洋服屋、街を生きる。オーダーサロンタナカ店主blog

名古屋、錦3丁目のオーダースーツ、オーダージャケット、オーダーシャツのお店の店主です。名古屋のまんなかに生まれ、ずっとここで生活し六十年。オーダーメイドのこと、街の暮らしのなかで感じたことをつづっていきます。

2015 6月 ピッティイマジネウォモ

ナポリネクタイ、2つの名店をあなたに(6/24)

ナポリはさまざまな問題を抱えながらも人間らしく生きる事に価値を見いだす街。楽しみながら生きるにはやはりおしゃれすることが人生にとって重要となる。ナポリ全市にわたって男女の洋服屋が軒を並べるなかナポリ人はジャケット、スーツ、ネクタイ、パンツ、スーツ、シャツ、そのすべてに独自の価値判断を持ち自分にはなにがふさわしいかを選択する。キアイア地区からカラブリット通りビットリア広場ににかけては世界に冠たるナポリファッションの店がキラ星のように存在する。洋服屋としてそんなナポリの歴史ある名店を訪れそのスピリットを学ぶ事はこの上ない幸せ。

今回はお客様Tさんからチレントのネクタイが素晴らしいと聞き、今回の旅で訪れる事にした。
ナポリ港近くムニチビオ広場東にあるの店は広いが中はネクタイや洋服でぎっしり。そのカオスにすこしめんくらいながら店主にネクタイを見せて欲しいと尋ねるとどれでも選べとのこと。何十箱もあるネクタイを前にどれがセッテピエゲかと聞くと店主はうちは「すべて」セッテピエゲだと誇らしく言われた。チレントのネクタイはもちろん初めて見るがどのネクタイもクラシックで素晴らしい。1780年に創業してずっとナポリ港の前で営業している店のネクタイはやはり偉大と言うほかなくその中でいくつか選ぶ事にした。しっかりした表地で裏打ちして仕立てた普通のセッテピエゲと軽やかに表地だけで仕立てたセッテピエゲ・スフォデラート(裏地無しの意)とネクタイの仕立ては二種類ある。すべてシルク100%、ナポリ市内でハンドメイドで作られている。

チレント セッテピエゲネクタイ 22000円(税込) 20本限定 2015/6/28完売しました。

P1150263
チレント セッテピエゲ ネクタイ 一目見ていいネクタイと判った。
P1150264
チレントセッテピエゲ
P1150265
チレント セッテピエゲ スフォデラート 無地はほとんどこのタイプで軽やかさが特徴。
IMG_1972
ナポリ港近く チレント
IMG_1975
店内は多くの商品でぎっしり
IMG_1977
仮縫いを待つジャケットとともにEグリーンやJロブの靴も
IMG_1981
誇り高きチレントの店主ファブリツイオさん

ナポリのネクタイと言えばまず名前が浮かぶのはマリネッラ。太陽燦々と照る海沿いのビットリア広場にあるこの店のたたずまいはいつ行っても変わらずお客で賑わっているのがうれしい。そして当主のマウリツイオさんはいつでもここで朝6時から店を開いて働いている。この店は昨年で100周年、伝統あるマリネッラののネクタイの特徴はその精緻なシルク100%のプリント柄にある。今回マローネ&アズーロの小紋を中心に集めた。かってはタブーだった茶と紺のミックス、そのイタリア独特の色合いの妙をを感じてほしい。マリネッラさんは六本木にも店がありご迷惑がかかるので価格はここには公表しないがセッテピエゲではないのでチレントよりすこしお安く設定した。

マリネッラ ネクタイ 価格は店頭にて 10本限定 2015/6/28完売いたしました。

多くのお客様に楽しんでいただきたいのでお買い上げは多くても二本以内でおねがい申し上げます。
P1150257
マローネ&アズーロを中心に選んだ。
IMG_2149
人格高潔な紳士マウリツイオ氏と
IMG_2152
小さな店にもかかわらずマリネッラは世界のジェントルマンを魅了する。

フィレンツェの素敵な夕べ(6/22)

今回のイタリアの旅は4泊5日、ローマ、フィレンツェ、ナポリ、ローマのの順。こう書くととハードスケジュールのように見えるが移動にはすべて特急電車を使いかかった時間は1、2時間程度。効率の良い旅で短い時間の中で楽しいことが多かった。2日目のフィレンツェではピッティイマジネウォモがメインの目的なのでこの日は忙しく、ブログに書けなかったのでいまから6/17日の夕べの事を書く。
ピッティイマジネウォモの会場バッソ要塞には午前11時過ぎに入場し午後4時まで滞在。その後、暑くも寒くもなく快適な夏の地中海性気候の中フィレンツェの大きな教会の一つサンティッシマ・アヌンチアータ(最も聖なる受胎告知)教会までひとりのんびり散歩。敬虔な市民たちが祈りを捧げる中をこうべを垂れながら回廊に向かいアンドレア・サルトの描いたフレスコ画「袋の聖母」を見る。そしてすこし離れたところにあるこの教会付属のサンティッシマアヌンチアータ薬局で自然な材料で作られた香りの優しい石鹸やクリームを家族への土産に。店主極めて親切でS.Mノヴェッラより買いやすい。
IMG_0145
カブール通、サンティッシマアヌンチアータ薬局で
IMG_0126
サンティッシマアヌンチアータ教会 アンドレアデルサルト作「袋の聖母」
IMG_0122
S.Sアヌンチアータ広場にあるブルネレスキ設計の捨て子養育院。

