福島さんの長期欠勤により労働保険の年度更新を自分で行うこととなった服部印刷の宮田部長。今日は算定基礎賃金集計表を作成するということで、とても張り切って大熊社労士を迎え入れた。
[労働保険年度更新特集全4回:前回の記事はこちら]
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/65559715.html


宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は労働保険の年度更新で、算定基礎賃金集計表を作成するんでしたよね。
lb06016大熊社労士:
 そうでしたね。例のリーフレットは用意いただいていますか?
[これ以降は以下のパンフレットをお手元に印刷して読み進めると分かりやすいです]
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51191185.html
宮田部長:
 当然ですよ、ほらここに。
大熊社労士:
 ありがとうございます。さて、実際に集計表を作成する前にリーフレットの6ページを開いていただけますか。ここには先日お話をした労働保険料の対象となる賃金の一覧が載っています。
宮田部長:
 あ、先生が先日仰っていた通勤手当も、賃金とするものの中に「非課税分を含む」と書き添えて入っていますね。それとなになに、家族手当も含まれるのかぁ。確か、残業の基礎には入れなくて良いとかそんな話がありませんでしたっけ?
大熊社労士:
 はい、一定の条件を満たした家族手当は時間外手当の単価の算定基礎から除外してもよいと決まっています。しかし、労働保険料の算定においては賃金となります。
宮田部長:
 こう見ると、通常払われるほとんどの賃金が労働保険の対象となるようですね。
大熊社労士:
 仰る通りです。ですので一般的には、通常支払っている給与から何か除外できる賃金がないかを確認することになります。例えば出張旅費のような実費弁証的なものが賃金台帳に記載されていないかといった点を確認する必要がありますね。
宮田部長:
 なるほど。当社では賃金の中でそういうものを支給したことはないので、この用意した賃金台帳で金額を拾っていけば問題なさそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。それではもう1点、事前に確認しておきましょう。4ページを開いてください。
宮田部長:
 「労働保険対象の範囲」ですか。なんだか細かなことが書いてありますね。先生、あれでしょ。役員は労災も雇用保険も入れない、雇用保険料を控除していない社員は労災保険にのみ入れるとかすればいいんですよね?
大熊社労士:
 あはは、大体はOKですけど、大雑把すぎますよ。ポイントを確認しておきましょうか。役員については、確かに労災保険も雇用保険も被保険者にはなれません。ただし、従業員でありながら役員でもあるという使用人兼務役員は、従業員部分のみ労災保険と雇用保険の被保険者となるケースがあります。
宮田部長宮田部長:
 当社ではそのような者はいませんが、確かに取引先でそのような人がいると聞いたことがあります。おっ、ここに書いてあるんですね。労災保険と雇用保険では書き方が違っていますね。なになに雇用保険では「労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められる者」ですか。へぇ。
大熊社労士:
 ちなみに、この兼務役員はハローワークに事前に届出をすることが必要です。まぁ、御社にはいらっしゃいませんので、先に進めましょう。先日、福島さんがお休みの間、派遣社員を入れると仰っていましたが、もう出社されていますか?
宮田部長:
 いえ、一応、6月1日から来てもらうことで調整しました。早く来て欲しいんですけどね...。って、何か労働保険と関係があったりするのですか?
大熊社労士:
 いえいえ(笑)。労働保険で勘違いされることが多い項目なので話題にしてみました。5ページを開いてもらえますか?下から2つ目に「派遣労働者」とありますよね。
宮田部長:
 はい。んんん、なるほど。派遣労働者は労災保険も雇用保険も派遣元で入るということですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。ですので、派遣労働者を入れても、年度更新には何ら関係ありません。ですが...
