2010年02月07日

インビクタス/負けざる者たち4

invictus





 誰かにとっては挑戦をするという事は、必ずしも人を憎むという短絡的な行為とは結びつかない。

 彼の視線は紛れも無く過去ではなく、今そして未来しか見据えていないのでありそれもなお生きるイコンとしてその大地に染み渡ろうとしている。

 時は1994年、南アフリカ共和国の大統領に就任したネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)の頭の中にある事は中々読み取れない。彼が何を考えているのか?彼ほどに崇高な歩みを施す人物はいないのではないかという期待感を見せる。

 だが同時に何よりもこの作品でアプローチされるのは大統領の行いとしての魅力でもあるが、それ以上にネルソン・マンデラという人物としての考え方や性格、人間として何が好きで、何に重きを置いているか?という動機付けが作品の原動力となっている。

 もちろん大統領として果たさなければいけない仕事もある。彼が最も切望している仕事。それは格差、人種差別という言葉で表す事さえためらわれる白人と黒人の隔たりを無くすという、それは莫大な労力のかかる仕事でもある。

 そう簡単ではないとおそらく彼は思ったはずだ。しかし、この作品で語られる事を反芻するのであれば、それはやらなければならないという使命、そしてやらなければ何事も変わらないという信念によって動かされていく。
 
 さて、この作品の最も醍醐味となる瞬間はどのようなシーンに認めれているか。ネルソン・マンデラが自分の部下に最も要求した事が何かというヒントがそこかしこに散らばっているようで、それを拾うのは中々難しい。

 マンデラ大統領の警護を行う黒人と白人の混成チーム。アパルトヘイトの象徴とも言えるラグビーの南ア代表への静かな後押し。静かにその瞬間へ向かって本当のヒーローの姿を浮き彫りにしようとする沸点への鮮やかで堅実で落ち着いた絆の姿。

 それは心のスイッチの切替の早さ、そして心を開く事への恐れを払拭するかのような勢いある一つの挑戦であったのだと思う。

 彼はなぜラグビー南ア代表という一つのチームを信じたのか。それはおそらく手探りの中で半ば人間の信念に賭けるかのような気持ちもあったのかもしれない。

 マンデラ大統領が信を置いたのはラグビーチームの主将フランソワ・ピナール(マット・デイモン)の視線も虚ろであり、最初はなぜ大統領が自分にワールドカップでの優勝を期待しているのかが茫漠とし分からないようでもあった。

 だがそこに生まれるのは重ね合っていくかのような大統領と南ア代表チームスプリングボブスの境遇が次第に強みへと変わっていく様が淡々と描かれ、人種の違いや国民の感情を超えてスポーツを愛する者たちにとってその絆は大きく暖かい弧をぐんと伸ばしていく。

 その足の踏み出しはしっかりと着実に大地を踏みしめ、その勢いは相手の能力を最大限に引き出しつつもしっかりと抱擁する。そして自分にとって何が良いかを知っている相手を見捨てずに自分の懐を見せ、そして同じ視線に立ち物事を考えようとする。


 そして特筆すべきは何よりもその信念に裏打ちされたラグビーのシーンのダイナミックさ。勢いは静かにやわらかく大地に着地し確実な勝利を求めて跳躍していく。もちろんそこで終わるのではなく着実に継続していく勇気というのものを備えながら。





監督・製作 クリント・イーストウッド
出演 モーガン・フリーマン
   マット・デイモン
   トニー・キゴロギ
   パトリック・モフォケン
   マット・スターン

2月7日 吉祥寺東亜にて鑑賞

『インビクタス/負けざる者たち』 (原題 Invictus)
invictus-t
orange0802 at 23:33│Comments(2)TrackBack(1)映画 「あ行」 

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1. 『インビクタス/負けざる者たち』 映画レビュー  [ さも観たかのような映画レビュー ]   2010年11月01日 14:58
『 インビクタス/負けざる者たち 』 (2009)  監  督 :クリント・イーストウッドキャスト :モーガン・フリーマン、マット・デイモン??..

この記事へのコメント

1. Posted by とらねこ   2011年01月02日 23:46
orangeさん、あけましておめでとうございます。
前半でマイBESTに入っていた、でも一年のBESTには入らなかったこの作品のところへ。

>誰かにとっては挑戦をするという事は、必ずしも人を憎むという短絡的な行為とは結びつかない

相変わらず、一つひとつの言葉を丁寧に、映画と向きあおうとする姿勢のorangeさんの文だなあ、と思います。
最近はお忙しい様子でしょうか?映画はご覧になっていますか?
私も今年はとても忙しくて、なかなか書くことがままならない一年でした。
今年から、長年お世話になったlivedoorブログと、さようならすることにしました。
ちょっと寂しいような気がするのは、orangeさんを始めとしたlivedoorブログのお友達が居たからだなあと思います。
今後も、宜しくお願いします。
2. Posted by とらねこさま   2011年02月03日 23:24
明けましておめでとうございます。

お久しぶりで申し訳ございません・・・

ブログは今年からボチボチ再会しようかと思っております。

映画は一時期より減りましたが・・・(とはいっても月に10本ぐらい)観てますよ。

ブログも更新するというよりかは忘れないうちに書き留めておこうとするあまりちょっと無理してたかもしれません。

今年は色々と運動とか勉強とか始めたりして美味く連動させていければな〜とも思っております。

何はともあれ健康で楽しむ事が一番なのでこれからもよろしくお願いいたします。

そうそう憎しみよりも真摯で楽しいネルソン・マンデラのように♪

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