2020年06月23日

ヘロド系 - サイアーラインで辿る日本競馬

ということで記念すべき「サイアーラインで辿る日本競馬」シリーズ第一弾はヘロド系。日本のサラブレッド生産の歴史はこの系統から始まりました。日本に初めて輸入されたとされるサラブレッドはレキシントンの孫にあたる*ダブリンなる種牡馬で、いろいろな資料によれば同馬は米国のクラシック路線が形成されるまで3歳牡馬の主要レースとして位置づけられていたウィザーズSの記念すべき第1回勝ち馬であるようです。当時このレースにどれだけの価値があったのかわかりませんが、当時の日本にしてみれば随分贅沢な話ですね。

この系統に限らずですが、競馬黎明期の日本ではほとんどサラブレッドという概念がなく、例えば今の天皇賞に繋がる帝室御賞典ですら平気でトロッターや半血種が勝ち馬に名を連ねていたりします。そんな時代よりさらに遡る1800年代に輸入されたサラブレッドが、直系ではないにしろまだ辛うじて血統表の片隅で見つけることができるとは、本当にすごいことなんだと実感しています。
<ヘロド系父系図>

HerodHerod

Byerley Turk 1680
 Jigg 1701
  Croft's Partner 1718
   Tartar 1743
    Herod 1758
    |Florizel 1768
    | Diomed 1777
    |  Sir Archy 1805
    |   Timoleon 1814
    |    Boston 1833
    |    |Ringgold 1842
    |    | Ringmaster 1861
    |    |  Hock Hocking 1870
    |    |   *アーサーエッチ Arthur H. 1882
    |    |Lexington 1850
    |     |Lightning 1857
    |     | *ライトニング Lantenac 1878
    |     |War Dance 1859
    |     ||*キングリチャード Keene Richards 1871
    |     ||*モンマース Monmouth 1871
    |     | | ・1875年 レキシントンスプリングダッシュスウィープ
    |     | |第五吾妻(f) 1885 アア
    |     | | ・セカイオー・イナボレスの牝祖。ゴーディーの中に眠る
    |     | |第二モンマース 1881
    |     |   ツランクイール 1898 アラ系
    |     |   |第三ツランクイール 1902 サラ系
    |     |   |フクゾノ 1904 軽半
    |     |     ・1908年 帝室御賞典(東京)
    |     |Asteroid 1861
    |     | *スイロン Ceylon 1873
    |     | | ・1875年 フォールヤングアメリカS
    |     | |第三スイロン 1885
    |     |Kentucky 1861
    |     | *ダブリン Dublin 1871
    |     | | ・1874年 ウィザーズS
    |     | | ・日本に初めて輸入されたサラブレッド
    |     | |ダブリン 1879 半血
    |     |   ・競馬黎明期の最強馬
    |     |Norfolk 1861
    |     ||*ブラドレー Bradley 1872
    |     ||| ・1875年 カリフォルニアダービー
    |     |||第二ゼシーフォールド 1880
    |     ||| ・日本で初めて生産されたサラブレッド
    |     |||第五ブラドレー 1884
    |     ||*ローストン Ralston 1874
    |     ||| ・1876年 パーカーハウスプレートS
    |     |||第三ローストン 1883
    |     ||  ミュージック(f) 1889 アア
    |     ||   ・セカイオー・イナボレスの牝祖。第五吾妻の娘
    |     ||Emperor of Norfolk 1885
    |     |  Americus 1892
    |     |   *バリーヴァ Balliva 1906
    |     |   |第二バリーヴァ 1911
    |     |   |喜山 1914 サラ系
    |     |Baywood 1864
    |     ||*ブールドウサル Bulldozer 1875
    |     ||*トムビース Tom Bease 1876
    |     |Concord 1864
    |     | *キングスレー Kingsley 1871
    |     |Duke of Magenta 1875
    |       *マグネット Magnet 1885
    |Woodpecker 1773
    | Buzzard 1787  ━━━ Buzzard line
    |Highflyer 1774
      Sir Peter Teazle 1784
      |Walton 1799
      | Partisan 1811
      | |Gladiator 1833
      | | Sweetmeat 1842
      | | |Parmesan 1857
      | | | Cremorne 1869
      | | | |Cadogan 1876
      | | | | St. Swithin 1884
      | | | |  St. Elmo 1898
      | | | |Ollerton 1878
      | | |   Bosphorus 1888
      | | |    *ハルクレエグ Hall Craig 1903
      | | |Macaroni 1860
      | |  |MacGregor 1867
      | |  | Brutus 1885
      | |  |  *ロードオブザヘース Lord of the Heath 1902
      | |  |Macheath 1880
      | |    Charles Edward 1892
      | |     *バンプシャイアー Banffshire 1901
      | |Venison 1833
      |  |Alarm 1842
      |  | Panic 1858
      |  |  Melbourne 1871
      |  |   Yabba 1882
      |  |    ・1885年 QTCセントレジャー
      |  |Kingston 1849
      |    Caractacus 1859
      |     Captivator 1867
      |      Artisan 1885
      |Sir Paul 1803
        Paulowitz 1813
         Cain 1822
          Ion 1835
           Wild Dayrell 1852
           |Buccaneer 1857
           ||See Saw 1865
           || Loved One 1883
           ||  *マリースチョイス Marie's Choice 1909
           ||   富花(f) 19 - - 中半
           ||    ・ラピッドリーラン、クーヨシンの牝祖。牝系残存
           ||Flibustier 1867
           || Trachenberg 1879
           ||  Hannibal 1891
           ||   Fels 1903
           ||    Laland 1913
           ||     Mio Darezzo 1929
           ||      Mioland 1937
           ||       ・1940年 アメリカンダービー
           ||       ・1940年 サンフアンカピストラーノ招待H
           ||Kisber 1873
           |  Crafton 1882
           |   Engineer 1898
           |    *ネーヴァルエンジニアー Naval Engineer 1909
           |     豊武 1915 サラ系
           |Wild Oats 1866
             Gozo 1882
              Woodlark 1895

