大熊が服部印刷に到着すると、少し曇った福島さんの顔が目に入った。
福島照美福島さん:
 大熊先生、先日、引越しをした従業員がいるのですが、バスと電車を乗り継ぐこともあり、交通費が2万円強あがり、更に残業が多かったため、月額変更で4等級(160千円→200千円)も上がってしまうことが分かりました。
宮田部長:
 それってさ、なんだっけ、あの1年間をならしてみる方法、使えないのかな?
大熊社労士:
 とても目のつけどころがいいですね。いわゆる「年間平均」ですね。この年間平均の取り扱いは、これまで算定基礎でしか認められていなかったのですが、ちょうど10月1日から月額変更でも認められるように取扱いが変更となったところです。
福島さん:
 そうですか!であれば、該当する可能性があるかも知れませんね!大熊先生、月額変更の年間平均はどのように見ていくのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい。まずは通常の月額変更に該当するかを確認します。今回の方は8月に支給した給与から固定給の通勤手当が上がり、月額変更になるということでしたよね。ですので、8月・9月・10月の給与の平均から算出すると、標準報酬月額200千円となる。
福島さん:
 はい、そうです。
大熊社労士:
 次に、1年間で平均したときの標準報酬等級を出してみます。
福島さん:
 1年ということは、去年の11月から今年の10月までを平均するということですか?
大熊社労士:
 本当はそうしたいところですが、少し注意が必要です。まず、固定給は昇給した月から3ヶ月間を平均します。今回であれば、8月・9月・10月の3ヶ月ですね。そして、残業などの変動給は、去年11月から今年の10月までの値を平均します。
福島さん:
 そっか、固定的賃金も1年間を取ってしまうと、変動前の固定給も平均の中に入り、今回の場合には平均が下がってあまり根拠のない数字になりそうですね。
大熊社労士:
 そうなのです。あくまでも変動給が多いことで不自然に標準報酬月額があがることを問題としているのでしょう。さて、平均した固定給および変動給を合計した金額(年間平均)から、標準報酬月額を確認するわけですが、このとき、通常の月額変更と年間平均に2等級以上の差が必要になります。
福島さん:
 私が給与計算をしてきた記憶では、忙しくなる前は残業があまりない従業員でしたので、多分、2等級以上の差があるように思います。
大熊社労士:
 なるほど、ではこの要件はクリアかも知れませんね。そして、次に、いまの標準報酬月額と、年間平均の標準報酬月額に1等級以上の差が必要になります。いまの標準報酬月額が160千円ですので、年間平均をしたときには、170千円以上であることが求められます。
福島さん:
 そもそも固定給の変動があり月額変更に該当するにも関わらず、年間平均だといまの標準報酬月額のまま、つまり月額変更に該当しないというのは変な話ですものね。
大熊社労士:
 そうですね。
宮田部長宮田部長:
 福島さんが持っている感覚だとこんな感じかな?
 標準報酬月額
  160千円 現在
  170千円 ←年間平均?
  180千円 ←年間平均?
  190千円
  200千円 通常月変
  220千円
福島さん:
 そうですね。今回、固定給が1ヶ月あたり2万円強増えているので、1ヶ月あたりにしても5,000円増えています。残業をならすと、1ヶ月あたり6千円〜7千円かなぁと思っているので、確かに170千円か180千円になりそうですね。
大熊社労士:
 さすがですね。
宮田部長:
 いずれにしても、細かな計算をしないといけないので、まずは計算してみよう。
福島さん:
 そうですね。早速やってみることにします。
大熊社労士:
 よろしくお願いします・・・といいたいところですが、最後にもう一つ要件があります。実は、月額変更の年間平均の要件として、通常の月額変更と年間平均の差が業務の性質上例年発生することが見込まれ、かつ、固定的賃金の変動も、業務の性質上例年発生することが見込まれることというものがあります。残業については、例年発生しているかも知れませんが、引越しは定期的ではないでしょうから、結果、年間平均を利用できないという可能性が高いかと思います。
宮田部長:
 え!そんな要件もあるのですね。大熊先生早く言ってくださいよ〜!
福島さん:
 きっと、年間平均を事例で分かるように説明してくださったのですよね。ありがとうございます。今回は従業員に説明をして理解してもらうようにしますね。
大熊社労士:
 はい、よろしくお願いいたします。あ、もし、年間平均を使うようであれば、算定と同じように、「年間報酬の平均で算定することの申立書」と「保険者算定申立、標準報酬月額の比較、被保険者の同意等」の提出が必要になりますので、お気をつけください。
福島さん:
 了解しました。細かな点まで教えていただきありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は新しくできた月額変更の年間平均について確認しました。該当するかの判断を行う要件が複雑ですが、社会保険料の負担はかなり大きくなっているので、該当する可能性があるときには、しっかりと確認するようにしましょう。
参考リンク
日本年金機構「随時改定の際、年間報酬の平均で算定するとき」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hoshu/20180910.html

(宮武貴美)
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