洋服屋、街を生きる。オーダーサロンタナカ店主blog

名古屋、錦3丁目のオーダースーツ、オーダージャケット、オーダーシャツのお店の店主です。名古屋のまんなかに生まれてずっとここ錦3丁目でくらしているオールドシティボーイです。オーダーメイドのこと、街の暮らしのなかで感じたことをつづっていきます。

みかんの郷へ(2/23)

先週、しもちゃん、ノダ、スギハラと広島駅に着いてすぐにしまなみ海道にレンタカーで向かった。瀬戸内海の景色はのっぺりした濃尾平野にある名古屋に住む者にとって山並み島並み、橋が織りなす景色でとても新鮮で楽しいと思ったから。でも当日天気はあいにくの雨、元気があれば四国まで足を伸ばそうと思ったがずっとグレーにくすんだ景色がつづくとだんだん男四人の車中はつまらない空気に包まれてそろそろ広島へもどりたいということになり大三島インターで降りて引き返すことになった。インターをおりるとすぐに道の駅があったので立ち寄る事にした。雨の日の平日に道の駅なんかにはお客もすくなくおもしろみもない。テントを張って農産物を生産者が直接販売するブースがあったのでのぞく。そこにはいろいろな種類のみかんが袋詰めされて置いてあった。伊予柑、ポンカン、はるみ、温州みかんなど愛知県の僕たちは温州みかんをみかんと思っていたがみかんの世界にもいろいろあるのを知った。みかんがたくさんあるのをみて、ずっと広島だと錯覚していたがあ、ココは愛媛県なんだと気がつく。たくさん果実が入って一袋200円ほど。安いし大きいキャリーバッグを持参したのでお土産にたくさん買った。ひとつ甘平(かんぺい)という種類をみつけたがそれはみかん一つで300円くらい。そのブースで最も高い。東京のフルーツ店にならぶとひとつ1000円以上するということで2つもとめその場で剥き、男4人で味わった。その甘くて香り高い事!一箱5000円ということでその店ではとびきり高い。家族におみやげに大人買いしようと思ったがまあ旅の思い出においしさをこころの中にしまっておいた。
DSCN6208
雨の多々羅大橋
DSCN6212
さまざまな品種のみかんがお安い。
DSCN6213
そのなかでかん平だけはひとつ250円の高級なもの。

みかんというと嫁の実家の両親は三ヶ日のみかん農家の出。三ヶ日のなかに尾奈という地域があり美味しくて名高い三ヶ日みかんのなかでも最高のものができる場所。山の向き、土の種類が関係するのだろうが農協をとおさず果実業者がきて全量買い取っていくみかんの名品なのだ。ときどきいただくがまるでお菓子のような甘さ。若い頃はそれこそ1日20個も食べたがみかんと言ってもカロリーはあるので最近は一つつまんでそっと食べている。

向上心(2/23)

昨年の夏、家族で加賀の山代温泉に出かけた際、温泉卵をおみやげに買った。それからしばらくして同居している母親が温泉卵を手作りするようになった。高い温度のお湯につけておいて時間を計って放置する作り方をテレビか雑誌かで見て自作する気になったようだが温泉卵自体珍しい物でもないし大須のスーパーサノヤさんなら100円そこそこで買う事が出来るのでやめておけと言ったが台所でごそごそやっていた。最初はゆで卵の出来損ないのようでへんな食感だったがそれから半年、母親なりに陰でいろいろ研究していて、外気温、卵の数、卵の大きさ、冷蔵庫で冷やさずに室温にもどすなどさまざまなパラメータを調整した上で完璧に近い仕上がりになってきた。ときどき朝食のメニューに出てくるがプロのつくったものと思って食べることができる。中二の娘も様子を見ていて「おばあちゃんすごい!」と母の研究心に感服している。こういう一カ所に時間をかけてこだわる向上心は学ぶべきところがある。
DSCN6388
 

春素材と夏素材の違いについて(2/21)

