洋榎ちゃんと末原先輩の純愛(?)ぽいものです。

ちなみにこの作品の世界ではコロナは流行っておりません。




帰り道


洋榎「はあ……」トボトボ……

ガチヤ

洋榎「ただいまー」

絹恵「おかえりお姉ちゃん。セーラちゃんきてるで」

洋榎「セーラが? めずらしいな」

ガラッ

セーラ「おう、お邪魔してるでー」

洋榎「おじゃまするんやったら帰ってやー」

セーラ「30円返してもろたらな」

洋榎「セーラお前それ会う度に言うの、もしかしておもろいと思ってるかもしれんけどつまらんからな?」

セーラ「やったらはよ返せやホンマに」

洋榎「いやや」

セーラ「かなわんなー」





洋榎「んで? 今日はなにしにきたん?」

セーラ「用がなきゃ来ちゃアカンのか?」

洋榎「ようはヒマやったんやな」

セーラ「そんなとこや」

洋榎「そか。ふぅ……」タメイキ

セーラ「? なんやお前ため息なんぞついて。なんかあったんか?」

洋榎「なんもないわ」

セーラ「なんもないことないやろ。すぐわかるわ」

洋榎「ええ? なんでや」

セーラ「いつから一緒におると思ってんねん。お前のことやったら大概はわかるで」

洋榎「うそん。きもちわる」

セーラ「ええからはよ話せや。どうせ暇つぶしや」

洋榎「お前にわかるとも思わんけど、まあええか……今日の放課後のことなんやが……





姫松麻雀部部室

ガラッ

洋榎「こんちゃかわー。皆の洋榎ちゃんがきたったでー」

ガラーン……

洋榎「って、まだ誰もおらんのかい!」

洋榎「まったくー……こんなんじゃ来年も優勝でけへんぞ!……ん?」

本日の部活はお休みです
絹恵新主将より

洋榎「そか……今日は休みやったか。なーんやつまらん。かえろかえろー」

ガラッ

末原「あれ? 誰もおらへんやん?」

洋榎「あ、恭子」

末原「なんや? 洋榎だけか? みんなは?」

洋榎(うおっ……)ドキッ

洋榎「き、今日は部活やすみらしいで。うちも指導にきたんやけどな」アセアセ

末原「なんやそうなんか。うちも受験勉強の気分転換に顔出したんやけど」

洋榎「そ、そか。まったくー、この愛宕洋榎プロの指導を受けられるチャンスをみすみす逃すとはアホなヤツらやで!」ハハハ

末原「はは、ドラフトは来月やろ。まだプロやないやん」

洋榎「はは……

洋榎(なんやろ……。部活引退してから恭子にふつうに名前で呼ばれるようになったんやけど……なぜか変に感じる……)

洋榎(とくに最近恭子のやつ受験勉強でいそがしいとかであんま話せてないから、たまに話しかけられる度にちょっとびっくりするねんなぁ……)

洋榎(うちが主将になるまではこれがあたりまえやったのに、なんでなんやろ……)

末原「ん? 洋榎どないした、ボーッとして」

洋榎「え!? い、いや、なんでもないで!」

末原「顔赤いで? 熱でもあるんちゃうか?」スタスタ

洋榎「いやいやいや! だいじょうぶやから!」ブンブン

末原「だいじょうぶやないやろ。ちょっとおでこかしてみー」セノビシテオデコニピター

洋榎(ほああああああああぁぁぁ!? ちかあぁぁぁいい!)

洋榎「ちょっ! まっ……!」バッ

末原「ん? どないした?」

洋榎「ああああああかんで恭子!  密やで!みつ!」コロナー

末原「は? 蜜? なにが?」

洋榎「そ、ソーシャルディスタンスを保たんかい!」コイケトチジー

末原「なにわけわからんこと言うとるんや。それよりやっぱりおでこ熱いで。今日はもう帰って寝た方がええんちゃうか」

洋榎「そそそそそそうするわ! ダッシュで帰るわ!」ポヒー

末原「いや走って帰ったらアカンやろ。ほら送ったるから。いっしょに帰るで」

洋榎「いやいやいやいや! うつしたらあかんしひとりで帰れるわ!」

末原「ええ? そうか? 遠慮せんでええんやで。うちらの仲やし」

洋榎「だいじょうぶだいじょうぶ! さっさと帰ってイソジン飲んで寝るわ! ほなサイナラ〜」ピュー!

