2020年06月25日

ザテトラーク系 - サイアーラインで辿る日本競馬

続いてはザテトラーク系。ザテトラークはヘロド系復興を目的に生産された馬で、その通り類まれなるスピードを誇り、種牡馬としても大成功を収めました。直系はすでに滅んでしまいましたが、何といっても快速牝馬ムムタズマハルが孫の代にナスルーラ、ひ孫の代にロイヤルチャージャーを出したことにより、現代の日本においてザテトラークの血を引く馬は相当数に上るのではないかと思います。

この系統といえば何といっても*セフトでしょう。トキノミノル、ボストニアンの牡馬クラシック二冠馬2頭に牝馬クラシック二冠のスウヰイスー、天皇賞馬のタカクラヤマやシーマーなど数々の活躍馬を送り出し、1947年から1951年にかけて5年連続でリーディングサイアーに輝きました。直系は長くは続きませんでしたが、シンザンやメジロマックイーンなど母系で影響を与えた馬も多く、日本競馬を支えた名種牡馬の1頭と言えるでしょう。
<ザテトラーク系父系図>

HerodHerod - Buzzard - The Tetrarch

Atlantic 1871
 Le Sancy 1884
  Le Samaritain 1895
   Roi Herode 1905
    The Tetrarch 1911
    |Tetratema 1917
    ||Bacteriophage 1929
    || Teleferique 1934
    ||  Alizier 1947
    ||  |Sigebert 1961
    ||  | ・1965年 フォワ賞
    ||  | ・1966年 オカール賞
    ||  |*タパルク Tapalque 1965
    ||   | ・1968年 仏ダービー
    ||   |スズカフラワー 1975
    ||   | ・1977年 小倉3歳S
    ||   |アズユーライク 1979
    ||     ・1983年 (4着)東京新聞杯
    ||Royal Minstrel 1925
    || First Fiddle 1939
    || | ・1943年 ルイジアナH
    || | ・1946年 サンアントニオH
    || |*スヰート Sweet Sixteen 1951
    ||   ・1954年 4歳牝馬特別
    ||   ・メジロアサマの母。牝系残存
    ||*セフト Theft 1932
    ||| ・1935年 ジャージーS
    ||| ・1935年 グリーナムS
    |||ハヤタケ 1939
    |||| ・1942年 菊花賞
    |||| ・1943年 京都記念
    ||||デトロイト 1948
    |||| ・1951年 (2着)チャレンジC
    ||||ハヤノボリ 1949
    |||  ・シンザン、オンワードスタン、リンデンの母。牝系残存
    |||ユウセン 1939
    ||| ・1943年 阪神記念
    |||ミスセフト 1940
    ||| ・1943年 桜花賞
    |||コマサクラ 1943
    |||アスカヤマ 1944 サラ系
    ||| ・1948年 京都記念(秋)
    |||クモタカラ 1944
    |||ケイザン 1944
    |||シーマー 1944
    |||| ・1948年 天皇賞(春)
    ||||モナコオー 1950
    |||| ・1954年 京都大障害(春)
    ||||ダイナナホウシュウ 1951
    ||||| ・1954年 菊花賞
    ||||| ・1954年 皐月賞
    ||||| ・1954年 神戸杯
    ||||| ・1955年 天皇賞(秋)
    ||||| ・1955年 京都記念(秋)
    ||||| ・1956年 阪神大賞典
    |||||タツミ 1961
    ||||  ・1964年 ゴールドC
    ||||  ・1966年 金盃
    ||||タカオー Taka O 1951
    |||| ・1953年 朝日杯3歳S
    |||| ・1954年 NHK杯
    |||| ・1954年 スプリングS
    |||| ・1955年 東京杯
    |||| ・1955年 天皇賞(春)
    |||| ・1956年 中山特別
    |||| ・ビルマで種牡馬入り
    ||||コザックオー 1952
    ||||ハルナサン 1956
    |||  ・1959年 京都大障害(秋)
    |||セフテス 1944
    ||| ・1948年 目黒記念(秋)
    ||| ・1949年 目黒記念(春)
    |||ヒサトマン 1944
    |||| ・ヒサトモの仔
    ||||ヒサトハクユウ 1959 サラ系
    |||  ・1965年 地全協会長賞
    |||アステモア 1945
    |||ヤシマヒメ 1945
    ||| ・1948年 優駿牝馬
    |||キングナイト 1946
    ||| ・1949年 優駿牝馬
    |||リュウザン 1945 種牡馬名:クラックセフト
    |||| ・1948年 (2着)東京優駿
    ||||ミンシュウ 1956
    |||| ・1960年 スワンS
    |||| ・1960年 阪急杯
    ||||ミスハツクモ 1960
    |||| ・1965年 中山大障害(秋)
    ||||シュツロスベルガー 1962
    |||  ・1966年 新潟記念
    |||リオン 1945
    |||コマオー 1946
    ||| ・1951年 ダイヤモンドS
    |||アヅマホマレ 1947
    |||| ・1949年 朝日杯3歳S
    ||||トウセイ 1952
