2007年02月04日

フリージア4

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 敵討ち法とは、治安が悪化した戦時下の日本において成立し、一定のルールの下で犯罪被害者遺族が加害者に復讐できる法律の事である。

 敵討ち執行代理人となった叶ヒロシ(玉山鉄二)は、感情を表す事無く黙々と引き金を引き任務をこなしていく変わった男。

 そんな彼を敵討ち執行人にスカウトしたのはヒグチ(つぐみ)という執行機関で働く女性。2人にはある過去があり、そのおぞましい実験によって後遺症が残っていた。

 その実験とはフェンリル計画といい新型爆弾の対人実験。当時、その現場にいた少年兵は孤児たちを引率し、実験の対象とした。一方で計画に疑問を持った、少年兵のヒロシは現場から逃走し、そしてその現場の孤児の一人がヒグチであるという事は映像の語りから紐解かれる。

 民家と森での銃撃戦は次第に、協奏曲のように響き渡り、周りを省みない強引な上司・溝口(三浦誠己)は悪質な雰囲気を放ち、堅実な執行人・山田(柄本佑)は命の大切さを体感する。

 まるで機械のように機敏でソツのない動きをするヒロシは感情を無くしている。殺人マシンといえば聞こえは悪いが、これも実験の後遺症により、自分の痛みを感じる事が出来ない故、人の痛みも分かり難い。

 交錯する銃撃戦の舞台となるのは、普通の民家や光の届きにくい深い森という舞台設定が面白く。執行人が対象者を追い詰めていく緊迫感に、どこか間の抜けたようなシーンがあるのも演出的に抜群である。

 やがて、ヒロシはヒグチのある思いにより、かつての少年兵の上官トシオを対象者とした執行を行わなければならなくなる。トシオ(西島秀俊)は実験以降、軍から離れ、家族からも逃げ、整備工場に勤務しながらひっそりと暮らす。

 ヒロシとヒグチには、身体的な後遺症が残っているが、トシオは実験以降、外界と自分を遮断し、唯一の接点をメル友とのほのかな交流に捧げている。彼もあの実験の精神的な被害者であるのだ。

 感情を無くしたヒロシを演じたのは『手紙』『逆境ナイン』『NANA2』など、作品に出るたびに違う顔を見せる事の出来る俳優だ。今回も、心に血が通ってなさそうな人間像を不思議に熱演しスクリーンを魅了する。

 対峙するトシオには、西島秀俊。しっかりとした演技力で世界と遮断した男の悲哀を熱演する。ヒグチ役には『紀子の食卓』でも大活躍したつぐみ。こういう人間の均衡が危うい人物を演じると光るのは、演技だけでなく彼女の素敵なビジュアルも一役買っているだろう。

 展開される銃撃戦をポイントに置き、かつてあの場所で起った実験の痛みをぬぐうという使命をそれぞれに帯びなければ無くなったヒロシとヒグチとトシオ。それぞれの痛みはヒロシとヒグチの食事の風景とヒロシとトシオの対峙する戦いに象徴され幻想的な雪景色がどす黒い血を土に返していく。

 リアルなガンアクションから生み出される虚構の世界観がもたらした三者の戦いには、冷たい血が流れつづける。かつて起った出来事を死によって忘れる事も出来るのだろうが、彼らの心はフリーズしたまま動く事は無く、対峙した時に初めて感情が再燃し動き出すのだろうか。

 世界観や脚本で好みが分かれそうな今作だが、人が感情を無くし、そこから動き出そうとしていく様を幻想的な映像とスタイリッシュなアクションで構成していく展開劇には翻弄され、ラストに思わず心浸ってしまった。
 

監督 熊切和嘉
出演 玉山鉄ニ
   西島秀俊
   つぐみ
   柄本佑
   三浦誠己

2月3日 アミューズCQNにて鑑賞


『フリージア』
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2. フリージア@アミューズCQN  [ ソウウツおかげでFLASHBACK現象 ]   2007年02月08日 13:48
時代設定が過去や現在のものと比べ、未来はルールを自由に決められる点で融通が利く。さながら法をつかさどり、敵討ち法という復讐が合法化した近未来を描く。「青春☆金属バット」に続いて熊切和嘉はまた漫画を題材に選んだ。 戦災孤児を実験台にして瞬間凍結爆弾の威力...
3. フリージア  [ シャーロットの涙 ]   2007年02月09日 19:06
犯罪被害者が加害者を処刑できる「敵討ち法」 ルール・・・被害者(依頼人)は執行代理人に処刑を依頼し、加害者(対象者)は「警護人」を雇う事ができる 決められた区域で同等の武器、同数の銃弾、同人数で戦う・・・
4. フリージア  [ 映画通の部屋 ]   2007年02月10日 14:28
「フリージア」製作:2006年、日本 103分 PG-12指定 監督:熊切和嘉 
5. フリージア(映画館)  [ ひるめし。 ]   2007年02月12日 14:03
戦いの果てに人は何を見る。
6. 『フリージア』  [ ラムの大通り ]   2007年02月13日 00:16
----また、玉山鉄二だ。 彼、最近よく映画に出ているよね? 「うん。ただ、隙のないほどの美形だからなあ。 作品が限られてくるんじゃないかと思ったけど、 なるほどこんな使い方もあるのか…って、 この映画を観ながら、そう感心したね」 ----確か、原作は松本次郎という人...
7. 『バブルへGO! タイムマシンはドラム式』  [ ラムの大通り ]   2007年02月13日 00:45
----これホイチョイ・プロダクションズの映画でしょ? いいところに目をつけたよね。 彼らって、あのバブルの時代を象徴してた気がするもの。 いろんなブームを仕掛けてさ。 「またまたフォーンの年齢が分からなくなってきた(笑)。 でも確かにそうだよね。 彼らの代表作『...
8. フリージア  [ 八ちゃんの日常空間 ]   2007年02月17日 01:09
ごめん、外した〜〜〜 個人的には、期待はずれ。なかなか面白い発想とストーリーなんだけど、どうも自分のツボからずれている…。玉テツ格好いいんだけどなぁ〜。つぐみ可愛いんだけどな〜。
9. 「フリージア」映画感想  [ Wilderlandwandar ]   2007年02月17日 08:08
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[ フリージア ]をアミューズCQNで鑑賞。 本作は、松本次郎原作のコミックの映画化。 監督は熊切和嘉。脚本はもちろん熊切監督の盟友、宇治田隆史。熊切と宇治田は原作を大胆にアレンジして、単なるバトルムービーをヒューマンドラマとして仕上げている。
13. 【2007-45】フリージア  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年03月30日 23:19
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漫画実写映画、玉山鉄二主演「フリージア」をレンタル。 バイオレンスシーン、グッド! 最初の女の人の、撃たれた後の倒れ方とか、好き好き。 賛否両論らしいんすが、個人的には『あり』かと。原作を知ってるからか?(8巻まで読んでます) 鴻上尚史さん扮するヤク....

