大熊が会社を訪問すると、宮田部長が出迎えてくれた。


宮田部長:
 先生、こんにちは。
大熊社労士:
 こんにちは。宮田部長、お出迎えありがとうございます!
福島さん:
 先生、こんにちは。宮田部長、率先して先生をお出迎えなんて、今日は特に聞きたいことがあるんですか?
宮田部長:
 福島さんには、悟られちゃったかな(笑)。その通りで、先生に聞きたいことがあって…。
大熊社労士:
 はい、何でしょうか?
宮田部長宮田部長:
 すみません。うちの妻のことなんですが、子育ても一段落ついたので、パート勤務したいと言っておりまして。先日、ハローワークの求人票を持ってきたんです。
大熊社労士:
 そうなんですね。いいところが見つかりそうですか?
宮田部長:
 はい、いまは人手不足のようで選びたい放題の状態のようです。その求人票を見ると、週20時間勤務のパート勤務であっても社会加入となっているのです。
福島さん:
 へぇ〜、そこは大企業なんですね。社会保険の特定適用事業所になっている会社は、週20時間勤務でも社会保険の被保険者になりますよね?先生。
大熊社労士:
 はい、そうです。あと月収88,000円以上という要件もありますが、給与月額はいくらぐらいになりそうですか?
宮田部長:
 時給単価がよいので、88,000円以上にはなると思います。
福島さん:
 ということは、社会保険に加入となりますし、所得税の103万円の範囲も超えてしまいますから、いずれも宮田部長の扶養から外れてしまうことになりますね。
宮田部長:
 そうなんですよ。まぁ、どうせ扶養から外れるなら精一杯働こうかなと、妻が言ってまして。そして、たまたまなんですが妻の友人から別のパート勤務のお誘いがあって、そこも週20時間勤務で社会保険に加入する会社のようなのです。
福島さん:
 そこも特定適用事業所なんですね。それでどちらの会社にされる予定なんですか?
宮田部長:
 それが、頑張って2か所で働こうかなと妻が言っていまして…。
大熊社労士:
 2か所掛け持ちですか、すごいですね。
宮田部長:
 それで、もし2か所掛け持ちとなった場合、社会保険の加入はどうなるのか、お聞きしたかったのです。
大熊社労士大熊社労士:
 そういうことですね。結論から言いますと、今回のケースでは2か所とも加入することになります。それぞれの会社で社会保険の加入要件を満たしていますので、2か所とも加入し、保険料もそれぞれの会社でお給料から天引きされることになります。
福島さん:
 そういえば2か所以上の届出の書類があるって聞いたことがあります。
大熊社労士:
 そのとおりです。「健康保険・厚生年金保険二被保険者以上事業所勤務届」という用紙があり、本人が届け出ることとなっています。
宮田部長:
 むむむ?2か所で加入するってことは、健康保険証も2枚持つということですか?
大熊社労士:
 いいえ、保険証は2枚は持てません。二以上勤務届には、保険証を持つ会社すなわち主たる会社を選択事業所として、もう1か所の会社を非選択事業所として記入することになっていて、選択事業所の方で保険証が作成されることになります。
宮田部長:
 はぁ、そうなんですか。保険料はそれぞれの会社でお給料から天引きされるとのことですが、そのあたりの取り扱いについて、もう少し詳しく教えてください。
大熊社労士:
 はい、保険料についてですね。例えば、A社の月額給与が10万円で、B社が9万円だっとすると、A社とB社の給与合計は19万円となります。この19万円が標準報酬月額となり、保険料が算定され、給与額に応じて、各社の負担額が決定されます。
福島照美福島さん:
 なるほど、保険料については、A社・B社の給与額の合計で標準報酬月額を決定し、A社・B社それぞれ按分した保険料を天引きするということですね。でも、実務を考えると保険料の算出は難しいですね。
大熊社労士:
 大丈夫です。二以上勤務届を年金事務所へ提出すると、年金事務所がそれぞれの事業所の保険料を算定し、天引きする保険料額についてA社、B社それぞれに通知が発送されます。
福島さん:
 それなら安心です。
宮田部長:
 う〜ん。整理すると、2か所掛け持ちの場合、それぞれの会社で社会保険加入要件を満たす場合は、それぞれに加入が必要で二以上勤務として届出が必要。ただし、保険証は主たる会社の方で1枚持つ。保険料は2か所の給与が合算となり、それぞれの会社で按分された金額が天引きされる、であっていますか?
大熊社労士:
 素晴らしい!そのとおりです。
福島さん:
 宮田部長、奥様が働かれることになったら、お家のことしっかりお手伝いしてあげてくださいね。
宮田部長:
 はぁ、いまでもゴミ出しは手伝っているんだけどな…。妻が働き始めたら、これまで以上にいろいろな指令が飛んできそうだなぁ…。
福島さん:
 えっ?ゴミ出しだけですか?もっとお手伝いしてあげないとダメですからね!
大熊社労士:
 あはは、宮田部長、奥様のダブルワークについて、何か分からないことがあったら聞いてください。あと、なんなら料理もお教えしましょうか?
宮田部長:
 は、はい…。よろしくお願いします。
大熊社労士:
 あ、そうだ。雇用保険の取扱いについても説明しておいた方がいいかも知れませんね。それでは雇用保険については次回、お話しましょう。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。平成28年10月1日より短時間労働者に対して厚生年金保険・健康保険の適用拡大が行われています。短時間労働者を除く被保険者数が501人以上の特定適用事業所では、週20時間以上勤務する等の要件をみたしている短時間勤務者は社会保険に加入することになります。2か所掛け持ちで勤務しているパートタイマーも多いかと思いますが、それぞれの会社が適用事業所であり、それぞれに被保険者となる要件を満たす場合は、年金事務所(健康保険組合同士の場合は健康保険組合へも)に「二以上勤務届」を提出する必要があります。上記で記載したとおり、保険証は主たる事業所のみでの発行となりますが、保険料は2か所給与を合算し決定されることになります。特定適用事業所においては、現在勤務している短時間勤務者で2か所勤務者がいないかどうか、再度確認しておきましょう。

参考リンク
日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20131022.html
日本年金機構「平成28年10月より短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が始まります」
http://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2016/0516.html


(小浜ますみ)

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