宮田部長:
 ですが...とはなんですか?あ、上の出向労働者ですね。
大熊社労士:
 勘がいいですね。出向労働者の場合には、労災保険・雇用保険ともどのような形態で働き、賃金が支払われているのかにより労働保険の納付方法が異なってきます。これまでの私の経験によりますと、多くの出向者が出向先の一労働者として働き、給与の支給は出向元から受けるケースがほとんどでした。ですので、労災保険は出向先で、雇用保険は出向元で支払うというケースばかりでしたね。
宮田部長:
 当社は出向者はいないので、関係ないですが、今後、そのようなことがないか気にしておきますね。
大熊社労士:
 そうですね。特に労災保険料を計算する際には、その出向労働者の賃金を出向関係のある会社同士で連絡しあう必要があったりしますからね。さて、ポイントは押さえましたので、これで集計表の作成はできそうですね。
宮田部長:
 し...心配だなぁ。実はね、大熊先生が驚くかなぁなんて思って、4月分だけ事前に集計してみたのんです。私もちょっとはやる気でしょ!なので一緒に確認してもらってもよいですか?
大熊社労士:
 そうだったのですね!早く仰ってくださいよ。素晴らしいですねぇ!では早速確認していきましょうか。リーフレットは8ページを見ていくことになりますね。
宮田部長:
 へへ(照)。これです。まずは、労災保険の対象とならない、役員2名の報酬を全社合計から除きました。そして、えーっと、どうしたんだっけ、あ、そうそう、パート・アルバイトの集計も賃金台帳に出ていましたから、その賃金の合計を先ほどのものから除き、集計表の「常用労働者」欄に記入しました。さらにはパート・アルバイトの集計を「臨時労働者」の欄に記入しました。合計は、社員とパート・アルバイトの合計。結局、全社合計から役員報酬を除いた額と一緒になりますね。どうです、カンペキでしょ?
大熊社労士:
 ははは。兼務役員もいない、出向者もいない、でしたもんね。となるとそう考えるのが普通なのですが、パート・アルバイトで雇用保険に入っている方はいらっしゃいませんか?
宮田部長:
 へ?あ、集計表の「臨時労働者」の欄、「パート、アルバイトで雇用保険の資格のない人を記入してください。」となっていますね。あわわ、確認していないよ。
大熊社労士:
 そんなにあわてなくて大丈夫ですよ。それに、これは間違いやすい部分なので気にしないでください。
宮田部長:
 そ...そうですか。え、えっと、雇用保険料が控除されている人は、1名、2名...4名ですね。この人たちを常用労働者の方に合計して...。これでカンペキです!
大熊社労士:
 ありがとうございます。ただ...、
宮田部長:
 え〜、まだ何かあるんですか。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、2点、確認させてもらってもよいですか?まず1点目なのですが、賃金台帳に載っていない人がいないかということです。実は、ときどき、現金支給をして賃金台帳に載せていないということを耳にするので、念のために確認です。もちろん、賃金台帳の作成義務があるので、そもそも載っていないことが問題なのですけどね。
宮田部長:
 はい、それは大丈夫、いませんよ。で、2点目は?
大熊社労士:
 はい、雇用保険に入っている人で64歳以上の人はいませんか?
宮田部長:
 64歳ですか...あぁ、いますいます。正社員からアルバイトに切り替わった人で1名いますね。今年66歳になりますよ。いやぁ、働き者でしてね、正社員並みに働いてもらっていますよ。ははは。私もそのように頑張って働き続けたいものですなぁ。
大熊社労士:
 宮田部長、その人、要チェックですよ!
宮田部長:
 えっ、何かまずいことでもありましたっけ?
