大熊社労士の分かりやすい人事労務管理相談室

人事労務コンサルタント大熊が人事労務管理の様々な問題をストーリー仕立てで解決します!

福利厚生

借上げ社宅費を社会保険の報酬に入れ忘れていませんか?

 服部印刷では、3名の新入社員が入社し、4月がスタートした。


大熊社労士:
 こんにちは。
福島さん:
 こんにちは、先生。
宮田部長:
 先程、無事入社式が終わりました。
大熊社労士:
 そうですか。今年は3名の方が入社されたのですね。
宮田部長宮田部長:
 そうです。今週中はビジネスマナーや社内ルールなどの集合研修を行った上で、来週からは現場でしっかり研修を積んでもらいます。
大熊社労士:
 そうなのですね。さて、福島さん。社会保険、雇用保険の手続きは順調ですか?
福島さん:
 はい、今日すべての情報がそろったので、手続きを進めます。
宮田部長:
 新入社員のうちの1人は、社長のお知り合いのお子さんなんです。将来は父親の事業を継ぐそうですが、それまでみっちり我が社で研修するそうです。
大熊社労士:
 そうですか。しっかり成長してもらって、将来的には、御社の良きパートナーとなればいいですね。
宮田部長:
 はい、その目的のようです。
福島さん:
 この社員ですが遠方の方なので、当社がアパートを借上げて、そこに住んでもらうようにしました。
宮田部長:
 先月、アパートの物件探しも一緒に行ってきましたよ。見て回るのも大変だったなぁ。
大熊社労士:
 それは、お疲れ様でした。ところで、アパートの家賃は全額御社負担ですか?
宮田部長:
 いいえ、本人にも負担してもらっています。確か…。
福島さん:
 25,000円です。今月から給与天引きします。
大熊社労士:
 一部を本人が負担しているのですね。その負担額によっては、社会保険の現物給与として含める必要があるかどうか確認しなければいけませんね。
宮田部長:
 ありゃりゃ〜。現物給与とは、確かにそんな取扱いもあったな〜。
福島照美福島さん:
 会社が借上げするパターンは初めてのことで、私も現物給与のことまで考えが及びませんでした。具体的にどう確認すればよろしいですか?
大熊社労士:
 はい、社会保険では、給与や賞与の全部または一部が通貨以外のもので支払われる場合の現物給与の価額として、厚生労働大臣が定めています。この現物給与の価額は毎年4月に改定されています。
宮田部長:
 ふう〜ん。現物給与の価額というものがあったのですね。
大熊社労士:
 はい、リーフレットで今年の価額を見てみましょう。会社の所在地は、愛知県ですから、畳1畳につき1,470円となります。部屋の広さは何畳になりますか?
福島さん:
 6畳1間とキッチンです。
大熊社労士大熊社労士:
 キッチンやトイレ、廊下などの部分は換算せず、あくまでも居間などの居住用の部屋のみが対象となります。そうすると、6畳×1,470円=8,820円ですから、この8,820円と自己負担額とを比較します。
宮田部長:
 自己負担額は25,000円ですから、自己負担額の方が多いです。
大熊社労士:
 自己負担額が多ければ、現物給与に該当しません。結果、報酬に含める必要はありません。
宮田部長:
 それでは、自己負担額が少なかった場合は、現物給与として含めるってことですか?
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。含める金額は、現物給与の価額から自己負担額を差し引いた額となります。
福島さん:
 なるほど。そのように考えるのですね。今回は報酬に含める必要がなく安心しました。
宮田部長:
 しかし、現物給与のことは盲点だったな〜。
大熊社労士:
 そうですね。ここはよく見落とされるポイントですので、今回現物給与のことも認識いただけてよかったです。それにしても、今後の新人さんたちの成長が楽しみですね。宮田部長も、しっかりフォローをお願いします!
宮田部長:
 はい、わかりました!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス

 こんにちは、大熊です。今回は、現物給与の取扱いについて確認しました。借上げ社宅や寮費、食事の供与など、現物支給している場合には、それが現物給与に該当するかどうかの確認が必要です。健康保険、船員保険、厚生年金保険および労働保険においては、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額(平成24年厚生労働省告示第36号)」として毎年4月に改定、告示されます。その価額に基づき、現物給与に該当した場合には、社会保険の報酬に含め標準報酬月額を決定することが必要です。住宅と食事の供与ではそれぞれ算出方法が異なりますので、リーフレットを確認し、正確に算出するようにしましょう。
参考リンク
日本年金機構:「平成30年4月から現物給与の価額が改定されます」リーフレット
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150511.files/2018.pdf

(小浜ますみ)

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保存有給制度を導入して欲しいと社員から要望がありました

 服部印刷にはいくつか良い点がある。その中でも服部社長の社員に対する考え方が素晴らしい。服部は父親が創業した服部印刷の2代目社長であるが、大学を卒業後の数年間、ある大手の印刷会社に就職をした。その会社は、強力なオーナー社長がまるで独裁政治を敷いているような状態で、また社内の派閥争いが激しく、社員は常に上司の顔色を伺いながら仕事をしているような状態であった。また過剰な顧客第一主義により、社員は常にお客様の無理難題に苦しめられ、労働時間もいまで言えば、過労死認定基準を超えるような状態が続いていた。そんな苦い思い出があるだけに、社長に就任してからの服部は、社員が安心して、快適に働くことこそが、良い仕事に繋がるという信念を持って、会社運営を行ってきた。そんな取り組みの一つとして、四半期ごとに開催されている社員懇談会がある。この社員懇談会では、社長と宮田部長が、社員有志と「どうすればもっと良い仕事ができるだろうか」という視点で、ざっくばらんに意見交換を行っている。労働組合のない服部印刷では、ここで様々な社員の意見を吸い上げ、会社の施策に反映させてきた。

