洋服屋、街を生きる。オーダーサロンタナカ店主blog

名古屋、錦3丁目のオーダースーツ、オーダージャケット、オーダーシャツのお店の店主です。名古屋のまんなかに生まれ、ずっとここで生活し六十年。オーダーメイドのこと、街の暮らしのなかで感じたことをつづっていきます。

わたしの読書

お盆読書(2018/8/17)

一週間のお盆休みをいただきあと残り3日。災害とも言われた猛暑も去ったようで、家でのんびり本を読んでいる。和辻哲郎氏が90年前、昭和2年に3ヵ月イタリア旅行に行った旅行記「イタリア古寺巡礼」を読む。わたしが行った場所とほとんど同じ場所を当時大学助教授だった和辻哲郎が出かけて書いた随筆。90年前のイタリアはムッソリーニ政権下。それでも今とほとんど変わらないのに驚く。景色、飲み物、教会などわたしがイタリアを旅して感じたこととほぼ同じ経験をその頃していた。古い建物、芸術、街並みがそのまま残るイタリアならではで、電車もクルマも当時もありただマクドナルドが無いだけほどの違いなのだろう。こういう本を読んでもこれから何か役に立つわけでないが、短い人間の命と芸術、建築などの長い命のギャップを感じる不思議な感覚を味わう読書でした。IMG_20180817_104823
今読んでいる本と次に読む本

枕元にはニーチェをおいて(2018/5/21)

在庫のお知らせ 2018/5/21
エルメネジルド・ゼニア クールエフェクトネイビー無地本日完売しました。

オーダーシャツフェア本日まで。
4月21日から開催していたオーダーシャツフェア、多くのお客さまにオーダーいただきましたが本日までとなります。ありがとうございました。次のフェアは9月中旬を予定しています。

テレビはくだらない番組ばかりでもう全く見ないが、活字は好き。読む本がそばにないとどこか不安な気がするのは活字中毒かもしれない。先日紹介した「サピエンス全史 上下」を読んでいたときはとてもエキサイティングで楽しい時間をすごしたが、いまはじっくり読む本が無くて寂しい。でもベッドの枕の横に「超訳 ニーチェの言葉」を置いて、ランダムに開いて数ページだけ読むことにしている。ツァラトゥストラはかく語りきなど、不勉強につきニーチェの大書を読んだことは無いが、それらの本から抜粋している言葉はほんとに示唆に富んでいて腑に落ちるものばかり。ぱっと開いたページからひとつふたつご紹介しよう。

必要な鈍さ 「超訳 ニーチェの言葉」より
いつも敏感で鋭くある必要はない。
特に人との交わりにおいては、相手の何らかの行為や考えの動機を見抜いていても知らぬふうでいるような、一種の偽りの鈍さが必要だ。
また言葉をできるだけ好意的に解釈することだ。
そして、相手を大切な人として扱う。
しかし、こちらが気を使っているふうには決して見せない。相手より鈍い感じでいる。
これは社交のコツでもあるし、人へのいたわりともなる。

四つの徳を持て 「超訳 ニーチェの言葉」より
自分自身と友人に対しては、いつも誠実であれ。
敵に対しては勇気を持て。
敗者に対しては、寛容さをもて。
その他あらゆる場合には、常に礼儀を保て。

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ヒプノシス、限りなくヒップな。(2018/4/24) 

ヒプノシス全作品集【2000部完全限定】
オーブリー・パウエル
¥ 7,980
コンディション: 新品 - ☆新品・未開封☆ Amazonで品薄な商品のため、定価より高いプレミア価格での出品となっております。

3月19日にこの書物がでるのは事前に知ってはいた。発売から一か月しかたたない昨日丸善に買いに行ったら品切れ。仕入れていないのかなとおもいAmazonで買おかと調べるとどこも完売。それでみつけたのがこのプレミア価格。欲しいと思った人の弱みにつけこんで越後屋、いやAmazonそして出版社、お主も悪よのう。でも背に腹はかえられねえ、5400円(税込)定価より2580円高いプレミア価格で泣く泣く買いました。いままで定価が80000円のゴルフクラブがなんと19800円になったと喜んで買うってのが我が人生の常だっただけに、はじめてのおつかいならぬはじめてのプレミア。