春と夏のオーダースーツ、オーダージャケットの素材は春も夏も同じ時期、2月はじめに入荷する。春夏秋冬4回それぞれに入荷しても良さそうなものだがこれはファッション業界が1年2シーズン制で春夏コレクション、秋冬コレクションとなっている商慣行に起因する。同時に入荷した素材だが春の素材と夏の素材はやはり微妙に異なる。春の初めと盛夏とはまったく気温湿度が違うからそれは当然の事。原料はウールが中心だが秋冬には全く使うことはないリネン混も夏にはよく使われる。オーダーの際、春物か夏物か要望をはっきりしたほうが季節感を持って快適に着用できるはず。
春素材
1mあたりの重量は230g〜280gと夏物と変わらない場合もある。一番の違いはツイル(綾織り)が多いという事。平織りにくらべ密度がつき落ち感も良い。ビビッドな色も美しく表現される。例外的には太糸で平織りにする場合もある。
例 ロロピアーナタスマニアン ドーメルアマデウス365

綾織り(ツイル)とは
経糸(たていと)が緯糸(よこいと)の上を2本(3本)、が緯糸(よこいと)の下を1本、交差させて織られる織組織。糸の交錯する点が斜めに走るのが特徴で綾目と呼ばれる。平織りよりもしなやかな風合いがあり、伸縮性に優れる。平織りより密度がある。
P1080934
綾織り 
ロロピアーナタスマニアンをレンズで見ました。左から右に45下がる綾目がレンズ越しに見えるはず(画像をクリックしていただきましたら拡大画像がご覧になれます。) 

夏素材 
1mあたりの重量は190g〜260g、以前はほとんど240g〜230gだったが各社軽量化が進みエルメネジルドゼニア「クールエフェクト」のように190gのものも出て来た。織り方はほとんど平織り。ツイルに比べ通気性が良い。 しかし表面感はつるっとしていて立体感には欠ける。例 ドーメルトロピカルアマデウス、ロロピアーナスーパーサマー

平織りとは
緯糸(よこいと)と経糸(たていと)を交互に浮き沈みさせて織る、最も基本的で単純な織物組織のこと。 綾織りと比較して薄くし上がる。
P1080936
平織り エルメネジルドゼニアヘリテイジを拡大しました。糸が交互に織られているのが分ります。(画像をクリックしていただきましたら拡大画像がご覧になれます。)  

遅れる時計(2/20)

昨年末、ずっと探していたスイスミネルバ社の腕時計をアンティクウォッチのサイトで見つけ5万円で購入したことはブログにも書いた。ミネルバ社は珍しく自社生産で長くロービートのキャリバー48というムーブメントでピタゴラスという名前の時計を生産していた会社だったが20世紀の末に人手にわたりその後どうなったかわからない。少し小さめでローマ数字のキュートな手巻き時計なのだがわたしの生まれた1950年代に作られた時計なのでしょうがないと言えばしょうがないがちゃんとした精度がでずに1日に5分か10分遅れるのだ。つけはじめた当初は気になってとてもイヤだったがせっかく買ったので我慢してアクセサリー代わりにつけるようにしてみた。ときどき携帯電話の時間と合わせたり、今日は案外遅れていないなと喜んだり、慣れると遅れるのもなかなか面白い。電車に乗り遅れる危険があるので旅には持って行けないが店にいるときなら十分使える。機械と言えば正確だ思う事自体が間違っているかもしれない。そっと耳にあてるとチッチッチと一生懸命動いているのがいじらしくもある。
P1080931

2012春のパンツコレクションをスペシャルプライスで(2/19)


2012春当店ではジャケットのオーダーに人気があります。ジャケットにあわせてのボトムにはデニムもすてきですが細身のスタイリッシュなパンツも人気があり、オーダーなら履き心地が快適な細身のパンツも簡単に実現しておすすめです。オーダーサロンタナカは春に明るい色のジャケットスタイルを楽しむ素材を豊富に集めました。すべてお求めやすい価格に設定いたしましたが、さらに2012年2月19日から3月20日まで期間限定でこの中のパンツを2本以上まとめてオーダーいただいた場合は合計金額から3000円お引きいたします。数に限りがございますのでお早めに。
P1080921
イタリア製ソンドリオ社コットン100%ヘリンボン 
ツヤやかなダークグレーでスタイリッシュな細身のパンツになります。実際の画像を確かめるため画像をクリックして拡大してごらんください。
オーダーパンツ 1本 19800円(税込)
 