腕時計をローマのホテルの床にころっと落したら止まってしまった。代わりの安い時計を買おうとホテル近くの店TOYWATCHでフィレンツェらしい時計ないかと聞いたら好きな居酒屋プロカッチとコラボした時計があるというので180ユーロで買った。外でアペリティーボ(つまみとお酒の小パーティ)してるのでこないかと店の人に誘われ行ってみる。スプマンテとシーフード系のツマミをいただきながらこれ買ったよ〜〜と社長らしきひとに話しかけると、その方や他のひとりもそれをはめていた。これはニューヨーク版GQにも紹介されたんだよ、ジャッポーネお目が高いねえとしばし談笑。
IMG_1797
TOYWATCH社のスタッフとおそろいの時計
IMG_1796
美女に注いでもらう泡こそ美味
IMG_1801
きれいにならんだアペリティフ

ぷらぷら散歩していたら今日うちの店開店するよーとイタリアのドンナに誘われた。人が多い店内になにごとかと入ってみたら
ロンバルデというワインとサラミ屋さんで市内で四店舗目の開店パーティーが開かれていた。壁に高級ワインが並んだ店内でエレガントなワイン、ロッソディモンタルチーノと美味しいサラミをいただいた。日本人の女性も働いていたので話すと彼女YUKIさんもブロガーで15年フィレンツェ中央市場のその店の本店で働いているという。フィレンツェに行ってイタリアの良い食材を探していたら中央市場の彼女をたずねていったら助けてくれると思う。彼女のブログはここ
IMG_0156
ENOTECA SALUMERIA LOMBARDIのご主人とYUKIさん
IMG_0165
ENITECA SALUMERIA LOMBARDI でエレガントなワインをいただく。その後食事は中心部にあるトラットリア「イル・パイオーロ」に。時計の名店ヒラノさんのおすすめのこの店は塩っからくて強い味が特徴のフィレンツェの中にあって優しい味わいがうれしい。英語の上手な女店主が熱心に料理を説明するため英語圏の女性のお客様が多い。
IMG_1838
パスタ イルパイオーエロ
IMG_1839
タリアータ イルパイオーロ
食事の後、酔い覚ましに石畳の細道をさまよう。もう午後9時で閉まったはずのバルジェロ美術館に人がたくさんいる。入っていると、美しい中庭で寸劇が始まるとのこと。君主論で有名なマキャベリ作の「マンドラゴラ」という劇らしい。マンドラゴラってたしか毒草じゃなかったかなあと隣のイタリア人に聞くとなんでそんな事日本人が知っているんだと驚かれた。たしか澁澤龍彦さんの本で読んだ記憶が。夜の闇の中、古城の回廊の中かすかな明かりに照らされた古城での寸劇の意味はよくわからなかったがまるで500年前のヨーロッパにタイムスリップした気がした。

あとでネットで調べてマンドラゴラのあらすじを知った。修道士が貞淑な人妻をだまして寝取る話しだそうだ。隣に座ったおじいさんは孫にぜひ見せたいと前から楽しみにしていた。なんか微妙である。
IMG_0184
夜のバルジェッロ国立美術館でドラマの開演を待つ。
IMG_1868
闇に映える俳優達

ナポリを見て死にそうになる。(6/20)