    |||| ・1955年 東京牝馬特別
    ||||アカツキ 1953
    |||  ・1956年 クイーンS
    |||イエトモ 1947
    |||ウイザート 1947
    |||| ・1949年 阪神3歳S
    |||| ・1950年 セントライト記念
    ||||リュウゲツ 1957
    |||  ・1961年 京都大障害(秋)
    |||コマミノル 1947
    ||| ・1950年 優駿牝馬
    |||タカクラヤマ 1947
    |||| ・1950年 チャレンジC
    |||| ・1951年 天皇賞(春)
    |||| ・1951年 鳴尾記念(春)
    ||||ハツカゼ 1954
    |||| ・ハッピープログレス、ユビキタスの牝祖。牝系残存
    ||||アヤノボル 1955
    |||| ・1959年 ダイヤモンドS
    ||||ミトタカラ 1956 アア
    |||| スマノダイドウ 1970 アア
    ||||  ・1975年 (9着)東京盃
    ||||  ・アラブのリーディングサイアー7度
    ||||ロールメリー 1955
    |||| ・1960年 中山大障害(春)
    |||| ・1960年 中山大障害(秋)
    ||||ミホノマツ 1961
    |||| ・1966年 京都大障害(秋)
    |||| ・1967年 京都大障害(春)
    ||||ヤマニンルビー 1961
    |||| ・1964年 京阪杯
    ||||ヤングヒーロー 1961
    |||| ・1965年 サンケイ大阪杯
    |||| ・1965年 京都記念(春)
    ||||スマノタカラ 1967
    |||  ・1971年 京都大障害(春)
    |||トサミツル 1947
    ||| ・1950年 桜花賞
    |||トシハマ 1947
    ||| ・1949年 (2着)朝日杯3歳S
    |||ハイレコード 1947
    ||| ・1950年 菊花賞
    |||レコードオー 1947
    ||| トクエビス 1965
    |||  ・1967年 白砂賞
    |||イチギク 1948
    ||| ・1952年 (5着)天皇賞(秋)
    |||イッセイ 1948
    |||| ・1951年 安田賞
    |||| ・1951年 カブトヤマ記念
    ||||イリュウ 1955
    |||| ・1959年 京都記念(春)
    ||||ゴールマイト 1955
    |||| ・1959年 スワンS
    ||||タイセイホープ 1955
    |||| ・1958年 皐月賞
    ||||イチクニヒメ 1956
    |||  ・リンデンリリー、ヤマカツリリーの牝祖。牝系残存
    |||スズアキラ 1948
    |||スミダガワ 1948
    |||タカラザン 1948
    |||ツキミツル 1948
    |||トキノミノル 1948
    ||| ・1950年 朝日杯3歳S
    ||| ・1951年 皐月賞
    ||| ・1951年 東京優駿
    |||スウヰイスー 1949
    ||| ・1952年 桜花賞
    ||| ・1952年 優駿牝馬
    ||| ・1952年 安田賞
    ||| ・1953年 安田賞
    ||| ・グルメフロンティアの牝祖。牝系残存
    |||セフトワイ 1949
    ||| ホマレライサン 1961
    |||  ・1964年 (2着)カブトヤマ記念
    |||テツノハナ 1949
    ||| ・1951年 阪神3歳S
    |||マサムネ 1949
    ||| ・1952年 セントライト記念
    |||イチジョウ 1950
    ||| ・1953年 クモハタ記念
    |||シマユキ 1950
    ||| ・1955年 中山大障害(秋)
    |||ダイニカツフジ 1950
    ||| ・1953年 朝日チャレンジC
    ||| ・1955年 京都大障害(秋)
    ||| ・1956年 京都大障害(秋)
    |||ボストニアン 1950
    |||| ・1953年 皐月賞
    |||| ・1953年 東京優駿
    |||| ・1953年 NHK杯
    |||| ・1953年 鳴尾記念
    |||| ・1954年 阪神記念
    ||||アサマユリ 1959
    |||  ・メジロマックイーン、メジロデュレン、ショウナンカンプの牝祖。牝系残存
    |||ラショウモン 1950
    ||  ・1953年 (5着)菊花賞
    ||Polemarch 1918
    |  *ヴィーノーピュロー Vino Puro 1934
    |  | ・1937年 亜2000ギニー
    |  | ・1937年 モンテヴィデオ大賞
    |  |オーエスケー 1953
    |  |ユーシュン 1954
    |  | ・1958年 京都大障害(秋)
    |  | ・1960年 東京障害特別(春)
    |  |ハマイサミ 1957
    |    ・レガシーワールド、レガシーフィールドの牝祖。牝系残存
    |Salmon-Trout 1921
    | King Salmon 1930
    |  King's Abbey 1939
    |  | ・1942年 ジェロームH
    |  |ミスゴショノソオ 1953
    |    ・1955年 (3着)阪神3歳S
    |Ethnarch 1922
      *オーイエー Oh Yeah! 1928
       ・オーライト、メジロムサシ、ツインターボの牝祖。牝系残存

