2021年01月16日

キタサンブラック - 新種牡馬辞典'21

新種牡馬辞典、第九弾はキタサンブラック。ここでようやく顕彰馬キタサンブラックの登場です。菊花賞や春秋天皇賞、ジャパンCに有馬記念とGI7勝をあげ、一時は歴代賞金王にも輝いたキタサンブラックでしたが、そんな歴史的名馬の初年度産駒が100頭に満たないのも、父がブラックタイドという血統面の不安があるからでしょう。さらに母父が短距離種牡馬サクラバクシンオー、母母父には失敗種牡馬*ジャッジアンジェルーチがおり、実績よりも安価に設定されているとはいえそれでも安くはない種付け料を支払うには信頼性に欠けるといったところでしょうか。自身が常識を覆す活躍を見せた馬だけに、種牡馬としても血統に縛られない活躍を見せてほしいですね。
キタサンブラック

ヤナガワ牧場産 2012年生 鹿毛 父系:サンデーサイレンス系

<血統構成> Lyphard 4×4 Northern Dancer 5×5×5

ブラックタイド

黒鹿毛 2001
*サンデーサイレンスHalo
Wishing Well
*ウインドインハーヘアAlzao
Burghclere
シュガーハート

鹿毛 2005
サクラバクシンオーサクラユタカオー
サクラハゴロモ
オトメゴコロ*ジャッジアンジェルーチ
*ティズリー

ブラックタイドはスプリングSの勝ち馬で、全弟ディープインパクトのおかげで種牡馬入りを果たしたが、キタサンブラック以外には平地障害両重賞勝利を達成したタガノエスプレッソ、デイリー杯2歳Sのテイエムイナズマなど何頭かの重賞ウイナーが出ているに過ぎない。なおブラックタイド産駒としてはダービーでキタサンブラックに先着する5着に入ったコメートが一足先に種牡馬入りしたが、全く牝馬は集まっていない。

シュガーハートは不出走馬。母としてほかに中日新聞杯で2着、アメリカJCCで3着に入ったショウナンバッハを出しており、同馬は2020年より種牡馬入りしている(初年度8頭)。なおこのブラックタイド×サクラバクシンオー配合はキタサンブラック以前はわずか3頭しかいなかったが、年々増加しており、現2歳世代だけで12頭、現3歳も10頭いる。

祖母オトメゴコロは中央4勝。京都牝馬特別や札幌スプリントSで5着に入るなどそこそこ活躍した。母としては目立った産駒は出していないが、孫の代にはほかに日経新春杯で2着・3着に入ったアドマイヤフライトなどを出している。3代母*ティズリーは米国産馬で、輸入前に残した Cee's Tizzy が後に名馬 Tiznow の父となった。

<競走成績>

年 (歳)主な実績
2015年 (3歳)851着 菊花賞(GI) T3000
1着 スプリングS(GII) T1800
1着 セントライト記念(GII) T2200
1着 500万下 T2000
1着 3歳新馬 T1800
3着 皐月賞(GI) T2000
3着 有馬記念(GI) T2500
2016年 (4歳)631着 天皇賞(春)(GI) T3200
1着 ジャパンC(GI) T2400
1着 京都大賞典(GII) T2400
2着 有馬記念(GI) T2500
2着 産経大阪杯(GII) T2000
3着 宝塚記念(GI) T2200
2017年 (5歳)641着 大阪杯(GI) T2000
1着 天皇賞(春)(GI) T3200 R
1着 天皇賞(秋)(GI) T2000
1着 有馬記念(GI) T2500
3着 ジャパンC(GI) T2400
20122016 JRA年度代表馬
2016 最優秀4歳以上牡馬
2017 JRA年度代表馬
2017 最優秀4歳以上牡馬
2020 顕彰馬

デビューから3連勝でスプリングSを制すが、皐月賞は3着、ダービーは14着と大敗で春はドゥラメンテに完敗。しかし同馬不在の菊花賞を完勝し、GI初制覇を達成した。古馬になってからは武豊Jとコンビを組むと、この年は天皇賞(春)・ジャパンCのGI2勝を含む重賞3勝、4着以下なしという素晴らしい成績を残し、年度代表馬に選ばれた。5歳時にはさらにパワーアップし、新設GIの大阪杯、レコードで制した天皇賞(春)、2分8秒台という歴史的な不良馬場となった天皇賞(秋)、そして引退レースの有馬記念とGI4勝をあげ2年連続で年度代表馬に選ばれている。

<供用実績>

年度種付料種付数生産数登録数供用場所
2018500万円1308483社台スタリオンステーション
2019400万円11081
2020400万円92
2021300万円