ポツーン

末原「どないしたんやあいつ……






洋榎「……と、いうわけなんやけど」

セーラ「……

洋榎「はあ……まさかうちが恭子にあんな態度とってまうなんてな……

セーラ「……

洋榎「なんでなんやろ……前はあんなん普通やったんやけどな……

セーラ「……そうなったのは今回だけなんか?」

洋榎「え?」

セーラ「末原の前で真っ赤になったんは今日だけなんかってきいとるんや」

洋榎「なんとつぜん。いや……じつは最近いっつもこうなんや……恭子と話す度にこうなってまう」

セーラ「……そうか」

洋榎「そうかってなんやねん。まさか原因がわかったんかセーラのくせに」

セーラ「わかるわアホ」

洋榎「なんや言うてみいや」

セーラ「……

洋榎「?」

セーラ「……お前、末原のことが好きなんちゃうか」

洋榎「……は!? なんて!?」

セーラ「お前が末原の前でワタワタしとんのは恋が原因やって言うとんや」

洋榎「う、うそやろ……

セーラ「ホンマやて」

洋榎「いや、うちが恭子のこと好きってことより、お前の口から好きだの恋だのって単語が出てきたことに驚いてんねんうちは。頭でも打ったんか?」

セーラ「大きなお世話やアホ!」

洋榎「いやいや、お前に恋愛のこととかホンマにわかるんか〜?」

セーラ「わかるわ! 俺かてなぁ……いろいろあるわ……

洋榎「な、なんやそれ……? いやいやそれにしても恋はないやろー。お前アホやから忘れとるかもしれんけど恭子もうちも女やで? 女同士で恋愛とかないやろー」

セーラ「女同士で好きになることかてあるわ!」ドンッ

洋榎「うわ! な、なんやお前……どないしたんや?」

セーラ「べつに……

洋榎「……?」

セーラ「……

洋榎「……ハッ」ピーン!

