2006年05月30日

空中庭園4

b61185b4.jpg










 何事もつつみ隠さず。秘密を作らず。ありのままを話す家族。

 郊外の団地に住む京橋家には、家族同士での秘密を持たないという約束事をしていた。

 長女のマナ(鈴木杏)は、自分の出生決定地が近所のラブホテル・野猿だと知っていた。

 ラブホテルには窓が無いという事を確認してみたいと思ったコウは、とある不動産屋を訪ねる。

 母の絵里子(小泉今日子)は、コウの家庭教師ミナ(ソニン)を家族の夕食に招待する事に。

 帰ってきた父・貴史(板尾創路)は、ミナを見て驚く。そう彼女は貴史の浮気相手だったのだ。

 揺れるカメラを見つめているうちに、次第に酔っていく。秘密を持たない家族は、実は家族のそれぞれが秘密を持っており、ルールを暗黙の内に破っている。

 映像は虚構の上に成り立った砂上の楼閣のごとき家族の暗部を少しずつ描きながらも、一見幸せそうに見える家族の崩壊図を細やかに見せていく。

 家族が本当の家族になる時とは一体、いつの事なのだろうか?二人の男女が結婚した時なのか。子供を授かった時なのか。それとも長い時を経て家族が形成されていくのかは、誰にも分からない。

 この世に、きっと正しい家族の在り方なんてものは無いと思う。ステレオタイプの幸せな家族だって、秘密を抱えているものだし、崩壊寸前の家庭だってひょんな事から幸せになってしまう事もあるのだろう。

 この物語は、この世にある一つの家族の姿を捉えていき、一人一人の家族の素顔を描き出して行く。外側から見れば・・・郊外の麗しき団地に住み、仕事に質実な夫、家庭を守る美しい妻、年頃の多感な女子高生、将来有望なスマートな中学生と絵に描いたような幸せな家族に見える。しかし、彼らは蓋を開けてみると、夫は浮気をし、妻は過去の秘密に縛られ、娘は学校という成り立ちを嫌悪し、息子は隠されたものを見ようとする。

 まさに、空中に浮かんだ不安定な庭園なのだ。

 そんな家族の虚ろさを見事に映像化し、出演するキャストの鬼気迫る演技には脱帽を超えて賞賛したい。家族の物語として、リアルで容赦無く嫌悪感を覚える構成は見事。

 小泉今日子のセリフの怖さ、板尾創路のボソッとなげくセリフの温かみ、鈴木杏の空虚感を表情で表すあたりは絵になっていて素晴らしい。

 そして、ラストにおいての雨のシーンは全てを流し、再生を象徴するものなのだろう。

 家族が再びそろった時、まだ皆の顔は見えない。だがこれから少しずつ本当の顔が見えてくるのだと思う。

監督 豊田利晃
出演 小泉今日子
   板尾創路
   鈴木杏
   大楠道代

kutyuteien-t
orange0802 at 22:52│Comments(2)TrackBack(3)映画 「か行」 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 空中庭園@ユーロスペース  [ ソウウツおかげでFLASHBACK現象 ]   2006年06月04日 01:43
曰く付き の本作は豊田利晃渾身作だった。製作委員会が公開にこぎつけて、監督は獄中にて何を思う。どうしてもそういう目で見てしまい、ドラッグ・ムービーの感を拭えない。 とにかく振り子のようにカメラが揺れる。様々なものを中心に置いて、縦横無尽に、時には1回転...
2. 空中庭園・・・・・小泉今日子  [ ぷち てんてん ]   2006年06月10日 20:20
新作4本を見終えたところで、また今日も新作を借りてきてしまいました。う〜ん、楽しみだけどがんばらないと。しかし私も暇人だね〜(笑)その前にとりあえず、この小泉今日子さんの『死んじゃえば!?』という切れっぷりが印象的なこの映画を。原作は読んであったんです...
3. 空中庭園  [ 悩み事解決コラム ]   2007年04月10日 12:27
{amazon}  角田光代原作・豊田利晃監督、映画『空中庭園』主人公 絵里子(小泉今日子)は家族には隠し事をしない、秘密を持たない というルールをあくまで貫徹させようとする。だが、夫、貴史も 姉マナも弟コウも秘密を全て話している仲の良い家族ごっこ