P1080915
 イタリア製cloth selected by エルメネジルドゼニアのコットン100%ツイル (綾織)
軽やかなラベンダー色です。実際の画像を確かめるため画像をクリックして拡大してごらんください。
オーダーパンツ 1本 23000円(税込) 
P1080916
 イタリア製cloth selected by エルメネジルドゼニアのコットン100%ツイル (綾織)
ナチュラルなライトベージュです。実際の画像を確かめるため画像をクリックして拡大してごらんください。
オーダーパンツ 1本 23000円(税込) 
P1080922
ロロピアーナ タスマニアン150`s ライトグレー無地
イタリア製ロロピアーナタスマニアンはちょっと贅沢ですが着心地最高の春のパンツです。
オーダーパンツ 1本 27000円(税込)
P1080920
日本製 御幸毛織 ウール31%ポリエステル31%ツイル(綾織)のブラウンチェック。
さらっとした手触り、紺ジャケットにあうチェックのパンツになります。
オーダーパンツ 1本 21000円(税込)
P1080918
 日本製 御幸毛織 ウール31%ポリエステル31%ツイル(綾織)
白黒のグレンチェックに赤のブレイドがクラシカルです。国産ですが英国の雰囲気のパンツになりそうです。
オーダーパンツ 1本 21000円(税込)
P1080926
日本製 御幸毛織日本の御幸毛織
99%ウール1%ポリオレフィン クリーム無地
中国製があふれたなかで引き立つ日本製のまじめな作りです。99%ウールに1%ポリオレフィンを入れて自然なストレッチ性を与えたツイル素材。明るいクリーム無地で春を感じるパンツになります。 
オーダーパンツ 1本 19800円(税込)
P1080924
日本製 御幸毛織日本の御幸毛織99%ウール1%ポリオレフィン ベージュ無地
中国製があふれたなかで引き立つ日本製のまじめな作りです。99%ウールに1%ポリオレフィンを入れて自然なストレッチ性を与えたツイル素材。ベージュ無地で春を感じるパンツになります。 
オーダーパンツ 1本 19800円(税込)
P1080923
 
日本製 御幸毛織日本の御幸毛織カムデンウール100%平織 チャコールグレー無地
中国製があふれたなかで引き立つ日本製のまじめな作りです。 
オーダーパンツ 1本 19800円(税込)

ロロピアーナ春のスーツ素材 スペシャルプライス追加(2/17)

ニュージーランドメリノウール100%使用した1mあたり250gの重さでイタリアロロピアーナ社の春夏素材のなかではしっかり感のある素材です。グログラン織りつまり横に細かい段がある織り方で触る面積が少なくなるためさらりとした手触りになります。この素材を使ったエルメス社のスーツを一度見たことがあります。すこしブラウンが混じったミディアムダークグレーにブルーのストライプが2cm間隔に入ったビジネスにも適した上品なスーツ素材です。

P1080912

イタリア製 ロロピアーナ ジランダー ウール100%
ミディアムダークグレー ブルーストライプ
Special Price オーダースーツ価格 69,000円(税込) 
当店通常価格79000円
P1080909
実際は2cm巾ストライプです。画像をクリックして拡大してご確認ください。

当店のロロピアーナ服地はイタリアロロピアーナの日本法人ロロピアーナジャパンを通じて正規輸入しています。すべてオーダーメイド用服地の証であるグリーンラベルがついています。 名古屋オーダーサロンタナカ店頭に在庫ございますのでご覧いただきオーダーいただけます。初めてオーダー頂くお客様はお手数でもご来店のうえお手に取ってこの服地をみていただいて、クラシックスーツのディテールを相談し、店主とていねいにサイズを検討しながらオーダーする事をお薦めいたします。しかし当店から遠いお客様でいままで一度でもオーダーサロンタナカでスーツをオーダーされた事が有りましたら採採寸データが保存してありますので、メール、お電話(052-961-6401)でのオーダーを承ります。

ひろしまで思った事。(2/16)

