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日付とかに深い意味はない








11月16日 晴れ
 

 3年生が引退してから早1ヶ月。

 新部長になった誠子ちゃんが最近忙しそうなのでしばらくの間、私、渋谷尭深が日誌を担当します。

 今日は雀卓のメンテナンスで部活が早く終わったので、みんなそれぞれ思い思いに過ごしたようです。

 誠子ちゃんも釣り堀に行くと言って、淡ちゃんもそれに付いて行ったようです。相変わらず仲がいいですね。

 

 

 11月17日 晴れ

 

 今日は練習中に淡ちゃんがお菓子をたくさん食べていたので、誠子ちゃんが注意をしていました。

 「そんなに食べてたら太るぞ」

 という誠子ちゃんでしたが、淡ちゃんは

 「テルーだっていっぱい食べてたけど太らなかったからいいんだもーん」

 といって聞きません。

 誠子ちゃんはぐぬぬと言って引き下がらざるを得ないようでした。

 白糸台のエースに悪い伝統ができてしまいましたね。

 

 

 11月18日 くもり

 

 今日は部内の対抗戦の日でした。

 誠子ちゃんは最近めきめき強くなっていて、この日も終盤まで全体の終始ではトップでした。さすがは新部長ですね。

 でも最後の最後に淡ちゃんとあたってしまい、こてんぱんにやられてしまっていました。

 無言で卓に突っ伏す誠子ちゃんをよそに淡ちゃんのケタケタという笑い声が部室に響きました。

 世の中は非情ですね。

 

 

 11月19日 晴れ

 

 今日、私が部室に行くと、誠子ちゃんと淡ちゃんがふたりきりでなにかしていました。

 あわてて隠れて様子を見てみると、どうやら誠子ちゃんが淡ちゃんのほっぺをさわっているようです。

 淡ちゃんのほっぺは柔らかいらしくもにもにとよく伸びています。

 でもさすがにそんなに好き放題していると淡ちゃんは怒るんじゃないかと私は心配になったのですが、淡ちゃんは怒るどころか、気持ちよさそうに目を細めて、まるでご主人様になでられる猫のようでした。

 撫でている誠子ちゃんも、最近部室で私たちにみせている部長としての凛々しい顔とは違い、どこかやすらぐようなやさしい顔をしていました。

 どうやらふたりには大切な時間なのでしょう。

 私は黙って立ち去りました。

 ちょっと羨ましいですね。

 

 

 11月20日 雨

 

 

 なにやら淡ちゃんが怒っていました。

 原因はどうやら足元に投げ出してある麻雀雑誌のようです。

 手に取ってページをめくるとそれらしい記事がすぐに見つかりました。

 『新生白糸台の優勝黄信号か? 』

 『渋谷、大星の両エースが残るものの夏と比べると大幅な戦力ダウン 』

 『 夏の戦犯、亦野部長に疑問視?』

 記事の内容をかい摘むとだいたいそんな感じのことが書いてありました。

 なかなかの言われようですね。

 淡ちゃんはこれに怒っていたようです。

 ぷりぷり怒る淡ちゃんを誠子ちゃんがなだめます。「気楽でいいじゃないか」と。

 しかし淡ちゃんはその返答が気に食わなかったようで、さらに怒ります。

 「そんなんだからいつまでたっても弱いままで馬鹿にされるんだよ! ばか!」

 誠子ちゃんの顔に一瞬ですが陰が落ちたのを私は見逃しませんでした。

 淡ちゃんもそれに気がついたようで、バツが悪そうに目をそらすとそのまま部室を出ていってしまいました。

 淡ちゃんは結局その日は帰ってきませんでした。

 

 

 11月21日 晴れ

 

 誠子ちゃんはいつも通りですが、どことなく淡ちゃんの元気がありません。

 昨日のことを気にしているんでしょうか。

 私が「昨日のこと謝ったの?」ときいてみると、「まだ……」と沈んだ返事が帰ってきました。

 昨日誠子ちゃんに謝れなかったことを気にしているようです。

 誠子ちゃんがなまじ普段通りなため余計あやまりづらいのでしょう。

 ここは副部長として私が一肌脱ぎますか。

 部活が終わった後、誠子ちゃんと淡ちゃんを呼び出してうまく部室にふたりきりにしました。

 「昨日、ごめん……」

 淡ちゃんが謝ると、誠子ちゃんは一瞬きょとんとした後、困ったように笑い、言いました。

 「気にしてないよ」

 「ごめんね……」

 淡ちゃんはもう一度言いました。

 眼には涙が浮かんでいます。

 「もういいってば」

 誠子ちゃんは優しく笑って、淡ちゃんの頭を撫でます。

 淡ちゃんもようやく笑顔になりました。

 私はそれを見届けるとその場を離れました。

 めでたしめでたしですね。

 

 

 11月22日 くもり

 

 突然ですが、私、渋谷尭深が日誌を書くのは今日が最後になってしまいました。

 今日、久しぶりに誠子ちゃんにこの日誌をチェックしてもらったのですが、日誌を読む誠子ちゃんの顔色がみるみるうちに変わっていきました。

 「たかみ、やっぱり日誌は私が書くよ……」

 なぜだか真っ赤な顔で誠子ちゃんはそう言います。

 ちなみに誠子ちゃんが読んでる途中、淡ちゃんが「なに読んでるのー?」といって横から日誌をのぞき込みましたが、やはり誠子ちゃんと同じくみるみるうちに真っ赤になって部室を飛び出していってしまいました。

 風邪が流行ってるんでしょうか。気をつけないといけませんね。

 

 この日誌はほかの麻雀部員たちに回し読みされるほど人気があるらしく、私自身も書くのが楽しくなってきたところなので、できればこれからも自分が書きたいと伝えたのですが、誠子ちゃんは首を振ります。

 「いや、あの、これは部長の仕事だから……」

 そう断られてしまいました。

 誠子ちゃんの負担を少しでも減らせるかと思ったのですが、部長である誠子ちゃんがそういうなら仕方ありません。

 そんなわけで私が書く日誌はこれでおしまいです。

 みなさん今までありがとうございました。

 ちなみに白糸台麻雀部は明日から来年の春季大会に向けた予選に挑みます。