洋服屋、街を生きる。オーダーサロンタナカ店主blog

名古屋、錦3丁目のオーダースーツ、オーダージャケット、オーダーシャツのお店の店主です。名古屋のまんなかに生まれ、ずっとここで生活し六十年。オーダーメイドのこと、街の暮らしのなかで感じたことをつづっていきます。

洋服の採寸、サイジング

モデリスタ柴山登光がみつめる服(2018/2/13)

先週の木曜日、日本最高のモデリスタ、柴山登光先生のアトリエに訪問。このブログで何度も書いているように柴山登光先生には当店のスーツ、ジャケット、パンツそしてコートすべてのパターン製作をお願いし、縫製の指導、監修もお願いしている。
今回もさらに当店のスーツをレベルアップすべく、相談とアドヴァイスをいただきにうかがった。都内にある先生のアトリエに入るとまず目に入ったのが美しいラインのブラックスーツ。アトリエにある服なので手縫いのはずだが、手縫いの服特有の「縫い手のくせ」「手仕事の味わい」のような痕跡はまったくなくあくまでスッキリ、バランス完璧。あまりに美しい仕上がりなので上手な縫製工場で縫ったのですかと先生にたずねたら、アトリエスタッフの手縫いだとのこと。モデリスタは通常のテーラーのようにひとりの顧客のためではなく、工場で多くの方のために作られる服の基本形、プロトタイプを作る。美しい形なのはもちろん、リピートいただけるような快適な着心地それだけでなく、縫いやすく、同じように生産されやすいフォルム、メソッドでないと工場での正確な再生産は望めない。工場での正確な再生産がモデリスタの大命題。手縫いのオーダーよりひとつレベルの高い洋服であることがプロトタイプには望まれる。アトリエにある洋服はまさにそんな洋服だった。服の未来をみつめる服とでもいえるかもしれない。

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この一番右の服の美しさにちょっとびっくり。

今使っている当店のパターンは馬の尻尾の毛で織られた本バス芯を縫い付けた毛芯を使うことを前提としてナポリのスーツをお手本に柴山先生が制作した。4年前に大きくバージョンアップを施したがさらに着心地をよくするため現在、柴山登光先生、縫製工場のスタッフ、毛芯のメーカーの三者で検討に検討を重ねている。そのヴァージョンアップ作業に当店も参加している。先生から直接、説明を聞き、これからのヴァージョンアップの方向性が理解できた。バージョンアップは次の秋冬に間に合うといいなと思っている。

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柴山先生がみずから縫った新しい縫製法のジャケットの着心地に驚く。この製法を近く取り入れる予定。

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先生の仕立てた服を着て先生と共にパチリ。

モノツクリはたゆまぬ努力(2017/12/8)

最新技術の情報が沢山飛び込んでくる今、ZOZOTOWNさんのセンサーを貼り付けた黒いウェア、ZOZO SUITで身体を採寸するというニュースはサイジングを常に研究する私としては興味しんしんである。

ただ最新技術と言っても、いずれはロボットが仕立てる時代が来るかとは思うが、いまはまだ残念ながらいまだにスーツやシャツは工場生産とは言えロボットが仕立てる訳ではない。ラインに並んだオペレータさんが最新ミシンを使って縫っているので仕立ての現場の実態は「ハンドメイド」である。コットンやウールの素材、そして芯などの副資材、そしてオペレータさんたちのハンドのテクが出来上がりのよしあしを決める。

美しく仕立てる技術も完全に解明できているわけではなく、工場レベルでは試行錯誤が続いている。先日シャツの工場から、カラーに使うより良い芯が見つかったので芯を変更すると連絡があった。 独の有名なアパレル資材メーカー、ウェンドラー社の表面がやや起毛してある芯を試したらやはり出来上がりがいままでより美しくなったとのこと。
今日その試作品が送られてきた。みるといままでよりカラーのカーブが美しく表現されていて、立体感も感じる。当店のシャツは接着芯を使わずカラーの周りだけを縫う「フラシ製法」にこだわって作られている。いままでもカラーの芯は重要だとおもっていたが、こうやって出来上がったのを検証してみるとやはりいい芯を使うと出来上がりが美しいと再発見。工場サイドの良いモノ作りへのたゆまぬ努力にあらためて頭がさがる思いがした。

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美しいカーブのカラーになりました。12/1のオーダー受付からこの新しい芯を使っています。

モデリスト柴山登光先生との夕べ(2017/6/26)

2004年から今に至るまで、当店のオーダースーツ、オーダージャケット、パンツそしてコート(レディースは除く)は、すべて日本最高のモデリスト柴山登光先生が設計し、そして縫製もひとつの国内工場ですべて柴山先生の指導の元に行っています。

