ジョアン・ジルベルトの逝去で落胆しましたが、気を取り直しマエストロ西村、夏のイエイ日記再開いたします。
DSC_0176
ピッティ会場入口
6/12 二日目フィレンツェ ピッティ会場より
冬季の前回とは打って変わって開放的なイメージである。特に女性の肌の露出が多く、展示ブースによっては真夏のビーチをイメージし水着の女性がいたりするのにどうしても目が行くのは煩悩ゆえか。華やかな会場の雰囲気を味わいながらメインパビリオン2階に向かう。このフロアでは重衣料をメインとした展示が行われている。かつて中心的な存在だった「クラシコ・イタリア協会」は現在では見る影もないが、それでもロータ、PT05、エルノ、ステファノリッチ、ルイジボレッリなどいくつかのメーカーは踏みとどまっていて、クラシックな雰囲気がここでは継承されている。
某有名ブランドではインポートを担当する日本の商社マンと話ができた。特に春夏素材については組成に縛りはなくなりつつあり、天然素材へのこだわりが薄れ快適性を表現できるものが求められているという。いっときはLOHASを意識したエコ素材がブームになったが現在は下火だとのこと。しかしながら話題性を求め、ハスの茎を使用した繊維を表地に使い、裏地や釦もこだわり生分解できるジャケットなども展示し注目されていた。
また日本企業の出展も増えている印象で、ミユキ素材も使用しているパンツメーカー越前屋もブースを展開していた。愛知県で織られ、四日市の自社工場で仕上げが行われた弊社素材が製品となってこのフィレンツェで展示されているのを見られるのは感慨深いものである。

DSC_0190
越前屋さんの展示
DSC_0189
ピッティ会場で御幸素材発見!
当フロアでは田中夫妻と再会し、これから商談するというネクタイメーカー「ステファノ・ビジ」のブースに一緒に向かう。オーナーのビジ氏にも紹介してもらい、発注作業の様子を見学する。
DSC08492
ビジさんのコレクション
DSC_0186
ステファノビジブースにて
重要な部分を一通りチェックし、会場をいったん退出し遅めの昼食をとる。前回からのお気に入りトラットリア「ブリンチェッロ」のパッパルデーレ・チンギアーレ(猪肉ソースを使った幅広パスタ)をメンバーに紹介したかった近くの適当な店「ネローネ」に入る。でたらめに選んだ店だったが意外においしかった。役員2名をホテルに送り届けて、再び会場に戻る。
本部棟・地下では靴メーカー・DOUCALSが出展しており、たまたま自分もその日履いていた。この靴が気に入っているよ、と伝えると喜んでもらいチーフ・コマーシャル・オフィサーのNUCLED氏と記念撮影してくれた。駆け足でブースを周り、本部棟前でファッション・ウォッチングに重点をおいてカメラを構える。前回とは異なりヨーロッパでのバカンスシーズンにも少し重なるためか、ビジネス目的ではない家族での観光客風の来場者が目立った。業界関係者には見えないカップルや親子連れが多いように感じた。
「お父さん、頑張ってお洒落してきたのだから撮ってもらいなさいよ」、みたいなノリ。アヴァンギャルドな服装をした高校生ぐらい?の未成年っぽいチームも見かけた。浴衣で夏祭りに繰り出すイメージに近いかも知れない。いずれにしても冬より開放的な印象だった。アフリカ系が目立つのは変わりないが、その傍らでアジア系も増えている気がする。
DSC07941
インスタ処
DSC08137
ダイバーシティを感じる。
また、男女で揃いのペアルックで決めたり、男性同士でもアイテムを揃えて寄り添って歩くなど、仲睦まじい姿を度々目撃した。田中社長が言う「ダイバーシティ」である。
洋服のデザインでは、やたらとダブルが目立った。ほとんどが6ボタン2掛け、色は白~ベージュのライトカラーが主流。たいていは釦を掛けずにラフに羽織っている。またサファリジャケットもたくさん見かけた。シルエットは適度なタイトさで長さも上下ともにやや短めという前回と同様の傾向が主流だが、丈の長いジャケットがちらほら目につく。
