洋服屋、街を生きる。オーダーサロンタナカ店主blog

名古屋、錦3丁目のオーダースーツ、オーダージャケット、オーダーシャツのお店の店主です。名古屋のまんなかに生まれ、ずっとここで生活し六十年。オーダーメイドのこと、街の暮らしのなかで感じたことをつづっていきます。

当店のポリシー

バルカポケットをていねいに(2018/1/6)

当店のオーダースーツ、ジャケットの胸ポケットはすべて柔らかなカーブがついている通称「バルカポケット」になっています。バルカとはイタリア語で舟のこと。舟にも似た形状だからバルカポケットと言い、ナポリのテーラーが始めたと言われています。日本では1990年代クラシコイタリアが流行して以来この形状が採用されてきました。バルカポケットには2つの理由があります。

なぜバルカポケットなのか。その1

スーツの上着が古くなるとだんだんポケットの口が垂れてきて自然にカーブがついてきます。かってナポリのテーラーはこれを新品のうちからバルカポケットとして施し、こなれた雰囲気を醸し出すように思いつきました。デニムのユーズド加工、ダメージ加工と同じ考え方かたかもしれません。

なぜバルカポケットなのか。その2

エレガントなスーツのパーツはテーラーが生み出す曲線で全てなりたっています。その中で胸ポケットだけ定規で引いたような真っ直ぐだと違和感が生じる恐れがありそれに配慮してゆるやかなカーブをつけてあるのです。作りやすい直線ポケットではなく手間のかかるバルカポケットにするため縫製工場はひと手間もふた手間もかけています。
DSC06068
ポケット用に裁断したパーツを
DSC06074
カーブの付いた金属製のゲージにそって
DSC06075
アイロンで丁寧になじませてパーツをカーブの形にする。

オーダーサロンタナカだけの特徴
また当店だけの特徴として、縫製を担当する日本国内の縫製工場に特にコストを追加しお願いして、胸ポケットはミシンを使わず針と糸でのハンドメイドで取り付けております。ハンドメイドで取り付けると一番目につきやすい胸ポケットの脇の縫い目が美しく滑らかに仕上がります。これが当店のスーツだとすぐ分かるポイントです。
DSC06029
熟練技術者がひと針ずつ丁寧に。
DSC06048
こころ込めて手で胸ポケットつけています。
ミシンでとりつけると20秒ほどで取り付け完了ですが、ハンドメイドで取り付けると熟練技術者が行ってもひとつのポケットに15分ほどかかります。当然コストは上昇しますが胸ポケットは一番目立つところだけに、美しく仕上がるハンドメイドにこだわりたい。雇用情勢が厳しい中、将来的にはできなくなるかもしれませんができるうちはやっていきたいと思います。
 DSC06518
これがオーダーサロンタナカの仕立ての特徴であるハンドメイドで付けた胸ポケット。中に手で折りこんでいるため縫い目が見えずフチが丸く、触ってもスムーズです。下のミシン付けの仕立てと比較するとよくわかります。
DSC06519
これがミシンメイドの胸ポケット付け。縫い付けた糸が見えます。フチもとがっています。当店のレディースオーダーは残念なながらミシン付けとなっています。

バーゲンしなくていいしあわせ(2017/12/11)

12月3日にジレフェアが終了、昨日12月10日トーマスメイソンフェアVIPオーダーシャツフェアが終了しました。多くの皆様にご来店いただきほんとうにありがとうございました。

お客さまを裏切らないしあわせ。 
8月24日、秋冬素材のオーダーを開始して以来、地元はもとよりご遠方からも多くのお客さまがご来店いただきました。ロロ・ピアーナウインタータスマニアン150など新しく買い付けた素材はほとんど完売し、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ことしもいままで通りバーゲンしなくていいようです。 売れ残ったアイテムの値段を下げて、せっかく早く来てオーダーしていただいたお客さまより安く売り、それを知ったお客さまにがっかりした気分を味わってもらいたくない。バーゲンをしないことは我々もお客さまもハッピーなのではないかと考えています。

