2017年03月19日

新種牡馬辞典 - クレイドルサイアー

新種牡馬辞典、第三十二弾はクレイドルサイアー。父は条件戦すら勝ち抜くことができなかった超マイナー種牡馬ノーザンキャップで、クレイドルサイアーはそのノーザンキャップが生涯で残した唯一の産駒ということになります。さぞ競走馬としてポテンシャルが高かったのかと思いきや、自身は道営で未勝利。血統的にも実績的にも全く見るべきものはなく、さらに自身の引退から何と10年経ってからの突然の種牡馬入りで、まさに今世紀最高のマイナー種牡馬といってもいいのではないでしょうか。祖父はあのアイドルホース・オグリキャップで、父系の存続という意味でも奇跡の存在です。ぜひ1頭でも産駒を残してほしいものです。
クレイドルサイアー

クレイドルファーム産 2001年生 鹿毛 父系:ネイティヴダンサー系

<血統構成> 5代内クロス :Northern Dancer 5×4

ノーザンキャップ

芦毛 1992年
オグリキャップ*ダンシングキャップ
ホワイトナルビー
グレースウーマンマルゼンスキー
ランズプロント
マタニティパワー

鹿毛 1997年
*スリルショーNorthern Baby
Splendid Girl
アグネススキー*ロイヤルスキー
アグネスビューチー

ノーザンキャップは中央3勝。900万下で頭打ちとなった下級馬で、後に地方に移籍したが勝ち星をあげることはできなかった。その父は日本競馬史上有数のアイドルホース・オグリキャップで、同馬にとって唯一の後継種牡馬がこのノーザンキャップだったが、さらにそのノーザンキャップが生涯で残したただ1頭の産駒がこのクレイドルサイアーであった。

マタニティパワーは地方未勝利。生涯で3頭の産駒を残したが、そのうちクレイドルサイアー以外は競走馬としてデビューすることはなかった。

祖母アグネススキーは中央未勝利。母としては特に目立った産駒は残していない。3代母アグネスビューチーは東京新聞杯を制した活躍馬だが、すでに牝系は途絶えてしまっている。母系は明治期に輸入された*レスリーカーターに遡る。

<競走成績>

年 (歳)主な実績
2003年 (2歳)20
20

土肥伸治氏の持ち馬として、2歳時に道営でデビュー。しかし結果は振るわず、2戦してそれぞれ勝ち馬から4.5秒、2.9秒離された10着に終わった。そして3歳以降は一度もレースに出ることなく競走馬登録を抹消されている。血統的にも競走能力的にも種牡馬入りさせる要素はどこにもなかったが、自身のラストランから実に10年の時を経て、突然種牡馬登録。繋養場所は生まれ故郷のクレイドルファームであった。

<供用実績>

年度種付料種付数生産数登録数供用場所
2014Private100クレイドルファーム
2015Private000
2016Private0
2017

この牧場はもともと養老牧場としての業務がメインのようで、生産自体はほとんど行っておらず、これまで生産した産駒はたった3頭。そのうちの1頭がミフユという牝馬で、どうやらこの馬が繁殖入りするタイミングを見計らっての種牡馬入りだったようだ。そして2014年に満を持してミフユと交配されたが、残念ながら産駒は生後すぐに死亡してしまった。その後は種付けした形跡はなく、ミフユ自身の繁殖記録もなし。もしかすると唯一の繁殖牝馬も同時に失ってしまったのかもしれない。

<傾向予想> 芝: ダ: 距離:マイル〜中 2歳: 3歳: 古馬:

さすがに種牡馬としてどうこうと言えるレベルではないが、もしそれなりに牝馬を集めていたとしたらダート中距離タイプの産駒を出していただろう。オグリキャップ自身は祖父ネイティヴダンサーからの隔世遺伝とも言われ、それならその孫やひ孫はどうだというところだったが、さすがにこの頭数ではどうしようもない。一発あるとすればオグリキャップのクロスを作ることだが、もはやそれを実現しようとする生産者もいないだろう。

祖父オグリキャップが死に、現役馬もすべていなくなった2012年。この瞬間にオグリキャップの父系は途絶えたが、その一年後に全くのノーマークだったノーザンキャップから10年越しで後継種牡馬が生まれるという、まさに奇跡の復活を遂げた。しかしその喜びもつかの間、再び父系は絶滅の危機に瀕している。同馬が廃用になれば今度こそ存続の可能性は完全に断たれることになるだろうが、もう一度奇跡は起きるだろうか。




この記事へのコメント

1. Posted by 成瀬朋 2017年03月20日 09:25
今ざっと調べたところだとオグリキャップを持つ繁殖牝馬もだいぶ少なくなってしまったようで、アラマサフェアリーだとかミンナノアイドルだとかしか残ってない。
オグリキャップの系統が母系も含めてこんなにも壊滅するとは思わなかった。