朝起きてホテルの屋上にあるテラスでヴェスヴィオを見ながら朝食。オレンジを絞った生ジューススプレムータとナポリのチーズ、塩づけしたオリーブの実だけの簡素な食事が体に優しい。
通りの真ん中から出ているフニコラーレチェントラーレ(ケーブルカー)に乗ってナポリの高台地区に出かけた。このフニコラーレは観光用ではなくまさに市民の足。1300mの距離を高さを160m登り、途中に駅は二つある。途中は景色が良いわけでなくほとんどすべてトンネルとなっている。終点に着いたら普通の市街地が広がっていた。
どこに行ったらいいかわからないのでなんとはなしにセントエルモ城に向かう。この時点でセントエルモ城についての予備知識はゼロ。看板の矢印に従って階段を上って、市街地を不安な気持ちで歩くこと15分セントエルモ城に着く。石造りの高い壁がそり立つ砦だった。ひと気がないが入場券売り場で5ユーロ払って入り口に向かう。こんな高い城登るのは骨が折れるなあと思ったらアッシェンソーレの文字が見えた。それはエレベーターのことで、迷わず乗って登る。登ったら兵士のための広場があり周りの城壁が高くて景色が見えない。でも上る階段を見つけて登りました。
突然、目の前に広がる景色に息が止まりそうになった。幸運にも晴れて澄んだ空気の中ナポリのエレメント全てが同時に目に入り頭の中がバーストしそうになった。ヴェスヴィオ火山、古い教会が幾つか見えるナポリの街、巨大なクルージングの船が浮かぶ港、そして半島のシルエットの向こうはアマルフィ。カプリ島も見える。私は今までかって56年の人生を振り返ってこんな美しい景色を見たことがあるのだろうか。もちろん日本にも素晴らしい場所がたくさんある。でもそれでこんな気持ちになった経験はない。見た瞬間に心臓に矢を放たれる心持ち。ひとりでこんな景色を見るのはもったいない限りだが、ひとりで見たから強い衝撃があったのかもしれない。ナポリを見て死ね、この言葉の意味を一瞬で理解した朝だった。



景色は現実か夢か?


山上の高い砦セントエルモ城


ナポリフニコラーレチェントラーレ

ナポリの女神が微笑む夕べ(6\19)

ナポリ中央駅に着いてなんとなく歩いていくと今までと全然違う出口に出てしまった。ちょっとどきっとして心配になって戻ったらどうやらそこは車のパーキングだったようだ。歩いて戻ったらいつものガリバルディ広場口にでた。ホッとしながらタクシー乗り場に行くとナポリの空気と共にいきなりまがまがしさがどっと押し寄せて来る。係員と運転手がなにやら大声で配車している。乗ったタクシー運転手髭ズラの大男、メーターを使わない。運転は車や歩行者、バイクとほぼ10cmの車間でタイトに交差し、急加速、停止を繰り返す。きたきたきたよ。普通に行くと十数ユーロのはずだが三十ユーロまでならボッタクられても許容範囲とするかと覚悟していたが着いてみたら16ユーロで悪くない。払う時に別に15ユーロでもいいよという鷹揚さ。ナポリの女神が少し微笑んだ。
チェックインした今回のホテルはトレド通りに近く、清潔で安全ないいホテル。一件仕事を無事に済ませホテルで推薦された近くのトラットリアCIROでお魚料理。グループや個人のお客様がどんどん入ってきていい店なのだろう。ヘタなイタリア語を話す日本人が珍しがられたのかカメリエーレと会話が弾みメニューの相談をした結果小エビとルッコラのサラダ、テナガエビとチェリートマトのパスタ、小さな蛸の煮物に決めた。いつものようにワインはそのまま飲んだり、ガス入りの水を混ぜて飲んだり楽しむ。コレがぼくの夏のイタリアのちょいとした楽しみ。 頼んだテーブルワインが思いの色が濃くしっかりした味の白ワインだったのでテンションがちょっと高くなった。
美味だったがデザートは頼まず店を後にする。酔い覚ましにナポリの街を少し散歩。お気に入りのプレビシート広場の入り口にあるカフェ、ガンブリヌスで小さなイチゴの乗った一口タルトを選びエスプレッソといただく。コレで2ユーロはうれしいね。ナポリ港から吹く地中海性の風はワインでほてった顔にやさしかった。


チーロにて小エビとルッコラ


おすすめのパスタ


チーロのカメリエーレ


ガンブリヌスにて

ホテル前の広場

ピッティウォモは世界に愛を(6/18}

何人来ているとか何社参加とかそういうデータは知らないし興味もない。十四年続けてピッティウォモに来ているからわかることがある。今年のピッティいままでより確実に濃度が高い。ある年はデニムばかりだなぁとクラシックスタイルの少なさに嘆いた季節もあった。まだある年は紺ジャケットばかりだと思った年もあった。でも今年、素敵なジャケット姿が圧倒的に増えている。これはいわばピッティ流スタイル、ピッティスタイルだと思う。ジャケット、パンツ、靴、アクセサリーのコーデで遊べるジャケットパンツスタイルは楽しい。サイジングに気を配り細めにフィットしたジャケット丈パンツ丈の短いスタイルは完全に定着した。どんな明るいブルーを着ていてももはや誰も驚かない。
何年か前は中国人が多いのが気になった年もあったがいまは全く気にならない。でもそれは彼らが今やこなれたピッティスタイルになって来ているからに他ならない。前回も書いたがカッコよすぎるアフリカンもいっぱい見る。世界中からバイヤー達を集めるピッティウォモ、彼らの持つ地元の店でピッティスタイルは売られてどんどん世界に伝播していく。ピッティウォモのパンデミックは世界に愛と平和をもたらすかもしれない。



プロフィール

ordersalon

記事検索
月別アーカイブ