勤務地限定採用の社員の転勤について取り上げました。会社から社員に転勤を命じるためには、根拠となる就業規則上の規定が存在し、その転勤命令が業務上の必要性に基づく合理的なものでなければなりません。今回の事例は就業規則において勤務地を限定している以上、個別の同意なくして転勤を明示することはできません。こうした意味からも就業規則の重要性が感じられるのではないでしょうか。就業規則は労使が共に安心して仕事に集中するための基本を定めたルールブックです。その内容を十分に吟味した上で、従業員に十分周知しておくことが望まれます。


(大津章敬)

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