先日、経済新聞の一面に「未払い賃金請求、最長5年に サービス残業抑制へ検討」という記事が掲載された。この記事は多くの経営者や実務家の中で大きな話題になっているようである。


大熊社労士:
 おはようございます!
宮田部長:
 大熊先生、おはようございます。お待ちしていましたよ!
大熊社労士:
 それはそれは、ありがとうございます。それでなにかあったのですか?
宮田部長宮田部長:
 先生もご覧になったのではないかと思いますが、先週、新聞の一面に未払い賃金の請求が最長5年間までできるようになるという記事があったじゃないですか。先日、同業の集まりに出席したらそれがかなりの話題になりまして。あの記事はどういうことなのでしょうか?
大熊社労士:
 あの記事はかなり話題になりましたね。結論としてはまだ決まった訳ではありません。今後、労働政策審議会などで議論を行い、2020年度に労働基準法の法改正を検討するということだと思います。
宮田部長:
 そうなんですね。それにしてもなぜこんな話が急に出てきたのですか?
大熊社労士:
 まず基本から確認していきましょう。労働基準法では115条で時効についての定めが置かれています。
労働基準法115条(時効)
 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
福島照美福島さん:
 なるほど。未払い賃金の請求というと、よく最大2年間と言われますが、ここに根拠があったのですね。そして今回、これが改正されるかも知れないということですね。
大熊社労士:
 そうなのです。その背景には民法の改正があります。 民法のうち債権関係の規定は、1896年(明治29年)に民法が制定された後、約120年間ほとんど改正がされていませんでした。今回、その改正が行われることになったのです。今年の5月26日に成立し、6月2日に交付されています。具体的な施行日はまだ決まっていませんが、法務省においては2020年の施行を目指して準備を進めているようです。
宮田部長:
 だから今回の話も2020年とされているのですね。
大熊社労士:
 そういうことなのだろうと思います。さて、この民法による時効のルールですが、改正法では、権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき、または、権利を行使することができるときから10年間行使しないときのいずれか早く到達するときに時効によって消滅すると改められることになりました。今回の報道はこの民法の改正にあわせて、労働基準法の賃金請求の時効も5年間に統一したらどうかという話なのです。
服部社長:
 なるほど。よく分かりました。それで実際のところ、どういった展開になりそうなのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 まだ審議会さえ開かれていませんのでなんとも言えませんが、ヨーロッパの例などを見ても、必ずしも一般的な債権の時効と賃金債権の時効の期間が統一されている訳ではないようです。また現実的な企業への影響も勘案されるでしょうから、すんなり5年になるということはないのではないかと考えています。
服部社長:
 当社では未払いはないように管理しているのでそれほど心配はありませんが、世間では大変な会社も多くなるでしょうね。
大熊社労士:
 はい、実態はそのとおりかと思います。また5年間となると請求額もかなり大きくなると予想されます。例えば残業単価が2,000円で、1日30分のサービス残業があったとします。1ヶ月の所定労働時間が21日とすると、2,000円×0.5時間×21日×5年×12ヶ月=126万円になります。これが100人いると1億を超えてきます。1日たった30分の未払いでもこんなことになりますから、現在、適正な支払いができていない企業は企業存続にも関わる状態に陥る危険性もあります。
服部社長服部社長:
 これだけの金が動くとなると、それを支援するビジネスも活性化すると思いますので、トラブルはさらに増加することになりそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。もちろん法律どおりに賃金を支給していない会社が一番悪い訳ですが、とはいえ、トラブルを煽るような状況が頻発し、経済が混乱するのも大きな問題です。そうした点も今後の検討の中では議論されるのでしょう。いずれにしても労働時間制度の最適化と生産性向上による労働時間の短縮は不可欠ということになろうかと思います。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回は先日の新聞報道の内容について取り上げてみました。労働政策研究・研修機構の調査によれば、賃金債権の時効はイギリスとフランスで2年、ドイツは3年となっているそうです。こうした諸外国の状況も勘案すれば、2年がいきなり5年になる可能性は低いのではないかと思われますが、労使の妥協点を探り、3年といった結論になることは十分にあろうかと思います。いずれにせよ、未払いを発生させないような仕組みの構築が求められます。
参考リンク
法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
労働基準法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049&openerCode=1


(大津章敬)

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