世間では「女性の活躍」として、育児と仕事との両立や女性役員・管理職の登用などが話題となっているが、服部印刷では女性役員がいつ誕生するか?大熊はそんなことを考えながら会社の門をくぐった。


福島さん:
 先生、お聞きしたいことがあるんです。
大熊社労士:
 ど、どうしたのですか?
福島さん:
 私の友達のことなのですが、お聞きしてもいいですか?
大熊社労士:
 もちろんいいですよ。お友達がどうかされたのですか?
福島照美福島さん:
 はい。その友達は、勤務先の会社で役員をしているんです。彼女はこのたび妊娠して、来年出産するんです。自分は役員なので産前産後休業、育児休業で休んでも、従業員と同じように給付はもらえないのよ、って言っていたのです。
大熊社労士:
 それはおめでたいことですね。役員となると、従業員ではありませんから、休業の取り扱いも確かに違ってきますね。
宮田部長:
 うちには、女性役員がいないから、そんなこと考えたこともなかったなぁ。
大熊社労士:
 そうですよね。産前産後休業と育児休業が関連する法律には非常に多くのものがあります。労働基準法に、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、厚生年金保険・健康保険法、雇用保険法などですね。
宮田部長:
 うわー、そんなに多くの法律があるのですね。
大熊社労士:
 いま言った法律は、ほとんどが労働者、つまり従業員に適用される法律です。ですから、役員となると従業員ではありませんから、これらの法律はほぼ適用されないことになります。役員であっても兼務役員と言って、従業員部分の労働契約がある場合には、それらの法律も適用となることがあります。そのお友達は、兼務役員ですか?
福島さん:
 うーん、たぶん違うと思います。以前食事をしたときに、「私には失業保険がない」とか言っていましたから。
大熊社労士:
 失業保険というのは雇用保険のことだと思いますので、兼務役員ではなさそうですね。従業員部分がないとするなら、労働基準法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法は適用されません。一方、厚生年金保険・健康保険法は適用になります。
福島照美宮田部長:
 ん?厚生年金保険、健康保険って、社会保険は役員も適用になるんだっけ?あっそうか、うちの会社の社長や他の役員も社会保険入っているので適用ですね。
大熊社労士:
 (笑)。宮田部長、一人で解決していますが、少し説明しておくと、社会保険の考え方は、役員でも法人から報酬を受けていることから、広い意味で法人に使用されているということで、加入することができるんです。それを前提に、社会保険と産前産後休業と育児休業の絡みを考えると…。
宮田部長:
 ...。
福島さん:
 あっ、出産育児一時金、出産手当金...、あと保険料の免除のことですね!?
大熊社労士:
 さすが、福島さん。その通りです。産前産後休業と育児休業と社会保険の絡みは、休業時の給付と保険料のことになります。
福島さん:
 でも、役員って、休んでも役員報酬を支払いますよね?うちの会社も役員さんが病気で休んでも、カットすることはありませんでしたから。
大熊社労士:
 そうですね。一般的には、長期間まったく仕事ができないような状態でなければ、役員報酬は支払われたままということが多いです。
福島さん:
 そうなると、彼女が産前産後休業として仕事をしていなくても役員報酬が支払われている限り、出産手当金はもらえないし保険料も免除にならない、ってことになりますよね?
大熊社労士大熊社労士:
 確かに、出産手当金は報酬を受けていないことが条件ですので、産前産後休業中役員報酬が支払われているのであれば、もらえないことになります。保険料については、役員の場合、産前産後休業と育児休業では取り扱いが異なります。育児休業は、役員に対してそもそも制度の概念がなく、社会保険上も対象外とされていますが、産前産後休業は、そうではないんです。
宮田部長:
 そうではない???
大熊社労士:
 社会保険上の産前産後休業は、「適用事業所において産前産後休業中、労務に服していない状態」と考えていて、つまり働いていない状態ということです。働いていないのであれば、有休、公休、欠勤、休職等問わず、保険料の免除対象となるのです。
福島さん:
 ええっ?産前産後休業の保険料って、給与が支払われていても、免除となるのですか?
大熊社労士:
 そうなんです。一般的には、産前産後休業も育児休業も給与を支払わない会社が多いので、給与が支払われているケースは少ないと思いますが、産前産後休業、育児休業、いずれも給与が支払われているどうかに関わらず、休業中働いていなけば、保険料は免除となるのです。
宮田部長:
 へーっ、そうなんですか。全然知らなかった…。
大熊社労士:
 福島さんのお友達のケースを整理すると、育児休業は役員にはそもそも制度の概念がないことから、社会保険料も免除とはなりません。雇用保険の育児休業給付金も雇用保険に入っていないので、もらえません。産前産後休業については、出産手当金は役員報酬が出ている場合はもらえませんが、社会保険料は免除となる。また、出産費用の出産育児一時金も支給されます。
福島さん:
 すごく勉強になりました。給付はともかく、産前産後休業中だけでも社会保険料が免除になるなんて、朗報です。友達に伝えます。
大熊社労士:
 女性が妊娠、出産しても、継続して働きやすいように、様々な法律改正も行われています。これからは、女性役員も増えてくる時代なので、役員と従業員の取り扱いの違いを整理しておく必要もでてきますね。
宮田部長:
 福島さんも、将来的にうちの会社の役員になって、もっと女性が活躍できる環境を作っていって欲しいですな。
大熊社労士:
 私も全面的に応援します!
福島さん:
 あらららら、そういう展開ですか。が、が、頑張ります!?

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。妊娠、出産、育児にかかる制度は様々なものがありますが、従業員のみでなく、女性役員が妊娠、出産、育児休業を取得する場合の取り扱いも整理しておきましょう。産前産後休業中、役員報酬が支払われていても、産前産後休業中に働いていなければ社会保険料は免除となりますので、保険料免除申請を忘れずに行いましょう。

(小浜ますみ)

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