年に一回、気のおけない友人3人しもちゃん、ノダ、スギハラと旅をする。昨日はそれで広島に行った。広島は昨年夏に家族旅行に行ったので勝手は知っている。そして広島というか日本の名店である「たこつぼ」の味を友人に楽しんでもらいたい、そんな気持ちもあったので今回の旅に広島をえらんだ。「酒都」西条で賀茂鶴見学、尾道でおきまりのラーメンを食べ、しまなみ海道を通って大三島、そして広島に帰り「たこつぼ」でやっちゃんこと田中泰弘さんの心意気のこもった料理を楽しんだ。あんな旨いものいままで喰った事が無いとスギハラが言ってくれたことがとても嬉しかった。二日目は呉へ。音戸の瀬戸の橋を見て日本で一番短い定期航路に乗り、潜水艦の実物を見て男子四人テンション最高になった。それから洋服屋仲間「尾洲屋羅紗店」の沼田さんに教えてもらった「たいちゃん」のおいしい呉風おこのみ焼きを食べてその後広島に戻り原爆資料館で平和を考えた。大きい石釜のあるアンデルセン本店でたくさんパンをお土産に買った。

旅を通じて思った事、広島で出会った見知らぬ人たち、おじさん、おばさん、若い女の子や男の子もほんとにみんなこころ優しく親切だったこと。じゃけんという広島の言葉の響きもあるだろうが温厚なこころは広島独自なものがあるなあと思ったし名古屋と違って自動車の運転もマイルドでやさしい。 ぼくたちせちがらい東海地方の人間が忘れている優しさがあり人に親切にするということは本当に大事だと改めておもった旅だった。道路脇の売店で会う人などほんの一瞬の出会いだがそこでの親切は長く覚えている。学歴、地位、金持ちかどうかなんか関係ない。出会った見知らぬ人に瞬間的に親切にできる人が本物のジェントルマンなのだ。

DSCN6247

たこつぼの誇る小イワシ。小イワシを3枚に下ろし7度洗う。
DSCN6263
この時期旨い。酢牡蠣
DSCN6251
こんなのたこつぼしか見た事ない。「シャコのお造り」
DSCN6259
白子 「たこつぼ」
DSCN6267
魚の旨味を麺に吸わせて、たこつぼ
DSCN6270
店主 田中泰弘夫妻と男四人
DSCN6296
音戸の瀬戸の渡し船で
DSCN6308
呉でサブマリナーの実物をみてテンション上がる。
DSCN6333
呉たいちゃんのお好み焼き 東ちずるがよく食べるそう?

「イージー」なオーダーではありません。(2/14)

イージーオーダー紳士服のお店をやっているんですね。と言われると違和感を覚える。わたしはこの仕事を私が始めた30年前当時はまだまだ手縫いのテーラーさんが私が住むこの名古屋市内にもたくさんあり手縫いの職人さんもたくさんいた。でもその頃からすでに職人さんの減少は始まっていて縫製工場がテーラーの仕事を引き受ける事が始まった。そしてオーダーといえば仮縫いつきで工場縫製はゲージとか着せ付けパターンといわれる服を着てそれをもとにサイズを取るので仮縫いが要らない。だから簡単なオーダーイコールイージーオーダーと言われ始めた。「イージーオーダー」、その響きには手縫いのテーラーさんが工場縫製を見下げている意識をぼくは感じるのだ。

私どものスーツ、ジャケットの縫製をすべて担当している縫製工場は専用ミシン、プレス機などを活用し手縫いのテーラーの技術を工場に「置き換かえて」いるだけで「簡略化」しているわけではなく「イージー」などとは軽く言えないほど工程数も多く手の込んだ作業をしている。

この工場はテーラー、デパート、専門店、セレクトショップなど業態の違う店から縫製を依頼されている。あつかう服地の種類はほんとうに多くその服地の性格もさまざま。厚さも柔らかさも違うさまざまな服地を均質に縫い上げるのは実は手縫いテーラーでも困難な事。その困難を解決して美しく縫い上げるには服地を安定させる必要がある。そのため裁断の前に大型の縮絨(しゅくじゅう)機を使い一着ずつ服地を蒸し上げさらにエイジングして安定させる。
 DSCN5845
服地はまず縮絨機で蒸し上げられエイジングの過程をへて裁断を行う。

裁断には手裁断もあるが主に能率が上がり正確なCAD/CAMを使う。撫で肩、怒り肩、反身屈身など体型の補正、特殊なさまざまなデザイン、サイジングの調整も十分可能で自由度がある。またバランスの良い服を作るためたとえばジャケット丈を変更するとボタンの位置だけでなくボタンの間隔も自動的に変化させていく。熟練テーラーがする裁断方法と変わらないルールにもとずいて、入力されたとおりに服地が自動的に裁断されていく。パターンは日本最高のモデリスタ柴山登光先生が製作している。
DSCN5760
細かい点を入力してCADにデータを送る。
DSCN5849
CAMで正確に裁断されて縫製工程に。 

