2019年01月19日

新種牡馬辞典 - エスケンデレヤ

新種牡馬辞典、第七弾は*エスケンデレヤ。GIウッドメモリアルSを後続に9馬身3/4差という圧倒的なパフォーマンスで制し、クラシックでも中心的存在になるはずでしたが、これからというときに故障してそのまま復帰はかないませんでした。引退後はしばらく米国で供用されていましたが、初年度産駒が期待されたほどの活躍ができなかったこともあってJBBAへのトレードが決定。産駒の Mor Spirit が米GIを制したのはその数か月後のことで、タイミング的には非常にラッキーでした。ただ日本では今一つの印象がぬぐえないジャイアンツコーズウェイ産駒ということもあってか、初年度以降は種付け数が伸び悩んでいます。
*エスケンデレヤ Eskendereya

米国産 2007年生 栗毛 父系:ジャイアンツコーズウェイ系

<血統構成> Northern Dancer 4×4 Bold Ruler 5×5 Hail to Reason 5×5

Giant's Causeway

USA 栗毛 1997
Storm CatStorm Bird
Terlingua
Mariah's StormRahy
*イメンス
Aldebaran Light

USA 鹿毛 1996
Seattle SlewBold Reasoning
My Charmer
AltairAlydar
*ステラーオデッセイ

Giant's Causeway は英国際SやエクリプスSなどマイルから10ハロンのGIを6勝した活躍馬で、2000年の欧州年度代表馬。種牡馬としても仏ダービーなどGI4勝の Shamardal 、英2000ギニーの Footstepsinthesand などを出して成功した。日本でもマイルChSを制した*エイシンアポロン、京王杯スプリングCを制したスズカコーズウェイなど複数の重賞馬を出している。後継種牡馬として*ジャイアントレッカーが輸入されたが、目立った産駒を出せずにすでに廃用となっている。

Aldebaran Light は米で走り通算5戦3勝。重賞実績はない。母としてほかに英GIミドルパークSを勝った Balmont (父*ストラヴィンスキー)、*ヘニーヒューズ産駒で中央2勝をあげて種牡馬入りしたマル外*ゴドリーなどを出している。Balmont は種牡馬として豪GIII勝ち馬 Balmont Girl 、ドバイゴールデンシャヒーン2着馬 Balmont Mast を出している程度である。

祖母 Altair は米国産馬で、不出走馬。母として米GIIラサロ・バレラ・メモリアルS(D7F)勝ち馬 Blazonry を出している。その母*ステラーオデッセイは繁殖牝馬として日本に輸入されており、孫の代に新潟ジャンプSを制したエリモマキシム、ダイオライト記念2着、シリウスS3着のトウシンイーグルなどを出している。母系を遡ると Halo の母 Cosmah にたどり着く。

<競走成績>

年 (歳)主な実績
2009年 (2歳)311着 ピルグリムS(USA-L) D8F
2010年 (3歳)331着 ウッドメモリアルS(USA-I) D9F
1着 ファウンテンオブユースS(USA-II) D9F
1着 一般戦 D8F
64

芝8.5Fのデビュー戦で2着になった後、現在はGIIIに格付けされているピルグリムSに出走し、これを7馬身以上の圧勝で制して初勝利をあげた。続くBCジュヴェナイルはそこそこの穴人気となったが、9着に終わり2歳のシーズンを終えた。3歳時は一般戦を叩かれた後GIIファウンテンオブユースSに出走し、後のGI馬 Ice Box らに8馬身半もの大差をつけて優勝、見事重賞初勝利を飾ると、続くGIウッドメモリアルSではさらに10馬身弱と着差を広げてGIウイナーにまで上り詰めた。当然クラシックでも期待されたが、故障のため出走することができず、そのまま復帰することはできなかった。

<海外での供用実績>

年度種付料種付数生産数登録数供用場所
201130000ドル137106米・テイラーメイドファーム
201225000ドル11090
201317500ドル9668
201417500ドル139107
201517500ドル7052

引退後は後に名馬 California Chrome も種牡馬入りすることになる米・テイラーメイドファームにて種牡馬入り。GI1勝という実績ではあったが、そのウッドメモリアルSでの10馬身近い圧勝が評価され、初年度は3万ドルとなかなかの高値で供用され130頭以上の牝馬を集めた。その後は種付け料を下げつつ100頭前後の牝馬をキープしていたが、初年度産駒の出足が今一つで5年目の種付け数が100頭を大きく割ったところでJBBAが同馬を購入。2年目の産駒 Mor Spirit がGIロスアラミトスFを勝ったのはその直後のことであった。

<代表産駒>

馬名生年主な実績
Eskenformoney20121着 ランパートS(USA-III) D8F
1着 ターンバックジアラームH(USA-III) D8.5F
Isabella Sings20121着 ミセズリヴィアS(USA-II) T8.5F
1着 イートンタウンS(USA-III) T8.5F
1着 マイチャーマーH(USA-III) T8.5F
1着 エンデヴァーS(USA-III) T8.5F
Mor Spirit20131着 ロスアラミトスF(USA-I) D8.5F
1着 メトロポリタンH(USA-I) D8F

代表産駒の Mor Spirit は2歳GIロスアラミトスFを勝ったほか、4歳時にはメトロポリタンHを6馬身差の圧勝で制しており、BCダートマイルでも1番人気に支持された(8着)。ほかにサンタアニタダービーで2着に入っている。それ以外の産駒はGII・GIIIどまりで、それも2歳戦からバリバリ走れるというよりはじっくりと力をつけていく中でようやく重賞に手が届くという産駒が多いようだ。日本にはダンスオブサロメの半弟*エルミーロがマル外として輸入されたが、中央未勝利に終わっている。