この記事へのコメント

1. Posted by 現象   2006年06月04日 01:48
これは僕の中では昨年の邦画ベスト1かも、
というぐらいグッときました。
というわけで古記事ですがTBさせていただきました。
カメラ揺れ揺れでしたね。
その危うい浮遊感、
吊るした糸は頑丈そうでいて実はほころんでいる。
しかしそこから再生も示唆されて、
あ、何だかまた見たくなってきました。
2. Posted by 現象さまへ orange   2006年06月06日 12:16
こんにちわ☆
コメント&TBありがとうございました〜!
ベスト1ですか〜!これは劇場で観たかったのですが、ついつい逃してしまった作品です。『青い春』『ナインソウルズ』よりも格段にアップした作品ですね。
カメラの浮遊感。セリフの切れ味。役者の演技の秀逸さが見事でした。
確かにもう一度観たい作品ですね♪

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
劇場公開作品

【2010年2月】

パレード★★★★

ルド and クルシ★★★

抱擁のかけら★★★

おとうと★★★★

インビクタス/負けざる者たち★★★★


【2010年1月】

ゴールデンスランバー★★★

ボーイズ・オン・ザ・ラン★★★★

フローズン・リバー★★★★★

Dr.パルナサスの鏡★★★

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女★★★

板尾創路の脱獄王★★★

かいじゅうたちのいるところ★★★

(500)日のサマー★★★★



【2009年12月】

誰がため★★★

蘇りの血★★★

アバター★★★★

のだめカンタービレ 最終楽章 前編★★★

THE 4TH KIND フォース・カインド★★

インフォーマント!★★★

ジュリー&ジュリア★★★★

パブリック・エネミーズ★★★

カールじいさんの空飛ぶ家★★★★


【2009年11月】

ニュームーン/トワイライト・サーガ★★

戦場でワルツを★★★★

2012★★★

イングロリアス・バスターズ★★★★★

脳内ニューヨーク★★★★

Disney’s クリスマス・キャロル★★★

ゼロの焦点★★★

大洗にも星は降るなり★★★

スペル★★★★★

【2009年10月】

わたし出すわ★★

風が強く吹いている★★★

母なる証明★★★★★

沈まぬ太陽★★★★

アンヴィル!夢を諦めきれない男たち★★★★★

パイレーツ・ロック★★★★

さまよう刃★★★

クヒオ大佐★★★

戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH★★

狼の死刑宣告★★★

悪夢のエレベーター★★★

エスター★★★★

パンドラの匣★★★★

カイジ 〜人生逆転ゲーム★★★

私の中のあなた★★★★

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜★★★

ワイルド・スピード MAX★★★

【2009年9月】

ドゥームズデイ★★★

男と女の不都合な真実★★★

あの日、欲望の大地で★★★★

アドレナリン:ハイ・ボルテージ★★★

空気人形★★★★

カムイ外伝★★★

プール★★

ウルヴァリン:X-MEN ZERO★★★

サブウェイ123 激突★★★

【2009年8月】

マーターズ★★★★

グッド・バッド・ウィアード★★★★

女の子ものがたり★★★★

ナイトミュージアム2★★★

20世紀少年 <最終章>ぼくらの旗★★

30デイズ・ナイト★★★

南極料理人★★★★

ノーボーイズ、ノークライ★★★

96時間★★★★

トランスポーター3 アンリミテッド★★★

キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語★★★

縞模様のパジャマの少年★★★★★

色即ぜねれいしょん★★★★

HACHI 約束の犬★★★

3時10分、決断のとき★★★★★

G.I.ジョー★★★

ボルト★★★★

サマーウォーズ★★★

コネクテッド★★★★


【2009年7月】

バーダー・マインホフ 理想の果てに★★★★

セントアンナの奇跡★★★

セブンデイズ★★★

アマルフィ 女神の報酬★★

ハリー・ポッターと謎のプリンス★★★

サンシャイン・クリーニング★★★★

モンスターVSエイリアン★★★★

ノウイング★★★

ごくせん THE MOVIE★★

MW -ムウ-






携帯から見れます☆
QRコード