服部印刷に到着した大熊の目に服部社長が入ってきた。社長とお会いするのは久々だなと思いつつ、玄関に近づいた。


福島照美福島さん:
 大熊さん、おはようございます。福島に聞いたのですが、まだ先だと思っていた育児休業の延長ももう2ヶ月後には始まるのですね。
大熊社労士:
 ええ、そうなんです。そろそろ育児介護休業規程の改正をしたいという問合せが増えてきました。厚生労働省からも簡易版の規定例は公開されたのですが、詳細版の規定例の公開はもう少し時間がかかると聞いています。そのため私の方での対応も少し待っている状況です。
宮田部長:
 早めに出て欲しいですねぇ。
大熊社労士:
 本当にそう思います。育児・介護休業法は結構条文がややこしく、改正が広範囲になると、規程の修正も漏れが発生しやすく厄介です。今回は改正点がかなり限定的なのですが、念のために厚生労働省からの規程の公開を待っているところです。
福島さん:
 確かに今回、必ず実施しなければならない点は、社長がおっしゃった子どもが2歳になるまでの育児休業の再延長だけですよね。
大熊社労士:
 そうですね。育児休業等制度の個別周知と育児目的休暇の新設は、現状のところ努力義務に留まりますから、必ずの対応点というと、再延長だけです。
福島さん:
 ただ、この再延長って、私自身はかなり考えさせられます。
宮田部長:
 ん?どういうこと?
福島さん:
 もちろん、子どもが1歳になったタイミングで保育園に預けられず、そして1歳6ヶ月でも預けられずとなると、認可保育園以外で預ける先を考えるか、もしくは復帰できずに退職するかという選択肢になってしまいます。ですから、2歳まで再延長できるようになり、比較的、保育園に入りやすい年度初めが必ず到来して、復帰できる可能性が高まることはとてもよいことだと思います。でも・・・。
服部社長:
 福島さんは長く休むことが気になるのかな?
福島さん:
 はい。私も以前、育児休業を取らせてもらいました。とってもありがたく、こうやって服部印刷で働き続けることができることに感謝しています。ただ、育児休業中に少しお手伝いに来ていた私でさえ、復帰したときには分からないことばかりでした。
宮田部長宮田部長:
 あー、確かに会社の組織が変わったり、ちょっとだけどルールが変わったり、使っている業務システムもマイナーチェンジがあったっけ。保育園の呼出もちょこちょこあって、あのときはたいへんそうだったね。
福島さん:
 はい。こんな私でいいのか、復帰せずに退職した方がよかったのではないか、と悩んだときもありました。
大熊社労士:
 そこまで思っていたのですか!?
福島さん:
 実はそうなのです。あ、いまは辞める気ありませんけどね(笑)。ただ、そのことを振り返ると、仮に2歳まで育児休業を取得してしまうと戻りづらくなってしまうのではないかと思います。
服部社長服部社長:
 そうだね。入社したときや、仕事を始めてから描いていたキャリア像も大きく崩れてしまうかもしれないね。
宮田部長:
 え、だったら、早めに、例えば0歳でも育児休業から復帰するってのはどう?4月からであれば保育園に入りやすいのであれば、ずばり1歳になる前に到来する4月の時点での復帰!
大熊社労士:
 あはは、軽くおっしゃいましたね(笑)。確かにその選択肢もありますよね。育児休業は必ずしも1歳まで取らなければならないと決まっていませんし。
福島さん:
 ただ、なかなかその選択をする方はいませんよね。できれば長く、と考える人が多いように感じます。
服部社長:
 確かにね。私の社長友達も「早めに育児休業から復帰して欲しいけど、そんなことを言うとマタハラといわれかねないから、軽々に口にできないよ」と嘆いていましたよ。
大熊社労士:
 なるほど。確かにそうですね。ただ、実は今回、子どもが2歳になるまでの再延長になったこともあるのでしょう。その部分の考え方が指針に示されました。育児休業等の制度の利用を申し出たのに利用を阻害するようなことがあれば、それはもちろんいわゆるマタハラに該当しますが、「労働者の事情やキャリアを考慮して、早期の職場復帰を促すことは制度等の利用が阻害されるものに該当しない」とされたのです。
服部社長:
 ということは子どもが1歳になるまで育児休業を取りたいと申し出ていても、本当に従業員の長期的なキャリアを考慮して、「早めに職場復帰をしたらどう?」と打診することや、2歳までの再延長をした場合でも「途中で保育園に入ることができたら復帰してみたらどう?」ということは問題ないということですね。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、発言の前提がしっかりしているのであれば問題になりません。もちろん、職場復帰の時期は育児休業取得者の選択に任せるべきであり、強制的に復帰をさせるとマタハラに該当しますので、ご注意ください。そして、しつこく言うのも注意してくださね。
福島さん:
 今後、当社でも同じような状況があれば、私の経験談も含め、打診してみることを考えます。
服部社長:
 そうだね。福島さんの経験談は、より育児休業取得者の心に響くだろうしね。そして、会社のキャリアを考える想いが伝われば、本人の気持ちも早期復帰に向けて動くかも知れない。
大熊社労士:
 そうですね。慎重な対応が求められますが、「マタハラ」ということばばかりに囚われず、従業員に対する思いをしっかりと伝えること、そんなことがいまの時代、重要になっているのかも知れません。
服部社長:
 「マタハラ」ということばばかりに囚われず・・・ですね。アドバイスありがとうございます。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回、話題には入れませんでしたが、育児休業の早期復帰に関しては、例えば在宅勤務を認めるといったことで緩やかな復帰も促進できます。今回の改正を機会として、このような制度も検討していきたいですね。


関連blog記事
2017年7月25日「10月施行 改正育児・介護休業法対応の規定例(簡易版)のダウンロード開始!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52133945.html
2017年7月7日「改正育児・介護休業法に関する通達の新旧対照表が確認できます」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52132875.html
2017年7月3日「10月施行の改正育児・介護休業法に関する施行規則・通達等が公開に!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52132686.html
2017年4月17日「2017年10月にまた育児休業の改正があるのですか?」
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/65775847.html

参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html


(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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