いわゆる王道路線でGI7勝、2年連続年度代表馬という実績を引っさげて社台スタリオンステーションにて種牡馬入り。種付け料の500万円は実績からすればむしろかなり安価な設定だが、初年度の種付けは130頭にとどまった。その後も種付け料の減額にもかかわらず、種付け数は減少の一途をたどっている。やはり父ブラックタイドが大きな不安材料になっていると思われるが、ディープインパクト産駒ではないのに事実上ディープインパクト系の配合余地をつぶしてしまうというのは予想以上に大きいことなのだろう。

<注目の産駒>

母名備考
クリソプレーズノーザンファームの生産馬。母は*エルコンドルパサー産駒で、中央3勝。半兄にクリソライト、クリソベリル、リアファル、半姉にマリアライトとGIウイナー3頭を含む4頭の重賞勝ち馬がいる。おじアロンダイトはジャパンCダート勝ち馬。キャロットにて5000万円で募集されている。
*セットプレイノーザンファームの生産馬。母は Van Nistelrooy 産駒の米国産馬で、米国2勝。GIデルマーデビュタントS(D7F)を制している。半姉ステラータは地方3勝。DMM.comが3800万円で落札し、DMMバヌーシーにて4200万円で募集されている。
*ドナブリーニノーザンファームの生産馬。母は Bertolini 産駒の英国産馬で、英国4勝。GIチェヴァリーパークSなど重賞2勝をあげている。半姉に牝馬三冠などGI7勝のジェンティルドンナ、重賞2勝のドナウブルーなどがいる。HIROKIカンパニーが1億6000万円で落札。
*マリブウィン須崎牧場の生産馬。母は Malibu Moon 産駒の米国産馬で、米国5勝。ノーザンフリングS(D8F)を制している。半姉アルマレイモミは中央2勝。また半兄セイクリッドサンは中央1勝。ラフィアン代表の岡田繁幸氏が3800万円で落札しており、「ウン」で登録予定。
ヤマトマリオン坂東牧場の生産馬。母は*オペラハウス産駒d、中央4勝・地方2勝。フローラSや東海Sなど、芝ダート問わず重賞を4勝した。祖母ヤマトプリティは中央6勝。また半兄マリオ、マリオマッハーはそれぞれ中央3勝。サクラハゴロモ≒アンバーシャダイのクロスあり。

クリソプレーズは安定の超良血一族。マリアライトをはじめ父ディープインパクトの兄姉はすべて中央で勝ち星をあげており、相性は良さそう。*セットプレイはラヴズオンリーユーを育て上げた矢作厩舎・DMMコンビ。4200万円と牝馬にしてはかなり高めの設定となっている。*ドナブリーニはジェンティルドンナの下。いくらディープインパクトで結果が出ているとはいえ、1億6000万とは…。*マリブウィンは岡田総帥のお眼鏡にかなった馬で、馬名は「ウン」(運)。果たして Un の名が英ダービーの出走リストに並ぶか。ヤマトマリオンは今時珍しいアンバーシャダイの全きょうだいクロス。顕彰馬の仔とは思えない渋さがポイント。

<傾向> 芝: ダ: 距離:マイル〜クラシック 2歳: 3歳: 古馬:

生産牧場生産数母父産駒数
1ノーザンファーム261キングカメハメハ7
2社台ファーム92Pivotal3
3ヤナガワ牧場3アドマイヤムーン3
栄進牧場3キングヘイロー3
白老ファーム3*フレンチデピュティ3

全体の1/3がノーザンファームの生産馬。社台ファームや白老ファームも足せばおよそ半数が社台グループによる生産馬となっている。実績通り一流馬は芝馬だろうが、540キロと非常に馬格のあるタイプで、ダートも全く苦にしないだろう。ふたを開ければダート中距離馬ばかりというパターンも十分あり得る。母父サクラバクシンオーがどう出るかだが、基本的に距離は万能にこなせると見ていいのではないか。仕上りはそれなりに早いはずだが、父ほどの成長力を受け継ぐことができるかどうか。

GI勝利数や賞金王の座こそアーモンドアイに抜かれてしまったが、GI7勝も含めて牡馬の中では依然トップ(タイ)の記録であり、日本競馬史上屈指の名馬の1頭に数えることができるだろう。それが同じく最強馬候補の1頭であるディープインパクトではなく、その全兄でGI未勝利だったブラックタイドから出るというのも競馬の面白いところだろう。果たして種牡馬としてディープインパクトをも凌ぐ存在になるのか、あるいはやはりブラックタイド産駒ということになるのか、今から産駒のデビューが楽しみだ。