洋榎「ま、まさかお前……好きなやつがおるんか?」

セーラ「……ふん、ちゃうわ」ムス

洋榎「いーや! うちの目は誤魔化せへんで! だれやだれや!? 言うてみい!」

セーラ「いやや!」

洋榎「なんやー、水臭いでうちらの仲やん?」

セーラ「お前にだけは絶対教えへんわ。ぜったい」

洋榎「えー」

セーラ「それよりお前の話や。どうすんねん」

洋榎「どうするって言われても……

セーラ「……なあ、洋榎。お前、末原の1番の友達は自分やて思ってるか?」

洋榎「なんやいきなり。そりゃまあそうやろ。一緒に日本一を目指して戦った仲間なんやで? そんじょそこらの奴とは違うわ」

セーラ「ずっと仲良くしたいと思っとるか?」

洋榎「うん」

セーラ「ムリやで」

洋榎「な、なんでや!」

セーラ「考えてもみい。お前はプロにいって末原は進学するんやろ? 離れ離れやん」

洋榎「やからってべつに友達でなくなるわけやないやろ」

セーラ「でも末原の1番の友達ではいられるか?」

洋榎「え……?」

セーラ「考えてもみい。お前も末原も新しい環境で新しい仲間がどんどん増えていくわけや。その中でずっと末原の1番でいられるか? ムリやろ」

洋榎「……う」

セーラ「お前が末原をホンマに好きなんかはわからん。でも、1番の仲間でいられる今しか伝えられんこともあるんちゃうか?」

洋榎「……

セーラ「別々の道に進んでからじゃ……遅いんやで」

洋榎「……セーラ、お前まるで見てきたかのようにいうな?」

セーラ「……

洋榎「もしかして……お前の好きなやつってのは離れ離れになったやつなんか?」

セーラ「ふん……

洋榎「そうか……でもなセーラ、たとえそいつと離れ離れになったとしても遅いっちゅうことはないんちゃうか? 伝えてみればええやん……?」

セーラ「……伝えられるか、アホ」

洋榎「……?」

セーラ「……帰るわ」

洋榎「お、おい。せめて誰が好きなんか教えてけや……うちが力になれるかもしれへんやん」

セーラ「……

セーラ「……お前みたいなアホには一生教えへんわ」

洋榎「えー……

セーラ「なあ洋榎。もういっぺんだけ言うといたるで」

セーラ「自分の気持ちを伝えろ。後悔したくなかったらな」

洋榎「……





ガラッ

絹恵「あ、あの……お姉ちゃん」

洋榎「……ん? 絹、おったんか」

絹恵「ごめん、お話きいてもうた……

洋榎「ああ、いや、べつにええで。まさかあのセーラに好きなやつがおったとは思わへんかったなー」

絹恵「……うん。でも、私もセーラちゃんの言う通りだと思う」

洋榎「え?」

絹恵「いっぺん、自分の気持ちをしっかり考えてみたほうがええと思う。そんでできれば伝えてあげて」

洋榎「なんや絹まで……。自分の気持ちて言われても……

絹恵「お願い、お姉ちゃん。セーラちゃんの為にも……

洋榎「セーラのためにも……?」





洋榎(セーラも絹もいったいなんやっちゅうんや……)

洋榎(うちが恭子のことが好き……? んなアホな)

洋榎(でも、実際うちは恭子のことどう思っとるんや……)

洋榎(そんで、恭子はうちのことどう思っとるんやろう……)

洋榎(このままやったら離れ離れで一生わからんまま……)

洋榎(……)





数週間後

姫松麻雀部部室


ガラッ

洋榎「おーす」

ガラーン

洋榎「あら、また部活休みの日かいな」

洋榎「どうも引退するといつが休みの日やったか把握すんの忘れてまうな。しゃあない……帰るか」


ガラッ

洋榎「あっ……

末原「洋榎」

洋榎「き、恭子……

洋榎(アカン……セーラと絹に変なこと言われてからどうも顔を合わせづらいねんな……)

洋榎(結局ぐちゃくちゃ考えても答えはでーへんかったし……)

洋榎「残念やったな。今日も部活休みの日やで」

末原「うん。知ってる」

洋榎「え? じゃあなんで」

末原「休みの日にくれば、また洋榎に会えるような気がしたから」

洋榎「えっ……」ドキ

末原「なあ、ふたりでちょっと打たへんか」

洋榎「え? あ、ああ……





パチッ……パチッ……


末原「考えてみたら、ふたりで打つのってあんまなかったよな」パチ

洋榎「ああ、由子入れて三麻ならようやったけどな」パチ

末原「はは、なつかしいな」パチ

洋榎(不思議やな……牌を触りながらやと、落ち着いて話せる)

末原「……なあ、洋榎」

洋榎「んー?」

末原「最近、なにかあったんか?」

洋榎「え!? ……な、なんでや?」アセ

末原「様子が変やったから」

洋榎「そ、そうか? そんなことないやろ」アセアセ

末原「……そんならええんやけど」

洋榎(まさかお前のことを考えてたなんて言えへんやろ……)

洋榎(言えへ…………よな……)


セーラ『自分の気持ちを伝えろ。後悔したくなかったらな』

絹恵『いっぺん、自分の気持ちをしっかり考えてみたほうがええと思う』


洋榎(……)

末原「……? 洋榎? どないした?」

洋榎「はーもう、ウジウジ考えんのやめややめや」

末原「え?」

洋榎「恭子、うち今から変な話するけどええか?」

末原「いつもへんやん」

洋榎「やかましいわ」

洋榎「恭子……うちな、最近お前に名前で呼ばれたり近づかれたりすると変な感じしたねん」

末原「変な感じて?」

洋榎「その……ドキドキしたりテンパったり、みたいな」モジモジ

末原「……へえ」

洋榎「そんでそのことをたまたま家におったセーラのアホに話したらな……あの、うちが、その……恭子のこと、す、好きなんやないかとか言い出してやな、あのアホが……」ゴニョゴニヨ

