2009年08月29日

20世紀少年 <最終章>ぼくらの旗2

20centuryboy3





 ついに最終章。これで長い長い道のりが終わる物語は、本来は子供同士が抱えた紛れも無いちょっとした気持ちの齟齬によるものではあるのだが、思い返してみると、その業も罪もどこの世界でも通ずる子供に入り込む闇の姿を表しているかのようだ。

 設定は差し置いて、メインはともだちの正体は誰か?というその見せ方による。原作とは違い、その正体が明らかになるまでは気が抜けないというか、どのような形で明らかになるのかはストーリーの肝であるゆえに一味違う展開を見せるのだ。

 第2章ではやや引き気味だったシーンの連続も開き直ったのか、怒涛の勢いで進む。殺人ウイルスは瞬く間に大都市圏でばら撒かれ、世界を滅亡へと追いやろうとしているともだちの浮世離れした感覚と世間が翻弄されたゆえの地獄絵図が縦横無尽に駆け巡る。

 もう一つの焦点となるのは、かつて血の大晦日にいなくなったケンジ(唐沢寿明)がどのようにともだちと接触するか。自らの使命に帯びたといえひょうひょうと現れるケンジの淡々とした感じは唐沢寿明にしか表せないだろう。

 よくぞここまでそろえたと思う似ているキャストも話題になったが、まるで漫画から飛び出たかのようだという実写化の極みはストーリー展開にして初めて乗れる部分がある。

 私が感じたのは、漫画ではさほど気にならない齟齬というか、顔を隠した素性のわからない人間が世界を統括する人間となり、それに支配される国民の信仰心の高揚といったもの、時に人は無心に何かにすがり間違ったものとしてもそれを集団で受け入れる恐怖みたいなものが上手く現れていたのに対し・・・

 実写化をしてしまうとその国民が信望するともだちという存在が画面の中で浮いてしまう。どうしても世界が熱狂するほどのともだちという存在が映像に載る事、何かおかしさを覚えてならないのだ。

 一方で、得体の知れない殺人ウイルスがばら撒かれ人々が次々と殺され、馬鹿でかいロボットが世界を滅亡させる為にのしのしと闊歩するスケール感は凄いが、どこかで物語の展開が微妙にズレて来ていると感じてしまうのは何故だろうか。

 おそらくそれは日本を舞台にしているがゆえに、こんな危機的な事態というが想像し難いこと。そして末期症状とも言える世界の状況の中で、反旗を翻した反政府組織であるゲンジ一派や、武装蜂起による抵抗派である氷の女王一派はカンナ(平愛梨)の間には何故だか不穏な空気が漂っている理由付けがドラマとして生かされていない事。

 もしかしたら、この作品で描きたかったのはともだちを中心とする独裁的で一方的な状況をカモフラージュするかのような国民洗脳劇とそれに対抗するレジスタンスの物語は様々な国で起こってきた闘いの帰結なのではないかとも思う。

 大風呂敷を広げすぎて収集がつかなくなっているものの、この長い連作漫画を映像化した試みは凄い。3本という枠の中でともだちの正体は誰かというミステリアスな中心軸が決まっているからブレは少ないし、題材としても撮り応えのあるものだったのだろう。

 だからこそ、エンドロールの最後の最後まで気合の入れ方は違う。まあその方向がもっと違和感なくスラリと見せられるようだと万々歳だけど。





監督 堤幸彦
原作 浦沢直樹
出演 唐沢寿明
   豊川悦司
   常盤貴子
   平愛梨
   香川照之
   石塚英彦
   宮迫博之
   藤木直人
   古田新太
   森山未來
   小池栄子
   黒木瞳

8月29日 吉祥寺東亜にて鑑賞

『20世紀少年 <最終章>ぼくらの旗』
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orange0802 at 23:33│Comments(0)TrackBack(0)映画 「な行」 

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