リーズナブルな価格がモットー
バーゲンしない代わりに当店はシーズン初めから最大限リーズナブルな価格設定をこころがけています。夫婦ふたり自社ビルで営む店ですから経費もほとんどかかりません。世界のベストクオリティの素材をお求めやすく販売するのが生きがい。いくら良い素材のオーダースーツでもばかげた値段では意味がありません。 洋服好きな店主自身が買いたいと思える価格がひとつの基準です。これからもこの方針をつづけていきますのでよろしくお願い申し上げます。
 DSC06305
ショーウインドウにシンプルなLED電灯を取り付けました。

丁寧に仕立てたいから納期はかかります。(2017/11/19)

年内の納品完了につきまして。
お客さまから多くのオーダーをいただきましてオーダースーツ、オーダージャケットの2017年の年内納品が完了いたしました。2018年の納品は1月10日からピッティイマジネウォモ出張がありますので1月18日(金)からとなります。

オーダーパンツ、オーダージレにつきましてはまだ年内納品可能です。


オーダーシャツは約20日間ですので年内納品は十分可能です。


丁寧に仕立てたいから。納期はかかります。 
オーダーサロンタナカは38年間ずっと毛芯縫製でオーダーメイドスーツを作ってきました。それもずっとひとつの縫製工場で。最近私どもの縫製を担当する縫製工場の評価が高まり仕事が増え納期が長くなってきました。そして毛芯仕立ては難しく工程も多く手間がかかります。接着芯仕立てを主体とする工場やキャパシティの大きい工場をつかったり、中国の縫製工場で仕立てたりすると納期が短縮できるのはわかっていますが、やっぱり本バス毛芯を使ったオーダースーツは立体感が美しい。仕上がりの見た目が全然違います。多少お待ちいただいても、信頼する工場で作ったそういう良いスーツを納品するのが私どもの仕事だと考えます。 スーツを丁寧に仕立てたいから、すこしだけおまちくださいませ。

我々の縫製工場は日本最高のモデリスト柴山登光先生が作成した型紙をCADに入力します。そのCADもオーダーメイドの技術をそのままシュミレーションした米ガーバー社のシステム。まさに熟練の腕利きテーラーが頭の中で考えた線がモニター上に表現されカッティングマシンで服地をカットします。ただチェックの素材は柄合わせがずれてもいけないのでまず紙をカットしてそれを服地の上に起き、チェックの柄を丁寧に合わせて人の手で裁断いたします。工場縫製とはいえ手作りで丁寧につくられているのです。
DSC06019
CADでカットした紙にそって丁寧に手で裁断
DSC06020
柄合わせをするためチェック柄の素材は無地よりも服地が多く必要となります。

幸福な縫製工場の風景(2017/11/17)

先日、当店が扱うすべてのスーツ、ジャケット、パンツの縫製をお願いしている縫製工場に訪問した。いりくんだ入江が望める風光明媚な地に建つこの縫製工場は手縫いの職人さんが減って困っているテーラーさんをサポートする目的で約30数年前設立された。それゆえハンドメイドと近づけるため毛芯縫製専門工場となっている。昨今その本バス毛芯仕立て立体感のあるクオリティに消費者のみなさまの注目が集まって、結果たくさんの仕事が工場に集まり働く技術者のみなさんも忙しそうに働いている。
縫製工場というのはむずかしいビジネスで、ミスは許されない上、仕事が少ないと財務に問題が生じるだけでなく仕事が多くなってくると納期を間に合わせるため人手不足の問題にもなる。

