今週の大熊は先週に引き続き、労働時間上限規制に関する最新情報をお伝えすることとしていた。
前回のブログ記事はこちら
2017年4月3日「労働時間の上限規制は結局どうなる方向なのですか?」
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/65774611.html


大熊社労士:
 前回は働き方改革実現会議の実行計画の中から、時間外労働規制の基本的な方向性についてお伝えしました。
服部社長:
 年間720時間、1ヶ月だと100時間未満、2〜6ヶ月で80時間以内でしたね。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、その通りです。いろいろな報道を見ていてもこの時間数ばかりがクローズアップされていますが、実は特定の業種・職種についてはより大きな影響が出る方針が示されています。印刷会社である御社には基本的に直接影響するものではありませんが、間接的には御社にも、そして我々個人にも影響して来る内容となっていますので、今日はその内容についてお話したいと思います。
宮田部長:
 個人にも影響するようなものがあるんですね。なんだろう?
大熊社労士:
 はい、それは36協定限度時間適用除外の見直しです。36協定を締結する場合には、その限度時間が定められていますよね?
福島照美福島さん:
 1ヶ月45時間、1年間360時間、1年単位の変形労働時間制の場合は1ヶ月42時間、1年間320時間というものですよね?
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。福島さん、さすがですね。いつでも社労士の仕事ができそうだ。
宮田部長:
 あーっ、大熊先生、福島さんを引き抜いたらダメですよ。
大熊社労士:
 あ、そういう手があったか(笑)。さて、この限度時間ですが、以下の事業または業務等についてはその適用が除外されています。
工作物の建設等の事業
自動車の運転の業務
新技術、新商品等の研究開発の業務
宮田部長:
 へー、そうなんですね。
大熊社労士:
 この適用除外とされている業種・職種には過重労働の問題が多く、平成27年度の脳・心臓疾患に関する労災支給決定件数の多い業種(中分類)を見ると、1位が道路貨物運送業で、2位が総合工事業となっており、以前よりその対策の必要性が指摘されていました。今回の適用除外見直しの影響は大きいですが、仕方がないとも言えるのではないでしょうか。
服部社長:
 そのような状態だったのですね。それで具体的にはどのような改正が予定されているのですか?
大熊社労士:
 まず自動車の運転業務については、その特殊性を踏まえ、拘束時間の上限を定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が定められていますが、結果的には長時間労働が問題となっています。そこで今回は、罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の施行期日の5年後に、年960時間(=月平均80時間)以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定が設けられることになります。
服部社長:
 なるほど。適用除外を見直すとはいえ、年720時間ではなく、5年の移行期間を設けた上で、960時間という少し緩和された規制をまずは適用するということですね。まあ、確かにあまり性急に規制を行ってしまうと、日本の物流が止まってしまう恐れがあるのは確かですからね。
宮田部長宮田部長:
 ただでさえ、最近は通信販売の急増で物流が疲弊していて、サービスの見直しを行おうなんていう話も出ていますからね。
大熊社労士:
 次に、建設事業については、改正法の施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用する方向です。ただし、復旧・復興の場合については、単月で100時間未満、2か月ないし6か月の平均で80時間以内の条件は適用しないという例外が設けられるようです。
服部社長:
 改正法の施行期日の5年後ということは2024年が目処ということですね。このタイミングであればオリンピックも終わっていますから、いまとは状況は大きく変わっているのでしょう。それでも公共工事の進め方など、抜本的な改革がなければ混乱は避けられませんね。
大熊社労士:
 はい、そう思います。そして、新技術、新商品等の研究開発の業務については、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務の特殊性が存在することから、医師による面接指導、代替休暇の付与など実効性のある健康確保措置を課すことを前提に、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とするとしています。
福島さん:
 ここについては適用除外が残るのですね。確かに研究開発となると特定の時期は集中して行わなければならないこともあるでしょうからね。
大熊社労士:
 そうですね。そして今回、新たに議論されているのが医師です。医師については研修医の長時間労働などがよく問題とされていますが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることから、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用する方向にあるようです。こちらも救急医療など医療のあり方から見直さなければ問題解決にはなりませんので、大きな課題が残りそうですね。
服部社長服部社長:
 なるほど、よく分かりました。全体としては移行期間を設けながらも労働時間の上限規制を広く適用していくということですね。そしてそれを実現するためには社会全体が変わっていかなければなりません。文字通り、国としての働き方改革が求められているのでしょう。
大熊社労士:
 まったく同感です。これからの数年間は企業と従業員の双方にとって、もっとも大きな変化が求められる時代となるでしょう。その結果、これまで当たり前だと思っていたサービスが受けられなくなるといったことも起こることになるはずです。
服部社長:
 労働力人口の減少、そして労働時間規制の影響は本当に大きいですね。当社も人材がいないという中で如何にビジネスを継続していくのかという視点を持って、仕組みを考えていきたいと思います。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回は働きかた改革実現会議が示した労働時間の上限規制の中から、実はかなり影響が大きい限度基準の適用除外の見直しについてお伝えしました。先週末にはドライバーの負担軽減のために、ヤマト運輸がAmazonの当日配達から撤退するといったニュースも話題になっていましたが、これからは規制された労働時間の中で如何に生産性を高め、同時に社員の健康と生活を守るのかが勝負となっていきます。本当に労務管理の重要性が高い時代であると実感します。

関連blog記事
2017年4月3日「労働時間の上限規制は結局どうなる方向なのですか?」
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2017年3月29日「働き方改革実現会議 大注目の「働き方改革実行計画(案)」を公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52126469.html
2017年3月20日「勤務間インターバルってなんですか?」
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/65773216.html

参考リンク
首相官邸「働き方改革実行計画(平成28年3月28日決定)」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html#headline
厚生労働省「第131回労働政策審議会労働条件分科会」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000159793.html
厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000123090.pdf
厚生労働省「平成27年度「過労死等の労災補償状況」を公表」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000128216.html


(大津章敬)

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