大熊社労士:
 というのも、雇用保険料は、その年の4月1日に64歳以上である人は免除対象高年齢労働者として、保険料の免除が受けられるのです。正社員並みに働いているということですので、たぶん、雇用保険は加入し続けているはずですね。
宮田部長:
 賃金台帳を見ると...あ、健康保険料と厚生年金保険料は控除しているけど、雇用保険料はゼロですね...。となると大熊先生が仰るように免除になっているのかも知れません。一度、確認しておきます。
大熊社労士:
 はい、よろしくお願いします。さて、ここではその方が免除対象高年齢労働者だとしてお話を進めましょうか。この免除対象高年齢労働者も常用労働者には変わりないので、全部で6名を「臨時労働者」から「常用労働者」に変えてくださいね。そして、9ページ集計表の右側、雇用保険の方を見てみましょう。
宮田部長:
 あれ?こっちには免除対象高年齢労働者の欄がありますね。
大熊社労士:
 よく気づかれましたね。雇用保険料が免除になっているので、この方の賃金はここの欄に書きます。計算方法としては、被保険者の賃金からこの免除の方の賃金を後々引くことになりますので、「被保険者」はこの方も含んだ賃金を記入してくださいね。
宮田部長:
 ややこしいことになってきたな。ん、待てよ。「被保険者」の欄には、先ほどの労災保険の「常用労働者」の欄の額を転記、そして、「免除対象高年齢者分」の欄には、この人の分を記入するんだな。
大熊社労士:
 はい、その通りです。
宮田部長:
 なるほどなるほど分かったぞ。これならできそうだな。ところで先生、これって全部記入して電卓をぱちぱちとはじかなくちゃならないのですか?
大熊社労士:
 いえいえ、厚生労働省からEXCELで「年度更新申告書計算支援ツール」というものが出ていますよ。これは、集計表を入力することで申告書のイメージが作成できるという優れものです。便利に使っていただけると思いますね。
宮田部長:
 なるほど、これは使えそうだ。
大熊社労士:
 ただ、本当は合計から対象外を除くというやり方ではなく、毎月1名1名の賃金を確認していく方がよいと私は思っています。というのも、合計から対象外を除くやり方ですと、間違いに気付きにくいですからね。
宮田部長:
 確かにそうかもしれないですよね。途中で雇用保険に入ったり、やめたりとする人もいたはずだからな...。福島さんに任せ切りだったことを反省しますよ、とほほ...。
年度更新集計ソフト大熊社労士:
 まぁ、まぁ、そうおっしゃらずに。友人の社労士が、このような「労働保険年度更新支援システム」というEXCELソフトを無料でダウンロードできるようにしています。これを使うと1名ずつ確認ができて、なおかつ集計表が自動計算できるというものです。こちらも優れものですよ!
[ソフトのダウンロードはこちら]
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51931447.html
宮田部長:
 へぇ、これはすごそうですね。確か福島さんが「給与計算ソフトからデータを抜き出しますよ」なんてことを言っていた覚えがあるなぁ。今度の派遣社員はEXCELに強い人だと聞いているので、ちょっと聞いてやってみるかな。
大熊社労士:
 そうですね。ミッションをクリアするように早めにやってみてくださいね。それでは今日はここらへんにしましょうか。
宮田部長:
 ありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。労働保険の算定基礎賃金集計表は、労働局へ提出する必要のない書類ですが、申告書を作成するための重要な書類になります。誤りの内容に集計をし、申告書の事業主控えとともに大切に保管しておくことが求められています。なお、賃金を集計する際には、リーフレットを確認しながら、対象となる賃金・労働者に誤りがないようにしましょう。また、賞与についても労働保険料の対象となるため、漏れのないように記入してください。


関連blog記事
2012年5月21日「労働保険年度更新の全体像についてお話しします」
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/65559715.html
2012年5月22日「EXCELで使える「労働保険年度更新支援システムv3.02」ダウンロード開始」
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2012年5月7日「平成24年度版にリニューアルされた年度更新申告書計算支援ツール」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51928106.html
2012年4月27日「平成24年度の労働保険年度更新にかかるパンフレットが公開に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51926291.html
2012年3月30日「4月から変更となる労災保険給付の様式と厚労省サイトからのダウンロード」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51920964.html
2012年3月27日「平成24年度 年度更新用資料(事務組合用) 早くも新潟労働局から公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51920261.html


(宮武貴美)


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