2. Posted by 即身仏 2017年03月20日 17:30
種牡馬としての動機にサンデーサイレンスがいたとは言え、現状はオグリキャップの血統が牡牝含めて消失寸前というのも悲しいですね。

オグリキャップに限らず、メジロマックイーンやトウカイテイオー等の系統が復活するには、潤沢な資金と折れない志が無かったら無理なんだろうと思ってしまいました。
3. Posted by Organa 2017年03月20日 20:39
アラマサフェアリーはすでに廃用、ミンナノアイドルも非常に仔出しが悪いみたいですね。10年後にはオグリの血が完全に途絶えている可能性も否定できない状況になってきました。
4. Posted by 名無しさん 2017年03月21日 13:26
個人的な意見ではあるけど、オグリキャップがどれだけ激走しようとも馬産地の評価がからっきしなのは、見てるファンから見て悲しいです。
そもそもオグリの仔は走らないってはなっから決めつけてるところも腹立たしいです。
今でこそサンデーは良血ともてはやされていますが、そのサンデーこそがアメリカでは血統的に走らないと烙印を押された馬で、そんなサンデーを有り難がって種付けする日本人って何なんだろと思います。
乱暴な言い方かもしれませんが極端な話、そんな事するなら日本で馬産しなければいいのにと思いますね。
5. Posted by 北味 2017年03月21日 20:35
オグリキャップ自身がどれだけ激走しようと
産駒が走らなければそういう評価になるのは当然かと

サンデーは与えられた機会を掴んで結果を出しました
オグリキャップにも機会は与えられていました、単に結果が出せなかっただけです。
6. Posted by ねこまわり 2017年03月21日 23:30
90年代と言えばマル外産駒ブームが最盛期だった頃でしたので、確かに内国産馬にとっては不運な時代だったかも知れません。

しかし、オグリにしてもミホノブルボン、スーパークリークにしても、それなりにチャンスを貰いながら父を彷彿とさせる活躍馬を出せなかった以上、その血を後世に残す事が難しくなるのは致し方ない事かと。

それでも、活躍馬を出せなかったとは言え、産駒を残せた事だけでも幸せな事だと思いますよ。菊花賞とメルボルンカップを勝ったのに種牡馬入りすら出来なかったデルタブルースとか、交流G1を複数勝ちながら乗馬になったブルーコンコルドとか・・・彼らは血を残すチャンスすら与えられなかった訳ですから。
7. Posted by こすもばるく 2017年03月22日 02:23
同じく地方から中央入りしたハイセイコーは活躍馬を出しましたね
オグリキャップは活躍馬を出せなかった
コスモバルクは種牡馬になれなかった
某漫画で見たセリフで印象深いものですが、種牡馬になるというのは競走馬にとって最高のゴールではなく、種牡馬という名の新たな過酷なレースのスタートに立っただけなんだなあと(しかもハンデ差がめちゃくちゃ大きい)
8. Posted by 名無名無 2017年03月25日 14:12
現役時代の活躍が現代日本競馬のメインストリームから外れる
ダート馬達はどんなに結果残してても種牡馬価値はなかなか上がらないですし、
逆に芝中距離で重賞1つ勝った良血馬はそれだけで種牡馬になったり
不思議な世界ですよね。

そして鳴り物入りで種牡馬入りした名馬ですら
2、3世代で結果が出ないと飽きられる。
去年までセリでバカ売れしてたルーラーシップなんて今年の種付け結構減ってるみたいですよ。
今年はモーリスとドゥラが非常に混みあってるみたいですね。
9. Posted by ノエルザブレイヴ 2019年03月14日 12:05
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190314-00000005-tospoweb-horse

東スポでクレイドルサイアーとクレイドルファームの現状についてレポートされていました。場長さんは並々ならぬ決意で事に当たられているようですが状況はかなり厳しいようです。
10. Posted by Organa 2019年03月15日 22:09
トウカイテイオー産駒のクワイトファインも結局種牡馬入りできなさそうですし、やはり父系を繋ぐということはかなり難しいことなのでしょうね。
11. Posted by K 2019年05月04日 10:18
net keibaの掲示板によると、今年は複数の牝馬に種付けするらしいですよ。
12. Posted by Organa 2019年05月05日 22:59
クロフネ産駒の9歳牝馬コンパスローズに、メジロマックイーン産駒の22歳牝馬ネオマックイーンですか。コンパスローズは純粋にダート向きで面白そうですし、ネオマックイーンはロマンの塊ですね。いずれも受胎できることを願います。
13. Posted by  2019年05月14日 16:59
トウカイテイオー産駒のストロングブラッドはJpn1を勝ったにも関わらず乗馬にされてしまいました
クレイドルサイアーが種牡馬になれたのは関係者のオグリキャップ愛の成せるわざですね
こういう情熱を持った方々にこそ奇跡が舞い降りて欲しいものです
14. Posted by 笠松競馬ファン 2020年05月20日 23:25
5 ミンナノアイドルと交配すれば万が一ということも…
15. Posted by 高速回転 2020年07月10日 22:49
JBISの方に産駒情報が載ってました。登録:出生となっていたので今年は無事に生まれてくれたものとは思います。
16. Posted by Organa 2020年07月11日 08:52
牡馬が2頭も生まれていますね。19歳で初産駒というのはちょっと記憶にないです。この中からさらにもう一代繋いでくれたら言うことはないです。

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