2008年02月11日
チーム・バチスタの栄光
バチスタ手術って、何だかパスタみたいって思ったのは失敬か・・・26連勝中の手術成功率を誇る心臓手術の専門チーム・バチスタの栄光は悉く崩れ去る。
何故ならば、手術に関わるのは人間。それも助けたいという思いの強さが誇るほど、それは難しいからであろう。それがラストに秀逸に現れるのかと思いきや、一風変わったドンデン返しで、やや台無しな感がある。
続けざまに成功していた手術が何故!?3例連続で失敗してしまうのか?という疑問からこの物語はミステリー仕立ての様相を示していく。
それに乗り出したのは、あまり乗り気ではない心療内科医の田口(竹内結子)だった。彼女は淡々と内部調査に乗り出すが、そこに強引に入り込んできたのは、厚生労働省の白鳥(阿部寛)という人物。
抑えと猪突猛進という対比のコメディチックな展開は新鮮ながらも、上手く噛み合って行く事が無い。どちらかというと阿部寛と竹内結子の演技をそのまま見せられているようでキャラクターが先に立った感じがする。
それは、チーム・バチスタの面々にも感じる事で、こんなチームの面々がいますよ。というインパクトで勝負に出たところまでは面白く見れる。
ポイントとしては、3例手術が失敗したという事で、そこの現場で何が起こっているのか?という明確なラインを打ち出す事。これがミステリーのメインである。そしてそれを解決する糸口が見つかる時のカタルシスもまたそれに相乗効果として乗せられるべきであろう。
手術が失敗した原因と、その心理はラスト近くで明かされるが、それにしても医療という現場に関わる者がそのような判断をしてしまって良いのか?という微妙な驕りを感じてしまう事に歯がゆいものを感じる。
そしてその原因を発見する過程がチーム・バチスタの面々の関係性からほのかに見えてくる付箋を落としながらも、気付く過程があっさりしすぎていて少々物足りなさを感じてしまった。
登場人物は得てしてコミカルであるが、中盤の手術を受けるある人物のあまりにもつまらないパフォーマンスは作品のトーンを見事に落とし込んでしまうのも、血迷った演出かと思った。
竹内結子の魅力は相変わらず開花しているが、阿部寛とのコンビネーションはなんだかギクシャクした感があって、凸凹コンビのテンポが見出せないので上手くは感じない。
この事件と思わしき手術の裏側にある医療の姿、名声というものにに鋭く切り込みつつも、手術に関わる者たちの緊張感、どうにかして成功させたいという強い思いを感じ取らせる過程と、失敗してしまったらという時間の長さという恐怖を感じさせる手術のシーンは中々のもの。
さて、そんな一連の手術という人間が関わる所業には、おそらく絶対というものは無いのであろう。それゆえに、何が正しくて何が間違っているのか?という判断をまともに出来ないのであれば、医者などになるべきではない。いや人間の命に関わる仕事に就くべきではないと鋭い警告を盛り込んだ野心作ではある。
それに相乗して描かれる田口の心療内科という分野が時に人の心を温かく、救うという事を静かに乗せたシーンにはじんわりきた。やはりそんな心の交流にこそ栄光が宿るのではないかと思わせてくれる。
監督 中村義洋
出演 竹内結子
阿部寛
吉川晃司
池内博之
佐野史郎
玉山鉄二
田中直樹
田口浩正
野際陽子
平泉成
國村隼
2月10日 新宿コマ東宝にて鑑賞
『チーム・バチスタの栄光』
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
1. 「チーム・バチスタの栄光」を観た。読むのはこれからだけど。 [ ほぼ週刊イケヤ新聞・編集長日記ブログ ] 2008年05月05日 09:58
実家にいて、こどもはババが観てくれているもんだから、ブログを上げ放題である。
以下は何ヶ月も前に書いてそのまま忘れていた映画評「チームバチスタの栄光」である。思ったより面白い映画だった。先に映画を観たモノだから、買ってあった本を読みかけたが実は主人公が男性...