近くで立ち寄ったスーパーでレジのスタッフと雑談をしている中で、ぼくがやっている店はすべてこの工場で縫製をやってもらっているんだよと話したら、あそこの工場はいま忙しいしすごくいい工場なんだと話題になっているそうだ。そういう地元の評価はとてもうれしい。この工場はここではたらく人たちに無理な働き方を強いているとそういう評価は生まれない。工場内で何人かのスタッフの人と打ち合わせをしたがみんな自信に満ちた表情だったことが印象的。

設立以来長くこの工場に仕事をお願いしてきたことはほんとうに幸せなことだと思っているしこれからもずっと当店のスーツ・ジャケットはここが仕立てていきます。
お客さまに感謝、縫製工場に感謝。

芯据えのプロセス
 熟練の技術を持つスタッフがこの工場を支えています。この工場の一番大事な工程、毛芯を服地に縫い付ける「芯据え」のプロセスをご紹介いたします。
DSC06089
裁断した上着の前身に毛芯を重ねて十分湿度を均質に与える。
DSC06091
軽くプレスする。
DSC06093
密閉した箱のなかで一定の時間エイジングして、湿度をなじませる。
DSC06111
毛芯を縫いつける前にシツケミシンを打ってずれないように安定させる。シツケミシンもただ縫うだけでなくバーツによって余裕の付け具合を変える高度な技術を使う。
DSC06123
一台500万以上するドイツ製ミシンで毛芯と前身を縫い付ける。

「オーダーメイドのエクスペリエンス」を知ってほしい。(2017/9/30)

9月もみそか。10月秋深まる頃。

去る1月、ピッティイマジネウォモにて、ステファノビジとロッシでネクタイを買い付けてそれがこの8月入荷しました。梱包されたネクタイを見てどうやって展示したらいいか考え、ネクタイをストックする箱を仕立てたらと考えました。ウェブサイトで調べたら賞状を入れたりするしっかりしたペーパーファイバーのことをバルカナイズドファイバー、もしくはパスコと言うことを知りました。便利な世の中になったものです。見つけたウェブサイトは新潟の安達紙器工業さんで、材料、形状、色、cmを指定してオーダーメイドでパスコで箱を作れることもわかり、ウェブを通してオーダー。2週間で出来上がった箱はとても満足の行くものでした。そんなことをしながら、あらためてオーダーメイドというのは本当に楽しい「エクスペリエンス」だと再確認しました。
DSC05760
色はブラウンをえらび、サイズもばっちりで棚にもキレイに入ります。

2,3日前、常連のお客さまから同僚の方を紹介いただきスーツをオーダー賜りました。その方は背広はいつもロードサイド店で適当な値段の既製品スーツをみつくろい3年ほど着ては買い換えるものだと考えていただそうです。連れていただいたお客さまが服地について語り合ったり、楽しげに店内でネクタイやチーフを吟味するのをみて、そのスーツへの思いにカルチャーショックを覚えたとおっしゃっていました。その方にはヴィターレ・バルベリス・カノニコ社「PERENNIAL」のグレーのシャークスキン無地をおすすめしました。穏やかでジェントルマンの雰囲気が香るいい素材です。ロードサイド店で買うお値段とそう大きくは変わらないのに、お好みを聞きながらサイジングを施し裏地、水牛ボタンを選びディテールを選ぶというオーダーメイドの作法に、そのお客さまは新しい経験をしてたいそう喜ばれたご様子でした。

スーツはできれば着たくないけどクールビスの季節がおわれば着なくてはいけないからしょうがなく着ているという方も多数いらっしゃいます。またそれとは別に季節に合わせてスーツを装うことに喜びを感じるお客さまも多くそんなスーツラヴァーが全国各地から多くご来店されます。男は仕事第一、着るものなどどちらでも良いという男らしい考えの方もおおいですが、クラシックなスーツを着る楽しみを「オーダーメイドのエクスペリエンス」を通して知っていただきたいという思いで洋服屋を続けています。
livedoor プロフィール
記事検索
月別アーカイブ
カテゴリ別アーカイブ