ヒプノシスのことに戻そう。

ピーターガブリエルの賛辞
お気に入りのアーティストの新しいアルバムの封を切るのは宗教的経験であり、アルバムのカバーは針がレコードの溝に降ろされた瞬間に自分が踏み入れる為に必要不可欠だった。大胆かつ驚異的で時には途方も無い創造性を発揮していたそのイメージを通してヒプノシスは世界で最も影響力のあるアルバムカバーのデザイン会社となったのだ。

今年還暦のわれわれの世代でこのヒプノシスという名前を聞くとピンとくる人もいるだろう。それはピンクフロイド、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、ポールマッカートニー、ウィッシュボンアッシュ、バッド・カンパニーなどなど。若い頃こころ踊らせた英国ロックの名盤のジャケットをデザインしたのがデザイン集団「ヒプノシス」。名古屋駅の名鉄メルサ「ヤマギワ電気レコード部」に行っては背徳の匂いがぷんぷんするジャケットやらなにやらいわくありげなアートっぽいLPジャケットをみながらどんなイヤラシイいやどんなかっこいい音なんだろうと想像を膨らませた中学生のころ。どんな意味か見ている人に考えさせるアートワークを得意とした「ヒプノシス」、その頃ロックが人生のほぼ全てだったわれわれ青臭い中学生はいともたやすく彼らのとりこになっていました。もちろん音楽にもですが。大人になって、いや還暦になってはじめての大人買い(プレミア買い)がヒプノシス全作品集とはなにか縁を感じないわけにはいきません。

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ヒプノシス全作品集
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こんなカッコいいギターを弾く写真ってなかった。TREX 電気の武者 ヒプノシス全作品集より
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これは基本ポールマッカートニーのアイディアだそうです。バンド・オン・ザ・ラン ヒプノシス全作品集より
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入れ子構造 ピンク・フロイド UMAGUMA  ヒプノシス全作品集より
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よく聞いたアルバム ウィシュボーンアッシュ ARGUS  ヒプノシス全作品集より
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有名なあまりにも有名な DARK SIDE OF THE MOON  ヒプノシス全作品集より
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有名なあまりにも有名な ATOM HEART MOTHER  ヒプノシス全作品集より 

SARTORIA ITALIANA(2018/4/16)

イタリアに行き、イタリア人に日本で何をしているのと尋ねられサルト(仕立て屋)だというと、ほおーーとちょっと賞賛を含んだ反応になることが多い。イタリアではやはりこの職業はリスペクトされているのだろうと感じる。
今日は「英国王室御用達」「セヴィルロウ」の著書があるファッションライター長谷川喜美さんとルーク・カービー撮影の美しい書籍「Sartoria Italiana」を楽しく読んでいる。当店でも人気のあるヴィターレ・バルベリス・カノニコ社が全面バックアップし、北イタリアから南イタリアの27のテーラーに取材した洋服文化への深い愛情を感じる見ごたえのある力作とでもいう本で美しいスーツの画像も魅力的だ。もちろんヴィターレ・バルベリス・カノニコ社の素材が多いが、ロロピアーナのウインタータスマニアンの古いコレクションのスーツを著名サルトが着ていたり、ロロピアーナのサマータイムやソルビアティのサッカーで仕立てたジャケットを発見したりする面白さもある。
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なかにはイタリアでお会いした方もいるので懐かしい思い出が蘇る本でもある。初めて22年前イタリアに出かけた際、ロロピアーナ本社でお会いしたのはたしかにこの本に掲載のサルトリアバルベリスのご主人ジョヴァンニ・バルベリス氏のはずで、クアローナのロロピアーナ本社二階にて、順番待ちもでているくらい仕事が多いなか丁寧にイタリアのサルトの技術を日本のテーラーたちに惜しげもなく何時間もご教授いただいた。
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カノニコの同郷でもあるバルベリスさんの記事「Sartoria Italiana
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21年前ロロピアーナ本社でジャンニさんに指導をしてもらったときの写真

