当店のオーダースーツ、ジャケットの胸ポケットはすべて柔らかなカーブがついている通称「バルカポケット」になっています。バルカとはイタリア語で舟のこと。舟にも似た形状だからバルカポケットと言い、ナポリのテーラーが始めたと言われています。日本では1990年代クラシコイタリアが流行して以来この形状が採用されてきました。バルカポケットには2つの理由があります。

なぜバルカポケットなのか。その1

スーツの上着が古くなるとだんだんポケットの口が垂れてきて自然にカーブがついてきます。かってナポリのテーラーはこれを新品のうちからバルカポケットとして施し、こなれた雰囲気を醸し出すように思いつきました。デニムのユーズド加工、ダメージ加工と同じ考え方かたかもしれません。

なぜバルカポケットなのか。その2

エレガントなスーツのパーツはテーラーが生み出す曲線で全てなりたっています。その中で胸ポケットだけ定規で引いたような真っ直ぐだと違和感が生じる恐れがありそれに配慮してゆるやかなカーブをつけてあるのです。作りやすい直線ポケットではなく手間のかかるバルカポケットにするため縫製工場はひと手間もふた手間もかけています。
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ポケット用に裁断したパーツを
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カーブの付いた金属製のゲージにそって
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アイロンで丁寧になじませてパーツをカーブの形にする。

オーダーサロンタナカだけの特徴
また当店だけの特徴として、縫製を担当する日本国内の縫製工場に特にコストを追加しお願いして、胸ポケットはミシンを使わず針と糸でのハンドメイドで取り付けております。ハンドメイドで取り付けると一番目につきやすい胸ポケットの脇の縫い目が美しく滑らかに仕上がります。これが当店のスーツだとすぐ分かるポイントです。
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熟練技術者がひと針ずつ丁寧に。
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こころ込めて手で胸ポケットつけています。
ミシンでとりつけると20秒ほどで取り付け完了ですが、ハンドメイドで取り付けると熟練技術者が行ってもひとつのポケットに15分ほどかかります。当然コストは上昇しますが胸ポケットは一番目立つところだけに、美しく仕上がるハンドメイドにこだわりたい。雇用情勢が厳しい中、将来的にはできなくなるかもしれませんができるうちはやっていきたいと思います。
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これがオーダーサロンタナカの仕立ての特徴であるハンドメイドで付けた胸ポケット。中に手で折りこんでいるため縫い目が見えずフチが丸く、触ってもスムーズです。下のミシン付けの仕立てと比較するとよくわかります。
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これがミシンメイドの胸ポケット付け。縫い付けた糸が見えます。フチもとがっています。当店のレディースオーダーは残念なながらミシン付けとなっています。