この記事へのコメント

1. Posted by りん!   2007年02月05日 15:06
やっぱ映画ですよね!当地では フリージアは・・・やらないです!
2. Posted by りん!   2007年02月05日 15:08
すいません。ルールしりませんでした。今週は 「どろろ」でした!
3. Posted by ジグソー   2007年02月06日 01:22
どうも!
邦画でこんなにガンアクションがカッコいい映画を観たのは始めてでした!
リアル系でとっても臨場感溢れてましたね!
さらにこの映画は映像にこっててスタイリッシュでいいですよね。
ナポリタンを食ってて、外は乱闘のシーンはシュールで印象的でした。

4. Posted by 現象   2007年02月08日 13:53
んー、ちょっと消化不良でした^^;
西島秀俊が好きなんで、
主人公との対峙、コントラストは秀逸に思えました。
三者三様のトラウマが描かれてちゃんと掘り下げてるなぁと、
小規模の中でガンアクションもちりばめられ、
あ、やっぱりまあまあ良かったかもw
5. Posted by シャーロット   2007年02月09日 19:12
こんばんは。寒さや悪夢にに震えるシーンとか、足腰が立たない様とか、玉山君テンション上げてけっこう頑張ってたのかしら。
痛いのはイヤだけど、それを感じないのも哀しいですよね。
漫画は読んでないのですけど、漫画チックでもありリアルだったり、不思議な感覚でした。
6. Posted by 隣の評論家   2007年02月10日 14:32
こんにちわ。仰る通り好みは分かれそうですが、私はとても面白く鑑賞しました。何よりも切なさが胸に響きますね。

>彼らの心はフリーズしたまま動く事は無く、対峙した時に初めて感情が再燃し動き出すのだろうか。

ヒロシがナポリタンを食べるシーンは印象的でしたよね。ピーマンと玉ネギを除けていたヒロシが、ラストはピーマンをゴリゴリとかじるシーンがありました。ピーマンの苦みを少しでも味わえてるといいな・・・と思いました。
7. Posted by りん!さまへ orange   2007年02月11日 11:06
こんにちは☆
コメントありがとうございました〜!

『フリージア』劇場ではかからないのですね・・・個人的には『どろろ』よりも面白かった作品です。
もしDVDになったら堪能してみてくださいね♪
8. Posted by ジグソーさまへ orange   2007年02月11日 11:51
こんばんわ☆ジグソーさん。
コメント&TBありがとうございました〜!

フリーズしたかのような静謐なトーンとガンアクションの構図が素晴らしかったですね〜!
出来れば銃撃戦の尺がもっと長くても良いかなと欲張りな事も思いました。
狂気と隣り合わせの食事のシーンなんかは、世界観を現すツールとして絶妙でしたね♪
9. Posted by 現象さまへ orange   2007年02月12日 20:45
こんばんわ☆現象さん。
コメント&TBありがとうございました〜!
コントラストは上手く描いていましたね。説明的に物語が進まないので、色々と思い巡らしながら観れて楽しかったです。
西島秀俊と玉山鉄二の対峙のシーンは2シーンとも鮮烈で素晴らしかったです。
キャスティングは功を奏していて、物語に上手く組み込まれていましたね♪
10. Posted by シャーロットさまへ orange   2007年02月12日 20:59
こんばんは☆シャーロットさん。
コメント&TBありがとうございました〜。
玉山鉄二さん。普段は動的な演技をするのに、この作品は至って静かに役をこなしていて、面白い立ち位置だなと思いました。
僕も漫画、読んでいないのですが、絵が漫画のようでもありましたね。コマ割りやカットがそんな感じもしました♪
11. Posted by 隣の評論家さまへ orange   2007年02月12日 21:25
こんばんわ☆隣の評論家さん。
コメント&TBありがとうございました〜!

悲劇的な実験から生み出された三人の申し子の心情が重なりながらも、ラストは切ない作品でしたね・・・
決して報復は許されるものではありませんが、それ故に法律の穴を使ってしまうヒグチの心情には身に迫るものがありました。
ピーマンが苦味という事であれば、苦味を持ってトシオを対峙しようと決心したという事ですかね・・・痛いという彼のつぶやきが切なかったです♪

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