大熊が会社に到着すると、服部社長の姿が見えた。
服部社長:
 大熊さん、こんにちは。
大熊社労士:
 こんにちは。社長、今日は社内にいらっしゃったのですね。4月に向けて何かとお忙しい時期ですよね。
服部社長服部社長:
 はい、何かと気忙しい時期です。働き方改革の法案の動きも気になるところですが、我が社も人手不足を少しでも解消するために、4月からパートさんについて、勤務日数を増やせる方には増やしていただこうということで、3人のパートさんがこれまでの週3日勤務から5日勤務の変更に承諾して下さいました。
大熊社労士:
 そうですか。3人も承諾されたのですね。それはよかったです。
福島さん:
 3人は既に雇用保険には加入しているのですが、正社員の4分の3以上の勤務時間となりますので、社会保険の加入手続きを進めなくてはいけませんね。
大熊社労士:
 はい、そうしてください。
宮田部長:
 そういえば、その中のあるパートさんが、4月に子どもの入学式に出席したいということで、年次有給休暇の届出がありました。
服部社長:
 そうですか、それは大事なイベントなので、しっかり出席してきて欲しいですね。
宮田部長宮田部長:
 そこで先生にお聞きしたいのですが、今回の3人のパートさんは4月1日から週5日勤務になりますが、1日の勤務時間は皆さん7時間のままで以前と変わりはありません。よって入学式に年次有給休暇を取った日は、7時間分の賃金を支払うということでよろしいですよね?
大熊社労士:
 はい、御社は時給制の方の年次有給休暇取得日の賃金は、通常支払われる賃金を支給されていますので、それで問題はありません。
宮田部長:
 ちょうど4月1日で年次有給休暇が発生する日なのですが、今回発生する年次有給休暇は、直近1年間が週3日勤務でしたから、3日の欄を見て比例付与すればよいですよね?
大熊社労士:
 それは違います。
宮田部長:
 えっ?どういうことですか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい。整理しますと、パートさんは勤務日数や勤務時間等、契約内容が変更となることも多いですが、年次有給休暇の付与日数については、年次有給休暇付与発生日の契約内容に基づき付与することになります。今回のように、契約変更日と年次有給付与日が同じ4月1日になった場合は、4月1日時点の契約が週何日勤務なのかで考えます。よって今回は週5日の欄を見ることになります。
宮田部長:
 ええっ!?年次有給休暇って、この1年間勤務したことで発生しますよね?勤務してきた日数は週3日なのに、年次有給休暇発生日から勤務日数が増えたからといって、週5日として付与しなければいけないのですか!
大熊社労士:
 あはは、宮田部長のご意見もごもっともです。しかし、反対のケースもあります。週5日勤務から週3日になった場合は、付与日数が減ることになります。直近1年間の勤務実績は、あくまで8割の出勤率を見るためにあります。
服部社長:
 なるほど、そういうことですか。パートさんは勤務日数や勤務時間等、契約内容が変更となることも多いですから、付与日数については付与日の労働契約に基づくという一定のルールが必要ですね。
福島照美福島さん:
 そうすると、年次有給休暇が発生する日までに勤務日数の契約変更があっても、次の付与日までは、付与日数は増えたり減ったりしないってことですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。
宮田部長:
 んんっ?では、次の付与日までに勤務時間の変更があった場合は、どうなるのですか?
大熊社労士:
 宮田部長、いい質問ですね。勤務時間の変更があった場合は、年次有給休暇取得日当日の勤務時間数の時給を支払うことになります。
宮田部長:
 あ〜、またまた解せないな。付与日数は付与日当日の契約内容で発生するけど、年次有給休暇を取得した日は、変更後の契約時間数で支給するとは、一貫性がないような…
大熊社労士:
 あはは、そうですね。確かに、御社のように通常支払われる賃金を支給することになっている場合はそうなりますね。しかし、年次有給休暇の賃金の支払い方は、他に平均賃金で支払う方法や、社会保険の標準報酬日額で支払う方法もありますので、一貫性を持たせることもできます。
服部社長:
 なるほど。パートさんは日によって勤務時間が違う人もいるだろうから、そういったことも考慮して、年次有給休暇の賃金の支払い方が決められているのですね。よくわかりました。
宮田部長:
 あちゃちゃ、なんだか騒いだのは自分だけだったな〜。
福島さん:
 うふふ、でも宮田部長のおかげで、パートさんの年次有給休暇の取扱いの整理ができました。ありがとうございます。
服部社長:
 年次有給休暇については、皆さんの関心も高いですから、運用を間違わないようにしてください。
宮田部長:
 はい、わかりました(苦笑)。
服部社長:
 今回のように、入学式出席のために年次有給休暇の届出も出てきていますから、今後、我が社も働きやすさをもっと考えていかなければいけませんね。宮田部長、何か休暇制度を検討するようにしましょう。
大熊社労士:
 休暇制度を導入するにあたっては、どんな制度があったらよいか従業員の方にアンケートを取って検討するなどの方法もありますので、またご連絡ください。
宮田部長:
 はい、よろしくお願いします!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回は、年次有給休暇の取扱いについて確認しました。特にパートタイマーで時給制の方については、勤務日数、勤務時間の契約変更が多くあると思います。付与日数については、付与日当日の労働契約内容で日数を判断し、年次有給休暇の賃金を通常の賃金で支払っている場合の付与時間は、年次有給休暇取得日当日の時間数となります。直近1年間の勤務実績に基づいて付与日数を考えるなど、誤った判断をしないように注意が必要です。

[参考通達]
労働基準法第39条関係通達【S63.3.14基発150号】:「所定労働日数の変更」
年度の途中で所定労働日数が変更された場合、休暇は基準日において発生するので、次の基準日まで付与日数は変更しない。
参考リンク
厚生労働省:「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」Q&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html

(小浜ますみ)

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