大熊が服部印刷に到着すると、服部社長を筆頭に宮田部長、福島さんの顔が目に入ってきた。


福島照美福島さん:
 大熊先生、こんにちは。来月から従業員の1名が産前産後休業(以下、「産休」という)に入ります。そして、育児休業(以下、「育休」という)も取得した上で、職場復帰したいと言っています。
大熊社労士:
 御社でも産休・育休を取得して復帰するという流れが当たり前に定着してきましたね。
宮田部長:
 ええ。職場の雰囲気も相当変わりました。以前は「育休を取っても復帰しないよね?(復帰してもらうと人員調整の面で困るんだけど)」という雰囲気がありましたが、最近は人手不足で採用もなかなか厳しくなっているという現状を分かっているようで、「育休を取ってなるべく早く復帰してね」という雰囲気になっています。
大熊社労士:
 なるほど。
福島さん:
 産休・育休の期間、誰が仕事を担うのかという問題はあるのですが、逆にこれをきっかけとして、業務のムダ・ムラをなくそうという考えも出てきました。
服部社長服部社長:
 働き方改革で「生産性向上」というけれども、なかなか現体制で考えろと指示を出しても効果を上げるのは難しく、本当にやらなければならない必要性を真に従業員が感じた上で行動すること、これが高い効果を上げることになるのかなと思います。
大熊社労士:
 確かにそれはありますね。
福島さん:
 それで、私も生産性の向上の一つとしたいと思いまして!
大熊社労士:
 ん?どんなことを考えていらっしゃるのですか?
福島さん:
 はい。その育休を取る従業員なのですが、雇用保険の育児休業給付を毎月、申請しようと考えています。確か少し前から毎月申請が可能になりましたよね?
大熊社労士:
 ええ、以前は2ヶ月に1回でしたが、確かに毎月の申請も可能になりましたね。
福島さん:
 私が育休を取っているとき、これまでお給料を毎月もらっていたのに、2ヶ月に1回って、制度として分かってはいても寂しいなぁと感じました。なので、彼女は毎月申請をしてあげようと思っています。ただ、申請書に署名・捺印をもらうのが案外手間で...。そんなときにいろいろ調べていたら、新しい署名省略をできる制度が始まったと目にしたものですから、その内容を教えていただきたいなぁと思っていたのです。
大熊社労士:
 なるほど、10月から始まった制度ですね。前提から確認をすると、育児休業給付は育児休業を取得している従業員に支給されるものですから、申請書に従業員の署名(または記名・押印)が必要になります。そして、休業していることの証明等のために会社も押印し、原則として会社を通じてハローワークに申請することになっています。
服部社長:
 なるほど。
大熊社労士大熊社労士:
 そのため、申請の度に従業員の署名をもらう手間が発生し、特に育児休業を取っている場合には、例えば申請書を郵送して署名をもらい、返送をしてもらう必要がありました。郵送の手間に郵便料金もかかり、また、日数かかることになります。
福島さん:
 特に記載する内容は、全日休んでいて、給料も支払われないというものですので、それを確認して申請書に署名するってどうなのかな、と思ったりして。
大熊社労士:
 そうですよね。今回、変更になったのはまさにその部分でして、申請内容等を事業主が従業員に確認し、従業員と合意のもと「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」を作成して保存することで、従業員の署名・押印を省略することができるようになりました。同意書はこのようなものであり、3つ目の「雇用保険法施行規則第101条の13の規定による育児休業給付金の支給申請について同意します(今回の申請に続く今後行う支給申請を含む。)。」にあるように、申請ごとの確認の同意もこの書面で対応ができることになっています。
福島さん:
 ということは、育休に入る前に説明をして、この同意書に署名をもらえばよいのですね?
大熊社労士:
 はい、そういうことになります。
宮田部長:
 育休に入る前であれば、郵送などの手間はないので、助かるね。
福島さん:
 そうですね。ただ、そのときには申請書の従業員が署名する欄はどのようにすればよいのですか?空欄でも問題ないのでしょうか。
大熊社労士:
 空欄では、署名が漏れているのか、同意書を取っているのか分かりませので、「申請について同意済」と記載することになっています。賃金を登録するときの署名欄も同様ですので、ご注意くださいね。
福島さん:
 承知しました。これで手間が軽減されそうです!ちなみに、同じ雇用継続給付である高年齢雇用継続給付や、介護休業給付も同じ考え方でよいのですよね?
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。厚生労働省からは育児休業給付も含め、それぞれの書式をご案内しておきますね。
【同意書の各記載例】
高年齢雇用継続給付用
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55672328.html
育児休業給付金用
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55672329.html
介護休業給付金用
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55672330.html
宮田部長宮田部長:
 2ヶ月に1回の申請が毎月になると、手間がかかり、それこそ生産性が低くなると思いがちですが、総務のお客様は従業員であるという考えもありますので、可能な手間は削減し、従業員満足が向上するような体制をとっていきたいと思います。
大熊社労士:
 そうですね。あ、最後にお伝えしておくと、同意書をハローワークに提出することはありませんが、4年間の保存義務がありますので、きちんと保存のほうはよろしくお願いいたします。
福島さん:
 了解しました。細かな点まで教えていただきありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。申請書へ署名を省略できることで、手間は削減されますが、申請漏れの心配が起きてきます。スケジュール管理をしっかりとすると共に、例えば従業員に、「毎月○日までに振込みがされない場合には、会社に連絡してください」といった流れを作ることも対策の一つかと思います。制度を押さえしっかりと対応できるようにしましょう。


関連blog記事
2018年10月9日「雇用継続給付 署名を省略するときの申請方法と公開されたリーフレット」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52159559.html
2018年10月3日「雇用保険継続給付の被保険者の署名・押印を省略するための様式が公開に!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52159201.html

参考リンク
厚生労働省「平成30年10月1日より事業主等が雇用継続給付のお手続きを行う場合、被保険者の署名・押印を省略できる場合があります。」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150982_00001.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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