Lexington は米国で16度のリーディングサイアーに輝いた歴史的名種牡馬で、競馬黎明期の日本にも大きな影響を与えている。前述のとおり日本に初めて輸入されたとされるサラブレッドは Lexington の孫にあたり、ウィザーズSの第1回勝ち馬とされる*ダブリンで、1877年ごろ日本の地を踏んだ。ただ当時はまだ日本にサラブレッドという概念に乏しく、その産駒で明治初期の最強馬とされるダブリンは半血馬であった。

ただ、きちんと父母ともにアメリカのスタッドブックに記載があり、正真正銘サラブレッドと証明できる日本初の産駒ということであれば下総御料牧場が輸入した*ブラドレー*ゼシーフォールドの仔、第二ゼシーフォールドということになるらしい。ただこの第二ゼシーフォールドは*ブラドレーの父 Norfolk の2×2という近交馬で、目立った産駒を出すことはできなかったようだ。

なおこの*ブラドレーもカリフォルニアダービーを制した活躍馬のようで、直系は伸びなかったが母父として第二スプーネーなるサラ系種牡馬を出し、第二スプーネーが血統不詳馬*ミラと交配されて第三ミラを出し、その末裔として先日中央で勝ち星をあげたトウケイミラを出したことで今でもその血が生き残っている。ほかに同時期に輸入された*モンマースが直系で帝室御賞典の勝ち馬を出したほか、今でもゴーディーの血統表中にその名が見られる。

Highflyer は18世紀の大競走馬で、種牡馬としても大成功を収め、英国で13度リーディングサイアーとなった。さらに父 Herod と息子 Sir Peter Teazle も合わせると33年間で31回リーディングに輝いたという。日本で競馬が本格的に始まったころにはすでに系統として下火になっており、日本でも目立った成績は残さなかったが、このうち*マリースチョイスが残した中半血馬富花は重賞7勝の名アラブ・ラピッドリーランの牝祖となり、さらにサラ系馬ながら重賞を制したクーヨシンを出して今でも牝系に生き残っている。




この記事へのコメント

1. Posted by 鹿 2020年06月23日 21:48
メジロマックイーンがここでしたっけ?
日本ではある程度強い時期があったんですね
2. Posted by 成瀬朋 2020年06月23日 23:31
ミラと言えばヤグラステラの系統が途切れたのは残念だけど、トウケイミラでまだ何とか繋がりそうでなにより。
3. Posted by Organa 2020年06月24日 22:12
>鹿さん
そうです。パーソロンはリーディングサイアーでしたし、ダンディルートもかなり優秀でしたので、1970年代から80年代にかけては主流血統の一つだったといっていいと思います。

>成瀬朋さん
ここで馬名にミラをつけるあたり、オーナーも牝系の存続をかなり意識しているのではと思います。中央1勝以上なら繁殖牝馬として十分合格点でしょう。
4. Posted by まよ 2020年06月25日 00:04
5 トウケイミラはドラゴンルーブルの系統なんですよね。ヤグラステラもどちらも田島裕和騎手のお手馬だったのは何かの縁でしょうか。
ラピッドリーラン、懐かしいなあ。スイグンとかと同じ時期に走ってましたっけ。あの頃の福山は、アラブのメッカとして、まだ少しは元気があった記憶。
5. Posted by DS3CB 2020年12月01日 21:26
はじめまして、最近こちらの素晴らしいサイトを見つけ勉強させていただいています。
内容について2点教えてください。
[*アーサーエッチ Arthur H. 1882] の父は[Hock Hocking 1870] のではないかと思うのですが、間にいる[Baconsfield 1881]とはどういう関係でしょうか?
[*ライトニング Lantenac 1878]の父として[Lightning 1857]となっていますが、綴りからみるとカタカナ表記部がずれているように見えるのですが、いかがでしょうか?
6. Posted by Organa 2020年12月01日 21:42
アーサーエッチの父は誤植です。訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

ライトニングに関しては、米国では Lantenac として登録されていた馬を日本に輸入した際に「ライトニング」と改名したということのようです。
7. Posted by DS3CB 2020年12月01日 22:09
「ライトニング」の件、そういうことだったんですね、失礼しました

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