服部印刷では、これまであまり大きな労働トラブルは発生していないが、もしかすると小さなハラスメントトラブルは潜在していないとも限らないな…。そんなことを考えながら、大熊は服部印刷の門をくぐった。
大熊社労士:
 こんにちは。
福島さん:
 大熊先生、毎日暑いですね。
宮田部長:
 私は、少々夏バテ気味です。ストレスからかな???
福島さん:
 えー!?ストレスって、仕事のストレスですか?
宮田部長:
 福島さん、それ、どういうこと??
大熊社労士:
 まあまあ。ストレスといえば、最近、企業のストレスチェックの実施状況が、厚生労働省から発表されました。
宮田部長宮田部長:
 ストレスチェック制度がスタートしたときには、ニュースでもよく報道されましたからね。実施しなければならない会社は、ほとんど実施しているのではないですか?
大熊社労士:
 おっしゃる通りです。今年6月末時点で82.9%の事業場でストレスチェックが実施されています。1,000人以上の規模の会社では、99.5%が実施、50-99人規模でも78.9%と、8割近くの会社が実施していることになり、高い実施率といえます。
福島さん:
 へぇー、実施率は高いのですね。でも、医師の面接を受けたいといった人はどれくらいいるのですか?
大熊社労士:
 そこはかなり低調でして、医師による面接指導をうけた労働者の割合は、0.6%と低くなっています。
宮田部長:
 確か、医師の面接指導結果は、会社も知ることができるのでしたよね?そうであるなら、無理もないですよね。
大熊社労士:
 そうとも言えますね。しかし、ストレスチェックの実施により、従業員自身がストレス状況に気付き、対処していくことで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことが目的でもあります。そういった意味では、従業員自身が不調に気付き、予防につながれば、制度の意義もありますね。
福島さん:
 そうすると、今後は仕事が原因でうつ病にかかる人は減ってきますね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうあって欲しいです。そのためにも、会社としてはストレスチェックで集団分析を行い、より働きやすい職場作りにつなげていきたいものですね。しかし、現状はというと、厚生労働省の平成28年度「過労死等の労災補償状況」の発表を見ると、精神障害に関する労災事案では、請求件数は1,586件で前年度比71件の増、支給決定件数も498件で前年度比26件の増となっていて、請求件数、支給決定ともに増えています。
宮田部長:
 そうですか〜。我が社では、現在メンタル不調者はいないのでピンときませんが、どんなことが原因で精神障害となって、労災が認められているのですか?やはり、残業時間が多いことですか?
大熊社労士:
 長時間労働も原因の1つですが、それよりも一番多い原因は、「嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」なのです。
福島照美福島さん:
 え〜、それって、パワハラが原因ってことですよね。残業よりも「パワハラ」が原因だなんて、そんなに案件が多いのですね。
大熊社労士:
 確かに、平成27年度の労災の精神障害で支給決定された原因の1番目は、「仕事の内容・仕事量の変化」で、2番目が「パワハラ」だったのですが、平成28年度は、そこが逆転しました。その証拠に、個別労働紛争解決制度として労働局の相談窓口に寄せられたもっとも多い案件は、「いじめ・嫌がらせ」で、平成28年度は実に70,917件です。統計を取り続けている平成21年度からすると、198%と2倍以上の勢いです。
宮田部長:
 う〜ん、世の中、そんなにパワハラが起きているのですか。ひょっとしたら、我が社でも、人事部に情報が入っていないだけれで、現場で起きていたりして!?
福島さん:
 宮田部長、不安になることおっしゃらないでくださいよ〜。
大熊社労士:
 おそらく、貴社では大丈夫かとは思いますが、従業員同士や世代間の意識、感覚のズレにより、小さなハラスメントは潜在しているかも知れません。大きな問題にならないためにも、ハラスメント研修を実施された方がよいかも知れませんね。先日お話した育児休業の指針で、2歳まで再延長できるようになることについて、その従業員のキャリアを考えて早く職場復帰を促すことはマタハラとならない、ということもあり、マタハラに該当するもの、しないものを整理するいい機会となると思います。
福島さん:
 そうですよね。私も整理したいです。
宮田部長:
 それでは、大熊先生。パワハラ研修について、社長に打診してみますので、ぜひお願いします。
大熊社労士:
 はい、わかりました。いつでもご連絡ください。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。前述したとおり、平成28年度個別労働紛争解決制度の状況によると、相談件数で圧倒的に多いのが「いじめ・嫌がらせ」です。その次が、「自己都合退職」40,364件でこちらは、平成21年度から243%の増となっています。これは、近年の深刻な人員不足により、退職を認めてくれないといったトラブルが増加していることによるものです。退職を申し出た従業員に強引な引き止めを行うことは、パワハラにも繋がり兼ねない問題です。パワハラ、セクハラ、マタハラ、モラハラ等のハラスメント全般について、社内の方針の明確化や相談窓口の設置、研修の実施など積極的な対策をとり、従業員が安心して仕事に集中できる環境を作っていくことが求められます。
関連blog記事
2016年7月11日「最近、ハラスメントの問題が大きくなっています」
http://blog.livedoor.jp/ookumablog/archives/65746262.html

(小浜ますみ)

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