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はたして由子の口調はこれであっているのか……






こんにちはー、真瀬由子なのよー。

私たち最後のインターハイも終わってもう2月なのよー。

慣れ親しんだ学校や、麻雀部のみんなとももうすぐお別れなんて思うとちょっとさみしいのよー……。

そんなときに恭子が神妙な面持ちで声かけてきたのよー。


末原「ゆーこ、ちょっとええか……?」

由子「恭子どうしたのよー?」


真剣な顔だけど、ちょっと頬が赤くなっててかわいいのよー。

なんだかたのしい予感がするのよー。


末原「その……じつはやな……」モジモジ

由子「うん」


もじもじしててかわいいのよー。


末原「チョコを……つくるのを手伝ってほしいんやけど……」カア


かわいすぎて鼻血吹きそうなのよー。


由子「バレンタイン用のチョコやね?」

恭子「……うん//」


ひゅー、たまらんのよー。

まさか恭子がこんなこと言い出すとは思わなかったのよー。

なんせ恭子ってば去年なんて、「バレンタイン? チョコなんてつくってる暇あったら練習しますよ」なんて言って目もくれなかったのよー。すごい成長なのよー。

そうだ。大事なこときいとかなきゃなのよー。


由子「ちなみにだれにわたすのよー?」


この様子だと義理ではないはず……。

こんなかわいい恭子から本命チョコをもらえる幸せ者はだれなのよー。


末原「……」


だんまりなのよー。


由子「善野監督? 」

末原「……」

由子「漫ちゃん? 絹ちゃん?」

末原「……」

由子「代行?」

末原「……」ブンブンブン

由子「……洋榎ちゃん?」

末原「……//」カア


わかりやすすぎなのよー。

くっそかわいいのよー。

マジ恭子結婚してほしいのよー。

そういえばインターハイ終わったあたりから恭子と洋榎ちゃんは以前にも増して仲がいいのよー。


由子「なるほど、わかったのよー」

由子「どんなチョコ作るかは決めてるのー?」

末原「いや……うちはお菓子作りとかしたことないからどんなんがええんかわからんくて」

由子「それじゃ、帰りながら決めるのよー。帰りに材料も買ってウチでつくるのよー」

末原「すまんなゆーこ。おおきに」

由子「どういたしましてなのよー」

由子「がんばって洋榎ちゃんがよろこぶチョコをつくるのよー」

末原「べ、べつに洋榎にわたすなんてゆうてへんやろ//」




ゆーこの家



由子「準備が整ったのよー」

由子「材料ー?」

末原「よーし」チョコ バター タマゴ ナドナド

由子「道具ー?」

末原「よーし」ナベ ボール ヘラ ナドナド

由子「愛情ー?」

末原「よ、よーし//」カア

由子「それじゃはじめるのよー」エイエイオー

末原「よろしくたのむわ」オー


由子「まずはボールにバターを入れて練りまぜるのよー」

末原「んしょんしょ」ベチャベチャ


由子「チョコレートを細かく刻んで湯せんにかけるのよー」

末原「か、かたくて……きれへん……!」グリグリ


由子「そのチョコにさっきのバターと生クリームを入れてまぜるのよー」

末原「ふんふん」マゼマゼ


由子「タマゴの黄身にグラニュー糖を入れてしっかりまぜるのよー」

末原「ふんふむ」カチャカチャ


由子「今まぜたふたつをさらにまぜあわせるのよー」

末原「まぜること多いんやな」マゼマゼ


由子「白身を入れたボールにグラニュー糖を3回にわけて入れて、固く泡立つまでまぜてメレンゲをつくるのよー」

末原「なかなか泡立たへんな……」カシュカシュ


由子「そのメレンゲをさっきのチョコに3分の1入れて『の』の字を書くようにまぜて、もう3分の1入れて混ぜるのよー」

末原「のの字……のの字……」クルックルッ


由子「それに薄力粉とココアをふるいにかけながら入れてまぜるのよー」

末原「ほっほっ」カタカタ


由子「ここでオーブンを160度で10分ほど予熱しとくのよー」

末原「160度っと……」


末原「ふうっ……お菓子づくりもけっこう大変なんやな」

由子「あとはさっきのメレンゲの残りを加えて、型に入れて焼けば完成なのよー」

末原「そっか。それじゃもうひと頑張りやな」

末原「メレンゲの残りを入れてっと……」