 さて、そんな中、先日開催された社員懇談会で、社員より保存有給制度を導入して欲しいという要望が出された。しかし、服部も宮田も、それをどのように検討すれば良いのか、良く分からない。そこで大熊に相談することとした。


服部社長:
 大熊さん、当社で定期的に社員懇談会を開催しているのはご存知ですね?
大熊社労士:
 えぇ、例の「社懇」というものですよね。
服部社長服部社長:
 そうです、そうです。その社懇で、ある女性社員から「保存有給制度を導入して欲しい」という要望が出されたんですよ。当社では年次有給休暇は法律どおりに付与しているのですが、それを超える有給を認めるということになるようなので、対応に困っていしまいました。大熊さん、保存有給制度というのはどんなものなのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、保存有給制度とは、本来であれば消滅してしまう年次有給休暇を一定の日数まで保存し、私傷病などによる長期欠勤の際に取得できるようにする制度のことを言います。ご存知のとおり、労働基準法では入社し6ヶ月経過すると10日の年休が付与され、その後、勤続年数が1年増すごとにそれに対応した日数が毎年、付与されることになっています。また当年度中に取得できなかった場合には翌年度に限り、持ち越すことができることになっています。つまり入社して1年半を経過した時点で、前年度に1日も年休を取得していない場合には前年度分10日プラス、今年度分11日の合計21日の休暇が与えられることになります。
宮田部長:
 そうですね、当社でもそのように有給休暇の管理を行っています。
大熊社労士:
 一方で、この年次有給休暇は、付与から2年を経過するとその取得ができなくなり、権利が消滅してしまいます。保存有給休暇制度は、この消滅してしまう年休を積み立てておき、私傷病などによる長期欠勤の際など、特定の事由による休業の場合に限り、取得することを認めるという制度です。言ってみれば、福利厚生制度の一環といったところですね。
服部社長:
 なるほど、単純に有給休暇が増えるというのではなく、時効分を積み立てておいて、特定の事由の場合だけ取得を認めるのですね。これは社員にしてみれば、病気や怪我で長期欠勤しなければならない状況になっても一定の範囲で有給休暇が認められ、非常に大きな安心感に繋がりそうですね。ちなみに、この制度は多くの企業で取り入れられているものなのですか?
大熊社労士:
 えぇ、統計調査などがあるかは分かりませんが、私の感覚では中堅以上の企業では比較的よく見られる制度ですね。特に労働組合がある場合には、組合からこの制度の創設要求が出されることが多いようです。
服部社長:
 そうですか。宮田部長、どうだろう。せっかくの社懇での提案だし、ここは4月から当社でも導入してみてはどうだろうか?
宮田部長宮田部長:
 はい、社長。私も賛成です。現実問題として、取得事由を私傷病による長期欠勤に限れば、それほど頻繁に適用者が出るような制度でもないと思いますので、コスト的にも影響は少ないと思います。是非、導入してあげましょう。それでは大熊さん、具体的に導入を考える場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?
大熊社労士:
 具体的な運用においては、まずは以下の5点のルールを定めることが必要となります。
保存有給休暇としてストックできる年休の上限日数
保存有給休暇を取得できる事由
年次有給休暇との兼ね合い(保存有給休暇は、法定の年休をすべて取得した後に初めて使用できるなど)
出勤率計算などにおける保存有給休暇取得期間の取扱い
保存有給休暇取得期間と休職の期間との関係
宮田部長:
 ありがとうございます。それでは早速案を作成してみます。完成したらメールでお送りしますので、チェックをお願いします。
大熊社労士:
 承知しました。これでまた社員のみなさんにとって安心して働ける会社に一歩近付きますね。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス 今日は最近の春闘での要求事項として出されることが多い保存有給制度について取り上げてみました。この制度は服部社長とのやり取りにもあるように、労働基準法に基づき付与された年次有給休暇のうち、時効で消滅する分を上限日数を設定した上で累積させ、取得事由を限定した上で恩恵的に取得させるというものになります。一般的には私傷病や介護、ボランティアなどをその取得事由として定めますが、企業としてはそれほど多くの負担なしに、利厚生の充実を図ることができるため、良い制度ではないかと考えています。実務上は就業規則に保存有給制度に関する簡単な規定を置いた上で、別途定める保存有給休暇制度運用規程にその詳細を定めることが通常です。社員が安心して働くことができる環境の構築のためにも、制度導入の検討をされてはいかがでしょうか?

[関連条文]
労働基準法第39条(年次有給休暇)
 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
※第2項以下省略
労働基準法第115条(時効)
 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。


関連blog記事
2006年3月8日[福利厚生]保存有給休暇制度の活用
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50440977.html

(大津章敬)

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大熊社労士
 中小企業を専門とする35歳の中堅人事コンサルタント/社会保険労務士。2005年に加藤社長の紹介から、服部印刷の適年改革を手掛ける。今回、服部社長より人事労務顧問を打診され、2007年より受託。
登場人物紹介:服部淳司
服部社長
 株式会社服部印刷の社長。服部印刷は中部地方にある社員数50名、資本金3,000万円の印刷業。1965年に服部社長の父が創業したが、2000年に創業者の死亡により、服部が2代目社長に就任。仕事には厳しいが、社員想いの優しい社長。
登場人物紹介:宮田和正
宮田部長

 株式会社服部印刷の総務部長。経理出身のため、人事労務は苦手。
登場人物紹介:福島照美
福島照美

 株式会社服部印刷の総務部担当者。高卒新卒入社の5年目社員。日頃は給与計算や人事労関連の手続、その他庶務を担当している。
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