<供用実績> *:受胎条件 #:出生条件

年度種付料種付数生産数登録数供用場所
2016*180万円1158786JBBA静内種馬場
2017*150万円4529
2018*150万円41
2019*150万円

2016年よりJBBA静内種馬場にて種牡馬入り。受胎条件で180万円という種付け料は決して安いとは言えなかったが、Mor Spirit の活躍もあって初年度は100頭を超える牝馬を集めることに成功した。しかしJBBA供用の種牡馬によくあるように2年目以降は激減しており、初年度の1/3ほどの数字になっている。かつて*バゴや*ヨハネスブルグのように初年度に100頭以上の牝馬を集めながら2年目以降激減し、産駒の活躍で再び100頭以上に盛り返した例はあったが、このままフェードアウトするか、再び注目されるかは初年度産駒の結果次第だ。

<注目の産駒>

母名備考
アラマサスナイパーアラキファームの生産馬。母はステイゴールド産駒で、中央1勝。OPスイートピーSで4着がある。姉に函館2歳Sを勝ったクリスマスがいる。*エスケンデレヤの5代母にあたる Queen Sucree の5×5のクロスあり。
アンフィルージュ斉藤安行氏の生産馬。母はアグネスタキオン産駒で、中央3勝。半兄にOP芙蓉Sの勝ち馬で皐月賞でも2着に入ったサンリヴァルがいる。祖母ウメノファイバーはオークスなど重賞3勝をあげた活躍馬で、いとこに重賞2勝のヴェルデグリーンがいる。
ビワパシフィカス大道牧場の生産馬。母は*ブライアンズタイム産駒で、中央未勝利。半兄にOP巴賞やニューイヤーSで2着に入ったセイルラージ、中央5勝のアムールスキーがいる。母の全兄はナリタブライアンで、ほかにもビワハヤヒデ、ファレノプシス、キズナと近親にGI馬多数。
*ホームスイートホーム千代田牧場の生産馬。母は Seeking the Gold 産駒の米国産馬で、米国未勝利。半兄にユニコーンSなど重賞2勝のバーディバーディ、エプソムC5着のバーディーイーグル、中央3勝のサトノアルバトロスがいる。
ラストワルツタイヘイ牧場の生産馬。母はゼンノロブロイ産駒で、中央未勝利。半姉に中央3勝のハッピーノリチャン、半兄にOP野路菊S3着のモンテアーサーがいる。おばスターリーヘヴンは福島牝馬S2着馬。「スワーヴ」のNICKSが2600万円で落札。

アラマサスナイパーは同じJBBA繋養種牡馬*バゴの活躍馬クリスマスを姉に持ち、仕上がりの早いスピード血統が魅力。アンフィルージュはサンリヴァルの半弟で、クラシック向き。母父アグネスタキオンだからダートで潰しも利きそう。ビワパシフィカスはキズナやラストインパクトで見直されつつある*パシフィカス系。こちらもクラシックで。*ホームスイートホームは逆にダート一本というような血統で、中央での勝ち馬率の高い牝系でかなり期待できそう。ラストワルツは*エスケンデレヤ産駒最高額で落札。社台系の落札馬が多いスワーヴがオーナーというのも注目。

他にオオシマパンジー(兄メイショウマシュウ)、カリビアンロマンス(兄デルマルーヴル)、ニシノブルームーン(中山牝馬S)、ピエナアマゾン(兄アクティブミノル)、ブライティアパルス(マーメイドS)、マルモセーラ(ファンタジーS)などがおり、特に非社台系の重賞馬・あるいは重賞馬の母が目立つ。

<傾向> 芝: ダ: 距離:マイル〜中 2歳: 3歳: 古馬:

芝かダートならダート向きだが、かといってダートの鬼というようなタイプでもなく、血統的には芝をこなしても全く不思議ではない。特に上級馬が出るとしたら芝馬ではないだろうか。距離はマイルから中距離がベストで、短すぎても長すぎてもあまり良くなさそう。自身は2歳時から頭角を現し、種牡馬としても2歳GIウイナーを出しているが、全体的な印象からは使われて良くなるタイプで、2歳戦・3歳戦よりは古馬になってから。Mor Spirit も4歳時にメトロポリタンHを含む3連勝を達成したように本来は成長力のあるタイプだったのだろう。

同じ Storm Cat の流れを汲む系統でも*ヘニーヒューズや*アジアエクスプレスが200頭近い牝馬を集めているヘネシー系と違い、今一つ日本に定着しない感のあるジャイアンツコーズウェイ系。日本のGIを勝ち兄弟にも複数のGI馬がいる*エイシンアポロンは全く牝馬を集められず、*ジャイアントレッカーもほとんど注目されないまま廃用となったが、これまで供用された種牡馬のなかで最も実績上位であるだけに何とかこうした流れを変えるような活躍を期待したいところ。




この記事へのコメント

1. Posted by TRATS 2019年01月20日 19:58
世界的にもジャスティファイが登場し注目度が上がっているヘネシー系に比べると、ジャイアントコーズウェイ系は少々後継に厳しいところがありますが頑張って欲しいです。
2. Posted by ようよう 2019年01月20日 22:51
案外距離が持ちそうなので、100万切ったら、
種付け数も増えて、地方で勝ち馬が増えそうな予感。
もちろん古馬になってから。
3. Posted by 成瀬朋 2019年01月21日 05:46
どうにもジャイアンツコーズウェイ系がダメという風評を新馬勝ちしたエイシンオズ辺りやエスケンデレヤ産駒が何とかしないとかなりツラい状況なのは確かみたいで。

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