由子「あ、そうだ」

末原「ん? なんや?」

由子「最後にまぜるときは愛情もいっしょにまぜるといいのよー」

末原「あ、愛情?」

由子「そう、贈るひとのことを考えながらまぜるのよー。そしたらよりいっそうおいしくなるのよー」

末原「ホンマかいな……」

由子「ホンマなのよー」

末原「……了解や」


恭子ははずかしそうにしてたけど、すぐに真剣な顔になってまぜはじめたのよー。


末原「……」マゼマゼ


その横顔はすごくいっしょうけんめいで素敵なのよー。

きっと洋榎ちゃんのことを考えてるのよー。

恭子にこんなにいっしょうけんめい想ってもらえる洋榎ちゃんは世界一の幸せものなのよー。

ちょっとうらやましくなっちゃうのよー……。

……。


末原「……ゆーこ?」

由子「え? あ、はい! なのよー」

末原「まぜ終わったで。……どないしたんやぼうっとして?」

由子「い、いや。なんでもないのよー!」アタフタ

末原「? そうか?」

由子「そ、そうなのよー!」


由子「それじゃ、型にバターを薄く塗って、生地を流し込んで焼くのよー」

末原「うすーくうすーく」ヌリヌリ


由子「160度で50分くらい焼くのよー」

末原「けっこうかかるんやなー」ピッピッ



そして



末原 「できたー!」

由子「のよー!」

末原「おおー、ええにおいやー」

由子「キレーなガトーショコラなのよー」

末原「さっそく試食してみるで」サクサク

末原「」モグモグ

由子「」モグモグ

末原  由子「おいしー!」

由子「かんぺきなのよー。初めてなのにこんなに上手にできるなんて恭子天才なのよー」

末原「いやー、由子のおかげやで。ホンマおおきに」

由子「これなら洋榎ちゃんもぜったいよろこぶのよー」

末原「や、やからべつに洋榎にあげるとは……//」

由子「バレンタインがたのしみなのよー」





バレンタイン当日




いよいよバレンタインなのよー。

今年のバレンタインは土曜日だけど、洋榎ちゃんは後輩指導のために学校にきてるのよー。

私と恭子もそれについてきたのよー。


洋榎「それや! ローン!」

漫「ふぎいっ!?」

洋榎「まだまだ甘いで漫! そんなんじゃ姫松のエースは名乗れへんで!」

漫「あううー……」

絹「漫ちゃんドンマイ!」


ワイワイ ガヤガヤ


末原「……」モジモジ

由子「恭子まだわたさないのー?」

末原「そ、そないなこと言われても……まだ心の準備が……//」モジモジ


んもー、じれったいのよー。

ここは私が一肌ぬぐのよー。


由子「洋榎ちゃん、洋榎ちゃん」チョイチョイ

洋榎「ん? なんやゆーこ?」





代行「それじゃ本日はこれまで〜。みんな気をつけて帰ってな〜」

絹  漫「おつかれさまでした〜」

洋榎「おつかれさ〜ん」


末原「結局わたせずに部活が終わってもうた……」

由子「安心するのよー」

末原「え?」

由子「さっき洋榎ちゃんに部活の後教室で待ってるように言っておいたのよー」

末原「ほ、ホンマかゆーこ」

由子「ホンマホンマなのよー。さっき教室のほうに歩いてったから早くいくといいのよー」

末原「わかった。ゆーこ、ホンマおおきに!」ダダダッ 

由子「ホント世話がやけるのよー」

由子「……」




さて、せっかくだからちょっと様子を見ていくのよー。


末原「」

洋榎「」


いたいた。

教室の扉は閉められてるから声は聞こえないけど、小窓から様子は見えるのよー。


末原「」モジモジ

洋榎「」ドナイシタンヤ?


ふふ、恭子チョコを後ろに隠してまだもじもじしてるのよー。

真っ赤になっててかわいいのよー。

洋榎ちゃんはいつもと違う恭子の様子にとまどってるのよー。


末原「」ウケトッテクダサーイ!

洋榎「」エエ!?


あ、恭子がチョコ差し出したのよー。

洋榎ちゃんびっくりしてるのよー。

でもうれしそうなのよー。

ちょっと赤くなって照れ臭そうなのよー。

洋榎ちゃんもあんな顔するのよー。


洋榎「」アハハ……ジツハヤナー……

末原「」エ……?


あれ? 洋榎ちゃんもバッグからなにか取り出したのよー?

あれは……チョコなのよー!

洋榎ちゃんも恭子のためにチョコをつくってきてたみたいなのよー。


末原「」ヒロエモツクットッタンカー!?