末原「……

洋榎「んなアホなーって思って、でも、しばらくちょっと考えてみたんや」

末原「……うん」

洋榎「うちはぶっちゃけ好きとか嫌いとか、そういうのはよくわからん……

洋榎「でも、恭子のことは大事な仲間やと思ってる。ただの仲間やない、セーラと別れて姫松に来てでも手に入れたかった、本当の仲間やと」

洋榎「やから、できれば、その……卒業してからも、仲間でいてくれたらな……と、思ってる」

末原「……ふふ」

洋榎「……は、はは。変やねんな、うちら女同士やっちゅうのに好きやとか……そのへんは忘れてくれてええで。セーラの奴が勝手に言ってるだけやし……

末原「いや、変やないと思う。うちも洋榎のこと好きやし」

洋榎「………………え?」

末原「洋榎のこと好きって言ったんや」

洋榎「え、あ、え……ええ?」

末原「でも、最近は洋榎に避けられてるみたいやから嫌われたかと思って不安やったんやけどな」

洋榎「そ、それは」

末原「うん、わかっとる。でも、ホンマに不安やったんやで、由子に相談したりとか」

洋榎「ゆーこに?」

末原「由子には心配いらないのよーて笑われたけどな」

洋榎「はは……

末原「でも、おかげでうちも色々考えられたんや。このまま卒業して離れ離れになってええんかって」

洋榎(……まさか恭子がうちと同じこと考えてたとは)

末原「なあ……洋榎は来年プロにいくわけやけど」

洋榎「ドラフトで指名されればな」

末原「されるやろ。そんで、どこのチームにいくかはまだわからんよな」

洋榎「うん……まあ」

末原「そんで、うちは地元の大学に進むつもりなんやけど……家を出て一人暮らしを始めようかと思っとるんや」

洋榎「そうなんか」

末原「それでその……もし洋榎が大阪とかのチームに行くことになったら……いや、仮にそうやなくても遠征で大阪に帰ってくる時があったら……

洋榎「う、うん……?」

末原「うちの家に、帰ってきてくれへんかな」

洋榎「……それは、どういう」

末原「うちと一緒に暮らさへんか……ってことや」

洋榎「……

末原「うちも、洋榎が言ったように好きとか恋とか、まだよくわからへん。この洋榎への気持ちがそれなんかもわからん。でも……

末原「でも……わからんまんま、終わらせたくないねん」

末原「やから……一緒にいてくれへんかな。洋榎」

洋榎「……」グスッ

末原「あ、アカンか……? やっぱ嫌やったか……?」

洋榎「……」フルフル

洋榎「……むっちゃうれしい」

洋榎「……うちも、そうしたいって思ってたから」





1
年と少し後


テク……テク……

洋榎(あれから、結局うちはドラフトで大阪のチームに指名された)

洋榎(これで恭子と一緒にくらせる! と思っのもつかの間、チームに入団した選手は最低1年は寮に住まわなアカン決まりがあった)

洋榎(もどかしい1年やった。でも逆にそれが支えになって、このキツいプロ1年も乗り越えられた)

洋榎(今日、うちは契約更新を終えて、寮を出る。そして……)


ガチャッ


末原「おう、いらっしゃい。洋榎」

末原「……いや、ちゃうな。今日からは」

末原「おかえり、洋榎」

洋榎「……ただいま、恭子」


洋榎(新しい家で、新しい生活が始まる)



セーラ「おう、おかえりー。洋榎」

洋榎「……へ?」

セーラ「おじゃましてるでー」プラプラ

洋榎「なんっで! お前がおんねん!」

セーラ「なんやええやないか。ふたりの門出を祝いに来てやったんやで」

洋榎「いらんわそんなん!」

末原「洋榎そんなこというなや。せっかく遊びに来てくれたんやから」

洋榎「ええー……

セーラ「そうやそうや。それにしても末原、この部屋ええなー。俺もここに住もうかなー」

洋榎「ぜえぇったいアカン! アカンッたらアカン!」ウガー

セーラ「はっはっは、まあそう怒んなやー」





洋榎(……まあ、とにもかくにもうちらの新しい生活が始まる)

洋榎(未だに好きとか愛とか、結局うちにはよくわからんまんまや)

洋榎(でも、あせる必要はないと思う)

洋榎(これからは、ずっと一緒にいられるんやから
)