マリックのアンドレアの紹介でフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ近くの建物の二階に上がったセミナーラさんの瀟洒なサルトリアに伺ったのも貴重な思い出。着せてもらったジャケットの柔らかな着心地とともにこのおだやかな紳士のやわらかなトスカーナ地方のイタリア語はいまでも耳に残っている。
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ジェントルマン、ジャンニセミナーラに幸あれ。「Sartoria Italiana

イタリア大使館で二年前行われたヴィターレ・バルベリス・カノニコ社のパーティでお会いした二人のアントニオ、リベラーノさんとパニコさんもイタリアトップクラスのサルトとして紹介されている。実際にお会いしたことはないが、ナポリのマリネッラさんのスタッフが自慢していたジャケットを作っていたソリトさんも紹介されている。

シチリアのサルト、サルトリア・クリミのご主人が「Sartoria Italiana」に載ったことをシチリアの新聞で紹介されたとフェイスブックで喜んでコメントしていた。ちょっと驚いたのはその画像は私のお客さまでもあるサカモトさんがシチリアのサルトリア・クリミで仮縫いしている写真だった。サカモトさんは毎シーズン当店で極めてエレガントなロロピアーナ素材をオーダーいただいているがときどきシチリアにでかけサルトリア・クリミでハンドメイドしてもらっている。フェイスブックで紹介されたのはその時の画像。サカモトさんに聞くとクリミのご主人は僕の仕立てたスーツも高く評価してくれてるそう。イタリアのサルトと名古屋の当店がちょっとリンクした気分にもなりました。
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サルトリア・クリミで試着中の我がクライアント、シチリアの新聞記事。内容はサルトリアクリミが「Sartoria Italiana」という日本の書籍に紹介されたということ。
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親子で働くサルトリア・クリミの記事 「Sartoria Italiana

定点観測的サピエンス人生(2018/3/23)

定点観測な人生
先の火曜、この3月に転勤で名古屋を離れるお客様ときんぼし伏見店に行く。そのお客さまは全国に転勤のあるお仕事で前回7年前名古屋が任地になり散歩の途中当店を発見し下見の上オーダーを頂いた。オーダーの際いろんなお話を聞いて、そしていろんな話をして仲良くさせていただいた。一年前また名古屋に勤めることになったと連絡いただきそれから何着もオーダーいただいた。一年の短い付き合いだったが、別れがたい気がして忙しい時間を割いて頂き一緒に飲むことととなった次第。同じように転勤がある方が名古屋支社にいる間に当店でオーダーされることは本当に多い。そんなかたを新緑のころに迎え、そしてサクラが咲き始める3月に見送る私自身はずっと名古屋のここ錦三丁目でずっと生まれてこのかた住み続けて店を構えているいわば定点観測的人生。こういう人生はよくあるようで実は案外少ないかもしれない。家族でさえずっとおなじ場所で住む人生を送っているわけでない。弟たちは名古屋の違う場所で別の世帯を持ち、母親は静岡で生まれ、妻は浜松出身。いまや息子、娘も別れて住んでいる。

晴耕雨読
次の水曜日は朝から雨。春分の日なのでお彼岸だから墓参りもいかなければいけないが雨の墓参は辛い。家で読書することに。なにを読んでいるかというとヘブライ大学教授ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史」上巻下巻。丸善栄店の店頭に平積みになっていたのでなにげなく手に取り、とりあえず上巻を買って読み始めた。タイトルに興味をひいて買ってみても読み始めるとくだらない本が溢れている昨今、この本やたらおもしろい。ホモサピエンスがなぜここまで繁栄したかということについて人類とは、宗教とは、貨幣とは、経済とは、歴史とはを説明しというともすれば難解になる内容を極めて平易な文章で書いてある。最近読んだ本でこんなにエキサイティングな本があったかと思うほど。内容はネタバレになるので書かないが2ページに一度はオオっそうなんだ!と驚いたりする記述がある。文章が平易なのがまたすばらしいし例え話も面白い。一巻200ページ以上だが読み進めていくうちに読み終わるのが残念に思えてくる。巻末を見るとなんと47刷。読んでみると売れる理由がわかります。
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