当店が縫製を依頼しているこの工場は総毛芯仕様専門の縫製工場として知られている。総毛芯仕立ての縫製工場はエコノミーな接着専門工場と違い高級品を縫う工場ということになる。うるさ方のテーラーさんの縫製も担当しているので薄く繊細な夏素材も美しく縫わなくてはいけない。毛芯を縫い付ける(芯据え)前には湿度をコントロールするため毛芯を湿気を与える箱にいれ、日本の梅雨の季節にも服が美しい状態に保つようにする。
DSCN5772
毛芯を縫い付ける前に湿度をあたえ湿度の変化に対応できるようにする。
DSCN5765
工場にはいろいろな毛芯があるが当店は最高級の本バス付き総毛芯を指定。 

この縫製工場には150人以上の人が働いているが専用ミシンなどをあつかうオペレータの技術水準が高い。おどろくほど手早く正確にミシンを使い必要なときには必要なテンションをかけてイセを入れながら縫い上げる。精度の高い縫製をするためしつけ糸もいろいろなところにあしらっていく。肩、ラペル、上エリなどパーツごとに隠れた名人がたくさん働いている。
DSCN5820
手の画像がぶれるほど手早く動かしながら見事に肩を縫い上げる。
DSCN5804
胸のボリュームを出すためのアイロンワーク

 プレス機だけではなくアイロンワークも駆使する。この工場は履きやすいパンツを縫う工場としても名高い。日本最高のモデリスタ柴山登光先生の指導でパンツはクセ取りという重要なアイロン工程が入る。また履きやすいパンツにするため使う腰芯も腰にあわせてカーブする素材を吟味して使用している。
DSCN5790
日本最高モデリスタ柴山登光先生が伝授したクセ取り法 
DSCN5781
腰に沿うようカーブを付けたウェストベルト
 
熟練技術者が扱う何台ものプレス機で美しく仕上げられた後ボタン付けへ。ボタンもすべて手で付けられ厳しい検査を経て一着のスーツができあがる。工場でスーツを作る多くの工程を見て行くとテーラーが行うさまざまな技法がラインの上に正確に再現されていることを知る。それを見るとそこで行われている事は「イージー」ではないと思うのだ。技術者のものづくりにかける情熱を感じ工場へのリスペクトの念がわく。こういう縫製の仕事に支えられていると「下請け」「下職」など見下げた言い方は出来ない。私の店は手縫いテーラーではないがテーラーの技術を正しく置き換えたこの縫製工場の手で美しく着心地のいい洋服を作っている。そして私は私の店をイージーオーダーの店ではなくオーダースーツ、オーダージャケットの店と言っている。

グレイトフルデッドで商売のことを考えるようになるとは思わなかった。(2/13)

2月になって光が春めいてきても朝は寒く1月は名古屋城の周りを走っていたが億劫になってしまった。夜も寒く鍋物がついつい多くなる。夜も出かけずギターを弾いても手がかじかむので布団にもぐり読書している夜が多くなってしまった。

ぼくは商売人だがビジネス、商売、マーケティングの本を読むことはない。「商いは孤独」だれもそのノウハウなど教えてくれる人などいないと勝手に思っている。商売について学ぶこと、それはまず自分が欲しい物を見極める。本当に欲しいのかただの衝動か?それも時間をかけて熟慮する。そしてどこで買うか選びそれをそこでねぎらず買いその時の体験を仕事に生かしている。

昨日栄丸善に行った。本は丸善と決めている。でも最近建て替えが言われていて店員さんもなぜか元気の無いように感じる。丸善の前のブルックスブラザースも客が入っていないし明治屋も立て替えを言われているようだ。丸栄と明治屋の前の交差点はぼくの中で名古屋の街を象徴する場所。元気でいてほしいものだ。
その丸善で本を見ていたらいわいる平積みの本を一冊見つけた。
「グレイトフルデッドにマーケティングを学ぶ」Marketing lessons from Grateful dead ディビットミーアマン・スコット+ブライアン・ハリガン著 
うーん。大好きなバンドグレイトフルデッド、おじさんバンドというかおじいさんバンド、かっこよくもないしヒット曲一曲も無い、曲はゆるーいカントリーぽいロック、でも全米で一番客を集めるバンドグレイトフルデッドが好きだった。ジェリーガルシアが亡くなってからはどうなったか知らない。CDはほとんど全部持っている。 ついついビジネス本はかわないという自分自身の「」を破って
本の装丁も美しいこの本を買ってしまった。
DSCN6172


