大熊が会社を訪問すると、福島さんが書類を作成していた。


大熊社労士:
 こんにちは、福島さん。何の書類を作成されているのですか?
福島さん:
 こんにちは、先生。いま社会保険の月額変更届を作成していました。マイホームを建て新居へ引っ越した社員がいて、通勤手当がアップしたために月額変更に該当したのです。
宮田部長宮田部長:
 その社員は会社から遠くても、子育てによい環境がいいということで、郊外の静かな住宅街に家を建てたから、通勤手当がかなり上がったのじゃないかな。
福島さん:
 はい、2万円くらい上がりました。そして、通勤手当が上がった月からしばらく残業が多かったので、標準報酬月額がかなり上がってしまいました。
大熊社労士:
 何等級上がったのですか?
福島さん:
 28万円から36万円になり、4等級もアップしました。
宮田部長:
 うわぁ、それは凄いな。確かに少し前まで受注が増えて現場もフル稼働していたからなぁ。
福島照美福島さん:
 4等級アップの月額変更届は、これまでになかったと思います。いまは残業もあまりしていないので、毎月36万円も支給されるわけではないですが、やはりこの4等級アップの月額変更届を提出しなければいけませんよね?
大熊社労士:
 そうですね。結論は提出するということになると思いますが、再度月額変更の3つの要件を確認しましょう。
昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。
変動月からの3ヵ月間に支給された給与(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
3ヵ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
 この3つですね。
福島さん:
 そうですね。
大熊社労士:
 それでは、今回のケースをこの3つの要件にあてはめていってみましょうか。まず、について、定期代は毎月定額ですから、固定的賃金に該当しますね。は、現行の標準報酬月額と新標準報酬月額は4等級の差がありますから、これも該当です。そしてですが、定期代が上がった月から3ヵ月間に支払われた給与は、各月とも17日以上の支払基礎日数がありますか?
福島さん:
 はい、3ヵ月とも欠勤はないので、17日以上の支払基礎日数はあります。
大熊社労士:
 そうすると、3つのすべての要件を満たすので、やはり今回、月額変更届の提出は必要となります。
宮田部長:
 う〜ん、要件は該当しているとはいえ、今後の給与額とかけ離れた金額となることについては解せないなぁ。
大熊社労士:
 はい、そのような声も多くあり、この秋、平成30年10月から月額変更の新たな取扱いが始まることになっています。
宮田部長:
 えっ、どんな取扱いが始まるのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、ご説明します。通常の方法の月額変更が著しく不当であると認められる場合は、新たに保険者算定の対象となります。通常の月額変更で算出した標準報酬月額と、昇/降給後の3ヵ月とその前9ヵ月の12ヵ月の月平均額で算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差があり、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合で、かつ現在との標準報酬月額との差に1等級以上の差がある場合は、通常の月額変更ではなく、年間平均の標準報酬月額にすることができるというものです。
宮田部長:
 はぁ…、もうついていけないな〜。
福島さん:
 その取扱いは、算定基礎届のときに保険者算定となる年間平均の標準報酬月額と同じってことですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。福島さん、素晴らしいですね。年間平均の標準報酬月額の取扱いは、これまで算定基礎届のみでしたが、月額変更届も利用できるようになります。端的にいうと、3ヵ月平均と12ヵ月平均で計算した標準報酬月額が2等級以上の差があり、年間平均の方が低かった場合は、年間平均の標準報酬月額で提出ができるということです。
宮田部長:
 そういうことか、それは朗報ですな。今回も年間平均を使いたいものです!
大熊社労士:
 宮田部長、気が早いですね。そもそもまだこの制度はスタートしていませんし、年間平均を利用する場合は、本人の同意も必要となりますので、忘れないようにしてくださいね。
宮田部長:
 同意ですか?
大熊社労士:
 はい、標準報酬月額は、老齢年金や傷病手当金の給付の金額にも関わることですから、被保険者に不利益とならないように、同意を必要としています。
福島さん:
 これから10月以降の月額変更は、年間平均でも計算してみた方がいいってことですね。
大熊社労士:
 そうですね。今回のように、大幅アップしたような場合は、ご連絡ください。年間平均の適用となるかどうか、一緒に確認しましょう。
福島さん:
 はい、わかりました。その際には、よろしくお願いします!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス

 こんにちは、大熊です。平成30年10月より月額変更の取扱いが変わります。これまで算定基礎届のみ適用が認められていた年間平均の取扱いが、月額変更届でも利用できるようになります。通常の月額変更で現行の標準報酬月額と3等級以上の差が生じた場合は、年間平均が適用できる可能性があります。厚生労働省より年間平均の取扱いQ&Aが出ていますので、詳細を確認しておきましょう。
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T180305T0030.pdf

[関連通達]
「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」の一部改正に伴う事務処理について(平成30年3月1日保保発0301第1号・年管管発0301 第4号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T180305T0020.pdf
「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」の一部改正に伴う事務処理について」に関するQ&Aについて(平成30年3月1日事務連絡)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T180305T0030.pdf

関連blog記事
2018年3月6日「10月1日より新たに始まる社会保険の月額変更における年間平均の取扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52146779.html

参考リンク
日本年金機構「定時決定のため、4月〜6月の報酬月額の届出を行う際、年間報酬の平均で算定するとき」
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hoshu/20141002.html


(小浜ますみ)

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