この記事へのコメント

1. Posted by ノエルザブレイヴ 2021年01月16日 11:51
その圧倒的な競走実績に比して血統構成的に考え込んでしまうところが手を出しづらい感じになってしまうということでしょうか。

個人的にはミュゼスルタンの項で取り上げられたユングヴィ(京王杯2歳S3着)の叔母で、グレナディアガーズに勝ったこともあるサルビアの妹でもある母リップスポイズンの牝馬がサブちゃん氏の持ち馬であること、この前出たswitch版ダビスタでリップスポイズンが元ネタの牝馬にマイ牧場の初期の経営を支えてもらったことから注目しています。
2. Posted by 鹿 2021年01月16日 12:26
将来の全兄弟クロス狙いでむしろ狙っていきたい
3. Posted by 大和 2021年01月16日 14:08
社台以外で種牡馬入すべき馬でしたね。
仕上がりも遅そうで苦戦必至のような気がします。
サブちゃんがポケットマネーでどれだけ頑張れるかですね。
4. Posted by 成瀬朋 2021年01月16日 14:18
考えてみたらいくら好成績だったからって母父サクラバクシンオー母母父ジャッジアンジェルーチで父がディープの全きょうだいと配合的に難しい所はあるのかも知れないですな(;´д`)
個人的にはヤマトマリオンみたいなアンバーシャダイ持ちの繁殖との配合は面白そうではあるけど…
5. Posted by あ 2021年01月16日 14:45
クリソプレーズとの仔は残念ながら既にセン痛で亡くなっています……
名門一族だっただけに活躍を期待していましたが残念です
6. Posted by ダービー卿 2021年01月16日 15:54
>>5
それは非常に残念な話だな
ただノーザン産が多い辺り腐っても顕彰馬なだけはあるとは思う
血統的にはそこまでステイヤーだとは思わないし仕上がりもモーリスほど遅くはないと思うから頑張って欲しい
7. Posted by モフィーダ 2021年01月16日 18:31
社台以外だとまずこのレベルの繁殖が集まってないでしょうし、社台繋養になったのは正解かと。初年度に関しては種付け中のトラブルもあったようで、金額的にも日高は手を出しづらい中でこの頭数ならまずまずでしょう。
産駒はセリやクラブ募集の馬を見る限り見栄えする子が多い印象で、ここら辺は血統がよく出てますね。矢作師がかなり評価しているセットプレイ等々、募集での評判は上々みたいです。
8. Posted by tnok 2021年01月16日 22:41
日高の中小牧場が敬遠してこの少なめの種付け数になってるんで、社台以外で種牡馬入りすべきという声はどうかと思います。
社台グループがそれなりにいい繁殖を集めているのは、見栄えがよくクラブでそれなりに売れる事を見込んでるからでしょうかね。
社台Gは優れた馬はクラブに卸すので、セリや庭先取引中心の他の牧場とはまた違った観点で種牡馬としてのこの馬を捉えているでしょう。
9. Posted by リファー 2021年01月17日 09:11
スピード、スタミナ、パワー申し分ないので
産駒に伝わればいいですが(>_<)
ステゴ産駒がG1勝ちが多いように意外とキタサンもいけるかも‼️
ミスプロ、ノーザンの血があまりないので
配合はしやすいよね。
10. Posted by ななし 2021年01月17日 18:03
現役時代は凱旋門賞に合いそうな感じだったので、輸入されてきた日本に合わなかった凱旋門賞馬みたいな印象が強いです。
もっとも、ダンシングブレーヴみたいなこともあるのでそこに期待、でしょうか。
11. Posted by Organa 2021年01月17日 19:42
馬を売らなくてもクラブに下せばいいというのは絶大なアドバンテージですね。もちろんそれまでに築いてきたものがあるわけですが、社台系クラブは放っておいても満口になりますからね。

ただ、キタサンブラック産駒の大物はやはり自身のように日高産から出てきてほしいですね。

>あさん
クリソプレーズの仔は亡くなっていたのですか…。血を繋げる可能性もあっただけに、残念です。
12. Posted by ようよう 2021年01月17日 23:40
バクシンオーに、ジャッジアンジェルーチャ。。。。


2歳は以ての外。3歳秋まで結果が出なさそうなんで、
2022年、社台→レックス
なイメージが・・・・・
13. Posted by ひよこ屋 2021年01月18日 00:14
昔の農水省所管時代と違ってクラブ馬が売れない馬の落ち着き先じゃなくなりましたなぁ。
キタサンほどの名馬でも血統構成で苦戦するのがまた競馬の楽しさ。

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