この土曜日、柴山先生にご来店いただき、ご興味のあるお客さまをお誘いして「モデリストのお仕事」というタイトルでトークショーを行いました。先生とお客さまとの活発な意見の交換があり、そしてその後は懇親会という楽しい時間をすごしました。
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先生のお話を興味深く聞く当店のお客さま
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丁寧に服作りの精髄を解説する柴山登光先生。
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お集まりいただいたお客さまと
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懇親会はシャンパンの乾杯から。

柴山登光先生の紹介
1945年北海道生まれ 新宿のテーラーを経て、有名縫製工場ジェンツに入社、その後、シャンタルデュモに入社、エーボンハウス取締役技術部長を経て現在のサンモードスタジオ設立、有名セレクト・ショップ、アパレルメーカーパターン製作、縫製管理を担当されています。 ミラノの洋服学校セコリの日本法人セコリジャパンの講師長でもあります。

モデリストとは 参考資料「ナポリ仕立て・奇跡のスーツ」から抜粋 
イタリアの服飾業界にモデリストという名の職業がある。服の設計図たる型紙の製作から、生産ラインの構築そして管理まで、いわば工場生産の服を製造するにあたっての実務面のほとんどすべてを取り仕切る要職だ。
そして紳士テイラード服のモデリストは「モデリストのなかのモデリスト」と言われる。それは婦人服のようにデザイン的なバリエーションを追わず、古典的デザインのジャケット、パンツだけを追求する、いわば服飾の「深度」を追求する畏敬の念から生まれた言葉がモデリスト。紳士テーラードのモデリストでトップを占める者は世界中でそれこそ両手で数え切れるほどしかいない。

採寸データを大切にすることは信用につながる。(4/25)

23才の時テーラーになってからもう35年の時を数え、ずっとわたし一人で採寸してきたので採寸したお客さまは軽く延べ3万人を超えている。プロフェッショナルとは一万時間のトレーニングをしている人だとどこかの本で書いてあったが、したがって採寸、サイジングについて間違いなくわたしはプロフェショナルだと自負できる。

採寸したお客さまの寸法データの数も膨大となってきた。以前からファイリングシステムには興味があり、25年ほど前には当時富士フィルムが開発したマイクロフィルムを使ったファイリングシステムを導入したこともあった。それがアップデートできずに使えなくなってからはアナログでやっていたが、3年前の夏、一念発起して過去のデータをMacに取り込んでファイルすることにした。そして複数のMacでもデータが検索できるようクラウドに保存することにした。氏名で検索するとお客さまの過去の履歴がすぐ見られる。毎月末には一ヶ月の間にオーダーしていただいたお客さまの採寸データを店主が入力する。住所等個人データと寸法データは完全に別系統に分離して情報漏洩を防いでいる。

電子化してよかったなとおもったことはすぐデータが検索で出てくるとお客さまがホッと安心されること。 いまやデータを確実に保存することは店の信用と直結すると感じている。
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作家さんにオーダーしたサイジングテーブルに乗る2台のMac。

マエストロの偉大さを改めて感じる。(2/19)

先週火曜、当店の縫製をすべてお願いしている縫製工場の主催で柴山登光先生の講演とミーティングが行われ、名古屋周辺のテーラーが数十人参加した。

そこはもともと後継者難になったハンドメイドテーラーの縫製を支援するために設立された縫製工場で、既製品の工場が仕事が少なくなってオーダーに転換した工場ではない。だから手縫いテーラーと同じ毛芯縫製専門工場というわけ。

セミナーは、イタリアと日本伝統のテーラーの技術をシミュレートしてその縫製工場でも行われているという説明に加え、パット付け、アゴくり止め、中間プレス、前アームシツケ、ダキの引き上げなどまさにマエストロが行う手法にもとづいて工場内で行われている技術のプレゼンテーションが主なトピック。セミナー参加の多くのテーラーは当たり前のことと捉えていたが私はそれは、すごいことだと感じていた。

なぜなら日本最高のマエストロ柴山先生に直接オーダーをお願いすると、どんな安く見積もっても仕立て代だけで一着40万円は必要だろう。我が縫製工場なら先生のパターンをCADで再現し先生の技術をそのままグループワークで作られることで柴山先生の服が当店の価格で実現できる。素晴らしいマエストロのスーツが限られた人だけのものではなく、多くの人が着られるようになる。
バストの高さをだすための技術。セミナー会場内で。
当店のパンツに施されている「くせ取り」。セミナー会場内で。
セミナー後は先生と二人で美味しい食事を。
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