The Tetrarch の孫にあたる*セフトはジャージーSなどの勝ち馬で、種牡馬として10戦無敗のクラシック二冠馬トキノミノル、同じくクラシック二冠など重賞4勝のボストニアン、牝馬二冠に安田賞連覇、さらに晩年は南関東でも結果を残したスウヰイスーなど特にクラシックに強い産駒を多数送り出し、リーディングサイアーにも輝いた。しかし父系は今一つ発展せず、1970年代に断絶している。

数多いる代表産駒の中でも特に惜しまれるのがトキノミノルの早世だろう。朝日杯3歳S、皐月賞、ダービーを含む10戦10勝。そのうち7戦がレコード勝ちという歴史的な快速馬で、20世紀中盤の最強馬といって差し支えないだろうが、残念ながらダービー後に破傷風のためこの世を去った。同馬が無事に現役を続けていれば様々な記録が塗り替えられたことは間違いなく、種牡馬としてもあっさりと父系が途絶えることはなかったに違いない。

後継種牡馬として最も成功したのは天皇賞馬シーマーであろうか。自身は天皇賞(春)が唯一の重賞勝ちであったが、ダイナナホウシュウタカオーと2頭の天皇賞馬を送り出した。ディープインパクトがフィエールマンで天皇賞を勝つまで、同馬が天皇賞馬として複数の天皇賞馬を出した唯一の種牡馬であったらしい。ただ後継は重用されず、タカオーに至ってはビルマに寄贈された。

同じく天皇賞馬タカクラヤマはGI級レースの勝ち馬こそ出せなかったが、多数の重賞ウイナーを送り出すことに成功した。サラブレッドの父系としては発展しなかったが、アングロアラブのミトタカラがサラブレッドとも対等に渡り合ったアラブの名馬スマノダイドウの父(ただし極めて疑惑が強い)となっており、さらにスマノダイドウも種牡馬として7度もリーディングに輝く大成功を見せたため、アラブの父系として大発展した。

最初期の活躍馬であるハヤタケは種牡馬として全く結果を残せなかったが、障害も走っていたようなハヤノボリが母として名馬シンザンを出したことでその名を歴史に刻んだ。晩年の産駒ボストニアンは種牡馬として60頭以上の牝馬を集めるなど大いに期待されたが、結果は大惨敗。ただ、平凡な競走馬であったアサマユリがメジロマックイーンの牝祖となり、今でも大きな影響を与えている。

*セフト以外の種牡馬はあまり輸入されていないが、アルゼンチン産の*ヴィーノーピュローは障害の活躍馬ユーシュンなどを出しており、今でも牝系にその名を残している。世界的にも最後のザテトラーク系活躍馬であった仏ダービー馬*タパルクは目立った結果を残すことができず、こちらは牝系にも残っていないようだ。

なお、メジロアサマの母として知られる*スヰートは "Sweet Sixteen" の名でイギリスで7戦1勝の成績を残しており、のちに日本に輸入されて再デビューを果たし非重賞時代の4歳牝馬特別を制した。当時は海外で出走歴のある馬も中央で競走馬となることができたからこそ輸入されたとも言え、もし現在のように規制されていれば海外出走歴のある同馬が日本に来ることはなく、メジロアサマ、メジロマックイーン、さらにはオルフェーヴルやラッキーライラックらも生まれていなかったかもしれない。




この記事へのコメント

1. Posted by ウエマツ 2020年06月26日 00:08
いつも楽しく読んでいます。このシリーズも楽しみにしています。
タカクラヤマ産駒のところに1953年生まれのタカクラオーの記載がありますが、JBISを見るとトシシロ産駒となっていますね。
https://www.jbis.or.jp/horse/0000002668/
1957年生まれのアングロアラブで同名のタカクラヤマ産駒がいるようですが……。
2. Posted by 成瀬朋 2020年06月26日 11:48
ツインターボなどの牝祖のオーイエーって父はセフト系だったんですな…
名前に「!」がある馬というインパクトが強すぎて血統が吹っ飛んでいたけど。

ここまで時代が下れば多少は最近の馬との繋がりも濃くなってきますな。
3. Posted by Organa 2020年06月27日 17:35
>ウエマツさん
記事を訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

>成瀬朋さん
セフトの祖父のザテトラーク系ですね。エクスクラメーションマークが馬名に使えた時代があったんですね。

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