パンツに目をやるとワイドパンツなども増えたような印象がある。ルーズなシルエットが増えている印象。
プリーツは多様でノープリーツから多いものではスリープリーツも見かけた。ベルトレスも多く、ブレイシーズも目立った。
素材としては当然夏季のため、スーツ・ジャケット・パンツともに植物由来のもの(コットン・麻)が多かった。
色目もオフホワイトの無地、あるいはウィンドウペンのアイテムを多く目にした。
茶系も溢れており象徴的なソラーロ・タイプからこげ茶まで、バリエーションが豊かだった。
柄では無地が中心だが、モデルっぽい人は凝ったチェックなど、くどい柄物が多いように感じた。以前大流行したボタニカルプリントのジャケットも見かけた。
ボトムスではダメージ物も含めジーンズが目立った。ブルー系のジャケットと合わせて、ぱっと見ではスーツに見えるようなコーディネートもたくさん目にした。
足もとをチェックするとシーズンを反映してかローファー系、特にタッセルスリッポンが目立った。後で撮影画像を見返すと、グループで靴を揃えているケースもちょくちょくある。革とキャンバス地などの異素材コンビシューズも多い。もちろんスニーカー比率も冬より高いと感じた。
IMG_1395
ツェッペリンにモズライトはねーだろとマエストロ激怒。

ある程度の画像をおさめてホテルに戻ったあと夕食会場へと向かう。
「マフィア通り」という恐ろしい名称の通りに位置するレストラン「サンタゴスティーノ」では田中夫妻に加え、夫妻の友人でフィレンツェ在住の日本人女性YUKIさんを交えた7名での会食になった。
隣席には20名ほどの地元の熟年男性の団体もいて大変賑やかだった。彼らはピッティ会場とは違ってごくごく普通の地味な格好をしていた。YUKIさんいわく、地元の男性ファッションはだいたいこんな感じでPITTIが特殊なのだとのこと。イタリア人みんながファッショナブルなわけではない。
さらに話題はトランプ政権以降のイタリア企業のアメリカ資本への身売り(鉄道会社ITALロやサッカー・セリエAのフィオレンティーナまで!)、LGBTの多さ(会場で確認済)などに及んだが、ワインの飲み比べや名物ビステッカ(骨付きビーフステーキ)や独特のパスタ「ピチ」などを楽しめた。
 DSC_0203
ビステッカフィオレンティーナ
IMG_1419
マフィア通り

6月13日(木)フィレンツェ/ローマ
3時台に目覚める。日本は午前中のふつうの時刻でありLINEで家族に近況を報告。日が昇るのを待つ。やがて小鳥のさえずりが心地よい朝を迎える。麻の長袖シャツにハーフパンツという出で立ちでフィレンツェ市内をジョギングがてら散策するが、この服装ではやや肌寒い。サンタマリア・ノヴェッラ教会からドゥオーモ、ヴェッキオ宮を通り、ポンテヴェッキオが架かるアルノ川へ。河面にアヒルの巨大フィギア(まさに銭湯にプカプカ浮いているようなタイプ、ただし半端なく大きい)が浮かんでいるのを発見。川岸にはSAVE THE DUCKの立体文字が。この地ではアヒルは迫害の憂き目にあっているのだろうか?(後で気付いたがPITTI会場にもブースがあった。動物保護団体のようである)
 DSC_0269
ポンテベッキオにて
コンパクトな街・フィレンツェは小一時間も歩けばだいたいの見どころを周ることができる。ホテルに戻り朝食をとる。
今日もPITTI視察がメイン目的で朝から会場に移動。時間帯のせいか昨日よりもやや人出は少なく感じる。メイン棟に着くなり幸運にも田中夫妻に遭遇する。夫妻は午後からイタリア北部の山岳地帯へと移動する予定なので実質的にこれでお別れになる。
 DSC08102
田中と
