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『嵐前』 
 




夏。

私たち1年生にとって初めてのインターハイがやってきた。

この夏の姫松高校は団体戦でベスト8の成績を収めた。

続いて始まる個人戦。

姫松高校から出場するのはふたり。

エースである部長。そしてもうひとりが……。


洋榎「よっしゃ、いっちょやってくるでー!」


洋榎である。

洋榎は個人戦で南大阪の3位になり、インターハイ出場を決めていた。


末原「ファイトやで洋榎!」

由子「がんばるのよー」


洋榎の初戦が始まる直前、私と由子は控え室まで洋榎の激励にやってきた。


洋榎「おう! ふたりともうちの活躍ちゃんと見とくんやで!」

由子「わかってるのよー」

末原「洋榎こそ、調子にのってチョンボなんかせんようにな」

洋榎「おおきなお世話や!」


私は口ではそう言いつつも洋榎ならばそんなミスはありえないと思っている。

洋榎はその言動から大雑把に見えるが誰よりも注意深く、誰よりも巧い。

それはいつも一緒に打っている私と由子が1番よく知っている。

洋榎「さて、んじゃぼちぼち行ってくるわ」

そう言って意気揚々と控え室を出ようとする洋榎。

そこで不意に私と目が合った。

洋榎「あ、そや。恭子」

末原「ん? なんや」

洋榎「……今日の試合、よお見とくんやで?」

末原「? ああ、もちろんや」

洋榎「そんならええ」


そう言って洋榎はいってしまった。


末原「なんやあいつ?」


自分の活躍を見逃すなということだろうか。

いつもながら自信満々なことだ。


善野「話は終わったかしら」

控え室の奥で私たちの様子をうかがっていた監督が近づいてきた。

末原「あ、監督。あの……洋榎になにも指示とかださなくてよかったんですか?」

善野「大丈夫よ。愛宕さんにはデータも渡しておいたし、指示もすんでるわ」

末原「そうですか……よかったです」

私達が話し込んでいたせいで指示をだせなかった、なんてことになっては洒落にならない。

善野「今回は私も対策のたてようがなかったけど……」

末原「え?」

善野「ううん、なんでもないわ。さ、末原さんも真瀬さんもそろそろ客席に戻りなさい」

由子「はーい」

末原「あ、はあ……」


善野監督が最後になにかつぶやいたようだったが、どういう意味なのだろうか。

そういえば洋榎も様子がおかしかったような?


ザワザワ ザワザワ


由子「? なんかお客さんが多いのよー?」

私と由子が客席に戻ると、会場はたくさんの客で埋め尽くされていた。

末原「多分、あれが原因やろな」

そういって私は会場のモニターを指さした。

モニターには対局室の様子が映し出されていた。

対局室ではひとりの選手が既に卓についている。

場決めは既に終えているようで、その選手は静かに文庫本を読んでいた。

妙なクセのある赤い髪に白いワンピース型の制服。

末原「白糸台高校1年……宮永照」

洋榎の初戦の相手である。





第6話