洋榎「」マサカキョウコカラモラエルトハナー


ふたりともともおたがいのために手作りチョコをつくってくるなんて相思相愛なのよー。

ふたりとも照れ臭そうに笑いあってるのよー。

すごくしあわせそうなのよー。

よかったよかったのよー。

……。










さて、ふたりに見つからないうちに私は先に帰るのよー。


恭子がちゃんと洋榎ちゃんにわたせてよかったのよー。

私も手伝ったかいがあったってもんなのよー。

恭子しあわせそうな顔してたのよー。

洋榎ちゃんもしあわせそうだったのよー。

あのふたりがしあわせなら私もしあわせなのよー。

めでたし、めでたし。なのよー。











……。






あ、あれ?

まだお話が終わらないのよー?

どうしてなのよー?


どうして……?




……どうして。





……どうして私、泣いてるの?





恭子も……洋榎ちゃんも……みんなしあわせになったはずなのに。

ハッピーエンドのはずなのに。


どうして涙がとまらないの?


恭子といっしょにチョコをつくって、本当に楽しかった。


それなのに。


恭子の顔を思い出すとどうしてこんなに胸が苦しいの?


いっしょにチョコをつくってほしいと頼んできたときの顔。

つくっていたときのいっしょうけんめいな横顔。

洋榎ちゃんのとなりで照れくさそうに笑ってる顔。






思い出すと、すごくせつなくて、つらい。






今日はできるだけはやく帰ろう。

はやく帰って、シャワーをあびて、寝てしまおう。

次にあったとき、あのふたりの前でいつものわたしでいられるように。

このキモチを忘れられるように。










「……ーこ! 」




「ゆーこ!」


誰かが私を呼んでいる。

でもごめんなさい。

今日は私、振り向けない。

明日からはいつもの私に戻るから。

だから今日だけは……ごめんなさ……


末原「ゆーこ! ゆーこ!」

洋榎「ちょいまちーや! ゆーこ!」


あ、あれ?


どうして恭子と洋榎ちゃんが私を追いかけてくるの……?


由子「ふ、ふたりともいったいどうしたのー……?」


末原「どうしたもこうしたもないやろ!」

洋榎「なんで先に帰ってまうねん!」


由子「え、なんでって……」


末原  洋榎「ホラ!」スッ


由子「……え? これは?」


末原「チョコや。ゆーこのぶん」

洋榎「うちからもやで」


由子「え? え? わ、わたしに……?」


末原「もちろんや」

洋榎「ほかに誰がおんねん」



末原「ゆーこ言うとったよな。生地を混ぜるときに贈る人のことを想いながら愛情もいっしょにまぜろって」


末原「うち……洋榎とゆーこのこと想いながらまぜたんや」

末原「うちら、もうすぐ卒業で離ればなれになってまうやろ?」

末原「せやからいつまでも友達でいられるように、ふたりのことを想いながらつくったんや」

洋榎「うちもやで。恭子とゆーこのために絹に教わってつくったんや」

洋榎「うちが今こうしてるのも恭子とゆーこのおかげやし、そのお礼や」


由子「恭子……洋榎ちゃん……」


末原「いやー、でもまさか洋榎とかぶってしまうとはなー」

洋榎「ホンマやで、まさか恭子がつくってくるなんて思わへんかったわ……って、なんでゆーこ泣いてんの!?」

由子「う……ぐすっ……ひっく……」

洋榎「ど、どないしたんやゆーこ! お腹痛いんか!?」

末原「そ、そうか! だから急いで帰っとったんやな! 」

由子「ぐすっ……い、いや、ちがうのよー」

末原  洋榎「え?」

由子「ただ……うれしいのよー」

由子「ふたりからそんなふうに言ってもらえるなんて思ってなかったから……とってもうれしくて……」

末原「……ゆーこ……」

洋榎「な、なんやー! オーバーやなゆーこはー! びっくりしたわー!」

由子「ふふっ……ごめんね」

由子「そうだ、私も今からふたりのためにつくるからうちにくるのよー!」

末原「え!? いまからつくるんか!?」

由子「うん! ついでに麻雀部みんなのぶんもつくるからふたりとも手伝うのよー!」

洋榎「なんや急にげんきになったなゆーこ!」

末原「麻雀部みんなってけっこうな数やで!?」

由子「そう! 今日は徹夜でチョコづくりなのよー!」

末原  洋榎「ひえー!」



恭子、洋榎ちゃん、ありがとう。



わたし、しあわせなのよー。




カンッ





※チョコのつくりかたはこちらを参考にさせていただきました。

   乱れ雪月花さんも姫松のバレンタインSSを書いてらっしゃいます↓

由子「きょーこのバレンタイン大作戦っ!」恭子「はぁ」

   ぜひあわせてどうぞ。ネタかぶりしちゃって申し訳ないです……