定年退職後の嘱託社員から老齢年金について質問があったとのことで、大熊は服部印刷を訪れた。
大熊社労士:
こんにちは。
福島さん:
こんにちは。先生。
宮田部長:
先日、定年退職後の嘱託社員から、老齢年金について質問があったのですが、私は全然答えられませんでしたので、教えてください。
大熊社労士:
はい、わかりました。どういった質問でしょうか?
宮田部長:
その嘱託社員は、今年から老齢年金を受けられるとのことで、手続きを進めているようです。働きながら年金を受給すると年金が減額されるので、年金を受け取らずに繰下げして増やした方がいいのではないか、という質問があったのです。
福島さん:
確かに!私もその嘱託社員と同じ立場だったら、会社で働いているうちは、年金をもらわずに年金を増やす方法を考えますね。
大熊社労士:
なるほど、よく受ける質問です。結論から申し上げますと、65歳未満の老齢年金は増やすことはできません。増やすことができる年金は、65歳以上の年金となります。
福島さん:
え〜、65歳未満の年金は増やせないのですか〜。
宮田部長:
やっぱりそうですかぁ。年金を増やせることは知っていましたが、65歳未満の年金が対象かどうか、自信がなくて…。
大熊社労士:
65歳未満の年金が増えるのでしたら、65歳まで勤務している方は、みなさん年金を受け取らずに繰下げて、増額する方法を取るでしょうね。65歳未満の老齢年金、すなわち特別支給の老齢厚生年金は65歳になるまでの有期年金という位置づけであり、本来の老齢年金の役割である終身年金ではありませんので、繰下げの制度は設けられていません。ちなみに繰下げの増額率は、繰下げる月数×0.7%で非常に利率がいいです。
福島さん:
それでは、反対に繰上げることもできないのですか?
大熊社労士:
いいえ、繰上げることはできます。特別支給の老齢厚生年金は、現在生年月日に応じて支給開始年齢が引き上がっていますので、例えば63歳からしか受給することができない人は60歳になった時点で老齢年金を受給する要件を満たしている場合は、いつでも繰上げ請求することが可能です。
宮田部長:
ふう〜ん。繰下げはできないけど、繰上げはできるのですね。でも、繰り上げたら、年金は減額されてしまいますよね?
大熊社労士:
はい、繰上げる月数×0.5%の減額となります。また、65歳から受給する1階部分の老齢基礎年金も同時に繰上げとなり、同率で減額され一生涯減額が続くことになります。
宮田部長:
なるほど。
福島さん:
それでは、65歳からの年金は繰下げができるとのことですが、繰下げる場合は、1階部分の老齢基礎年金と2階部分の老齢厚生年金と両方繰下げるということになるのですか?
大熊社労士:
はい、両方繰下げてもいいですし、老齢基礎年金だけ、老齢厚生年金だけ、ということもできます。
宮田部長:
んん?65歳以降も働いている人は、どうなるのですか?65歳未満のときと同じで、老齢年金が減額されるなら、繰下げることを考える人もたくさんいると思うのですが…。
福島さん:
そうですよね!65歳未満の年金は繰下げできないけど、65歳以降の年金は繰下げできるのであれば、そうしたいですよね。
大熊社労士:
はい、65歳以降の年金は繰下げできるのですが、繰下げしなければ減額された在職老齢年金を受給することになる場合は、その在職老齢年金額のみが増額の対象となります。本来の満額の年金額が増額になる訳ではありません。ただし在職老齢年金となるのは、2階の老齢厚生年金のみで1階の老齢基礎年金は減額されることはありません。
宮田部長:
はぁ〜、よく仕組みが考えられていますな〜。
大熊社労士:
そうですね。よく経営者の方から、65歳以降の年金も、老齢厚生年金が全額不支給となるから繰下げしたい、というご相談を受けることがあります。
福島さん:
それで、全額不支給となる老齢厚生年金を繰下げた場合、どうなるのですか?
大熊社労士:
はい、全額不支給の場合は、繰下げしても増額されません。
宮田部長:
ああ〜、やっぱりそうか〜、うまくできてますね。
大熊社労士:
あはは(笑)、本来は全額不支給となる年金なのですから、繰下げるものがないって考え方ですね。
福島さん:
なるほど、よくわかりました。
宮田部長:
年金は本当に難しいですね。また嘱託社員から質問があるかも知れません。そのときはまた先生にお聞きします。
大熊社労士:
はい、いつでもご連絡ください。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は在職老齢年金の繰下げについて確認しました。老齢年金は65歳未満と65歳以上の年金とでしくみが異なります。65歳未満の年金は繰下げ制度はありませんので、支給開始年齢になったら速やかに手続きをして受給するようにしましょう。65歳以降の年金については、老齢基礎年金、老齢厚生年金の両方、いずれか1つのみでも繰下げることは可能です。繰下げまたは繰上げを検討する場合は、年金事務所でも相談が可能ですので、よく確認してから手続きを行うようにしましょう。
参考リンク
日本年金機構「年金の繰下げ受給」
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
日本年金機構「老齢厚生年金の繰上げ受給」
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-04.html
(小浜ますみ)
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