改めて聞いていると凄く音が美しいバンドなのだ。

僭越ですが。ウインザーノットは止めプレーンノットでネクタイを締める。(2/12)

「僭越」自分の地位や立場を越えて出過ぎたことをすること。

日本ではウインザーノットという締め方がネクタイが緩みにくいためかこの締め方をしている方をよく見る。 英国王室の王位を捨てて恋に生きた英国王エドワード8世ウインザー公の名前がついている。ウインザー公はとてもダンディで現代スーツを確立したのがウインザー公ともいわれる。この巻き方はウインザー公の名前がついているのでウインザー公はこの巻き方だったと思われているがウインザー公本人が回想録『家族のアルバム』でわたしがこの巻き方をしたことはないと否定しているそうだ。 わたしはその回想録を入手していないので確認はとっていないが複数の資料にそう記述してあった。
edword8
他サイトから画像をお借りしました。やはりウインザーノットではありません。

日本の服飾のハウツー本、指導書をみるとウインザーノット、セミウインザー、プレーンノット、ダブルブレーンノットなどを並列して書いてあるが
ほとんどその優劣についてはほのめかしてはいるがハッキリは言及していない。あの故落合雅勝さんの本でもはっきり書いていない。
しかし一冊だけ「スーツの適齢期」片瀬平太著にはオーバー50代を今日的に見せる着こなし術としてプレーンノットを奨めている。わたしはずっと2回巻の
プレーンノット、ダブルプレーンノットだ。このネクタイの結び方にについてずっと以下のことに気がついていた。

  • おしゃれに敏感な人はすべてプレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットをしている。
  • 紳士服飾雑誌の写真はすべてすべてプレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットをしている。

プレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットを上手にしめると縦長の樽型に仕上がる。「上手に」と書いたが習熟が必要でネクタイによってもうまくディンプルができてきれいな縦長樽型になる場合とうまく出できない場合がある。また緩みやすくできたディンプルもほどけやすい。それに対してウインザーノットはすぐ習得でき簡単にシンメトリカルな三角形ができディンプルも作りやすいし1日ネクタイの形が崩れにくい。利便性の上からはウインザーノットのほうが優位かもしれない。でも一番の問題はそれがどういうわけか逆の台形でおにぎりかカマキリの顔の形にも似て美しくない。
締めやすさ、ほどけにくさはウインザーだが、美しいのはまちがいなくプレーンノット、ダブルプレーンノット。
でどちらを選ぶべきか。やはり人間の身体の中心で顔のすぐ下に位置するネクタイの結び目は「美しい事が絶対条件」と私は考える。だからプレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットを選ぶのが正解

同年代の友人で服にくわしい男がいる。二日前彼にウインザーノットってどう思うと聞いたら彼は若いときにバイトしたメンズショップの店主に教えられて以来プレーンノットしかしていないと言っていた。彼はウインザーノットはシンメトリカルつまり左右対称、プレーンノットはアンシンメトリカルというか左右が歪んでいてその自然な感じが重要なのだと語った。なるほどたしかにプレーンノットは縦長の樽型の美しさもあるがそのイガみから生じるオートマティックでないマニュアル感があり自然な美がある。

スーツを着ている人は基本的に「場」を重んじ、おだやかで正しい生き方をしている。そんなスーツをきちっと着ているかたのネクタイの締め方をうんぬんするのははなはだ恐縮であり僭越だと思っている。直接スーツ紳士にネクタイの締め方について文句をつけることなんて私には出来ない。しかしオーダースーツを販売する仕事に従事しているという事は美しいスーツスタイルを紹介し、顧客に美しいスーツを着ていただく責務がある。失礼なことを言うのも罪だが、言わないのも罪だと思う。
だから直接は申し上げることはできないがこのブログでおずおずと申し上げたい。

スーツを美しく着るために
ウインザーノットはやめてプレーンノットかダブルプレーンノットでネクタイを締めてください。

DSCN6170
 左がウインザーノット 右がダブルプレーンノット