服部印刷では先日、出張旅費規程の改定を実施した。それに関連し、宮田は大熊に質問をしてみることとした。


宮田部長:
 大熊先生、先日、以前から社内の要望が強かった出張旅費規程の改定を実施したのです。
大熊社労士:
 そうでしたか。どのあたりを変更されたのですか?
宮田部長宮田部長:
 はい、これまで出張で宿泊する際の宿泊料の上限を一律7,000円としていたのですが、東京での宿泊の場合はこの金額だと厳しいことがあるという意見が多かったのです。そこで今回、東京23区内での宿泊については上限を10,000円に引き上げることにしたのです。
大熊社労士:
 なるほど、確かに東京は他の都市と比べてホテル代が少し高いですからね。社員のみなさんも喜ばれていることでしょう。
宮田部長:
 はい、そこで質問なのですが、就業規則を改定した際には従業員代表の意見書を付けて労働基準監督署に届出をする必要がありますが、こうしたいわゆる周辺規程についても届出をすることが必要なのでしょうか?いわゆる本則や賃金規程などの主要規程は当然届出しますが、細かい規程についてはどこまで届出をすべきかいつも悩むのです。
大熊社労士:
 なるほど、確かにそうでしょうね。それではその話に入る前提として、まず就業規則の届出義務について簡単に押さえておきましょう。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴いた上で、その意見書を添付し、正副2通を所轄労働基準監督署へ届け出なければなりません。これは変更の場合も同様です。
宮田部長:
 そうですね。そこは理解しています。
大熊社労士大熊社労士:
 さて、就業規則の作成にあたっては、労働基準法上記載しなければならない事項が定められており、(1)必ず記載しなければならない事項、(2)定めをする場合には記載しなければならない事項があります。ここで今回のテーマである出張旅費規程を例として取り上げましょう。この規程は、主に正社員を対象とした出張時の費用の取扱いを定めたものになります。労働基準法第89条第10号を確認してみると、「前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合においては、これに関連する事項」と定められていますが、労働者のすべてに限らず、一定の範囲の労働者のみに適用されるものであっても、労働者のすべてがその適用を受ける可能性があるものも含めて考える必要があるでしょう。また、この旅費の取扱いについては通達(昭和25年1月20日 基収第3751号、平成11年3月31日 基発第168号)が出されており、「旅費に関する一般的規定をつくる場合には、労働基準法第89条第10号により就業規則の中に規定しなければならない」とされています。つまり、旅費規程については就業規則に含まれることになります。
宮田部長:
 なるほど、ということは出張旅費規程は就業規則の一部であり、それを改定した場合にはやはり労働基準監督署に届出をする必要があるということですね。
大熊社労士:
 そういうことになります。この旅費の取扱いをふまえると、慶弔見舞金規程や社宅規程などについても就業規則の一部として考える必要があります。コンメンタールにおいても、「休職に関する事項、財産形成制度等の福利厚生に関する事項等も、労働者のすべてに適用される事項として就業規則の中に規定されるべきもの」と述べられています。ポイントとしては、すべての労働者に適用される事項、または労働者のすべてに適用される可能性がある事項については就業規則への記載が必要であり、別規程を作成する場合は、その規程も含めて就業規則となることを押さえておく必要があります。
宮田部長:
 なるほど、よく分かりました。
大熊社労士:
 これを機会に、届出が漏れている規程がないかチェックされてはいかがでしょうか?

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は就業規則の届出について取り上げました。実際の企業を見ると、就業規則本則と賃金・退職金規程程度しか届出がなされていないということが多いように思われます。しかし法的には今回解説したようにそれよりもかなり広い範囲の規程についても就業規則の一部として届出義務があるとされています。今後、規程を整備する際などにはご注意ください。


[関連法規]
労働基準法 第89条(作成及び届出の義務)
 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項


労働基準法 第90条(作成の手続)
 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合が ある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で 組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。


(大津章敬)

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