我々3名地階へと移動する。目的はBと面識のあるオーストラリアのアパレル関係者との面談である。Bに紹介してもらい名刺交換するがあいにく自分の名刺は日本語表記のみである、そのことを詫びると彼も「いいよ、こっちの名刺も英語だけでごめんね」と返された。彼の会社はラグビーの豪州代表チームのブレザーを担当しており、今秋日本で開催されるラグビーワールドカップのために来日するとのこと。彼自身も大分県で開催される試合を観戦予定とのことだった。その後、取引のある九州から出展しているパンツ縫製会社を訪問するなどして会場を後にする。
会場前で客待ちしていたタクシーを捕まえる。快活な女性ドライバーだった。
田中社長ご推薦の「ミケランジェロ広場(ピアッツァ・ミケランジェロ)」まで行ってと指示する。走り出したもののドライバーはいまひとつピンと来ない様子だったので念のため行き先を再確認すると自分の発音が悪さの結果「ピッツェーリア・ミケランジェロ(ピザ屋のミケランジェロ)」を探そうとしていたところだと判明し車内が笑いで包まれる。無事に到着したミケランジェロ広場はフィレンツェ中心部を一望できる丘の上に位置し、眺めはとても美しいものだった。地上からでは見上げるしかない巨大なドゥオーモもはじめとする一連の建築物とアルノ川が手に取るようだった。
 DSC_0266
フィレンツェ市街が一望できるミケランジェロ広場
待機してもらっていたタクシーに再度乗り込み、街の中心部へ向かう。ポンテヴェッキオで降車し、通りを歩き、途中のメンズショップの市場調査を行う。イージーオーダースーツが納期1週間と表示された店もあったが、おそらく既製品ベースの丈直しレベルだと推測される。
シニョーリア広場のトラットリアでしばし休憩し水分補給を行う。ここの店員さんもとても人懐っこく楽しい性格だった。トイレの場所を聞くと目の前にそびえたつヴェッキオ宮の最上階だと教えてくれた(もちろんジョークである。すぐ店内1階を案内してくれた)。
タクシーでホテルに両名を送り届け、単独行動を開始。
昨晩、レストランに向かうタクシーから確認したときも混み合ってて、是非訪問しようと考えていた「リヴェラーノ・リヴェラーノ」。地図上では戻る形で歩いてみるが、残念ながらイタリアらしく昼休み中で閉まっていた。ロロピアーナ社のペコラネラのパネルを展示していたのが気になった数軒隣のテーラーも同じく。この日はローマまで戻らなくてはいけないため時間の制約もあるのでPITTI会場に戻る。
午後になっても、やはり昨日よりは人が少ない。この日はファッション・ウォッチングを重視し撮影にいそしむ。また、撮ることに加え「撮られる」ことにも挑戦してみる。前回の経験から、変てこな格好をしていれば人目を引くだろうというと考えていた。90年代に購入したJ・P・ゴルチエのゴツめのサングラスに、派手なコットンの帽子(ベージュの無地とカラフルな蝶々プリントがリバーシブルになったもので家族には不評)を用意していた。それを装着して歩いてみると、さっそく数人のカメラマンに撮られた。またピーポーたちがたむろするゾーンでは一緒に写ってくれという東欧っぽい人が寄ってきた(もらった名刺から調べるとポーランドのバッグデザイナーだった)。続いて香港から来たという二人組に挟まれ何枚か撮られた。短い時間だったが貴重な体験になった。

DSC08749
ピッティピーポー化しています。
その後会場を出てサンタマリア・ノヴェッラ駅からローマへ戻る。
ローマではホテルから近くて評価の高いレストランを探す。手軽に歩いて行ける距離にはガイドブックにも掲載されている「AMEDIO」しか選択肢はなかった。パスタ続きなので多少目先を変えてリゾットなども注文してみるが、評価通りでそれなりに美味しかった。そういえば昼食をとる時間がなかったことに気付く。連泊という絶好のタイミングなのでホテルに戻って洗面所で洗濯を行う。